句題詩

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句題詩(くだいし)は、平安時代に流行した日本独自の漢詩の形式[1]。詩宴において漢字5文字の一句である句題が与えられ、それに対し参加者が詠んだ漢詩。

まず、詩宴において漢字5文字のの句題が与えられる[2]。この題を選ぶ者を題者という。題は通常、目の前の庭園風景や年中行事に関するものであり、題者はそのような一句を古句から採り出すか、新作するかする[3]。新作された題を新題といい、平安後期ではもっぱら新題が選ばれたものの、それらは画一的なものである。平安後期の漢詩集『中右記部類紙背漢詩集』には「月是為松花」「松樹臨池水」といったように2つの事物を含み、それについて「XはYである」と陳べたりあるいは物の位置を陳べたりする句題が多い。さらに、句題間での文字の重複も多く、平安後期の句題は「簡素化・固定化され、互い似通った、独創性の乏しいもの」(ヴィーブケ・デーネーケ)であるといえる[4]

さて、この句題に対し参加者は漢詩を詠むわけだが、それらは通常七言律詩であり、当然その押韻平仄対句のルールを受ける。そのうえで、句題詩にはさらに下記のようなルールがあった[5]

  • 首聯(第1・2句)は題目とも呼ばれ、この14文字の中に、句題の5文字を詠み込む必要がある。句題の5文字は首聯以外で使ってはならない。
  • 頷聯(第3・4句)と頸聯(第5・6句)は当然対句でなければならないが、さらに各句ごとに句題を言い換えなければならない。このような聯を破題という。また故事の典拠である本文[6]を踏まえた言い換えをすることもあり、本文を踏まえた聯も本文という。片方の聯は本文とする方が良いが、全て破題でもよい。
  • 尾聯(第7・8句)は述懐とも呼ばれ、ここだけは自由に詠んでよい。もっとも、題意は踏まえなければならない。

なお、題目・破題・本文といった構成法は、対策・詩序・和歌序でも見ることができる[7]。詩序とは詩宴において詩の披講の前に読み上げられる詩全体への序文であるが、ここでも詩題について触れられる。この際、まず句題の5文字を詠み込み、破題や本文とも言える句題の言い換えが行われている[8]

句題詩の参考書

上記のようなルールは難しそうに見えるだろうが、それがあるゆえに句題詩は漢学者でなくともルールに則りさえすれば作ることができる。そのため句題詩は貴族社会で流行したのである[9]。とはいえ、詩人にとって破題の巧拙は重大な関心事であった[10]。このため『文鳳抄』『擲金抄』『童蒙綴詞抄』のような破題用の対句語彙集がある[11]

加えて、『和漢朗詠集』も破題の典拠にされている[12]。『和漢朗詠集』本来の目的は朗詠ではあるが、そこには様々な主題が網羅されており、「破題の基本的語彙を網羅した、極めて実用性に富んだ教科書」(佐藤道生)として利用された[13]。また、『和漢朗詠集』の注釈書である『和漢朗詠集私注』は、句題詩や句題の詩序の摘句について、摘句のこの字句は句題のこの字句の意であるとか喩であるとかいうように、破題の解説をしている。また、大江以言具平親王からの破題が不十分という指摘に従い、漢詩を手直ししたところ、紀斉名に詩合で勝てたといったように破題の重要性を示す逸話を載せる[14]。しかしそもそも、摘句の詩題・文題が判明するのは、大江匡房白河天皇の命で、出典捜索を行ったからである[15]。その匡房が作成した『朗詠江注』は、子の大江匡時のために書かれたと言わるが、ここにも、破題の解説や破題の重要性を示す逸話が載っている[16]。『私注』も『江注』も漢詩の初学者向けの注釈であり[17]、こうして平安末期には『和漢朗詠集』は『千字文』『蒙求』『百二十詠』と並ぶ幼学書となったのである[18]

無題詩

句題ではない、つまり5文字の一句となっていない詩題は無題と呼ばれる[19]。また4文字の詩題を非句題という[20]。なお『文筆問答抄』によれば、句題とは5字の、無題とは6文字・7文字の、非句題とは3文字・4文字の詩題であるとするが、句題として杜甫陸游の詩を例示している[21]。いずれにせよ、無題詩(無題の詩)では句題詩の様々な制約を逃れて自由に詠作することができた。無題詩を集めた漢詩集として『本朝無題詩』がある[22]

脚注

参考文献

関連項目

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