国際信州学院大学
日本の架空の大学およびインターネット・ミーム
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国際信州学院大学(こくさいしんしゅうがくいんだいがく、英語: Shinshu University of International、〈略称: 国信大、SUI〉)は、日本の架空の私立大学である。2018年(平成30年)1月に日本の匿名掲示板である5ちゃんねる(旧: 2ちゃんねる)で生み出されたジョークであり、5ちゃんねる以外の日本のインターネットコミュニティでも急速に拡散されインターネット・ミームとなった。
『受験シーズンだし安価で架空の大学を作って受験生釣ろうぜwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
| 国際信州学院大学 Shinshu University of International | |
|---|---|
国際信州学院大学のロゴ[ネット 1] | |
ポスターに本校の写真として使用されたとみられるNTT幕張ビル(現: エム・ベイポイント幕張) | |
| 作者 | VIPPER(ニュー速VIP板の利用者) |
| ジャンル | インターネット・ミーム |
| 初登場 | 5ちゃんねるのスレッド 『受験シーズンだし安価で架空の大学を作って受験生釣ろうぜwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』 |
| モットー | 為せば成る、為さなくてもなるようにはなる |
| 大学の種別 | 私立大学 |
この架空の大学は、「5ちゃんねる」のニュー速VIP板のスレッド上で受験生を騙す(釣る)ことを狙って生み出された。急速に拡散されるにつれ、大学が架空であることを認識していないユーザーが増えたことで最終的に「うどん屋で大学の教職員が無断キャンセルを行った」というフェイクニュースがSNS上で拡散される騒動が発生した。また、ニュースなどにも乗る騒動も同時に生じた。
大学の設定は指定の書き込み番号に書かれた内容で決定する「安価」の方式で募集され、大学名、偏差値、大学所在地、学部の数、そして大学の歴史などが決定された。大学の所在地は長野県安雲野市三丁目長坂番地(架空の地名であり、安雲野市は実在しないが、長野県に安曇野市は実在する)の安雲野キャンパスとされている。設定は至って普通で違和感を感じさせないものもあれば、インターネットの知識がない層でも冗談であることが明確に理解できるものに二分されており、受験生を試す内容となっている。信州やフランスに関係する設定が数多くあるが、中には5ちゃんねるやニュース速VIP板、そして2ちゃんねるの創設者である西村博之などに由来し、西村がフランスに在住していることに由来する。
起源
スレッドの作成
2018年1月27日、ニュー速VIP板にスレッド『受験シーズンだし安価で架空の大学を作って受験生釣ろうぜwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww[ネット 2]』が作成され[注釈 1]、スレッドの作成者によって前述の安価方式で大学の設定が決定していった。スレッドにはニュー速VIP板の利用者(通称: VIPPER)によって1日で1000件以上のレスが書き込まれ、2つ目のスレッドも同日に約900件の書き込みが行われた。また、なんでも実況J板では『VIPのこのスレ荒らすんご[ネット 3]』という妨害を目的としたスレッドも作成されたが、失敗に終わり、このスレッドの作成者を名乗る人物は後に大学のスレッド内で謝罪した。
創作物とコンテンツの公開
設定が決定される過程でポスターや校章の案がImgurにアップロードされた[ネット 4]。
その後、滋賀県に在住しているという20代の大学生によって大学のホームページ[注釈 2]が作成された[1]。それに続き大学の応援団、図書館[2]、YouTubeチャンネル、Facebookアカウント、LINEアカウント、学生生協のブログ、サークル・部活動・教員のSNSアカウント、インターネット出願システム、ゼミナール、そしてMediaWikiを使用したウィキなども公開された[3]。FC2ブログに「国際信州学院大学マート」、Twitter(現: X)に公式アカウントも開設された。「コンピューター同好会(会長)」、「キンボール同好会[4]」、そして「フラッパー君(国際信州学院大学マスコットキャラクター)」など公式と思わせるTwitterアカウントも開設された。同校出身者という設定の架空の人物であり、その人物が代表を務める会社のホームページまで作成された[ネット 5][5]。これらは全て架空のものである。
FC2WIKIではこれらを始めとした制作物のとそれの情報共有や一覧を掲載するウィキ「VIPは永久に不滅[ネット 6]」が開設されたほか、文章や動画などの資料をアップロードする「国信大アップローダー[ネット 7]」も開設された。
大学ホームページの内容
前述のホームページにはスレッドで決定された設定のほかに、ホームページ作者自身が撮影した韓国の大学の正門を加工した画像や大学のスローガン「Les choses sur cettepage sont fictives[注釈 3](日本語訳: このページ上のことはフィクションです)」「為せば成る、為さなくてもなるようにはなる」、校歌「Amour[注釈 3]」[ネット 8]、過去問題[ネット 9]、データを書き換えたオープンストリートマップ[ネット 10]などを掲載した[1]。
また、ページの最下部にある著作権表記のしたには「本学の実在についてはこちらをご覧ください」という文章があり、下線部のハイパーリンクにアクセスすると「釣られ乙!」というページが表示される。このページには大学が実在せずホームページもジョークサイトであることが記されている[ネット 11]。
SNSでの拡散
コンピュータ同好会を名乗るTwitterアカウントが2018年4月15日、Twitterで就職活動の学歴フィルターに関してツイートしたことを発端に拡散され、「国際信州学院大学あるのか、初めて知った」、「ていうか国際信州学院大学ってのがあるんだ」、そして「長野出身なのに国際信州学院大学とか今の今まで聞いたことなかった」といった反応がインターネット上で散見された[6]。
騒動の発生
無断キャンセルのツイート
2018年4月、存在しないうどん屋のTwitterアカウント「うどんや
無断キャンセルに合いました。50人で貸切の予約で、料理を準備してお待ちしてましたが、予約時問過きても見えず、此方から電話するとキャンセルとの返事。
キャンセル料を請求したら、そんな説明は受けていないと逆ギレ。
国際信州学院大学の教職員の皆さん、二度と来ないでください。
#拡散希望
(座席の写真と大量の料理の写真) — うどんや 蛞蝓亭、2018年5月13日のツイート
上記のように50人分の予約を国信大の教職員に無断キャンセルされたという旨のツイートを発信した。このツイートには、「国信生」を名乗るアカウントが「学生ですが、先生方に代わって謝ります」という返信(リツイート)や「信州メディア社会部」を名乗る人物がリツイートで取材依頼の申請を行っていた[3]。
ツイートに対するユーザーの反応
虚偽のツイートに対して、「人に教える立場の人間が何をやっているんだ 会議室の予約じゃねーんだぞと言いたい」、「教職員の無断キャンセル。今の教職員はどこかネジが外れてるとしか思えない」、「こんな事絶対に許すな。ましてや私立でも教育者の集団、人に物事を教える立場の人が約束を平気で破る行為を許したら、また別の場所でも被害が出る」、そして「食べ物の廃棄の無駄もそうですが、作った人の心のことを考えると胸が痛いです」[9]と大学への批判やうどん店が大学名を公表したことに対して、「大学から名誉毀損で訴えられるかもしれないから気をつけてね」とうどん店への非難の声もあった。中には「残念でならない」「気持ちがわかります」、「ひどすぎる」、「気の毒」と同情したり、そして「食べに行きましょうか?もちろんお代も払います」と申し出るユーザーもいたが、蛞蝓亭のアカウントは、「お気遣いありがとうございます。時間が経つとすぐに傷んでしまうので、泣く泣く廃棄しました(T_T) また今度の機会に来ていただけると嬉しいです。。。」などと断っていた[8][3][7]。Twitter上では5月14日までに3万4000件以上拡散された他、「国際信州学院大学」がトレンド入りした[10]。
最終的に大学、うどん屋の店舗、無断キャンセル騒動の存在そのものがすべて嘘であるという真相に気づいたネットユーザーが、「釣り」であると明らかにした[8]。
騒動後
メディアによる報道と検証
実在しない大学を発端とした偽情報の拡散は、媒体を問わず様々なメディアで報道された。それに対し国信大ホームページは騒動については「本学教職員の不祥事についてのお詫び[ネット 12]」としてPDFを掲載した[11]が、大学の実在については「本学が架空であるというインターネット上の情報について[ネット 13]」という声明を掲載し、報道内容を否定した[8]。
2018年6月に日テレ系列のNNNがホームページの制作者である20代の大学生に取材を行った[1]。大学生は「最初は受験生を対象に、少しだけひっかけようとしたジョークであった」、「だます目的はなかった」、「それだけ多くの人に楽しんでもらえたかなというのが正直な気持ち」、そして「拡散するときには、もうちょっと調べて頂くことも必要じゃないかと思う」と取材に回答した[1]。
2018年7月にはソシオコーポレーションメディア事業部によって運営される『ロケットニュース24』の記者が、大学の存在を確認するため実際に安曇野市まで取材に赴いた。大糸線の安曇追分駅で降車し徒歩で大学に向かうというホームページに掲載されたアクセスでの確認を行ったが、ただの畑が広がっていた。「国信通り」とされる道も砂利道であった[12]。
騒動後の拡散と創作
騒動後もインターネット・ミームとしてその名を轟かせており、大学の拡散は継続されている。騒動が収束した2026年現在も公式サイト、国際信州学院大学マートのブログ、および国際信州学院大学公式Xアカウントは運用されているが、「うどんや 蛞蝓亭」はXアカウントが削除されている。大学の電話番号も運用されていたが、2025年2月末で終了した[13]。
2026年に文部科学省が公表したコー・イノベーション大学の設置認可書類「学生の確保の見通し及び申請者としての取組状況(資料)[ネット 14]」のWebを使用した高校生アンケートの結果を示すページに「私立国際信州学院大学付属高校」という学校名が出現した[14]。同年、国信大公式ホームページにおいて、「大正8年度国際信州学院大学一般選抜(予備試験)における出題ミスについて[ネット 15]」というPDFが公開された。スポーツニッポン新聞社の『スポニチアネックス』がこのPDFを掲載したが、後に削除された[15]。
騒動に対する反応
ITのジャーナリストである井上トシユキは「2ちゃんねるには古くから同じようなネタがあります。ネタにしている側からすれば、ひっかかる人は『情弱』くらいの感覚なのではないでしょうか。そもそも飲食店の名前に『なめくじ』を使うなんて普通はありえませんから、その時点で冗談だと気付いてほしいというところでしょう」と騙されたユーザーと2ちゃんねるのユーザーのネットリテラシーに差があると指摘した[4]。
大学のジャーナリストである石渡嶺司は国信大公式サイトを閲覧し、「ムダにレベルが高く、思わず釣られそうになりました」、「入試広報がうまく行かない大学、採用がうまく行かない中小企業、ともに「1人で全部やるのは無理」という愚痴があまりにも先行しています。私はそうした現場を今までに数多く取材してきました。その苦労もわかるのですが、大きな課題に対してチームであたることで解決する方がよほど建設的です。国際信州学院大学サイトはネタ感もさることながら、現実の大学や企業のアンチテーゼとしても注目していいのではないでしょうか」と語った[16]。
弁護士の清水陽平は「デマではあるものの、まったくの架空のものであり、誰の名誉も毀損していないですし、誰の業務を妨害するものでもありません。したがって、違法性があるということはありません。この件では、デマに踊らされた人がかなり多くいたようですが、流れてきた情報に飛びついてしまい、何の確認もしなかったということが原因であろうと思います。そのため、流れてきた情報を鵜呑みにせず、きちんと情報を検討することが必要でしょう」と違法性はないとし、騙されたユーザーが情報の確認を怠ったことが騒動の原因としている[17]。
一般社団法人のマスコミ倫理懇談会全国協議会は騒動について「愉快犯的」としている[18]。
『琉球新報』では「『被害者はいないから良かったね』と話を終わらせるのは、あまりにも短絡的です。間違った情報が広がると、回り回って誰かを苦しめる可能性がありますし、今回は作り話でしたが、トラブル事案を片方の言い分「だけ」聞いて拡散させることも本来はかなり危険なことなのです」と批判した。また被害者が存在したかについては「今回の炎上に登場する「うどんや」も「大学」も架空のものだったため、一見すると被害者はいないように感じます。しかしながら、今回の事件を一度でも信じた人の中には「大学職員」の人たちへの何となくのイメージの低下、あるいは「信州」という地域に対する「トラブルの起こる町」という刷り込みが入る可能性があります」と大学職員や信州のイメージ低下に繋がると指摘する記事を掲載した[19]。
論争
架空の店舗の無断キャンセル問題が拡散・炎上したこの騒動について、インターネット上では「作り込みがすごい」、「面白い」、「秀逸な釣りネタ」などと評価する声がある一方、「信じた人はどうなる」、「教職員の印象が悪くなる」、「人を釣って面白いのか?」、「実際にドタキャンに苦しんでいる飲食店のことを思うと笑えない」、そして「フェイクニュースで人をだますことは簡単だと証明する事例だ」などと批判や心配の声も出ている[8][5]。「国際信州学院大学のやつ、あれだけ作り込めばリテラシーない人は簡単に騙せるってことでしょ」と、インターネット上の情報を取捨選択する能力の重要性を指摘する声も上がっている[20]。