普遍 (哲学)
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部屋に緑色の椅子が二脚あるとする。両者は「椅子であること」と「緑であること」という二つの普遍を共有している。特徴・性質には大きく下の三種がある。
これらはいずれも異なる型の普遍である[2]。
典型的には、普遍は抽象的(例:人間性)であり、個物は具体的(例:ソクラテス)とされる。しかし、普遍が必ずしも抽象的とは限らず、個物が必ずしも具体的とは限らない[3]。たとえば、数は個別的でありつつ抽象的な対象だとする見解もあるし、D・M・アームストロング(英語版)のように普遍を具体的とみなす哲学者もいる。
一般には、クラス(型・種)は普遍と見なされないが、ジョン・ビゲローのようにそう見なす著名な哲学者もいる。
普遍論争
普遍の問題は、普遍の存在をめぐる古典的な形而上学の問題である。これは、事物のあいだに見られる類似や属性一致という現象をどう説明するかという試みから生じる[4]。たとえば草と青リンゴは、緑であるという属性において似ている・一致している。問題は、この種の属性の一致をどのように説明するか、である。
普遍についての立場は多岐にわたる。「美」を例にとると、次の四つが挙げられる:
- 観念論:美は心のうちで構成された性質であり、事物の記述の中にのみ存在する。
- プラトン的実在論:美はいかなる心や事物からも独立に理念的形態として存在する。
- アリストテレス的実在論(英語版)や概念主義(英語版):美は事物に属する性質であり[5]、心はそれを美しい事物から抽象する。
- 唯名論:普遍は存在せず、あるのは個物のみ。
より広い枠組みでは、主要な立場はおおむね 極端実在論(プラトン的実在論)、唯名論[6]、中庸実在論(英語版)(アリストテレス的実在論)、観念論に類別される。極端実在論は、属性一致を説明するために独立した抽象的普遍の存在を主張する。唯名論は普遍の存在を否定し、属性一致の説明に不要だとする。概念主義は、普遍は心のうち、あるいは概念化されたときにのみ存在するとし、独立の存在を否定する一方で、事物における存在は認める。さらに、言語使用の含意や言語と存在論の関係の複雑さといった問題も絡む。
個物
普遍には個別的な実例があり、これはその普遍の例化(インスタンス)である。たとえば、犬という型は普遍であり、赤いという性質や、あいだにあるという関係も普遍である。ある個々の犬、赤いもの、他の物のあいだにある物は普遍ではなく、普遍の実例である。すなわち、型・性質・関係という普遍が、特定の個物(ある犬、ある赤い物、他物のあいだにある物)に内在している。
プラトン的実在論
プラトン的実在論は、普遍を一般名の指示対象、すなわち「同一性」「円形性」「美」などの語が指す抽象的・非物理的・非心的な実在とみなす。他方、個物は「東京タワー」のような固有名や、「あそこにいるあの人」のように単一の対象を同定する確定記述の指示対象である。ほかの形而上学説でも、普遍の語彙を用いて物理的実体を記述する場合がある。
プラトンが(今日普遍と呼びうるものとして)挙げた例には、円や自然数といった数学・幾何学的理念が含まれる。もっとも、プラトンの普遍観は文脈により表現が揺れる。ある箇所では、完全な円がすべての写しや定義の型・設計図として機能するかのように語り、別の箇所では、個物が当該普遍に「参与」すると述べる。
現代の実在論者は、普遍が複数回例化可能な存在であるというテーゼに概ね同意する。代表的な実在論者として、D・M・アームストロング、ニコラス・ウォルターストーフ(英語版)、ラインハルト・グロスマン、マイケル・ルー(英語版)がいる。
唯名論
唯名論者は、普遍を心から独立した実在とはみなさず、単なる概念(概念主義と呼ばれることもある)または単なる名だとする。唯名論では、性質は普遍ではなく、しばしば抽象的個物(トロープ)だと論じられる。J・P・モーランド(英語版)は、「極端」と「中庸」の唯名論を区別する[7]。唯名論者としては、仏教論理学者、アポーハ理論(英語版)家[8]、中世のコンピエーニュのロスケリヌス、オッカムのウィリアム、現代のウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン、ウィルフリド・セラーズ、D・C・ウィリアムズ(英語版)、キース・キャンベル(英語版)。
Ness-ity-hood原理
Ness‑ity‑hood原理は、主に英語圏の哲学者が普遍や性質の簡便な名称を作るために用いる規則である[9]。この原理によれば、どの普遍の名前も、述語の語幹に-ness・-ity・-hoodの接尾辞を付けて作ることができる。たとえば「左利きである(left-handed)」という述語からはleft-handedness(左利き性)が得られる。日常英語に確立名がない場合に特に有用である。たとえば椅子に固有の普遍の名称は何か? 英語のchairは主語(“The chair is broken.”)にも述語(“That is a chair.”)にも使われるので、述語chairに-nessを付けてchairness(椅子であること)と名づける、という具合である。