甘利俊一
日本の工学者
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概要
来歴
生い立ち
東京府東京市目黒区碑文谷生まれ。父は海軍の研究員であった。幼少期には、山梨や栃木への疎開を経験した。日本学園中学校、東京都立戸山高校を経て、1958年に東京大学工学部応用物理学科卒業。学位は工学博士(東京大学、1963年)。学位論文は「情報空間の刻接―― Diakoptics of Information Spaces」[1]
工学者として
九州大学工学部助教授、マサチューセッツ大学客員研究員、東京大学工学部計数工学科教授、独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターセンター長、理化学研究所の脳科学総合研究センター特別顧問、公立はこだて未来大学の客員教授などを歴任。東京大学の名誉教授でもある。 2012年に文化功労者、2019年に文化勲章受章。2024年12月、日本学士院会員に選定された[2]。
年譜
年譜は以下の通り[3]
- 1936年1月3日 - 東京府東京市目黒区碑文谷に生誕
- 1958年3月 - 東京大学工学部応用物理学科卒業
- 1963年
- 1967年4月 - 東京大学工学部計数工学科助教授
- 1975年4月 - マサチューセッツ大学客員研究員
- 1981年4月 - 東京大学工学部計数工学科教授
- 1994年10月 - 理化学研究所国際フロンティア研究システム情報処理研究グループディレクター
- 1996年3月 - 東京大学定年退職、東京大学名誉教授
- 2003年4月 - 理化学研究所脳科学総合研究センターセンター長
- 2008年4月 - 理化学研究所脳科学総合研究センター特別顧問
- 2009年6月 - 理化学研究所脳科学総合研究センター甘利チームシニアチームリーダー兼務
- 2024年12月 - 日本学士院会員
主な受賞歴
栄典・叙勲
研究
甘利俊一は連続体力学、情報理論、ニューラルネットワークなどを研究してきた。
1967年、多層パーセプトロンの確率的勾配降下法[7]による学習方法を発表した。1967年の論文は理論的な解析の話ばかりで、本人は「理論だけで十分だ。シミュレーションなんて、やったらできるに決まっている」[8] と思い、一切、実験結果が書いていなく、査読者に「あまりにも数学的で、難しすぎる」[8]と言われてしまう論文だった。実験自体は、研究室の大学院生の斎藤庄司が1967年に行い、日本語の修士論文として発表している[9]。翌年の1968年に書籍『情報理論II ―情報の幾何学的理論―』(ISBN 9784320020122)[10]を出版し、『第5章 学習識別の理論』にて1967年の論文よりも分かりやすく解説していて、実験結果もp.119に記載されているが、この本が英訳されることはなく、手法が定着しないまま、1969年にマービン・ミンスキー等が書籍『パーセプトロン』[11]で甘利俊一が解決済みであるとは知らずに否定的な内容を書いたため第1次AIブームが終了する。しかし、1986年にデビッド・ラメルハート、ジェフリー・ヒントン等が、1960年代に自動微分で開発された手法と同一だが、出力側から偏微分するバックプロパゲーションを発表した直後から第2次AIブームになり、確率的勾配降下法でニューラルネットワークを学習させることも手法として定着した。その後、第2次AIブームは終焉を迎えたが、2012年にジェフリー・ヒントンの研究室が畳み込みニューラルネットワークのAlexNetで画像認識コンテストで優勝して、第3次AIブーム、ディープラーニングブームが発生した。
また、甘利は微分幾何学を用いて確率分布を分析し、統計学と純粋数学を融合させた分野である情報幾何学を創始した。統計学者達からは数学色が強いために敬遠され、数学者達からは議論が厳密ではない点を批判され、中々認められなかった。一方で、ディープラーニングは一定の成功を収めたものの理論的裏付けに乏しく、ブラックボックスとも言われ、成功例と失敗例の違いを説明する事は難しかった。しかし、情報幾何学はその違いを説明できる理論体系の一つでもあった事から、次第に注目を集めて行った。
人物
- 学生時代は反戦運動に参加し、学生自治会の委員長も務めた。
- 趣味の囲碁はアマ六段の腕前であり、日本棋院囲碁大使に任命された[12]。囲碁は日本棋院の7段の免状を持っている[13]。
- コンピューターが嫌いでとくにパスワードを求められることが嫌いである[13]。
- ドラゴンクエストシリーズとファイナルファンタジーシリーズのファンであった[13]。
著書
単著
- 『情報理論II ―情報の幾何学的理論―』共立出版、ISBN 9784320020122 (1968年)。『情報科学講座』シリーズに含まれている。[14]
- 『情報理論』ダイヤモンド社、ISBN 4478820007 (1970年)
- 文庫版:筑摩書房 ISBN 978-4-480-09358-5 (2011年)
- 『神経回路網の数理 : 脳の情報処理様式』産業図書、ISBN 478285255X (1978年)
- 文庫版:筑摩書房、ISBN 978-4-48051229-1(2024年1月13日)
- 『Differential-Geometrical Methods in Statistics』 Springer New York ISBN 978-0387960562 (1985年)
- 『バイオコンピュータ』岩波書店、ISBN 4000076671 (1986年)
- 『ニューロコンピューター読本』サイエンス社 ISBN 978-4-7819-0541-9 (1989年)
- 『神経回路網モデルとコネクショニズム』東京大学出版会、ISBN 4130130722 (1989年)
- 『ニューロコンピューティングから情報幾何学へ』 三田出版会 ISBN 978-4895830638 (1990年)
- 『ニューロコンピューター』読売新聞社 ISBN 4643910062 (1991年)
- 『情報幾何学の新展開』サイエンス社 JAN 4910054700848 (2014年)[15]
- 『新版 情報幾何学の新展開』サイエンス社 ISBN 9784781914633 2019年
- 『増補新版 情報幾何学の新展開』サイエンス社 ISBN 9784781916484 2025年
- 『脳・心・人工知能』 ブルーバックス 講談社 ISBN 978-4062579681 2016年
- 『脳・心・人工知能〔増補版〕』 ブルーバックス 講談社 ISBN 978-4065394663 2025年
- 『深層学習と統計神経力学』サイエンス社 ISBN 978-4-7819-1574-6 2023年
- 『めくるめく数理の世界:情報幾何学・人工知能・神経回路網理論』 サイエンス社、ISBN 978-4-7819-1611-8 (2024年10月10日)
共著
- 甘利俊一、金谷健一『理工学者が書いた数学の本 線形代数』講談社 ISBN 4061868314 (1987年)
- 文庫版:筑摩書房 ISBN 978-4-480-51197-3 (2023年)
- 甘利俊一、松本元『情報処理の究極に挑む』三田出版会 ISBN 978-4895830942 (1992年)
- 甘利俊一、長岡浩司『岩波講座 応用数学 [対象12] 情報幾何の方法』岩波書店 ISBN 9784000108119 (1998年)
- 英訳:『Methods of Information Geometry』American Mathematical Society ISBN 978-0821843024 (2007年)
- 甘利俊一、伊藤正男、利根川進『脳の中身が見えてきた』 岩波書店 ISBN 978-4000065993 2004年
- 外山敬介、甘利俊一、篠本滋『脳科学のテーブル』 京都大学学術出版会 ISBN 978-4876988341 2008年
翻訳
- Assaf J. Kfoury等『プログラミングによる計算可能性理論』サイエンス社 ISBN 4781904971 (1987年)
- デビッド・ラメルハート等『PDPモデル : 認知科学とニューロン回路網の探索』産業図書 ISBN 978-4782851258 (1989年)