ユークリッド幾何学では、3 頂点が一直線上に並ぶ三角形は退化三角形と呼ばれる。これは三角形の二辺の和が他の一辺に等しくなる場合であり、三角不等式の等号成立の場合に対応する[2]。
円錐曲線においても退化は重要である。平面が円錐の頂点を通るとき、交線は通常の楕円・放物線・双曲線ではなく、1 点、1 本の直線、または 2 本の交わる直線になる。『ブリタニカ百科事典』は、これらを円錐曲線の特別な退化の場合としている[3]。
このように幾何学では、図形の一部の長さが 0 になる、複数の点が一致する、あるいは本来 2 次元的・曲線的な対象が 1 次元的・0 次元的対象になる場合を、退化した場合という。
多項式論では、通常は相異なる根が一致するとき、その根を重根という。MathWorld は、二次多項式
の 2 つの一致した根を退化の例として挙げている[1]。
線型代数学では、正方行列が可逆でない場合に singular(特異)と呼ばれるが、文脈によっては degenerate とも呼ばれる。このとき行列式は 0 であり、線形写像としては同型にならない。退化という語はさらに、双線型形式や二次形式についても用いられる。実際、対称双1次形式
が非退化であるとは、「任意の
に対して
ならば
」が成り立つことをいい、有限次元では対応する行列が正則であることと同値である[4]。したがって、この条件を満たさず非自明な核をもつ双線型形式は、退化した形式(退化形式)であるといえる[4]。
確率変数が確率 1 でただ一つの値だけをとるとき、その分布は退化分布と呼ばれる。統計学辞典では、退化分布は「確率変数の分布がただ1点に集中している特別な場合の確率分布」と説明されている[5]。