牛図 (俵屋宗達)
From Wikipedia, the free encyclopedia
作品
モチーフ
モチーフは牛のみで、背景に草木や霞も一切描かれていない[1]。双幅のうち、右幅には腹ばいの姿勢になった牛が、左幅には前足を曲げて立っている牛がそれぞれ一頭ずつ描かれている[1]。いずれの牛も首は天を見上げている[5]。牛の姿態は『北野天神縁起絵巻』(弘安本)から借用されたものとみられている[1]。宗達作品には古典からの取材がよく見られるが[1]、本画はたらし込み技法を用いた水墨画に変換されており、松尾知子曰く「典拠を感じさせない」完成度である[2]。
技法
いずれの牛も輪郭線を使わない没骨法によって描かれている[1]。牛の体の立体感はたらし込み技法によって表現されており、具体的には筋肉の盛り上がりや体の厚みが表現されている[6]。たらし込みとは、水墨画において、墨を塗ったのち、それがまだ乾かぬうちに異なる墨を塗る技法のことである[6]。両者がにじみ、混ざり合うことで複雑なグラデーションを表現することができる[6]。宗達は本技法を多用することで知られるが[6]、本画は山根有三曰くたらし込み技法の「特色と効果を最大限に発揮した傑作」である[7]。また、肩や尻、脚の付け根などに見られる白い部分は彫塗技法によって表現されており[6]、全体の印象を引き締める役割がある[8]。
製作順序としては、薄墨で輪郭と隆起部分を描いたのち、水気の多い薄墨で体全体を大まかに付彩、それらが乾く前に濃墨を置いて滲ませる(たらし込み技法)ことで描かれている[2]。
印・賛
署名は「宗達法橋」、印は「對青軒」の朱文円印である[2]。落款と印章から、法橋叙任以降[注釈 1]の作である可能性が高く[10]、山根有三はたらし込み技法の習熟度の高さから、宗達の最晩年、1630年代の作であろうと推測している[7]。
賛は烏丸光広によるものである[2]。右幅には「身のほとに おもへ世中うしとても つなかぬうしの やすきすかたに(花押)」と、左幅には「僉曰是仁獣 印沙一角牛 縦横心自足 芻菽復何求(花押)」とあり[2]、いずれも自由と自足の尊さを牛と麒麟に喩えている[5]。