水原一平
日本の元英語通訳者 (1984-)
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経歴
生い立ち
6歳まで北海道苫小牧市で過ごし、1991年に和食料理人の父・英政がロサンゼルスで板前を始めたことを機にアメリカ合衆国へ移住[1]。
学生時代
ロサンゼルス郡東部ダイアモンドバーのシャパラル中学(Chaparral Middle School)、ダイアモンドバー高等学校に通学した。高校ではサッカー部とバスケットボール部に所属[1][5]。サッカー部では控えのゴールキーパーであった[6]。
2007年にカリフォルニア大学リバーサイド校を卒業と報じられていた[7]が、2024年3月に同校はNBCロサンゼルス局の取材に対し、「彼が通っていた記録はない」と回答したと報じられた[8][9]。
通訳者として
ロサンゼルス・ドジャースに所属していた野茂英雄の活躍によってMLBに興味を持ち、2012年2月のスプリングトレーニングが始まる前に岡島秀樹の専属通訳としてニューヨーク・ヤンキースに採用された[5][10]が、岡島が仮契約中に行われたフィジカルチェックにおいて左肩に異常が見つかり、身体検査をパスできず契約解除となったことに伴い、2012年2月17日に水原の契約も解除された[10]。しかし、有料スポーツ専門サイトのジ・アスレチックは、エンゼルスのメディアガイドには、「水原氏はレッドソックス後の2012年のスプリングトレーニング中、ヤンキースで岡島の通訳を続けた」とあり、後に経歴について疑問を投げかけていた。また、レッドソックス時代に岡島秀樹の通訳を務めたと言われていたが、レッドソックスは2024年3月22日に「ミズハラがいかなる形でも球団のために働いていたことはない」と否定する声明を発表した。
その後は帰国し、2012年からは北海道日本ハムファイターズの球団通訳となり、ファイターズに所属する外国人選手の通訳や生活のサポートを務めた[11]。選手たちに「連絡があったらすぐ駆けつける」と約束し、選手の家族にまで配慮を行い[5]、ミッチ・ライブリーやクリス・マーティン、マイケル・クロッタなどといった、外国人選手の厚い信頼を得ることになった[12][13]。
日本人選手からも好かれており、「一平ちゃん」との愛称で呼ばれた。また、陽岱鋼(当時日本ハム所属)とは特に仲が良く、たびたびキャッチボール相手を頼まれた[5]。
大谷翔平の専属通訳として
2017年オフに日本ハムに所属していた大谷翔平がロサンゼルス・エンゼルスへ移籍したことに伴い、大谷の専属通訳としてエンゼルスに所属。通訳以外にも運転手やキャッチボールの相手など、公私にわたり大谷をサポートしていた[14][15][16]。
「大谷のスケジュールはとても特殊であり、大谷のキャッチボール相手が周りにいないときもある。その際に私が進み出てキャッチボールをする」と話した[17]。
MLBへ所属した日本人選手の中には、クラブハウス(選手たちの控え室)で孤立してしまう者もいたことを耳にしており、大谷を孤立させないように注力した。エンゼルスの選手たちが、あるスマートフォンゲームで遊んでいることに着目し、大谷がそれをダウンロードして仲間に加わった。その3年後の2021年の取材時点でも、水原たちはそのゲームを楽しんでいた[17]。
2018年には1月から11月14日時点まで大谷と毎日顔を合わせており、オールスターゲーム期の休暇にはユニバーサル・スタジオ・ハリウッドへ同行した[14]。
2018年から2019年春にかけて大谷が故障から復帰するまでの期間には、大谷と冗談を言い合ったり、スマートフォンゲーム『クラッシュ・ロワイヤル』を一緒に遊ぶなどしてリラックスさせた。クラブハウス管理人のエンゼルは「水原が大谷をすごく助けてくれている。だから精神的にも良い状態だったと思う」と語った[15]。
2020年2月に大谷が米国での自動車運転免許を取得した後も、大谷が運転する際には助手席に同乗した[18]。
2021年に大谷がMLBオールスターゲームの前夜祭となるホームランダービーに出場した際には、捕手役を務めた[19]。独身の大谷が誰とともに登場するのか注目された同日のレッドカーペットショーは、ともに歩いた[20]。11月22日、エンゼルスから「MVI」(最優秀通訳)に選出された。
2021年オフのMLBの労使協定交渉に伴うロックアウト中、選手と球団職員の接触ができなくなることからエンゼルスを一時退職したが、3月10日の協定締結後に球団へ復職している。
大谷も参加した2023年の第5回ワールド・ベースボール・クラシックでは、広報を兼任する堀江慎吾[注 1]とともに日本代表のチーム通訳[注 2]の役目も担った[23][24]。また、初の日系人の代表選手となったラーズ・ヌートバーの招聘の際には、栗山英樹監督[注 3]からの連絡役や通訳も担った[25]。同大会の優勝会見時に、ヌートバーは「監督、コーチ、素晴らしいチームメイトと一緒にできて良かったですし、誘っていただいたイッペイにも感謝しています」と水原に対しても感謝の言葉を述べている。なお、この通訳自体も水原が担当し、自ら「イッペイに感謝」という言葉を発したことで周囲は笑いに包まれた[26]。
2023年12月、大谷のロサンゼルス・ドジャースへの移籍に伴い、ドジャースに移籍[27]。2024年3月20日、後述の不祥事によりドジャースを解雇された。
MLB球団退団後
2024年6月にロサンゼルス周辺でUber Eatsの配達員として働いている様子が目撃されたことを現地メディアが報じた[28]。NBCロサンゼルスのUber Eatsへの取材に対して、Uber Eatsの広報担当者が「水原は数年前から配達員を務めていたが、係争中のため配達を禁止された」と回答したことを報じている[29][30]。
不正送金・銀行詐欺事件
2024年3月20日、開幕戦の直後にドジャースを解雇された[31]。複数のアメリカメディアは違法賭博(スポーツ賭博)に関与したと報道した[31]。また、大谷の銀行口座から少なくとも450万ドル(約6億8000万円)が送金され、大谷の弁護士が水原を「ブックメーカーでの賭博目的で大谷の資金を大量に盗んだ」として告発したとの報道もある[32][33][34][35]。水原は19日のESPNのインタビューに「違法の認識がなかった」「翔平は賭博には全く関与していない」とし、当初はギャンブルによる借金の肩代わりを大谷に求めた際に、「明らかに大谷は本件に満足しておらず、二度とこのようなことをしないように私を助けると言った」と主張していた[36][37]。
水原は、多額の負債により「生活費をやりくりするのも大変で、その日暮らしの毎日。彼(大谷)のライフスタイルに合わせなければならなかったから」と述べ、2023年に借金が400万ドル(約6億400万円)を超えた時点で初めて大谷に助けを求めたとした[38]。違法賭博を始めたとされている2021年時点の水原の年俸は約8万5000ドル(約1300万円)で、翌年末には100万ドル(約1億5100万円)の損失が生じていたと報じられている[39]。
同年4月12日、連邦検察は銀行詐欺容疑で水原を刑事訴追したと発表した。大谷選手が不正に関与していたことを示す証拠はなく、記者会見した検事は「大谷選手は被害者と強調したい」と述べた[40]。同日、ロサンゼルスの連邦地裁に出廷。拘束された後、保釈保証金2万5000ドルで保釈が認められた[41]。保釈の条件には他に、ギャンブル依存症の治療を受けること、ギャンブラーやブックメーカー、さらに被害者である大谷に接触しないことも含まれている[42][43]。
5月8日、司法取引(答弁取引)に応じ、銀行詐欺と虚偽の納税申告の罪状を認めた。加えて、被害額全額を返済することや、追徴課税約114万ドルを支払うことも求められた[44][45]。また、同日公開された裁判資料から「歯の治療」名目で大谷から6万ドルの小切手をだまし取っていたことが新たに明らかになった。大谷から小切手を受領した水原は、実際には大谷の口座にひも付いたデビットカードで無断で治療費を支払っており、小切手の6万ドルは自身の口座に入金して着服していた[46]。
5月9日、映画スタジオのライオンズゲートは本事件をテーマとしたテレビドラマシリーズを制作することを発表した[47][48]。ドラマ制作チームのアルバート・チェンは「これはピート・ローズ以来、メジャーリーグベースボール最大のスポーツ賭博スキャンダルであり、その中心にいるのはMLBがワゴン車に乗せた最大のスター選手だ。私たちは信頼、裏切り、富と名声の罠の物語の核心に迫る」とコメントしている[49]。
その後の裁判を通じて、検察は水原が賭博胴元を通じて2021年9月から2024年1月までで最低でも1万9000回賭けたこと。また、司法局は累計勝ち額が最低でも1億4225万6769ドル、累計負け額が最低でも1億8293万5206ドルに達していたこと。胴元へ支払い義務は、差し引き4067万8436ドル(約63億円)であったことを明らかにした[50]。
2025年2月6日、カリフォルニア州連邦地裁で判決公判が行われ、地検の求刑通り禁錮4年9月が言い渡された。大谷への賠償金約1700万ドル(約26億円)の支払いも命じられた[51]。
当初は同年3月24日までに裁判所に出頭し収監される予定だったが弁護側の要請で2度延期された。収監期限だった6月16日、水原がペンシルベニア州の連邦刑務所に収監されたと連邦刑務所局が明らかにした[52][53]。水原は収監先についてカリフォルニア州南部の施設を希望していたが、受け入れられなかった[54]。
2026年2月に、刑期が約3か月短縮されたことが報じられた。出所予定日は当初の2029年7月1日から、同年4月17日に変更されている[55]。
犯行の手口
水原は2018年から計画的に犯行の準備を進めており、詐欺は以下の流れで行われた。
銀行口座のパスワード入手(2018年3月)
2018年3月、水原はアリゾナ州で大谷の銀行口座開設に通訳として同行し、その際にパスワードを入手した[56]。この時点では水原はまだ違法賭博を始めておらず、ギャンブル依存症でもなかった[57]。
大谷と財務管理チーム双方への虚偽説明
水原は通訳という立場を悪用し、大谷と財務管理チームの間に立って情報を遮断した。具体的には、大谷に対しては「口座は財務管理チームが管理している」と説明する一方、財務管理チームに対しては「大谷は口座情報の開示を望んでいない」と説明していた[56]。
口座の完全掌握と大谷へのなりすまし
2021年9月、水原はロサンゼルス・エンゼルス(当時)所属のデビッド・フレッチャーらとのポーカーの場で違法賭博の胴元と出会い、違法スポーツ賭博を開始した[56]。
その翌月の2021年10月、水原は大谷の銀行口座のメールアドレスとパスワードを変更し、銀行からの確認連絡が水原本人にのみ届くよう設定した[56][40]。
そして2021年11月、大谷の口座からの初の不正送金が実行された[56]。送金の承認に際しては、水原自身が大谷本人になりすまして銀行に電話で応答しており、連邦検察によればこうしたなりすまし電話は少なくとも24回確認されている[40]。
着服資金の使途
水原が大谷の口座から不正送金等で得た資金は、以下のように使用された。
ギャンブル損失への充当
最大の使途は違法スポーツ賭博による損失の補填であった。前述の通り、水原は2021年9月から2024年1月までに約1万9000回賭け、胴元に対して差し引き約4067万ドル(約63億円)の支払い義務を負っており、大谷の口座からの不正送金はその返済に充てられた。
野球カード購入
2024年1月から3月にかけて、水原は「ジェイ・ミン(Jay Min)」の偽名を用いてオンラインオークションで約1,000枚の野球カードを購入し、ロサンゼルス・ドジャースのクラブハウス宛てに送付させた。総額は約32万5000ドル(約5000万円)に上り、購入されたカードにはヨギ・ベラ、フアン・ソト、大谷自身のものが含まれていた。検察はこれを転売目的での購入と見ている[58]。
歯科治療費
前述の通り、水原は大谷の口座にひも付いたデビットカードを無断で使用して自身の歯科治療費を支払っていたうえ、大谷から「歯の治療」名目で6万ドルの小切手を詐取し、自身の口座に入金して着服していた。
住居家賃
水原はカリフォルニア州ニューポートビーチの高級マンション「Villas Fashion Island Apartments」に居住しており、家賃の支払いには大谷の口座にひも付いたデビットカードを無断で使用していた[59]。同地はオレンジ郡の高級リゾート地として知られている。なお、大谷自身はエンゼルス入団当初の2018年、エンゼル・スタジアム近郊のアナハイムの比較的質素な賃貸アパートに居住していたとされる[60]。
大谷翔平への影響
本事件は被害者である大谷翔平の名誉にも深刻な影響を与え、水原の有罪答弁および連邦検察による大谷の被害者認定を経た現在もなお、大谷の賭博関与を疑う懐疑論は米国およびメキシコの一部メディアやSNS上に依然として残っている。
本事件の発覚直後、水原はESPNの取材に対し「自身のギャンブル借金の肩代わりを大谷に依頼し、大谷も送金に同意した」旨を語った[31][61]。同発言は数時間後に撤回され、大谷側代理人は逆に水原を「大谷の資金を大量に盗んだ」として告発したが、当初の水原発言は「大谷が違法賭博の存在を知った上で資金提供したのではないか」との解釈を生み、米メディアおよびSNS上で大谷自身の関与を疑う懐疑論が広く拡散した。
2024年4月12日、連邦検察は起訴状で水原の犯行手口(前述)を明らかにし、大谷を被害者と公式認定した[40]。同年5月には水原自身が司法取引で罪を認め、こうした言説は大幅に沈静化した。
しかし、その後も懐疑論は散見される。懐疑論の主な根拠は、約2年2か月にわたって大谷自身の口座から総額約1700万ドルもの資金が流出していたにもかかわらず、口座保有者である大谷本人がこれに一切気付かなかったとされている点である。2025年2月の判決に際して連邦検察が提出した量刑メモは、水原の行為が「大谷の最大の資産である評判と信用を傷つけた」と明言した[62]。また同メモは、「圧倒的な証拠が大谷の不知を示しているにもかかわらず、複数の著名人が大谷氏がこの口座の不正に気付かなかった理由を問い続けた」「大手ECサイトでは大谷を犯罪関与者であるかのように扱う商品が販売されている」とも指摘し、水原の犯行が大谷の評判に与えた継続的な被害を強く批判した[62]。
懐疑論を唱える具体的なメディア関係者として、以下のような事例がある。元シカゴ・ホワイトソックス監督オジー・ギーエンがメキシコのスポーツメディア「Puro Beisbol」のインタビューで「大谷が賭博をしていたことは皆知っている。MLBが彼を保護したのだ」と発言[63]。同メディアのコラムニスト、フェルナンド・バレステロスは7月にMLBの大谷への対応を「二重基準」と批判する論評を執筆し[64]、米スポーツメディア「Deadspin」の記者ドリュー・サイリオン(Drew Thirion)も同月、クリーブランド・ガーディアンズの賭博関連事件と対比させ「1700万ドル超が消失したのに大谷が気付かなかったのは信じ難い」と論じた[65]。米クリーブランドのスポーツラジオ局「92.3 The Fan」(Audacy系列) の番組ホスト、ケン・カーマン (Ken Carman) らも、クラセおよびオルティスが最大禁錮65年に直面する一方で大谷が免罪された点を取り上げ、両事件の扱いの差に疑問を呈した[66]。米主要メディアは、これら一連の懐疑論を「根拠のない主張」「既に否定された言説」として批判している[63][67][68]。
人物
大谷との親密な関係で野球ファンの間で人気を博していた。ブルペンでのキャッチボールや試合前のウォーミングアップで一緒にキャッチボールをするなど、通訳以外の場面でも頻繁に大谷をサポートしていた。2021年のMLBホームランダービーでは、大谷の捕手を務めた[69]。
2024年2月3日にドジャース移籍後、初めてファンフェスタに登場した大谷はトークショーで水原とともに登壇し、インタビュアーから「一平さんとの関係はどうですか?」と問われると、少し間を置いて、笑いながら日本語で「ここはもうビジネスの関係なので、友達ではないです(笑)。割り切って付き合ってます」と答えた[70]。
ESPNの取材に対し、大谷を「兄弟のような」と表現していた[38]。
家族
- 水原家
- 父・英政 - 北海道苫小牧市出身で実家が寿司屋を営んでいたことから、家の仕事を手伝いながら調理師免許を取得、32歳のときに家族とともにロサンゼルス近郊のダイヤモンド・バーへ移住し、以来付近の複数の日本料理店で腕を振るう[71]。2016年から2018年にかけて北海道日本ハムファイターズがアリゾナキャンプを実施した際に、一平を通じてファイターズから打診を受け、ファイターズの食事面のサポートを務めたことがある[71][72]。2024年時点ではカルフォルニア州コスタメサにある居酒屋「HACHI」に勤務している。学生時代はアイスホッケーと野球の二刀流アスリートとして、アメリカ留学中に『ロサンゼルス・タイムズ』に取り上げられたことがある[73]。
- 妻 - 2018年に結婚している[74][注 4]。同年、大谷から結婚のお祝いとして全額負担の新婚旅行のチケットを贈られている[74]。水原は「今回のオフの期間は短くて、行けるか分からないが、本当にうれしかった。1年前の出発の時にも機内でサプライズで結婚を祝ってもらった」と述べている[74]。