村井貞勝
日本の侍 (1528-1582)
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生涯
出自
『太閤記』冒頭の惑問に拠れば、出身は近江国[1]。生まれた年は不詳だが、言経卿記1576年1月28日条に朝日勝七なる12、3人の孫がいること、1577年9月19日付けでフロイスが尊敬すべき老年の異教徒と呼んでいることから推測すると永正17年(1520年)頃かそれ以前だと考えられる[2]。行政手腕に長けていたため、織田信長から厚い信任を受けて、早期より重用される。
弘治2年(1556年)に織田信行が兄の信長に叛旗を翻した時にはすでに信長に仕えており、島田秀満(秀順)と共に土田御前の依頼を受けて、信行や柴田勝家らとの和平交渉を行った、なおこれが『信長公記』での初出である[3]。
信長が足利義昭と共に上洛した際も同行し、明院良政・佐久間信盛・木下秀吉・丹羽長秀らの諸将と共に京に残留し、諸政務に当たっている。
永禄11年(1568年)に義昭の初参内にあたって使用する「御袍」の準備が京での初仕事となった。同12年(1569年)には二条御所の造営においては島田秀満と共に織田家側の奉行を務めた(『信長公記』)。同13年(1570年)からの禁裏御所の修理役を朝山日乗と共に務めた。なお、この頃は室町幕府が存在しており、織田家中でも他の武将も奉行として京都の支配を担当していたため、貞勝が支配を一手に担っていたわけではない[4]。
京都所司代
天正元年(1573年)7月に再挙兵した足利義昭が敗北して京都から没落し、その後の和睦交渉が決裂すると、信長から「天下所司代」を申し付けられた(『信長公記』)[注 1]。だが、実際には貞勝単独ではなく、明智光秀と共に京都支配を担った[5]。松井友閑・武井夕庵・明智光秀・塙直政らの信長の行政官僚側近らと共に、京都の治安維持や朝廷・貴族・各寺社との交渉、御所の修復、使者の接待、およそ信長支配体制下における、京都に関する行政の全てを任されている。
天正3年(1575年)4月には丹羽長秀と共に公家の旧領を返還させる徳政令を担当した(『信長公記』)。同年7月に信長が家臣団への叙任を願い出て勅許されると貞勝は長門守を受領した(『信長公記』)[5]。10月19日、貞勝は伊達輝宗の使者を接待した。
天正4年(1576年)からは光秀が京都支配から離れたため、貞勝が単独で担うようになった[5][6]。4月、信長は足利義昭が使っていた二条御所とは別に、二条晴良の屋敷に新邸を築くことを決め、貞勝に普請を命じた。のちにこの新邸は、「二条御新造」「二条新御所」と呼ばれた。
天正5年(1578年)3月上旬、御所の修理が終わったため、貞勝は京都の町人に御所の築地塀の修復に協力するよう命じ、人数をいくつかの班に分けて作業を競わせた。築地塀の上では町人たちの歌や踊りが披露され、見物客が殺到し、周辺は大変な賑わいを見せた。あまりの賑わいに正親町天皇や貴族らも見物した。その賑わいの中で競い合わせて進めた修復工事は、瞬く間に完成したという。
天正7年(1579年)12月28日から翌8年(1580年)正月10日までの間に剃髪した模様で以降は春長軒を名乗るが、隠居や職務の変更はされなかった[5]。
天正8年(1580年)2月26日、信長は京都での居住場所を本能寺に移すことに決め、貞勝に普請を命じた。
天正9年(1581年)2月28日の京都御馬揃えの奉行は光秀が務めたが、貞勝も天覧の調整、道具の準備、馬場の整備を行った(『兼見卿記』)。なお、貞勝自身は馬揃えに参加せず、嫡男の貞成が参加した(『信長公記』)[7]。
最期
天正10年(1582年)4月に貞勝は勧修寺晴豊から「信長を太政大臣・関白・征夷大将軍のいずれかに任じたい」という相談を受けた(三職推任問題を参照)[7]。
同年6月2日に本能寺の変において貞勝は信長の嫡男・織田信忠の宿所の妙覚寺に向かい、信忠に二条新御所への移動を提言した(『信長公記』)。同じく駆けつけた他の織田家臣らとともに、二条新御所に立て籠もって明智軍に抗戦したが、信忠や子の貞成・清次と共に討死した(『兼見卿記』)[7]。
人物
宣教師のルイス・フロイスは、貞勝を「都の総督」と呼び、「尊敬できる異教徒の老人であり、甚だ権勢あり」と評している。
肖像
登場作品
- 壬生一郎『信長の庶子』(2019年~、既刊4巻)
- 『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(2002年、NHK大河ドラマ、演:苅谷俊介)
参考文献
- 『信長公記』
- 『フロイス日本史』
- 久野雅司「織田政権の京都支配―村井貞勝の職掌の検討を通して―」(『白山史学』3号、1997年)
- 谷口克広 『信長の天下所司代 筆頭吏僚 村井貞勝』(中央公論社、2009年) ISBN 978-4-1210-2028-4
- 木下昌規 著「村井貞勝――都市支配で才能を発揮した〝天下〟の代官」、柴裕之 編『戦国武将列伝 別巻1 織田編』戎光祥出版〈戦国武将列伝〉、2025年9月。ISBN 978-4-86403-451-7。