輝安鉱

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輝安鉱
カーネギー自然史博物館に展示される輝安鉱
分類 硫化鉱物
シュツルンツ分類 2.DB.05a
化学式 Sb2S3
結晶系 斜方晶系
対称 Pbnm
単位格子 a = 11.229 Å, b = 11.31 Å,
c = 3.8389 Å; Z = 4
晶癖 塊状、放射状、細長い結晶、粒状
双晶 まれ
へき開 {010}で容易に完全にへき開、{100}と{110}で不完全にへき開
断口 亜貝殻状断口
粘靱性 非常に柔軟だが弾性はない、わずかに割れやすい
モース硬度 2
光沢 金属光沢[1]
鉛灰色、黒ずんだ色または暈色、研磨断面は白色
条痕 鉛灰色
透明度 不透明
比重 4.63
光学性 異方的
溶解度 塩酸で分解
文献 [2][3][4]
主な変種
メタ輝安鉱 土壌性の赤みを帯びた鉱物
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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輝安鉱(きあんこう、stibnite[5]、スティブナイト)は、アンチモナイト(antimonite)とも呼ばれる鉱物(硫化鉱物)である。組成式 Sb2S3 で表される[6]斜方晶系に属し、モース硬度は2である[7]。希少な半金属であるアンチモンの最も重要な鉱石鉱物である[8]。また、日本刀のような美しい結晶が希に産出する。

輝安鉱は三硫化二ヒ素As2S3に似た構造をとる。ピラミッド型で3つの配位結合をもつアンチモン中心は、2つの配位結合を持つ屈曲した硫化物イオンによって結合している。しかし、いくつかの研究では実際の配位多面体はSbS7であり、M1側では(3+4)個の配位、M2側では(5+2)個の配位を持つとされ、いくつかの配位は二次結合に関連しており、凝集力を与えパッキング構造を作るとされている。灰色を呈するが、空気中では酸化して黒色に変色する。

性質

バンドギャップは常温で1.66 eVであり[9]、光伝導体である。融点は823 K (550 °C; 1,022 °F)である[10]。有毒であり、摂取するとヒ素中毒に似た症状が見られる[11]

利用

ルーマニア、ヘルジャ鉱山産の輝安鉱

Sb2S3粉末を脂肪[12]などに練り込んだペーストは、紀元前3000年頃から目元用の化粧品として地中海周辺の地域で用いられてきた。化粧品においては、Sb2S3は「コール」と呼ばれ、眉やまつ毛を暗くしたり、目の周囲にアイラインを描くのに用いられた[13]

三硫化アンチモン自体は、火工品組成物に用いられる。「Chinese needle」と呼ばれる針状の結晶は、グリッター混合物や白色の(火工品の)星に用いられ、そのうち「dark pyro」と呼ばれるものは暗所での感度を高めるために用いられる閃光粉として用いられた。しかし毒性と静電気への反応性から現在は使われていない[14]

輝安鉱は古代エジプト先王朝時代ナカダ3期から薬品や化粧品として用いられていた[13]。『Sunan Abi Dawud』という書物では、「最も優れた目薬はアンチモン(ithmid)である。それは、視界を明瞭にし、毛髪を生やすからである。」という発言が記されている[15]

17世紀の錬金術師ジョージ・スターキーは、錬金術の解説書である『An Exposition upon Sir George Ripley's Epistle』において、輝安鉱について記している。スターキーは輝安鉱を、賢者の石の前駆体とされた「賢者の水銀」の前駆体として用いた[16]

産出

主に熱水鉱床において産する。一般的に鉱床は小さく、大きなものはまれである。

世界の主要な産地はカナダアメリカメキシコのオクサカ、ペルー中国ルーマニアのバイアスプリーとヘリア、アルジェリアボルネオ(カリマンタン)、ドイツのハルツ山地、ロシアのネルチンスク、ボリビアのポトシ、チェコのプリプラム、カナダのニューブルンスイックなど。特に、中国湖南省では多く産出しており、鉱物標本も多く出回っている。アメリカではアーカンソー州アイダホ州ネバダ州カリフォルニア州アラスカ州に見られる。

日本では、かつて愛媛県市之川鉱山(閉山済み)で大型の美麗な輝安鉱結晶が産出したことで知られ、明治時代には多くの標本が海外に流出した。現在でも国内外の博物館に展示されている。そのほか、山口県鹿野鉱山愛知県の津具鉱山(津具金山)などが産地として有名である。鹿児島湾に存在する海底火山の若尊の海底熱水噴気孔でも、採取されている[6]

脚注

関連項目

参考文献

外部リンク

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