新生児遺棄
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新生児遺棄(しんせいじいき)は、出産後間もない新生児を公園やトイレなどに放置する行動を示す。母による殺害や死産の場合では傷害致死や保護責任者遺棄致死、死体遺棄となり、児童虐待研究では「嬰児殺」とも呼ばれる。日本では児童虐待死亡事例に0歳児の占める割合が高い[1]。
背景には若年妊娠、望まぬ妊娠と性教育の不足、避妊や中絶手段の到達への困難さがある一方、遺棄した女性だけが批判される構造となっている。諸外国で対応されている匿名出産も国内では産院の自主的活動による限定施設のみで実施されているとの指摘がある[2]。リプロダクティブ・ヘルス・ライツの問題がある。ユネスコとWHOが中心となって作成した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」も日本においては教育に導入されておらず日本弁護士連合会は同基準に準拠した包括的性教育を学習指導要領に盛り込むよう求める声明を2025年3月に行った[3]。これらの事件には学習指導要領の縛りによる受精の経過を扱わない「歯止め規程」などの性教育不備の指摘意見もある[4]。産婦人科医は、子どもを双方が望んでいないにも関わらず避妊に応じない男性は珍しくないと語っている[5]。また親に知られるのを過度に恐れ、孤立出産や新生児殺害に至る事件もあるという[6]。2022年には、神奈川県だけで4人の母親が乳児の死体遺棄容疑で逮捕されており、孤立出産するような女性への支援体制強化が必要とされている[7]。2026年3月時点でも、15歳の女子中学生が同犯罪により逮捕される事件が発生している[8]。
死亡例
日本では児童虐待死亡事例に0歳児の占める割合が高い[1]。長年にわたり、虐待死する子どもの半数以上が0歳児である[9]。 なお、児童虐待の分析を行う子どもの虹情報研修センターの報告書では、便宜上0歳児の殺害及び虐待死の全体を広義の「嬰児殺」と呼び、その中で、特に生後24時間以内の殺害を「新生児殺」と呼ぶとしている[10]。また、法律・警察の用語では生後1年未満の殺害を「嬰児殺」と言うとしている[11]。
2025年10月現在、最新の統計では2023年で9人、この20年で185人の赤ちゃんが生後0日で亡くなったと報道されている[12]。2023年度には心中を除き虐待死は全国で48人だった。生後1か月未満の新生児は18人、うち15人は生後すぐに遺棄され死亡している[13]この15人は生後すぐに遺棄され死亡しているが、その母は予期せぬ妊娠などで孤立した状況で出産し、周囲に相談できず遺棄になったという孤立出産問題が存在する。また、甲斐市社会福祉法人子育ち・発達の里の「妊娠そうっとSOS山梨」の支援相談には5年間で252人から相談があったが、その相談者の3割を高校生や中学生などの17歳以下が最も多く占めている若年妊娠問題がある[14]。
トイレでの産み落とし遺棄事件も複数各地で起こっている[15][16]。
ごみ集積所でも死体遺棄があり、2010年に東京都世田谷区の高3女子高校生(18)が逮捕され[17]、2024年5月横浜市でも男児の遺体が見つかっている[18]。また自宅出産して遺体を押し入れなどに隠すこともある[19]。複数の乳児遺体が発見される場合もあり同居家族は知らなかったと証言する例もある[20]。
2025年7月には、自宅出産し遺体をごみ袋に入れて玄関付近に遺棄したとして逮捕された福岡市の無職少女(17)は、「誰かに見つけて供養してもらいたかった」と供述している[21]。
2024年12月には沖縄市の飲食店勤務の女性(30)が出産後の嬰児死体を自宅敷地内で遺棄し、妊娠に気づかなかった同居家族により通報の結果逮捕された[22]。同年4月にも青森県弘前市の自宅で子を殺害し北海道北斗市の実家の花壇に遺体を埋めたとして女性(25)が逮捕された[23]。公判では未成年時にも中3で中絶、高1で孤立出産の末に新生児遺棄事件の少年事件を起こしていたことが判明し、懲役6年の実刑判決となった[24][25]。
公園で死体を埋める事件も2025年8月に23歳母により大阪府で、2019年11月に23歳母により東京都で、2022年11月に20歳母により横浜市などで起こっている。いずれも職業はアルバイトであった[26][27][28]。中には県立高校生の男女が共謀して平塚市の空き地に埋めたケースもあった[29]。
2025年には石狩市でアルバイト就労の母(17)が自宅出産し、嬰児遺体をバックに詰め他人の敷地に放置した容疑で逮捕された。同居家族は気づかなかったという[30]。同年10月、各務原市の空き地にへその緒が付いた女児の死体を遺棄したとしてアルバイトの女(19)が逮捕された[31]。
殺害
2025年9月には、2022年当時に同居女性が自宅出産した後、施設に子どもを預けることを提案し浴室で殺害し遺体をアパートのごみ集積所に遺棄した容疑の男(25)の公判が群馬県前橋地裁であり事実と認めている[32]。
孤立出産、未必の故意、遺棄
2016年栃木県では駅前トイレで出産後に駐車場に嬰児を放置し殺害の疑いで女子高校生(16)が逮捕された。本人は妊娠や出産を知られたくなかったと言う[33]。
2022年には、名古屋市の繁華街のホテルに乳児の遺体を遺棄したとして、愛知県警は、無職の男(21)と女(20)を死体遺棄の疑いで逮捕した。両者は子の両親と認めお金が無く困ったと語った[34]。2025年4月には、長野県上田市で、女子高校生(16)が自宅で赤ちゃんの遺体を遺棄したとして逮捕された。死亡の可能性を認識していたとして後日殺人容疑でも再逮捕されている[35]。
孤立出産、殺害
なお、遺棄ではないが、高校生らによる孤立出産後の嬰児殺害事件も複数起こっている。2021年には、栃木県の商業施設内トイレで女子高校生(17)が出産後に子をはさみで殺害疑いで逮捕された[36]。2025年8月には、アルバイト女性(18)と建設作業員の男性(19)が出生間もない体重約4200グラムの女の赤ちゃんをゴミ袋に入れて口を結ぶなどし、窒息させて殺害疑いで逮捕された[37]。
2025年9月には東京都豊島区で勤務先のガールズバーのトイレで出産した従業員の女性(22)が子を首を絞めて殺害した疑いで逮捕された[38]。
孤立出産、殺害、遺棄
2022年4月、川崎市マンションのごみ置き場で袋詰めの嬰児遺体が見つかった。タイ人の両親を持つ境界知能の女性(24)が同居男性(24)に妊娠を相談できず、風呂場で孤立出産し水死させたという。男性は自分にも責任があると証言し、女は執行猶予判決となり後に結婚した[39]。
生存例
2013年8月、へその緒がついた赤ちゃんが、タオルに包まれゴミ置き場に置かれており、保護責任者遺棄容疑で中学3年生の女の子が逮捕された[40]。2024年6月に女性(22)は、東京都練馬区の同居男性宅で出産した赤ちゃんを近隣住宅ゴミ箱に置き去りにして殺害した疑いで逮捕された。子は偶然発見され保護され、女は新生児遺棄の懲役を検索していたと公判で明らかにされた[41][42][43][44][45]。2025年8月、那覇市で植え込みに乳児が置き去りにされ保護責任者遺棄容疑で母親(33)が逮捕された[46]。
歴史
2020年代にも同事件が起こっている[47]。一方、現代では、生存した状態で「赤ちゃんポスト」とも証される2007年に開設された「こうのとりのゆりかご」や乳児保護施設に預けられることもある。
埼玉医科大学の吉村公一らは1964年からの13年間に東京23区内で発覚した729例の「嬰児変死」について法医学的に分析を行い、嬰児殺が減少する推移も観察されている[48]。
複数の国際的研究および日本国内の報告では、望まない・計画外の妊娠が妊娠中や産後の自殺念慮や自殺行動のリスク要因となり得ることが示されている。国際的な系統的レビューは、若年や精神疾患の既往を持つ女性において妊産期の自殺リスクが相対的に高いと指摘している[49]。また日本でも、東京23区の調査により2005年から2014年の間に妊娠中および産後1年以内の女性による自殺が63件確認されており、妊産婦死亡の主要因の一つとして自殺が位置付けられている[50][51]。国内では、2022年から2024年の間で、妊娠中または産後1年以内に自殺で亡くなった妊産婦は162人であった。主要因として、望まない妊娠やパートナーとの間の関係性が精神的に影響を与えたと分析されている[52]。
背景
妊婦を取り巻く環境と本人の特性
妊婦について、同居家族が無関心、同居家族への相談ができない、妊娠・出産についての知識不足や相談相手がおらず、相談先を知らないといった問題を抱えるケースが多いと指摘されている[1]。こうのとりのゆりかごを運営する熊本市の慈恵病院の蓮田院長は、「内密出産」利用や産んだ子を殺害や遺棄する女性には、妊娠や出産を頑なに隠す共通点があり、虐待などで親子関係が悪く「孤立度」が高いと話す。現状では子どもの「出生を知る権利」より命が優先されるとしている[53]。
望まない妊娠の背景には、知的障害・発達障害などによる性知識の不足と被害を訴えられない状況によって起こるケースもあり、国連からは障害者への性教育を巡っては、改善を求める勧告が出されている[54]。また、DVやレイプによる妊娠もあり、中には慈恵病院に内密出産相談をしていたが自死に至るケースもあった[55]。
性風俗で働き、客から本番行為を強要され妊娠に至ったケースもある[56]。
性教育の不備
性交と妊娠の関係が結びつかない子どももおり、人権の観点からの性教育の実施が予期しない妊娠防止と性被害の対策に必要と支援活動者は取材で語っている[57]。2021年12月、千葉県のグループホームで知的障害の女性(25)が妊娠の知識無く出産し男児を窓から投げ捨て死亡させた[58]。2019年12月には佐賀県で知的障害者の女性(25)が自宅で女児出産後、遺体を放置している[59]。学校教育では2023年度から「生命の安全教育」が始まったが、1998年の学習指導要領に記載されている妊娠の過程を取り扱わない「歯止め規定」は存続している[60]。
孤立妊婦の支援を行う団体からは、「若年妊娠」を虐待死の原因にしないために、世界の性教育のスタンダードであるユネスコの「国際セクシャリティガイダンス」に沿った性教育の実施を行うべきとの指摘がある[61]。
避妊方法の不確実性と緊急避妊薬入手困難
日本では、避妊の方法は男性のコンドームが75%で女性が使う経口避妊薬は6%にとどまり、日本では男性が行う避妊方法に偏っている[62]。一般的な使用でのコンドームの妊娠率(失敗率)は約15%と言われる一方、ピルは正しい服用で99.7%だが日本では普及率が諸外国に比べ低い[63]。
中絶では無く受精を起こさせない薬である緊急避妊薬が処方された女性1414人に処方理由を聞いたところ、「コンドームが破れた・外れた」が最多であり、次いで「コンドームをつけなかった」という理由が多かった[64]。そして、性行為中に相手の同意を得ずにコンドームを外す「ステルシング」は、イングランドとウェールズでレイプに分類され有罪判決があるが、日本では性行為に同意している場合にはそれ自体では罪に問えない問題がある[65]。 また、緊急避妊薬OTC化に関する医師に対するアンケートでは、回答者の90%が処方経験がありその理由(複数回答)の95.5%がコンドームの脱落・破損だった。同意のない性交が36.1%、性暴力32.1%も含まれていた[66]。
諸外国で普及している様々な避妊方法である、妊娠を防ぐホルモンが含まれたスティックを皮下に埋め込む「避妊インプラント」、腹部などに貼るシール状の「避妊パッチ」、膣内に挿入する避妊リング、避妊注射なども日本では承認されていない[67]。
ピルも月経困難症などに効果があることが知られ、かつオンライン診療開始により、利用者が倍増し2022年度に6.1%の普及率となったが、2006年カナダでは4割、2019年アメリカでは1割の普及率となっており諸外国に比べ低い[68]。
2025年8月、あすか製薬の緊急避妊薬「ノルレボ」は、処方箋がなくても薬局などで購入できる「スイッチOTC医薬品」として厚生労働省に2024年6月に承認申請しているが承認時期未定となっていた[69]が、2025年8月27日自民党厚生労働部会の薬事に関する小委員会で同議題が厚労省による説明の元審議され[70]、同日に厚生労働省の薬事審議会 要指導・一般用医薬品部会の開催が公表となり[71]、29日夜開催の場で処方箋なしの薬局販売が方針を了承された。薬剤師の面前で服用が条件で、年齢制限や、親の同意は不要とされる。パブリックコメントを経て全国販売の見込みとなった[72][73]。なお、一方で勃起不全(ED)治療薬「シアリス」も同月18日に同会で市販化が了承された。海外では英国など一部に限られる[74]。本剤の市販化にあたっては、教師から勃起薬バイアグラを使用した性暴力を受けてきた女性に続く福田和子 (社会活動家)へのインタビューで、バイアグラが数ヶ月で承認されたことに比較して他国から40年近く遅れ、最後は未承認国が北朝鮮と日本だけになりようやく承認された低用量ピルの承認の歴史をFRaUで特集している[75]。
2026年2月より緊急避妊薬は薬剤師の面前内服を条件として、市販化された[76]。
中絶のハードル
日本においては、母体保護法により中絶可能週数は22週までで、中絶の同意書には配偶者の同意者が必要である。未婚者の場合でもパートナーの合意を求める病院があり男性も交際相手の女性の中絶同意書に署名する責任がある。しかしこの制度は性暴行の加害者にも同意を求めなくては手術を行うことができない現状に繋がっているため弁護士から批判を浴びていた[77]。
愛知県では連絡が取れなくなった胎児の父の中絶同意署名を求めるうちに中絶可能週数を経過し、公園のトイレで出産した21歳女性が子供を適切な医療措置を行わず死亡させ遺体をビニール袋に入れて遺棄した事件があり、女性が懲役3年、執行猶予5年の判決となった[78]。
中絶手術を受けるのに配偶者の同意義務があるのは2022年時点で世界でも11カ国のみであり、日本以外はシリア、イエメン、サウジアラビア、クウェート、赤道ギニア、アラブ首長国連邦、台湾、インドネシア、トルコ、モロッコとなっている。韓国は同意義務を2020年に廃止した[79]。
カナダの非営利団体である「Women on Web」(WoW、ウィメン・オン・ウェブ)は、世界各地に中絶薬や緊急避妊薬を送付している。しかし日本においては2023年に国内で中絶薬であるメフィーゴパックが承認された。これにより代替薬が国内に存在することで他社製品含め、ミフェプリストンを含有する経口中絶薬については原則として医師による個人輸入も認められなくなったと厚生労働省の公式サイトに掲載されている。メフィーゴパックは、登録された指定医師の確認の下で使用するため、指定医師の指示に従って投与が必須となっている[80]。
戸籍に出産の事実が掲載されることの忌避
特別養子縁組や内密出産を望む若い女性たちには、戸籍に子ども出生の事実が記載されることで自分や相手の「戸籍が汚れる」との感覚があるとの指摘がある[81]。
父親の当事者意識の低さ
妊婦支援団体には、妊娠に悩む女性から妊娠を告げたら交際相手から逃げられたなど相手の行動で悩む相談が寄せられており、当事者意識の低さの指摘がある[82]。また、雨宮処凛は妊娠させた男性側の責任が問われない問題点を指摘している[83]。公判の精神鑑定を行う精神科医の興野康也は、父親が責任を放棄できてしまうのも大きな問題だと語っている[84]。
アメリカでニューヨークタイムズベストセラーとなった、人気ブロガー、ガブリエル・ブレアによる「射精責任」は2023年に日本でも出版され大きな反響を呼んだ。同書で望まない妊娠は、男性が無責任に射精をした場合にのみ起きると説き、わずかな時間の快楽のために女性の人生を危険に晒す男性の行為は道ばたのタンポポくらいにありふれていると表現されている[85]。これに対しジェンダー学の岡山大学の齋藤圭介准教授は、望まない妊娠の相手はどこに行ったのか、避妊に協力しない男の存在に焦点を当てたことに意義があると評した[86]。本を読んだ一般男性へのインタビューでは、「なぜ避妊しないのか」という問いに対し、受け入れて欲しい、対等ではない関係がそもそもある、射精に「責任」なんて考えてことが無いなどの意見がでた[87]。
なお、望まぬ妊娠の背景には父親などの家族による性虐待が原因である場合も存在し、実例として、父と夫婦同然の生活を強いられた女性は父の子を複数出産し最後は父から逃れるため殺害した尊属殺重罰規定違憲判決がある。
アプリでの出会いが増加する中、妊娠や結婚式挙式後に男性の「偽装独身」が判明するケースもあり、独身と偽っても金品搾取がなければ刑事罰はなく、示談金の相場は低額となり女性の泣き寝入りの実態も報道されている[88]。予備校教師の偽装独身による交際の果ての医学生女性の自殺[89]や、婚活パーティで知り合った既婚男性によって、妊娠した交際女性が自殺のように偽装された殺害事件も起こっている[90]。
外国人労働者
技能実習生の現場では介護利用者から体を触られたり、雇用主から性行為を強要されるなどの性暴力被害が発生している[91]。
かつ、妊娠出産すると帰国されられるとの恐れから妊娠を隠すことがあり、ベトナム人技能実習生孤立出産事件では死産の子を室内に安置していたところ、死体遺棄したとの容疑で逮捕・起訴された事件も起こっている。そもそも母国では経口避妊薬、子宮内に入れる器具「IUD」手術や注射、腕に入れる避妊インプラントなど女性が選択できる避妊選択肢が多様にある一方、日本国内では男性用コンドーム一択である問題も指摘されている[92]。
死産だった乳児を河川敷に遺棄し、2023年6月に逮捕されたベトナム人の父親もいる。日本の埋葬手続きなどは後に知ったと取材に答えている[93]。
2024年2月には、介護施設で出産後に子を殺害した疑いで逮捕されたインドネシア国籍の19歳の技能実習生の母親は、刑事罰が適切として家裁から検察に送検された[94]。同月、ベトナム国籍の技能実習生の技能実習生の母親(20)は、死産した男の赤ちゃんの遺体をビニール袋に入れ、ごみ箱に遺棄したとして、逮捕起訴された。監理団体などが何度も繰り返し「妊娠したら帰国させる」と聞いたという。しかしそれを口外しないようにとも指示されたと交際相手が証言した[95]。本件では福岡高裁は執行猶予付き懲役刑の1審を指支持し、控訴を棄却した[96]。
刑罰
死亡させる意図が無かった場合には、刑法第205条傷害致死や刑法第219条保護責任者遺棄致死が適用になる。 また、死体を公園などに埋めたり放置した際には刑法第190条死体遺棄が適用される。
しかしベトナム人技能実習生孤立出産事件では最終的に無罪になったが、前述のとおり室内で死体を安置していたが遺棄に問われたことがあった。
対策
日本
NPO法人フローレンスは、2023年から京都にある第二足立病院を生活困窮者の出産費用を全て助成する「無料産院」とし、育てられない場合には特別養子縁組などを含め支援する活動を行っている[97]。寄付金を元として、2025年7月時点では岐阜、京都、和歌山の3府県の4病院で実施している[98]。
匿名で出産する内密出産を行う病院は、熊本市の慈恵病院と東京都墨田区の賛育会病院の2カ所となっている[99][100]。「こうのとりのゆりかご」に3歳頃に預けられた男性は、その存在によって救われたと実名で講演活動を行っている[101]。
東京都墨田区の賛育会病院の賀藤均院長は東京新聞の取材に答え、相談者には性暴力被害者もおり、困窮するシングルマザーらへの支援、性教育の充実、買春の問題などについて、男性側の責任ある行動を求めている。また問題の根本的には女性蔑視があり、救済しない社会の存在を指摘している[102][103]。この賛育会病院での出産費用は原則、女性側に徴収する方針であることから、慈恵病院の蓮田院長は費用の捻出の問題から内密出産を諦める妊婦がでる可能性を考慮し支払いができない女性がいた場合に、慈恵病院が請求に応じ代理納付する考えを明らかにしている[104]。
なお、自民党の「孤独・孤立対策特命委員会」は2026年3月12日内密出産の制度整備の議論に着手した[105]。
また、児童福祉法第22条において、都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村は、妊産婦が経済的理由によって入院して出産する費用がない場合には、本人から申込みで費用助成を行う義務があることが規定されている。この入院助産制度を周知活用するよう2019年8月に厚生労働省子ども家庭局母子保健課長通知が発出され、円滑な実施が促されている[106]。日本産婦人科医会でも、会員に対し自治体と連携して制度活用するよう周知された[107]。
母子ともに生活できる児童福祉施設の「母子生活支援施設」も各地にある[108]。
アメリカ
50の州すべてに出産直後に警察・消防などの安全な場所に預ければ母親は罪に問われない趣旨の法律、「セーフ・ヘイブン・ロー」がある。生みの母がレイプで妊娠し養子に出された経緯を持つ女性は、救急救命士となり、アメリカでは初めての「ベビーボックス」を設置した。この施設は2022年時点で7つの州の100か所以上に設置されている[109]。なお、アメリカ・オハイオ州では2024年3月、1歳児を自宅に放置し恋人と10日間旅行に行き死亡させた母は、終身刑となった[110]。
韓国
2023年には、病院で出産したが、その後出生届が出されていない子どもが2015年から2022年までの8年間に2000人以上に登ることが判明した。うち1000人は「ベビーボックス」で保護されていたが、冷蔵庫や山中に子の死体が遺棄されていたケースもあった。識者は家父長制社会の中で未婚の母の子育てが困難であること、生活困窮で情報弱者であり孤立している女性がいると指摘している。ワンストップ支援センターも整備されてきている[111]。
ドイツ
2000年に「赤ちゃんポスト」の近代版第1号がハンブルクに、その後リューベックとベルリンの病院に設置された。公式な数字の公表はない。国際的な慈善財団によると、2016年にドイツで報告された新生児の死亡事故は14件であるが、赤ちゃんポストの存在や匿名出産制度によってその数は減少していないという[112]。
フランス
妊娠中の検査と出産の無料受診は匿名が可能。出産時に子どもを認知せず養子に出せる匿名出産制度がある。避妊具、避妊薬も無料で入手が可能。中絶は匿名無料で行える。産後帰宅したら48時間以内に助産師等が自宅訪問を行う。子どもを殺した母に関するフランスの小児科医による分析では、自身の幼少期不適切養育により依存傾向・低い自己評価・孤立が見られるという。殺害した母は出産した子を人間と認識せずごみに捨てたケースが多いという[113]。