無常 (死神)
中国の死神
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名称
起源譚
中国福建省では、謝必安(白無常)と范無救(黒無常)をめぐる口頭伝承(謝范伝承)は、典型的な起源譚の一つといえる。
謝范伝承によれば、謝必安と范無救は義兄弟であった。昔々、ある日、橋のたもとで大雨に遭い、謝必安は傘を取りに帰り、范無救は橋下で待つことにした。ところが謝必安は帰宅後に発症して臥せり、その間に雨は激しさを増し、河水は急激に増水した。義理堅い范無救は約束を守りその場を離れず、やがて溺死した。後に駆けつけた謝必安は、范無救の死を嘆き自責の念から自殺した。これを知った玉皇大帝は二人の固い絆に感銘し、冥界神の白黒無常として現世で悪人悪鬼を地府へ捕縛する使命を授けたとされる。
ここで注目すべきは、この伝承において無常が元々は人間であり(恋人同士が約束のために死んだという藍橋伝承に類似する)、しかも信義に厚い人物として描かれている点である。漢民族の民間信仰には、このように徳の高い人物が非業の死を遂げると、その霊魂が神として祀られるという特徴がある[13]。


特徴
地域によって特徴が異なる[14]。しばしば見られる特徴として以下がある。
- 白と黒の二人組である(白単体の場合もある)[15]。
- 白は長身、黒は短身の凸凹コンビである[16]。
- 高帽子を被っており、白の高帽子には「見吾生財」(我に出会えば財を成す)といっためでたい言葉、黒の高帽子には「見吾死哉」(我に出会えば死ぬ)といった不吉な言葉が書かれている[17]。そのほか、「一見生財」「天下太平」・「見吾大吉」「見吾大凶」・「你也來了」(汝も来たか)「正在捉你」(今まさに汝を捕らう)といった異文も存在する。
- 白は傘・扇子・元宝、黒は魂を捕縛するための鎖を所持している[1]。
- 白は口から長い舌を出している[1]。
- 白は福を招く財神とされる場合もある[2]。
- 勧善懲悪の倫理的神とされる場合もあれば、悪人に金品を与えて欲に溺れさせる非倫理的神とされる場合もある[18]。
- 元々は人間だったが、善行や悲劇的死により、死後に神として祀られるようになった、という伝承(媽祖や関帝と同様の成神譚)がある[13]。
- 冥界神のヒエラルキーにおいては下位神の存在であり、近い位の牛頭馬頭らとともに、上位の閻羅王(閻魔大王)・東嶽大帝(太山府君)・城隍神らに仕える[19]。
- 一部の場合は「無常嫂」などと呼ばれる妻とその子供がいる[20]。
- 人間の巫者が無常の役割を代行する場合や[6]、タンキーが無常を自身に憑依させる場合もある[21]。
歴史・受容
無常の起源は不明確である[22]。文献に見える限りでは宋代から、六朝志怪小説以来存在する「勾魂使者」の別名に「無常」が加わった[注釈 3][23]。清代中期の乾隆年間頃から、無常が勾魂使者の新種として独立し、現在知られる特徴が徐々に形成された[注釈 4][23]。特徴形成の背景に、妖怪の摸壁鬼や山魈・モシナとの混交があった、と推測される[26]。

魯迅は無常マニアでもあり、『無常』という随筆を書いている(『朝花夕拾』所収)[注釈 5][27][28]。
21世紀現代でも、福建を中心とする中国大陸各地や台湾、東南アジアの華人社会で信仰されている[29]。主に城隍廟や東嶽廟といった地獄関係の廟に無常の塑像が祀られており[29]、これらの廟の祭り(迎神賽会)では無常の被り物が練り歩いている[30]。また祭祀演劇の「目連戯」(目連救母)にも登場する[31]。台湾妖怪に数えられることもある[32]。
ゲーム『IdentityV 第五人格』[27]や『返校』[33]、ドラマ『山河令』[27]といった中華圏の娯楽作品にも登場する。日本では漫画『ネクログ』に登場する[34]。

