太陽サロス126
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初期(1179年 - 1305年)
1179年3月10日、南極大陸の縁で発生したごくわずかな部分日食(食分0.0536)で系列は始まった。その後、約126年間にわたり8回の部分日食が南極地方で発生し、徐々に食分を増していった。
金環日食期(1323年 - 1810年)
1323年6月4日、ついに月の本影(正確には偽本影)が地球に到達し、系列初の中心食である金環日食が発生した。この金環食期は約487年間にわたり、28回続いた。この期間中、日食の経路は南半球から赤道を越えて北半球へと徐々に移動した。系列最長の金環継続時間である6分30秒を記録したのは、1359年6月26日の日食であった。
移行期(1828年 - 1864年)
1828年4月14日、月の見かけの大きさが地球上の場所によっては太陽を完全に隠すのに十分な大きさとなり、系列初の金環皆既日食が発生した。この移行期には3回の金環皆既日食が観測された。
皆既日食期(1882年 - 2044年)
1882年5月17日、系列初の皆既日食が発生した[2]。この皆既食期は10回の日食で構成される。この期間中、日食の経路は北半球の中緯度から高緯度へと移動する。系列最長の皆既継続時間である2分36秒は、1972年7月10日の日食で記録された。
終期(2062年 - 2459年)
2044年8月23日の日食を最後に、月の本影は地球から外れ、2062年9月3日からは再び部分日食の期間に入る。その後、23回の部分日食が北極地方で発生し、食分を減らしながら、2459年5月3日に北極海の縁で発生する僅かな部分日食をもって、太陽サロス126の長い歴史は幕を閉じる。
特筆すべき日食
このサロス周期には、天文学的に重要、あるいは社会的に注目された日食がいくつか含まれている。
1882年5月17日:皆既日食と彗星の発見
1882年5月17日の日食は、科学史における予期せぬ発見の舞台となった。エジプトに集結した観測隊は、最大1分50秒の皆既食の間に、太陽コロナの撮影を試みた[3]。その際、太陽の縁のすぐ近くに明るい光条が写っているのが発見された。これは偶然にも皆既食と同時に太陽に最接近していた未知のクロイツ群彗星であり、のちに当時のエジプト総督にちなんでテウフィーク彗星と命名された。この出来事は、皆既食が太陽に極めて近い天体を観測するまたとない機会であることを示す象徴的な事例となった。
この日食の皆既帯は、日本(明治15年)においてトカラ列島の宝島と上ノ根島の間を通過し、この海域では日没帯食となった。
1918年6月8日:アメリカ大陸横断日食
1918年6月8日の日食は、アメリカ合衆国を西海岸から東海岸まで横断する皆既日食であった。皆既帯はワシントン州からフロリダ州までを通過し、これは2017年8月21日の日食が起こるまで、アメリカ本土を横断した最後の皆既日食であった[4]。この日食の経路は2017年のものと類似しており、アメリカの天文学史において比較対象としてしばしば言及される。
日本(大正7年)では北大東島および伊豆諸島の鳥島で皆既食となった。
1936年6月19日:北海道オホーツク海岸で日食
1936年6月19日の日食は北海道のオホーツク海岸で観測することができた。日本では昭和11年にあたる。この皆既日食の観測のため幌延村(現幌別町)に滞在していた長野県上諏訪町(現在の諏訪市)のアマチュア天文家、五味一明は、前日の6月18日20時40分頃、村民に星座解説をしている際に、偶然ケフェウス座デルタ星の近くに新星(とかげ座CP星)を発見した。この新星は第一発見者の五味の名前を取って、「五味新星」と呼ばれた。
この日食はサロス126系列の中で日本の領土で観測された3回目かつ最後の中心食であった。
1972年7月10日:系列最長の皆既日食
1972年7月10日の日食は、サロス126中で最も皆既継続時間が長く、2分36秒を記録した。皆既帯はシベリア北東部、アラスカ、カナダ北部を通過し、多くの科学者や天文愛好家が観測のために現地へ赴いた[5]。特にカナダのプリンスエドワードアイランド州は主要な観測地の一つとなり、多くの観測隊が訪れた[6]。この日食は、カーリー・サイモンのヒット曲「うつろな愛(You're So Vain)」の歌詞で言及されたこともでも知られ、天文学の枠を超えて大衆文化にもその名を刻んだ。
2008年8月1日:本周期における21世紀最初の日食
2008年8月1日の日食は21世紀に入ってからサロス126で発生した最初の皆既日食であった。皆既帯はカナダ北部からグリーンランド、北極海を横断し、ロシア中央部、モンゴル、そして中華人民共和国へと至る長大な経路をたどった[7]。ロシアのノヴォシビルスクは皆既帯の中心に位置する最大級の都市であり、世界中から約1万人の観光客がこの天体ショーを見るために集まった。
将来の日食:2026年と2044年
サロス126は、今後2回の皆既日食を残している。
2026年8月12日
2026年8月12日の日食は、グリーンランド、アイスランド西部、スペインで皆既食となる[8]。ヨーロッパ大陸で観測できる皆既日食としては1999年以来となり、大きな注目を集めている[9]。また、アイスランドで皆既日食が観測されるのは1954年6月30日の日食以来となる。
2044年8月23日
2044年8月23日の日食は、サロス126における最後の皆既日食である。皆既帯はグリーンランドからカナダを横断し、アメリカ合衆国のモンタナ州とノースダコタ州の一部を通過する[10]。これは2017年と2024年の日食の次に、アメリカ本土で観測できる最初の皆既日食となるため、早くから期待が寄せられている[11]。
脚注
- ↑ “Panorama of Solar Eclipses of Saros 126 - EclipseWise”. 2025年9月10日閲覧。
- ↑ “NASA - Catalog of Solar Eclipses of Saros 126”. 2025年9月10日閲覧。
- ↑ “Comet of the Week: Tewfik X/1882 K1 - RocketSTEM”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “20th century - Great American Eclipse”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “Total Solar Eclipse of 1972 Jul 10 - EclipseWise”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “Historic PEI Solar Eclipses Astronomy @ UPEI Physics”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “August 1, 2008 Total Solar Eclipse Umbral and Pemumbral Paths - NASA SVS”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “Missed this weekend's eclipse? Here's when the next ones are”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “Next Year a Solar Eclipse Will Engulf Europe—How and Where to See It - Newsweek”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “2044 Total Solar Eclipse Maps”. 2025年9月11日閲覧。
- ↑ “Eclipses - NASA Science”. 2025年9月11日閲覧。