車いすラグビー

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車いすラグビー(くるまいすラグビー)は、四肢の麻痺による機能障害がある障害者が、車いすで競技する障害者スポーツの1つ。英語圏では、ウィルチェアーラグビー英語: Wheelchair Rugby)といい、クアドラグビー英語: Quad Rugby)ともいう[1]。クアド(Quad)は四肢という意味。

ボールを持つ選手 (右)に向かって、タックルをする選手 (左)

概要

2019年4月1日、日本での競技名は「ウィルチェアーラグビー」から「車いすラグビー」に変更された[2]。これにより、日本国内で車いすを使う競技名が「車いす○○○○」に統一された。英語名は「Wheelchair Rugby(ウィルチェアーラグビー)」のまま、変更なし。

車いす同士がぶつかり合う、激しいコンタクトがあるのが特徴で、北米ではマーダーボール(Murderball、殺人球技)とも呼ばれた[3][4]

ワールドウィルチェアーラグビー(WWR; World Wheelchair Rugby)が国際統括している。日本では、一般社団法人日本車いすラグビー連盟(JWRF; Japan Wheelchair Rugby Federation)が統括する。

沿革

バスケットボールラグビーアイスホッケーなどの要素を採り入れ、1977年カナダで考案された[5]。初の国際大会は1982年アメリカとカナダの間で行われた[6]

1993年、「国際車いすラグビー連盟(International Wheelchair Rugby Federation、略称IWRF)」が設立された[6]

1996年アトランタパラリンピックで公開競技として披露され、2000年シドニーパラリンピックからパラリンピック公式競技となった。

1996年11月に日本国内で正式に競技が行われ、1997年4月に「日本ウィルチェアーラグビー連盟」が設立された。

2019年4月1日、日本ウィルチェアーラグビー連盟が、「日本車いすラグビー連盟」に改称[2]

2021年、国際車いすラグビー連盟(略称IWRF)が、「ワールドウィルチェアーラグビー(WWR)」に改称した[7]

2023年10月、フランスで行われている「ラグビーワールドカップ2023」に合わせて、ワールドウィルチェアラグビーの主催により「International Wheelchair Rugby Cup2023」(IWRC2023、国際車いすラグビーカップ2023)がパリで開催された[8]。この大会は、ラグビーユニオンを統活するワールドラグビーラグビーワールドカップ、ラグビーワールドカップ2023フランス組織委員会、そしてフランス障がい者スポーツ連盟との提携の下、ラグビーワールドカップの一部として行われた[9]。これは、車いすラグビーの世界トップクラスの選手が出場する大会と、ラグビーユニオンの世界最高峰の大会が、初めて同時に同じ国で開催されることとなった[10]

2025年、それまでの10秒制限ルールが8秒に短縮され、退場時間も1分から45秒へ短縮され、ゲームのスピーディーさを向上させた[11]

主な国際大会

ルール

2026年1月「車いすラグビー 競技規則」から、主なものを抜粋。出典:[12]

選手の持ち点 と チーム編成

  • コート内は4人対4人で対戦し、男女混合でも戦う。
  • 試合中断時に選手を交代でき、回数制限はない。ただし、下記のように チーム編成において選手点数の上限がある。
  • 車いすバスケットボール同様、持ち点制を採用している。障害のレベルに応じて「0.5点(障害が重い) 」から「3.5点(障害が軽い)」までの合計8.0点を超えないようにチーム(4人)を構成しなければならない。
  • 女性1人がコートに入ると0.5点、出場時のチーム上限が増える。女性1人の参加で「上限8.5点」、2人参加で「上限9.0点」となる。
  • 障害のレベルが重い選手をローポインター、軽い選手をハイポインターという。
  • レフェリーは2人。

車いすラグビーに出場できる障がいと、クラス分けについては、後述「出場資格」を参照。

設定

  • バスケットボールと同じく、コートのサイズは 28m x 15mで、センターサークルは半径1.8m。
  • バレーボールの試合球(5号球、直径約21cm)と同様の大きさで、滑りにくい加工がされた車いすラグビー用の球形ボールを用いる(ラグビーでは楕円球)。
  • 前へのパスもでき、ボールを前に落としてもよい(ラグビーでは反則)。
  • 試合は1ピリオド8分4ピリオドで行う。8分→3分インターバル→8分→10分インターバル→8分→3分インターバル→8分の順に行う。
  • 4ピリオド終了後に同点の場合は、勝敗が決まるまで2分間のインターバルと3分間の延長ピリオドを繰り返す。
車いすラグビーのコート
  • エンドラインの手前(奥行1.75m、幅8m)を「キーエリア(Key Area)」という。後述のように、トライに関する攻撃と防御の激しい争いが起きやすい場所。
  • エンドラインのうち、キーエリア内8mぶんを「トライライン」という。トライラインは2本のトライポスト( = パイロン)で区切られている。
  • トライ1点。ボールを持った選手が、敵陣のトライラインを越えれば、トライ成功となる(ラグビーのようにボールを下につけなくてよい)。
  • トライ後は、トライをされたチームの自陣トライラインからインバウンド( = ボール投入のパス)でプレーを始める。
  • 第1ピリオドは、両チームの選手1人ずつがセンターサークル内でレフェリーがトスしたボールをタップして競り合って始まる。第2ピリオド以降は、前ピリオドでボールを支配していなかったチームが、自陣トライラインからインバウンド( = ボール投入のパス)で再開する。
  • ボールまたはボール保持者の車いすの2輪以上がサイドラインを超えると、アウトオブバウンズ(= コート外)となる。相手チームのサイドインバウンド( = サイドからのボール投入パス)で再開する。
  • ラグ車」と呼ばれる競技用車いすは、バンパーやウィングが前についたディフェンス用(主にローポインター用)と、シンプルなオフェンス用(主にハイポインター用)が用いられる。

反則

  • ボールを持った選手は、8秒以内にドリブル(パス または 1回バウンド)をしなければならない。「エイト・セカンズ・ドリブル・バイオレーション(8 Seconds Dribble Violation)」の反則になる。2025年に、10秒から8秒へ短縮された。
  • インバウンド( = ボール投入のパス)から、ボールを持って12秒以内でハーフラインを超えるか、ボールを前方へパスしてハーフラインを超えなければならない。「トゥエルブ・セカンズ・バイオレーション」の反則になる。
  • インバウンド( = ボール投入のパス)から総計40秒以内で、攻撃側は敵陣のトライラインを越えなければならない( = 40秒以内にトライをしなければならない)。「フォーティ・セカンズ・バイオレーション」の反則になる。
  • キーエリアに、防御側は、合計3人までしか入ることができない(4人目が入ると「フォー・イン・ザ・キー・ファウル(Four in the Key Foul)」の反則)。
  • キーエリアに、攻撃側は、8秒までしか入ることができない(超えると、「エイト・セカンズ・イン・ザ・キー・バイオレーション」(8 Seconds in the Key Violation)の反則)。2025年に、10秒から8秒へ短縮された。
  • キーエリアのトライラインの目印となる2つのトライポスト( = パイロン)を倒したり動かしたりしてはいけない。「ポスト・ファウル(Post Foul)」の反則。
  • 相手チームの攻撃を妨害する際は、ボールを持っている選手に対してのタックル( = 車いす同士をぶつけること)が認められている。これは、車いす競技で唯一認められている行為である[13]
  • タックルでは、相手競技者のタイヤの主軸より後方からコンタクトし、かつ、転倒させた場合には、「スピニング(スピニング・ファウル / Spinning Foul)」の反則となる。
  • ボールを持っていない選手に対して、プレーの妨害( = ブロック)を目的とした接触も認められている。しかし、ボールに関与していない選手への無差別な衝突や、危険なタックルは反則となる。
  • 手や腕を使って、ボール以外の相手選手に触れたり、相手の車いすをおさえたりする行為は「ホールディング・ファウル(Holding Foul)」の反則。身体を叩いたり、不当に触れたりする行為は「イリーガル・ユーズ・オブ・ザ・ハンズ・ファウル(Illegal Use of the Hands Foul)」の反則。
  • ボールを持ってハーフラインを一度越えた場合、ボールをハーフラインより後ろにパスしたり、ハーフラインを越えて自陣まで戻ることはできない。「バックコート・バイオレーション(Backcourt Violation)」の反則。
  • 上記いずれかが犯された場合には、ターンオーバーとなる( = 相手へボールの所有権が与えられる)。状況により、サイドライン、コーナーからのインバウンド( = ボール投入のパス)となる。
  • 退場処分となった場合、45秒の退場となる。2025年に1分から短縮された。

出場資格

ここでは、日本車いすラグビー連盟が定める出場資格を述べる。出典:[14]

クラス

「選手が持つポイント」は、後述のクラス分けのためのテストや観察により決まる。選手の症状経過により、個々の選手のポイントは変化することがある。

さらに見る 選手が持つ ポイント, 障がいの程度 ...
選手が持つ
ポイント
障がいの程度 運動能力の めやす[15]
3.5 障がい が 軽い







障がい が 重い
片手でどの位置でもドリブルができ、 体幹機能がしっかりしていて、腰をひねってプレーができる。攻守にわたってコ ートを動き回り、ボール争いに積極的にからむ。
3.0
2.5
2.0 腕の力で車いすのプッシュが可能。どの方向にもストップ、スタート、ターン ができる。プレー中に身体を乗りだすこともあり、ある程度強いパスやキャッチもできる。
1.5
1.0
0.5 上半身の筋力が低く、腹筋、背筋の体幹機能がない。車いすのプッシュ時には、 頭を上下に揺らしながら前屈みになる。 ストップ、スタート、ターンなど車いすの操作では手首から下が使えず、前腕を使用する。手首の力が弱く、狭い範囲の弱いパスやキャッチができる。
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さらに見る WWR世界ランキング, 順位 ...
WWR世界ランキング
(2026年4月7日更新)
順位 チーム ポイント
1 日本の旗 日本 488.50
2 オーストラリアの旗 オーストラリア 467.50
3 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 423.83
4 イギリスの旗 イギリス 423.83
5 フランスの旗 フランス 362.00
6 カナダの旗 カナダ 320.75
7 デンマークの旗 デンマーク 300.40
8 ニュージーランドの旗 ニュージーランド 260.15
9 ブラジルの旗 ブラジル 212.50
10 ドイツの旗 ドイツ 244.50
11 コロンビアの旗 コロンビア 170.00
12 スイスの旗 スイス 138.60
13 オランダの旗 オランダ 132.50
14 大韓民国の旗 韓国 109.50
15 アルゼンチンの旗 アルゼンチン 75.00
15 タイ王国の旗 タイ 75.00
17 チリの旗 チリ 69.00
17 マレーシアの旗 マレーシア 69.00
19 スウェーデンの旗 スウェーデン 67.20
20 パラグアイの旗 パラグアイ 63.00
21 ペルーの旗 ペルー 57.00
22 イタリアの旗 イタリア 51.20
23 チェコの旗 チェコ共和国 48.00
24 スペインの旗 スペイン 44.80
25 イスラエルの旗 イスラエル 41.60
26 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 38.40
27 アイルランドの旗 アイルランド 35.20
28 ノルウェーの旗 ノルウェー 32.00
29 シンガポールの旗 シンガポール 5.00
30 インドネシアの旗 インドネシア 4.50
31 インドの旗 インド 4.00
ランキングは1月・4月・7月・10月の毎7日に更新される。
ポイントの算出方法:WWR世界ランキング
[16]
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対象障がい

車いすラグビー 対象障がいは、4種類ある。

  1. 筋力低下頚髄損傷シャルコー・マリー・トゥース病脊髄性筋萎縮症 など
  2. 四肢欠損・切断先天性四肢欠損、外傷 など
  3. 筋緊張亢進脳性麻痺頭部外傷脳卒中 など
  4. 他動関節可動域制限:先天性関節拘縮症、慢性関節拘縮 など(ただし、筋力低下などの他の障がいも合併している必要がある)

以下の「最小障がい基準」でも、出場資格を得られる可能性がある。

  • 両手の握り動作に制限がある
  • 片手の握り動作に制限がある + 体幹機能に制限がある

クラス分け

以下の4つを基準に、選手がクラス分けされる。

  1. 上肢筋力テスト(右手の強さ、 左手の強さ、体幹機能)
  2. 体幹機能テスト(右手の強さ、 左手の強さ、体幹機能)
  3. 動作テスト
  4. 競技観察

日本車いすラグビー連盟のクラス分け委員会では、医師理学療法士作業療法士が上記テストを実施し、選手発掘事業や、国内選手が国際クラスを取得する手続きのサポートなどを行う。

日本の車いすラグビー

日本車いすラグビー連盟」「車いすラグビー日本代表」も参照。

1996年11月、日本で車いすラグビーの競技会が初めて行われる[17]

パラリンピックは、2004年アテネ大会から2024年パリ大会まで、6大会連続で日本代表が出場している。

2016年のリオデジャネイロパラリンピックの3位決定戦でカナダに52-50で勝利し、銅メダルを獲得した[18]

2018年、車いすラグビー世界選手権決勝でオーストラリアを62-61で破り優勝[19]

2019年4月1日、「ウィルチェアーラグビー」から「車いすラグビー」に日本語の競技名を変更。

2021年8月29日、東京パラリンピックの3位決定戦でオーストラリアと対戦して60-52で勝利し、銅メダルを獲得した。

2022年6月に開催されたCanada Cup 2022で優勝し、2022年6月10日にWWR世界ランキングが初めて1位となった[20]

2023年10月22日、パリで開催された 車いすラグビーカップ「International Wheelchair Rugby Cup 2023」(IWRC2023)において、50-49で開催国フランスを下し、銅メダルを獲得した[8][21]

2024年9月2日、2024年パリパラリンピックの決勝戦でアメリカ合衆国に48-41で勝利し、金メダルを獲得した[22]

ギャラリー

「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」 - 2019年10月 東京体育館

出典

関連項目

外部リンク

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