名探偵じゃなくても

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発行日 2023年12月8日
発行元 宝島社
名探偵じゃなくても
Even if you are not
The great private detective
著者 小西マサテル
発行日 2023年12月8日
発行元 宝島社
ジャンル ミステリ小説
日本の旗 日本
言語 日本語
前作 名探偵のままでいて
次作 名探偵にさよならを
公式サイト tkj.jp/
コード ISBN 978-4-299-04877-6
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名探偵じゃなくても』(めいたんていじゃなくても)は、小西マサテルによる日本推理小説。『名探偵のままでいて』シリーズ第2作。

認知症を患うミステリマニアの祖父と、その孫娘が日常の謎や事件に向き合う姿を描いた連作ミステリ作品[ch 1][ch 2][ch 3][ch 4][ch 5]

名探偵のままでいて』に続く『名探偵のままでいて』シリーズの第2作として、2023年12月8日に宝島社より書き下ろしで単行本が刊行された[1]。2025年12月3日には宝島社文庫よりスピンオフ掌編「猫が銀河の中を飛ぶ」を収録した文庫版が刊行された[2]

本作には古典ミステリ作品へのオマージュがちりばめられており、ミステリマニアをそそらせる趣向が凝らされている。

所謂、安楽椅子探偵様式のミステリー作品で、タイトルの「名探偵じゃなくても」には、かつて優れた推理力を誇った祖父が、病によって記憶を失い名探偵でなくなったとしても、傍に居続けてほしいという孫娘の願いが象徴されている。

2025年9月10日には続編となるシリーズ第3作『名探偵にさよならを』が宝島社より刊行された[3]

あらすじ

第一章 サンタクロースを見た男
クリスマス・イブ前夜、馴染みの居酒屋で岩田は、幼い頃にサンタクロースを見たがすぐ消えた体験を楓や四季に語る。この季節になると、その時の記憶を今も夢に見るという。
当時、父と二人暮らしだった岩田は、その夜を境に父が失踪し施設で育つ。サンタ消失を推理する中、楓たちはその場に居合わせた楓の祖父の教え子を名乗る我妻と出会う。
岩田は帰宅後、楓たちが失踪した父の話題に触ぬよう気遣ってくれたと察し、大人になった今、父の失踪と向き合うことを決意し、楓を介して彼女の祖父に真相の推理を依頼する。
翌日、楓は祖父へのクリスマス・プレゼントを携え、岩田の幼い日の記憶「社宅の住人がいなくなった」「金色に輝く絵本を読んでとせがみ父に怒られた」「プレゼントに添えられた「さむいところにいかなければならない」と書かれた父の手紙」を祖父に伝えると、祖父は紫煙をくゆらせ推理を始める。
第二章 死を操る男
ゴールデンウィーク、楓は横浜中華街で美咲と点心ランチ中、彼女から推しの舞台俳優・フランソワが脱法ドラッグの過剰摂取で自宅で自殺した際の奇妙な状況を聞かされる。
ネット記事によれば、フランソワは苦しさから自ら救急車を呼び、救急隊員が到着時には右手に自宅電話の受話機、左手にスマートフォンを握ったまま意識を失っていたという。
さらに搬送先でフランソワが亡くなったと報じられると、未遂に終わったが彼の女性ファンたちが奇妙な後追い自殺を図ったとの後日談が美咲から語られる。
楓は新たな後追い自殺者が現れることを危惧し、刑事の我妻を招いたうえで碑文谷の祖父宅を訪れ、一連の奇妙な自殺騒動の真相解明を祖父に依頼する。
第三章 泣いていた男
出勤直前、我妻のスマートフォンに刑事部長から着信があり、殺人事件の現場へ直接臨場するよう指示が下る。到着した現場アパートで、我妻は二課の同僚刑事の刺殺体を確認する。
楓は岩田とともに、四季が座長を務める小劇団「あおこーなー」の本格ミステリを観劇後、打ち上げに参加していたが、我妻から殺人事件の推理を祖父に依頼する電話を受ける。
翌日、祖父宅を城之内と訪問した我妻によれば、殺害された同僚刑事は、背中を刃物で刺され、仰向けで泣きながらステンレス製のビールジョッキを握り亡くなっていたという。
痴呆症の症状が少し見られた祖父であったが、我妻の話を聞くとそれが被害者のダイイング・メッセージと見抜き、楓に買いに行かせた煙草の紫煙をくゆらせ、真相を推理する。
第四章 消えた男、現れた男
10月、劇団の活動が軌道に乗るにつれ、四季は次第に付き合いが悪くなり、岩田のメールも既読スルーして連絡が取れなくなっていた。
岩田に頼まれた楓は、東北沢にある劇団の稽古場を訪ねるが、そこで目にした四季は、かつてとは別人のように刺々しい態度を見せる。
その後、楓は岩田に誘われ、美咲とともにY基地の航空ショーを訪れる。だがその会場で、楓はかつて自分をストーキングし逮捕されたはずの男・九鬼の姿を発見する。
九鬼は祖父の策にはまり、過去の犯罪を自供する音声データを証拠として提出されていたにもかかわらず、裁判では証拠として採用されず無罪となり釈放されていたのだ。
そして九鬼は楓に対し、「邪魔をする男は一人ずつ消す」と恫喝めいた電話をかけてくる。不安を覚えた楓は、連絡の取れない四季の身を案じ、美咲とともに彼のアパートを訪れる。
3階の四季が入居する部屋のカーテン越しに人影を確認し、楓は四季の在宅を確信するが、部屋にいる気配は感じるものの呼びかけに応答はない。
楓たちはアパートの敷地に居合わせた管理人から鍵を借りて部屋に入るが、中にいたのは仔猫だけで、四季の姿は忽然と消えていた。
翌日、楓は九鬼の脅威から身を守るため自宅に籠もり、我妻に相談し、九鬼の出現と恫喝、そして四季の失踪を祖父に伝えてもらい、四季失踪の謎の解明を依頼する。
終章 時間旅行をした男
夜分、楓のもとに美咲から相談の電話が入る。教え子の少女・すずが、学校で不可解な出来事に悩まされ、恐怖のあまり眠れず登校も拒むようになっているという。
美咲は楓の祖父が名探偵だとすずに教えると謎を解いてもらいと言い出したことから、すずを祖父に会わせてほしいとお願いされ、楓は美咲の頼みを快諾する。
クリスマス・イブの昼、美咲と碑文谷の祖父宅を訪れたすずは、学校で起きる数々の不思議な出来事を祖父に説明し、謎を解いてほしいとお願いする。
祖父は、すずの話に耳を傾けたうえで、彼女が嘘をついているわけではないと優しく諭し、その不可解な現象の裏にある真相を解き明かす。

登場人物

主要人物

楓(かえで)
本作の主人公で視点人物。小学校の教師。教育学部卒。栗色がかった髪。祖父の薫陶を受け、クラシカルな海外ミステリ好きのミステリマニアとして育つ。
暇を見つけては認知症を患う祖父の世話をするため弘明寺の自宅マンションから通い、日常生活で出会った謎や事件の話題を持ち込み、推理を依頼する。
祖父
楓の祖父。元小学校の校長。ミステリマニアで聡明な人物だがレビー小体型認知症(DLB)を患い、時折、幻視を現実として受け入れる。
しかし楓にフランスの煙草ゴロワーズをねだり、紫煙をくゆらせるとかつての切れを取り戻し、楓が持ち込む謎に対し、仮説という名の物語(推理)を紡ぎ出す。
岩田(いわた) / ガンちゃん
楓と同じ小学校に勤める同期の男性教師。天然パーマに骨太な体躯。小学校にあがった年のクリスマスに父親が失踪し天涯孤独となり、児童養護施設で育つ。
楓に好意を寄せており、同じく彼女に好意を寄せる四季とは「抜け駆けはしない」、「楓の気持ちを優先する」という二項目の不可侵条約を結んでいる。
四季(しき)
小劇団「あおこーなー」の座長。ワンレングスの男性劇団員。岩田のふたつ下の後輩で、彼とは高校野球部でバッテリーを組んでいた。
古典的な海外ミステリは評価していないものの、『刑事コロンボ』などの本格ミステリやヒッチコックのサスペンス映画の海外作品に造詣が深く、評価している。
美咲(みさき)
楓の大学教育学部時代からの友人。楓と同じく小学校教師で、楓の祖父が校長を務めていた小学校に勤務している。横浜出身。
見た目がタイプの我妻に一目ぼれする。自分の八重歯がお気に入りで、両親から歯の矯正を勧められても頑なに断り続けている。
我妻(あがつま)
K県警の刑事。長身の紳士然としたアラフォー男性。オールバックに彫りの深いハリウッド俳優を想起させる顔立ち。型は古いが仕立ての良いスーツを着こなす。
祖父の教え子で、小学5、6年の間に祖父が勧めたミステリやSFを50冊以上は読破した、楓と同じく祖父の薫陶を受けたミステリマニア。
小学生の頃の夢は名探偵になることであったが、刑事となった現在、楓に「名探偵というものは、現実にはいないものですよね」と呟く。
九鬼(くき)
楓や楓の母・香苗をストーキングしていた男。還暦過ぎ。楓に近づく目的で、かつて言語聴覚士「親バカさん」として祖父のリハビリをサポートしていた。
正体を見破った祖父の策にかかり、ストーキングや過去の犯罪を自供するボイスメモを録音され逮捕されるが、証拠として採用されず無罪となり、釈放後再び楓の前に現れる。

第一章 サンタクロースを見た男

女将
割烹居酒屋「はる乃」の女将[ch 1][ch 4]。ラフなジーンズ姿の、四十絡みの肌がきれいな明るい女性。店を一人で切り盛りする。
おかっぱさん
祖父を介護するヘルパーでチーフ格の女性[ch 1]。40代後半。真横にぱつんと髪を切り揃えており、祖父と楓から親愛の情を込め「おかっぱさん」と呼ばれる。

第二章 死を操る男

フランソワ
横浜出身のフリーの舞台俳優[ch 2]。25歳。長い金髪に整った顔立ちで気品ある仕草の日本人男性。脇役ながら多数の舞台や映画に出演していた。
しかしSNSの誹謗中傷に耐えかね、ファンミーティングで自殺をほのめかしたうえ、自宅で脱法ドラックを過剰摂取し搬送先の病院で亡くなる。
ふたり組の女子小学生
美咲の勤務する小学校のシュートカットの女生徒ふたり組[ch 2][ch 4]横浜中華街を歩きスマホでうろつき、美咲に気づいたが会釈せず去っていく。
その後、山下公園で歩きスマホをしているところを再び楓たちに目撃されるが、観光船から正午に鳴る汽笛に合わせ交互にジャンプを繰り返していた。
女子大生
フランソワ・ファンの女子大生[ch 2]。19歳。導眠剤の過剰摂取でフランソワの後追い自殺を図るが未遂に終わる。
自殺の前日に美容院に行って背中まであった長い髪をわざわざショートカットに整えている。
女子高生
フランソワ・ファンの女子高生[ch 2]。16歳。導眠剤の過剰摂取でフランソワの後追い自殺を図るが未遂に終わる。
発見時、布団の中で手に長い縄丸めて両手で握っていたが、縊死を選ばなかった。
城之内(じょうのうち)
K県警の刑事[ch 2][ch 3]。ダブルのスーツに黒縁眼鏡をかけた二重顎の20代後半の男性。帰国子女で5か国語に堪能。我妻から「ジョー」と呼ばれる。
我妻に同伴して碑文谷の祖父を訪ねてくるが、認知症の症状で傾眠状態の祖父を見て、彼が名探偵であることに懐疑的に接する。

第三章 泣いていた男

刑事部長
K県警の若い刑事部長[ch 3]。我妻が出勤前に発生した刺殺事件が彼のアパートの近くで発生したことから、直接臨場するよう電話連絡する。
猫田(ねこた)
K県警の捜査二課の刑事[ch 3]。34歳。我妻とは顔見知りで、我妻曰く、感情の起伏をけして見せない昔気質の刑事。
独身寮から引っ越したばかりのアパートで、キャンプ用品のステンレス製のビールジョッキを握り、涙を流した遺体として発見される。
アパートには、寝袋やプラスチック製の食器など趣味のソロキャンプの備品だけを持ち込んでいた。
夏米(なつめ)
祖父の亡妻[ch 3][ch 5]。クルマを運転中に女の子が飛び出したのを避け、電柱に激突し事故死している。享年54歳。

第四章 消えた男、現れた男

女性医師
楓と祖父が全幅の信頼を寄せている祖父のかかりつけ医[ch 4]。50過ぎ。患者の控室に医療をテーマとした小説をぎっちりと揃えている。
祖父の患うDLBは、考えようによっては幻視を見ることで美しい過去へと時間旅行ができると病気だと楓に説明する。
四季のファン
白いファーコートと赤いファーコートを着たふたり組の若い女性[ch 4]。ニ十歳前後。
東北沢の「あおこーなー」の稽古場に押しかけ、ふたりで選び抜いたというミステリの本を四季にプレゼントするが、いらないと拒否される。
管理人
四季が住む東北沢の3階建てアパートの管理人[ch 4]。白髪の男性。楓たちが訪問した際、箒で敷地内の落ち葉を掃除していた。
カーテンに人影を目撃し、部屋にいる気配を感じるが、施錠され入れない四季の部屋に入れてほしいと美咲から頼まれ、5分だけの約束で部屋の鍵を渡す。
CAT
四季の住むアパートの部屋にいた、薄茶色に黒い縞模様をうねらせた雄の仔猫[ch 4][ch 5][ch 6]

終章 時間旅行をした男

すず
美咲の教え子[ch 4][ch 5]。右と左で毛量が極端にちがうおさげの女の子。学校で不思議な出来事が起こり怖いと登校を拒否している。

作中に登場するミステリ作品

古典ミステリ作品を中心にSFやサスペンス映画などが作中で取り上げられており、各章のタイトルやストーリーの形式としてオマージュされている。

書誌情報

脚注

関連項目

外部リンク

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