Nyctereutes procyonoides
食肉目イヌ科の動物
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Nyctereutes procyonoides (タイリクタヌキ) は、食肉目イヌ科タヌキ属に分類される哺乳類の一種である。 このタヌキの一種は、アジア大陸原産であり、20世紀初頭から主に中国やロシアで毛皮を得る目的で大規模に飼育されてきた。飼育個体の一部が逃げ出したり、生産拡大のために放たれたりした結果、東ヨーロッパで野生化した集団が形成された。現在ではヨーロッパ全体に分布を広げつつあり、外来侵入種とみなされているため、その存在は望ましくないとされている。また、狂犬病の感染拡大など、公衆衛生上の懸念も引き起こしている。
| タイリクタヌキ | |||||||||||||||||||||||||||
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タイリクタヌキ Nyctereutes procyonoides | |||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Nyctereutes procyonoides (Gray, 1834) | |||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
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| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||
| タイリクタヌキ[要出典] | |||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Common raccoon dog[1] Chinese raccoon dog[1][2] Raccoon dog[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||
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分類

本種は1834年、イギリスの博物学者ジョン・エドワード・グレイによって、トーマス・ハードウィックが著した『The Indian Zoology』第2巻に収録されたスケッチに基づき、プロトニムCanis procyonoidesの名で初めて記載された[4]。種小名procyonoidesはギリシア語風の新ラテン語で、直訳的に「アライグマに似たもの」を意味する。しばしば「犬の祖先」と誤解されることがあるが、この場合は外見上の類似を指すものである。
その後、被毛色の違いを根拠として日本産のタヌキは別種Nyctereutes viverrinusとして記載されたが[5]、ほどなく本種の変異とみなされ、同種内に含められるようになった。
形態的特徴
体の大きさ
タイリクタヌキ(Nyctereutes procyonoides)は、一般にニホンタヌキ(N. viverrinus)より大きい傾向があるが、亜種や分布域により体サイズには大きな変異が見られる。中国および朝鮮半島の個体では、体長はおおよそ50〜58センチメートル、肩高は26〜50センチメートルの範囲にある[3]。尾長は13〜25センチメートル程度であるが、韓国産の個体ではやや短く、18センチメートル前後にとどまることがある。
体重にも地域差があり、中国および朝鮮半島における一般的な個体は3〜6キログラムの範囲にあり、韓国の個体では平均約5.3キログラム、中国産では冬眠前に10キログラム前後に達することもある[3]。
このうち、ウスリータヌキ(N. p. ussuriensis)はタヌキ属中でも最大の亜種とされ、尾を除いた体長が最大71センチメートル、肩高は約50センチメートル、冬季には体重が12キログラムを超える場合がある。
毛皮
タイリクタヌキの毛皮はニホンタヌキに比べて長く密生し、特に冬毛では寒冷地に適応した高い保温性を示す。毛色は亜種や地域によって異なるが、一般に灰褐色を基調とし、淡褐色または黄褐色の毛が混じる[3]。黒い上毛が散在し、尾部は体幹部より暗色となる。背面には暗色の縦帯が走り、肩部付近で広がって十字状の模様を形成する。腹部は黄褐色、胸部は暗褐色から黒色を帯びる。顔は短毛に覆われ、眼の後方にかけて毛が長く密になる。頬には長い頬毛が発達する。
夏毛はより光沢があり、色調は赤みがかった麦わら色に変化する[6]。
中国では、白色や赤褐色などの毛色変異個体が飼育・繁殖によって得られている[7]。
また、体や顔に見られるいわゆる仮面模様は、ニホンタヌキに比べて不明瞭である。
- 冬毛。
- 夏毛。
- 白色変異個体。
生態
生息地
タイリクタヌキは、平野から混交林に至るまで、さまざまな環境に適応して生息することができる[8]が、特に湿地環境を好む傾向がある。生息地の性質は季節や生活史、あるいは亜種によっても変化する。中国の個体群は森林地帯を好み、ウスリー地方の個体群はより開けた地域を選好する傾向がある[9][10]。
日中は、木の根元や他の動物(アナグマ、ヨーロッパアナグマ など)が掘った巣穴、あるいは人家近くの納屋、廃屋、排水管などをねぐらとすることが多い。
秋には体重が大きく増加し、冬季には冬眠に似た不活発状態に入ることがある。この状態は完全な冬眠ではなく「軽い休眠(トーパー)」と呼ばれ、代謝を約25%低下させる。これは恒常的な行動ではなく、気温が-5℃以下になる場合や暴風雪など環境条件が厳しい場合に限られる[6]。
食性
タイリクタヌキは雑食性であり、昆虫、齧歯類、両生類、鳥類、魚類、爬虫類、軟体動物、カニ、ウニ、卵、腐肉、糞、人間の廃棄物など、さまざまな動物性食物を摂取するほか、果実、木の実、ベリー類も食べる[11][12][13][14]。
湿地ではハタネズミ類が主要な獲物となるが、平原地帯ではスナネズミ類がそれに代わる。両生類ではカエルが最も一般的に捕食され、ヴォロネジ地方ではヒキガエル科、ウクライナではアカガエル属の種が主な餌となる。皮膚毒を持つヒキガエルを捕食する際には、唾液を大量に分泌して毒を希釈することが知られている[15]。
さらに、水鳥やスズメ目、渡り鳥なども捕食する。導入域ではライチョウ類がよく捕食され、ウスリー地方ではキジの捕食例も多く報告されている。
植物性食物も多様であり、地下茎、球根、穀類(エンバク、キビ、トウモロコシなど)、ナッツ、果実、ベリー、ブドウ、メロン、スイカ、カボチャ、トマトなどが含まれる[6]。
このような幅広い食性により、ヨーロッパでは特に捕食者の少ない湿地・森林において生物多様性に悪影響を及ぼす侵入種として問題視されている[16]。
競合種および捕食者
原産地では、タイリクタヌキはアカギツネやアナグマと共存している。ヨーロッパでは外来種として定着しており、ヨーロッパアナグマやアカギツネとなわばりを巡って競合する[17]。また、ムナジロテンやヨーロッパケナガイタチなどの小型食肉類とも食物資源を巡って競合する[18]。アナグマやキツネはしばしば仔を殺すことがあり、成獣が襲われる場合もある。
近年、中央ヨーロッパにおいてキンイロジャッカル(Canis aureus)の分布拡大が進み、過密地域ではタイリクタヌキの個体数が減少している[19]。
冬季にはオオカミ(Canis lupus)が主要な捕食者であり、地域によっては捕食例の3分の2を占めることもある[20]。このほか、キエリテン、ユーラシアオオヤマネコ、クズリ、さらにワシミミズクやイヌワシなどの大型猛禽類も天敵として知られている[21]。
人間との関係
ヨーロッパにおける外来種としての分布
旧ソ連での導入
1928年から1955年にかけて、ヨーロッパ地域の旧ソビエト連邦内で9,000頭以上の個体が放逐され、毛皮生産の増加が目的であった[22]。この動物の毛皮は非常に高価で、特にソ連軍の防寒衣料の製造に利用された。
最初の放逐は1928年にウクライナで行われ、その後ヨーロッパおよびアジアの各地域で自然環境への導入が試みられた。導入地域はカレリア共和国からモルドバ、バルト三国、ベラルーシ、ウクライナ、ロシア各地、コーカサス地方、カザフスタン、さらには極東のサハリン島にまで及んだ。
1940〜1950年代には、ソ連国内での飼育が盛んになり、特に当時の赤軍の需要増加により生産が拡大した。飼育場から逃げ出した個体が野生集団を補強したと考えられる。第二次世界大戦終結後は毛皮需要が減少し、多くの飼育場が閉鎖され、飼育個体が自然に放たれた。1948年から1955年の間に9,000頭以上が放逐されたとされる[23]。
ヨーロッパでの侵略的拡散
この種は急速にヨーロッパ北部・中部・西部へと拡散した。最初に隣接諸国で確認されたのはフィンランドで、1930年代半ばのことである。その後、西ヨーロッパにも分布を広げた。
1935年から1984年にかけて、タイリクタヌキはおよそ140万平方キロメートルの範囲に分布を拡大した[24]。
現在では、ロシア南部、フィンランド南部、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、ポーランド北東部およびルーマニア東部で普通に見られる。1970年代には生息地の減少や高い死亡率により拡散が鈍化したが、1990年代にはドイツで再び個体数が増加し、狩猟による捕獲数が顕著に増えた[25]。
2019年以降、この種は欧州連合における「要注意外来生物リスト」に掲載されており[26]、EU域内での輸入・飼育・輸送・販売・放逐が禁止されている[27]。また、飼育も禁じられている。