違国日記 (アニメ)
From Wikipedia, the free encyclopedia
| 違国日記 Journal with witch | |
|---|---|
アニメのタイトルロゴ | |
| アニメ | |
| 原作 | ヤマシタトモコ |
| 監督 | 大城美幸 |
| シリーズ構成 | 喜安浩平 |
| 脚本 | 喜安浩平 |
| キャラクターデザイン | 羽山賢二 |
| 音楽 | 牛尾憲輔 |
| アニメーション制作 | 朱夏 |
| 製作 | アニメ「違国日記」製作委員会 |
| 放送局 | BS朝日ほか |
| 放送期間 | 2026年1月4日 - 3月29日 |
| 話数 | 全13話 |
| テンプレート - ノート | |
| プロジェクト | アニメ |
| ポータル | アニメ |
『違国日記』(いこくにっき)は、朱夏制作による日本のテレビアニメ作品。ヤマシタトモコによる同名の漫画を原作としている。2024年5月に制作が発表され[1]、2026年1月から3月までBS朝日ほかにて放送された[2]。
本作は、原作の第1巻から第7巻までの内容を全13話で描いている[3]。1クールのアニメ作品として物語を完結させるため、終盤には本作独自の展開が組み込まれている[3]:3。
製作
| 原作 | ヤマシタトモコ |
|---|---|
| 監督 | 大城美幸 |
| 構成・脚本 | 喜安浩平 |
| キャラクターデザイン 総作画監督 |
羽山賢二 |
| サブキャラクターデザイン | 川村敏江 |
| プロップ設定 | 狩野都 |
| 衣装設定 | 相澤楓 |
| 美術 | 高橋依里子 |
| 美術設定 | 高橋依里子、三宅真央、 川崎かなえ、渋谷幸弘 |
| 色彩設計 | 田中美穂 |
| 撮影 | 並木智 |
| 編集 | 関一彦 |
| 音響監督 | 大森貴弘 |
| 音楽 | 牛尾憲輔 |
| 音楽制作 | ポニーキャニオン |
| 音楽プロデューサー | 中村伸一 |
| プロデューサー | 上田智輝、蔡愛蓮、三浦史、 金子広孝、松井優子 |
| アニメーションプロデューサー | 佐藤由美 |
| アニメーション制作 | 朱夏 |
| 製作 | アニメ「違国日記」製作委員会 |
企画
本作の企画は、アニメーション制作スタジオの朱夏から監督作品の打診を受けた大城美幸が、原作漫画を提案したことから始まった[5]。大城は原作コミックス第2巻の発売時期に作品を知り、「ネガティブな感情も含む人の感情をフラットに描いており、過剰な演出で悪者を際立てない」ことに魅力を感じていた[3]。こうした原作の雰囲気を損なわずに映像化できるか試したいという挑戦心が、アニメ化提案の動機の一つであったという[3]。
この提案を受けたポニーキャニオンの上田智輝プロデューサーは、2020年末から2021年初頭頃にかけて原作サイドへ企画を打診した[6]。上田は、世の中に「こうあるべき」とされる価値観を強いられていると感じている人々に対してそれを肯定する本作の度量に惹かれており、アニメ化によってその感覚を多くの人と共有できるようになればと考えていた[6]。企画の推進にあたっては、原作の繊細さを取りこぼさないよう、方向性を具体的に言葉にすることを心掛けていた[7]。
企画の打診を受けた原作担当編集の梶川恵は、数あるメディアミックスの提案の中でも、上田の「キャラクターや関係性を大事にしたい」という誠実な姿勢と、原作を尊重する企画書の内容を評価し、アニメ化を快諾した[7]。また、上田に漫画の投稿経験があり、創作の苦しみを知る人物であったことも、作品に寄り添ってくれるという信頼に繋がったという[7]。
大城、上田、そして朱夏代表の佐藤由美の3名を中心にプロジェクトが動き出し、後にシリーズ構成の喜安浩平が加わった[6]。制作にあたり、原作サイドからは過剰に「泣かせる」演出をせず、ドライさを損なわないでほしいというリクエストが寄せられた[3][7]。大城は日常のテンポや感情をあえて過剰に描かないことにこだわっており[3]、上田もまた「湿度を高くせず、ウェットになりすぎないこと」を指針として共有していた[7]。
脚本
シリーズ構成・脚本の喜安浩平は大城の判断によって起用された。大城によれば、別作品で喜安が執筆したシナリオから「ストイックで面白い仕事をする」という印象を受け、それが本作に合致すると判断してオファーに至ったと振り返っている[3]。喜安は参加の経緯について、アニメーションプロデューサーの佐藤とは以前から面識があり、別の企画を経た後に改めて連絡を受けて本作に参加したと振り返っている[8]。監督の大城とは制作の初期段階でビジョンが合致しており、脚本制作は放送の約2年半前には大きな難航なく完了していた[9]。なお、当初全12話構成の予定だったが、喜安の「意図しない駆け足が生じる」との判断により、途中で全13話へと変更された[8]。
脚色にあたって、プロデューサーの上田は「漫画を読んだあとの読後感に近い映像を目指したい」という方針をシナリオ会議の初期に掲げた[6]。自身を「原作原理主義者」と称する喜安も、基本的には原作の変更を不要としつつ、媒体の違いを埋めるための「映像的な加工」の必要性を説いている[9]。脚色にあたっては、原作者のヤマシタトモコへ事前に意図を伝え、セリフの文言について提案を受けながら、シーンの順序の入れ替えやコマとコマの間に流れる空気感の調整といった変更が行なわれた[9]。モノローグについては漫画と映像とで時間の経過が異なることから、原作のセリフをそのまま移し替えても同じ読後感には持っていきにくいとして、各シーンで大事にしているエピソードやセリフを最も活かす形が採用された[6]。また、アニメーションならではの暗喩性や「空想と現実を同じ作画監督・美術で表現でき境目がない」といった優位性を活かし、イメージシーンを各話で異なる国のように表現する手法を採用した[8]:2。
物語全体の構成では、複数の主題の糸が数話・数巻にもまたがりながら然るべきタイミングで浮上する構造を踏まえ、離れたところにある主題を同じ話数に集約して整理する手法が採られた[8]。各話で安易な解決や盛り上がりを作ることよりも、視聴者が「ここまで観れた」という感覚を持ち、次週への意欲につながるようなバランス重視したと説明している[8]。これは、本作が描く「一生付き合う問題」に対して、一話完結的な安心感を与えることが作品の本質から外れるという喜安の判断によるものである[8]。また、互いを見つめながら変化していく作品の特性に合わせ、朝と槙生のどちらか一方に描写が偏らないように双方が語り部として交互に成長していく過程を意識して構成された[9]:2。
具体的な脚本制作では、ト書きの段階で「ノートの罫線が砂漠の風紋へと変化する」といった映像表現を意識した書き方をしており、画面としての繋がりを現場に届けられるよう意識した執筆が行われた[8]:2。また、ヤマシタが漫画で活用している余白はアニメでそのまま再現するのではなく、セリフや音を映像と拮抗させることでアニメならではの見せ方を実現しようとしたと述べており、漫然と観ていても思わず画面に引き込まれるシーンが生まれるよう、画面への期待を込めた脚本作りを意識したという[8]:2。さらに、各話のサブタイトルは脚本完成後、その回の主題に合わせた「動詞一語」で統一された[8]。セリフの細部については、キャストの意見も反映されている[10]。例えば、高代槙生役の沢城みゆきからの提案により、第1話の「本物の寿司を食べさせてやる」という台詞が、他人に自分の性格を押し付けない槙生の性質に合わせた「本物の寿司を食べるぞ」という表現に変更するなど、微調整が重ねられている[10]。
映像表現
本作は、実写映画に近い落ち着いたトーンの映像制作が目指された。大城は、アニメ特有の自由なカメラ配置をあえて制限し、俯瞰や煽りといった極端なアングルを多用しない演出方針を採用している[5]。また、大城は映像制作において「邪魔にならない作画」を心がけたと述べており、作画が悪目立ちして物語から注意が逸れることを避けるため、過剰にならず丁寧にという方針を採った[3]:2。大城によれば、作画がやたらと動くと役者の芝居や音楽から視聴者の注意が逸れてしまうため、どこを動かしてどこを動かさないかを絵コンテの段階から常に意識していたという[3]:2。さらに、原作に登場する砂漠などの心象風景については、原作と同じタイミングで描くと唐突に感じられるとして、なるべくシームレスにイメージシーンへ切り替わるよう第1話から伏線を仕込む形で各話に配置したと大城は述べている[3]:3。大城によれば、こうした演出意図は物語に没頭できているかぎり視聴者が意識するものではなく、制作の意図を視聴者に意識させることは本末転倒であるとして、物語への没入を最優先に心がけたという[3]:3。
特殊効果の長谷川敏生は、ピザの小麦粉の質感や焦げ目といった日常的な細部に対して、エアブラシやグラデーションを用いた細やかな表現を施した[5]。また、日常芝居の作品として料理シーンにも相応のリアリティが求められ、料理をおいしく見せる場面はそのように仕上げる一方で、第1話のお寿司は意図的においしくなさそうに見えるよう色を鮮やかにしない調整が行われた[3]:2。大城によれば、「おいしくなさそうな寿司」の表現を研究するために実際にお寿司を購入して冷蔵庫に放置し、乾いたお寿司のハイライトの入り方などをスタッフで観察したという[3]:2。大城はこれに関連して、音響効果担当者も実際に揚げ物を調理して音を収録したとも紹介しており、実物を観察することがリアリティの源泉であるという考えを示している[3]:2。
デザイン・作画
キャラクターデザインおよび総作画監督を担当する羽山賢二は、アニメーションプロデューサーの佐藤からのオファーによって参加した[11]。羽山は、それまで手がけてきた作品と毛色の違うものを試したいという思いから、本作のオファーを引き受けたと述べている[11]。
キャラクターデザインにおいて羽山が意識したのは、原作の繊細さをなるべく線を減らしながら表現することであった[11]。これは実際に作画を担当するスタッフが線を追いやすくするための配慮でもあり、羽山はアニメ制作を「伝言ゲーム」と表現したうえで、その伝言がクリアに伝わるためのキャラクター表の役割を重視したと述べている[11]。キャラクターごとの造形においては、ぼーっとした目つきでありながら目つきが悪くなりすぎないよう調整が求められた塔野の表現や、美少女系キャラクターが得意でないと自認する羽山にとって難しかったえみりのデザインなど、各キャラクターで異なる苦労があったという[11]。また槙生の髪型については、状況に応じて複数のパターンが存在し、通常時・疲れているとき・縛っているとき・ほどいているときでそれぞれ異なる表現が求められたが、時間の制約からデザイン段階では2タイプを起こすにとどめ、残りはシーンごとに監督や衣装設定担当の相澤、各話の作画監督がフォローする体制で対応したという[11]。キャラクターデザインの作業に際して、原作者のヤマシタからは、頭の丸さをより大切にすること、あまりかわいくなり過ぎないよりフラットな表現にすることなどのフィードバックが寄せられ、羽山はこれらを反映する作業に時間を要したと振り返っている[11]。本編作画の初期においても、作画監督がかわいく仕上げてきたものをフラットに調整する作業が続いたという[11]。
総作画監督として羽山が特に注意を払ったのはポーズと髪型の表現であり、原作における槙生の姿勢のルーズさや起床時の寝ぐせといった細部に積極的に手を入れたと述べている[11]:2。本作ではアフレコが作画より先行していたことを活かし、声の抑揚に合わせて目元の動きや口の開き方を調整するといった作業も行ったという[11]:2。大城は羽山の起用について、もともと原作に寄せようとする作家性を持ち圧倒的に絵が上手いという評価からオファー時には不安が一切なかったとし、デザインが届いた際には即座に肯定の返事を送ったと述べている[3]。また総作画監督としての仕事についても、自身が想定していなかった表情芝居を羽山が監修で調整することでさらに面白い絵に仕上がった場面があったと評価している[3]。
本作のキービジュアルも羽山が担当しており、大元のアイデアは上田プロデューサーが出したものであるという[11]:2。本棚の中身はセルで描くことで輪郭線による密度感を出しつつ、本編作業が繁忙であったタイミングに背景担当者の作業量を減らすという制作上の事情も考慮したと羽山は述べている[11]:2。
音楽
本作の劇伴は牛尾憲輔が担当した。牛尾は参加以前から原作を読んでおり、登場人物たちが話の都合で行動を強制されず地に足をついている点や詩性においてインスパイアフルな物語であると感じていたと述べている[12]。
音楽の方向性については、話し合いを通じて「生っぽく実在する楽器の音色にフォーカスすること」「楽器の編成をシンプルにすること」が決定された[12]。本作は一対一の会話が多いことから、アレンジもピアノとアコースティックギター、あるいはピアノとヴァイオリンといった二項対立的な構成から着手した[12]。また、アニメには無音に思えるシーンでもエアコンや冷蔵庫の音のような「地の音」が存在するとして、本作の音楽はその地の音に寄ったものがよいという方向性がディスカッションを通じて固まったという[12]。
音響監督の大森貴弘の参加が遅れた影響で、牛尾は当初発注リストがない状態で楽曲を制作した[12]:2。そのため、しばらくは自ら思い描く曲を提出する形で進行し、後からメニュー表ができてから曲を当てはめていったという[12]:2。監督の大城が牛尾にピアノがメインの楽曲を希望し、第2話までのアフレコ終了後に牛尾が手持ちの資料や映像からイメージして複数曲を制作する形で制作が開始された[3]:2。大城によれば、その出来が非常に良かったため、以後は日常芝居のシーンにかける曲や明るい・悲しいといったふわっとしたリクエストに基づいてさらに楽曲が制作されたという[3]:2。大城は、音楽が静かで控えめなシーンが多い点は牛尾が作品から感じ取ってくれたものであり、音響監督の大森貴弘とも細かく音楽をつけすぎないという方針で一致していたところ、牛尾が制作した曲がまさにその意図通りであったと述べている[3]:2。
牛尾は、監督の大城が槙生の人物像に近い印象であったことから、監督自身に合うイメージも加味して作曲を進めたと述べている[12]:2。槙生に関わる楽曲については「必死に自分の生きる場所を築いてきた人の確固たる意志」というオーダーに基づいて制作し、朝については客観的な視点から明るく楽しげでスキップするような曲として書いたという[12]:2。序盤のイメージシーンでは中東やアジアといった西洋的でない雰囲気の音をミクスチャーしたエスニックな音楽が使用された[12]:3。一方で、砂漠のイメージシーンにおいてはシーンの地域性よりもキャラクターの感情に沿って曲を制作された[12]:3。なお、牛尾は実写映画版の音楽を担当した高木正勝を長年敬愛しているため、先入観を避けるべく、あえて楽曲制作前に実写版を鑑賞しなかったという[12]:3。
プロデューサーの上田は本作の音楽について、日常生活でずっと鳴っていても違和感がないほど生活に寄り添う音楽であると評している[6]:2。
キャスティング・収録
田汲朝役には、本作がテレビアニメ初のレギュラー出演となる新人の森風子が起用された[5]。監督の大城は、オーディションの段階から森の声が「朝そのもの」であり、ポジティブで闇を感じないフレッシュさと歌唱力の高さが決め手になったと語っている[5][3]。一方、高代槙生役の沢城みゆきは、声の「重さ」を表現できる稀有な役者として評価され、起用に至った[5]。大城によれば、沢城はオーディションの段階から圧倒的に槙生であり、全員の意見が一致したという[3]。プロデューサーの上田は沢城の芝居について、文脈から切り離すとシビアに聞こえうるセリフも「こういうことでもいいんじゃないか」という温度感で演じており、受け取る側に余地を残すキャラクター像を体現していると評価している[6]。収録の序盤にはヤマシタをはじめとする原作サイドが参加し、キャラクターの性格や話し方についてヤマシタが事前に用意したメモをもとにキャラクター解釈の共有が行われた[6]。上田によれば、槙生のメモには「基本的に低い声、平板でボソボソ話す」といった、ヤマシタが原作執筆時にイメージしていた内容が書かれており、演じ方の指示ではなくキャラクターの行動理念や姿勢を深めるためのものであったという[6]。
アフレコ現場では、実里役の大原さやかや沢城らが若手の森の緊張を解くなど、作品の空気感に近い和やかな環境が作られた[13]:2。森は、生身の人間ドラマとしての作品性を意識し、キャラクターを固定しすぎず現場の空気に柔軟に対応できるよう準備を整えて収録に臨んだ[13]。しかし大城によれば、森は最初からナチュラルに朝を演じており、リクエストをすることはほとんどなかったという[3]。対して沢城は、原作が持つ純文学のような空気感を肉声で表現することに難しさを感じつつも、槙生の孤独や社会的な苦しみに寄り添いながら収録に臨んだ[10]。収録初期、大城は沢城に対して感情を出しすぎている部分があると感じ、感情を抑えながらも冷たくない無機質さを何度もリクエストしたと述べている[3]。大きな転換点となったのは、第1話の収録で原作者のヤマシタトモコが「槙生はunderstandではなくI seeと言っています」と言葉をかけたことだったという[3]。この言葉を受けてから沢城の芝居が大きく変化し、話数を重ねるごとに沢城の芝居に槙生らしさが増していったと大城は振り返っている[3]。
大城は、第7話の実里を演じた大原さやかが、同一セリフを話すシーンと回想イメージシーンとで温度感をまったく変えた芝居をしていた点を特筆し、原作への高い解像度が表れていると述べている[3]:3。笠町信吾役の諏訪部順一については、にじみ出る色気を表現するうえでその芝居が正解であると感じつつも過剰にならないよう調整を求めるディレクションが入ったこと、若い頃の笠町との演じ分けにも感心したと述べている[3]:3。塔野和成役の近藤隆はオーディションの段階から驚くほどイメージにぴったりであったとし、楢えみり役の諸星すみれは第3話において声だけで説得力ある感情表現を実現していたと評している[3]:3。醍醐奈々役については、収録現場でヤマシタから「醍醐は引き笑いをしている」という補足があり、セリフ尺の調整が必要となるなかで松井恵理子がその場で柔軟に対応し、後の話数では引き笑いを自然に体得した演技を披露したと大城は述べている[3]:3。
作風
ライターのあんどうまことによると、本作では「音」が象徴的な要素として扱われている[14]。あんどうは、朝のモノローグに登場するキーボードの打鍵音や紙をめくる音などが、生活感や登場人物同士の距離感を表現する重要な役割を担っていると指摘している[14]。特に、朝が不快な対話を遮断するために用いる「音だけ聞いて言葉を聞かない」という描写や、日常の中で口ずさまれる歌唱シーンは、朝の心情を多層的に示すものとして機能している[14]。
ライターの丹渡実夢によれば、本作の物語の核心には、人間同士が本質的に「わかりあえない」ことを前提とした共存の模索が据えられている[15]。丹渡は、性格や価値観、生活習慣が正反対な槙生と朝の関係を、タイトルが示す通りの「違う国」の人間同士の交流として解説している[15]。また、ライターの米田果織によると、本作は相手を無理に理解したり自身の価値観を押し付けたりするのではなく、不器用ながらも実直に互いの孤独と向き合う姿を丁寧に描写している点に特徴がある[16][15]。
本作は、小さな日常の出来事の積み重ねによって展開される[5][16]。ライターの米田は、本作の魅力を「言葉にできない、名前のない感情」の巧みな表現にあると分析している[16]。演出面でも、現実味のあるセリフ選びや、15歳という多感な時期にある朝の不安定かつ純粋な反応を抑制されたトーンで描くことで、視聴者に寄り添うような空気感が創出されている[16]。こうした写実的なアプローチは、本作を「個人の救済」や「孤独との向き合い」といった普遍的なテーマを扱うドラマとして成立させている[16]。
反響・評価
視聴者からの反響
本作は日本国内にとどまらず、海外の視聴者からも高い評価を獲得した[17]。海外のアニメデータベースサイトであるMyAnimeListにおいては、第6話の放送時点で8.68という評価スコアを記録し、世界ランキングの上位に食い込んでいる[17]。maruによれば、日常やドラマを主軸とした作品としては異例の高評価であり、安易な共感に頼るのではなく、他者との分かりあえなさや違いを尊重して共に生きるという本作のテーマが、国境を越えて多くの視聴者の心に響いた結果であると分析されている[17]。
批評家による評価
アニメ評論家の藤津亮太は、本作の第1話について、確固たる映像世界が存在しており、語り口の工夫が非常に魅力的であると評している[18]。藤津によれば、アニメ第1話は原作の第1話から第3話までの要素を再構成することで、主人公の朝が槙生という異なる国の女王に出会った事実を視聴者に体感させる作りになっているという[18]。具体的には、孤独を象徴する砂漠のイメージや、槙生の毅然とした態度を示す場面を交差させることで、物語の軸を効果的に提示していると分析している[18]。また、ノートの罫線が風紋に変わるアニメオリジナルの場面転換や、車窓の反射を利用した心情描写など、少女漫画特有の表現を避けつつ実景に落とし込んだ演出を高く評価しており、独立した映像作品として喚起されるイメージを楽しめる作品であると述べている[18]。
ライターのmaruは、アニメーション制作を担当した朱夏について、沈黙や生活音、心象風景を繊細に描写する作風が、本作の喪失や孤独といった複雑なテーマを描き出す映像美に繋がっていると指摘している[17]。さらに、TOMOOやBialystocksによる主題歌、牛尾憲輔による劇伴などの音楽面が、パステル調の映像や世界観と絶妙に調和していると評価している[17]。また、アニメ版が原作の雰囲気を大切にしており、最終回についても納得のいく素晴らしいものであったと振り返っている[17]。
ライターの羽佐田瑶子は、価値観や性格が異なる二人が違いを受け入れながら共生しようともがく姿が、アニメにおいて丁寧に掬い取られていると述べている[19]。特に、二人をつなぐ要素としての料理シーンが食卓の温かみを感じさせる点や、劇中で描かれた朝の歌声が強く優しいものであった点を挙げ、ささやかな日常をないがしろにしない人物たちの息遣いが伝わってくる作品であると言及している[19]。
主題歌
- 「ソナーレ」
- TOMOOによるオープニングテーマ[20]。作詞・作曲はTOMOO、編曲は小西遼[21]。
- 楽曲名である「ソナーレ」は、イタリア語で「奏でる」「鳴り響く」を意味し、物語と心情が共鳴し合う響きを意図して制作された[21]。編曲は小西遼が担当しており、ピアノの旋律を主軸にハープやホルン、ストリングス、ハンドクラップを織り交ぜたアンサンブルによって構成されている[21]。TOMOOは、長年親しんできた原作漫画の言葉や眼差しから受けた感銘を楽曲に昇華させたと述べており、風でノートのページが捲られ、過去や未来へ開かれていくようなイメージからメロディを構想したと振り返っている[21]。歌詞には、自身の孤独に気づいた田汲朝の不安や、他者との関わりを通じて新たな一歩を踏み出す姿といった物語の情景が反映されている[21]。サビの「世界がほどける音」という表現は、閉ざされていた心の世界が静かに開き、新しい朝が訪れる風景を象徴している[21]:2[22]。
- 第1話の冒頭で、料理を作りながら朝がこの曲を口ずさんでいる。
- 「言伝」
- Bialystocksによるエンディングテーマ[20]。作詞は甫木元空、作曲は菊池剛と甫木元空、編曲はBialystocks。
- 本楽曲は、同グループにとって初のアニメタイアップ楽曲である[23]。作詞を担当した甫木元空は、作品が内包する「喪失」や「人との距離感」といった要素を汲み取り、視聴者が円滑に次回の視聴へ向かえるよう、物語の世界観を阻害しない楽曲制作を意識したと語っている[23]。制作過程では、メンバーの菊池剛が作成した英語のデモ音源における音の響きを重視しつつ、日常会話で用いられる平易な言葉を組み合わせることで、原作の持つ「浮遊感」を日本語の歌詞として表現することに重点が置かれた[23]。レコーディングにおいては、菊池の提示した「脱力して歌う」という明確な声のイメージを具現化するために細かな調整が繰り返され、収録が2日間に及ぶなど困難を伴ったとされる[23]。
- 第11話で朝が槇生ともつの前でこの曲を歌う。Bialystocksの曲は他にも、第5話で朝の憧れているバンドの曲として「Upon You」、第11話で軽音楽部員・望月が聴いている曲として「頬杖」が使用されている。
各話リスト
| 話数 | サブタイトル | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 初放送日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1話 | 溢れる | 大城美幸 |
| 2026年 1月4日 | |
| 2話 | 包む | 中野涼子 |
| 1月11日 | |
| 3話 | 捨てる | 寺東克己 | 小林寿徳 |
| 1月18日 |
| 4話 | 竦む | 大城美幸 |
|
| 1月25日 |
| 5話 | 選ぶ | 中野涼子 | 北村充基 |
| 2月1日 |
| 6話 | 重なる | 出合小都美 | 川妻智美 |
| 2月8日 |
| 7話 | 書き残す | 川面真也 |
| 2月15日 | |
| 8話 | 彷徨う | 川妻智美 |
| 2月22日 | |
| 9話 | 交わる | 寺東克己 |
|
| 3月1日 |
| 10話 | 縛る | かおり |
| 3月8日 | |
| 11話 | 解き放つ | 寺東克己 |
|
| 3月15日 |
| 12話 | 見つける | 橋本能理子 |
| 3月22日 | |
| 13話 | 大城美幸 |
| 3月29日 | ||
放送局
| 放送期間 | 放送時間 | 放送局 | 対象地域 [25] | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年1月4日 - 3月29日 | 日曜 23:00 - 23:30 | BS朝日 | 日本全域 | 製作参加 / BS/BS4K放送 / 『アニメA』枠 |
| 2026年1月5日 - 3月30日 | 月曜 0:00 - 0:30(日曜深夜) | TOKYO MX | 東京都 | 製作参加 |
| 月曜 0:40 - 1:10(日曜深夜) | 朝日放送テレビ | 近畿広域圏 | 『ANiMiDNiGHT!!!』枠[注 1] | |
| 月曜 22:30 - 23:00 | AT-X | 日本全域 | CS放送 / 字幕放送[26] / リピート放送あり |
| 配信開始日 | 配信時間 | 配信サイト | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月5日 | 月曜 1:00(日曜深夜) 更新 | Prime Video | 見放題先行配信 |
| 2026年1月10日 | 土曜 1:00(金曜深夜) 以降順次更新 | 見放題配信 | |
| レンタル配信 | |||
| 最新話期間限定無料配信 |
BD
| 巻 | 発売日[27] | 収録話 | 規格品番 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2026年4月22日 | 第1話 - 第6話 | PCXP-51256 |
| 2 | 2026年6月24日予定 | 第7話 - 第13話 | PCXP-51257 |