Slack (ソフトウェア)
スチュワート・バターフィールドによって開発されたチームコミュニケーションツール
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Slack(スラック)は、セールスフォース傘下のSlack Technologiesが開発・提供する、業務向けのチームコミュニケーションツール(コラボレーティブソフトウェア)である。話題ごとに作られる「チャンネル」と呼ばれるチャットルーム、ダイレクトメッセージ、音声・映像による通話、ファイル共有、外部サービスとの連携といった機能を、ウェブブラウザとデスクトップ・モバイルのアプリで提供する。名称は"Searchable Log of All Conversation and Knowledge"(すべての会話と知識の検索可能な記録)のアクロニムである[19]。
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| 作者 | スチュワート・バターフィールド、エリック・コステロ、カル・ヘンダーソン、セルゲイ・ムーラチョフ[1] | ||||||||
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| 開発元 | Slack Technologies(セールスフォースの子会社)[2] | ||||||||
| 初版 | 2013年8月[3] | ||||||||
| 最新版 [±] | |||||||||
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| 最新評価版 [±] | |||||||||
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| プログラミング 言語 |
クライアント: JavaScript(Electron、React)[13] サーバー: PHP(Hack、HHVM、2016年時点)[14] | ||||||||
| 対応OS | Windows、macOS、Linux、iOS、Android、ウェブブラウザ[15] | ||||||||
| 対応言語 | 9言語(2026年9月時点)[16] | ||||||||
| サポート状況 | 活発 | ||||||||
| 種別 | コラボレーティブソフトウェア | ||||||||
| ライセンス | プロプライエタリ | ||||||||
| 公式サイト | https://slack.com/ | ||||||||
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| 種類 | セールスフォースの子会社[2] |
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| 本社所在地 |
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| 設立 | 2009年[17] |
| 業種 | ソフトウェア |
| 事業内容 | Slackの開発・提供 |
| 代表者 | ロブ・シーマン(暫定CEO・2025年12月 - )[18] |
| 売上高 | 9億260万ドル(2021年1月期)[17] |
| 従業員数 | 2,545人(2021年1月31日時点)[17] |
| 主要株主 | セールスフォース[2] |
| 関係する人物 | スチュワート・バターフィールド(共同創業者・元CEO)、エリック・コステロ、カル・ヘンダーソン、セルゲイ・ムーラチョフ(共同創業者) |
| 外部リンク | slack.com |
Flickrの共同創業者スチュワート・バターフィールドが率いていたTiny Speckが、オンラインゲーム「Glitch」の開発中に社内向けに作った連絡ツールを原型とし、2013年8月に公開、2014年2月に一般提供が始まった[20][21]。運営企業のSlack Technologiesは2019年6月にニューヨーク証券取引所へ直接上場し、2020年12月にセールスフォースが277億ドルでの買収に合意したと発表、2021年7月に買収が完了した[17][22][2]。買収後は、セールスフォース製品との統合と、Slack AI(2024年)、Agentforce in Slack(2025年)、AIエージェント化されたSlackbot(2026年)といった生成AI機能の組み込みが進められている[23][24]。
公開されたAPIを通じて多数の外部サービスと連携できる。サーバー側はAmazon Web Services上で稼働する[25]。2020年春には在宅勤務の広がりを背景に利用が急増し、同時接続利用者は同年3月25日に1,250万人に達した[26]。Slackは同年、働き方を調査するコンソーシアムFuture Forumを設立し、買収完了時にはセールスフォースとともに「どこからでも成功できるデジタル本社(digital HQ)」という位置づけを掲げた[27][2]。
Slackは無料プランと複数の有料プランを組み合わせたフリーミアム型で提供され、運営企業は年次報告書でマイクロソフトやGoogleなどを競合として挙げていた[17]。日本では2017年11月に日本語版の提供が始まった[28]。2019年にはCEOのバターフィールドが日本を米国以外で最大の市場だと述べ、2020年6月時点で日本のアクティブユーザー数が100万人に達したと説明している[29][30]。
歴史
Slackは、オンラインゲームの開発会社が社内で使っていた連絡用ツールを起点に、2013年に業務向けサービスとして公開された。2014年の一般提供開始以降、複数回の資金調達を経て利用を広げ、2019年6月にニューヨーク証券取引所へ直接上場した。2020年12月にセールスフォースが買収を発表し、2021年7月に手続きが完了して同社の子会社となった。
Tiny SpeckとGlitch
運営企業は2009年にデラウェア州法人「Tiny Spec, Inc.」として設立され、同年中に「Tiny Speck, Inc.」へ社名を変更した[17]。率いていたのは、写真共有サイトFlickrの共同創業者であるスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)である[31]。バターフィールドらは以前にも、オンラインゲーム「Game Neverending」の開発中に作った写真共有機能を独立した製品に仕立て、それがFlickrになった経緯を持つ[20]。Tiny Speckが手がけた製品は、Glitchというオンラインゲームであった[20]。Glitchは2011年9月27日に一般公開され、2012年11月に終了した[32][31]。
Glitchの開発中、社内の連絡のために作られたツールがSlackの原型となった[19]。バターフィールドはGlitchの終了後、Tiny Speckを業務チーム向けのツールを作る会社へ転換した[31]。
公開と成長(2013年 - 2018年)
Slackは2013年8月14日に公開された[31]。バターフィールドはこれを「チームのコミュニケーションをすべて一か所にまとめ、検索できるようにするもの」と説明した。当初は5人から150人程度のチームを想定し、常設のチャットルーム、プライベートメッセージ、業務ツールとの連携を組み合わせる構成をとった。公開時点では無料で提供され、価格は未定とされていた。この時点で連携していたサービスにはGoogle Docs、Dropbox、Heroku、Crashlytics、GitHub、Zendeskがあった[31]。バターフィールドは同時期のインタビューで、社内の連絡が電子メールに集中して処理しきれなくなる状態を解消することを狙いに挙げている[33]。
2014年2月12日、約半年の限定ベータを終えて一般提供が始まり、フリーミアム型の課金が導入された。有料プランは保存されたメッセージへのアクセスを軸とし、最新の1万件までを無料、それを超える分を課金対象とする設計が検討されていると報じられた。ストレージ容量と連携アプリの数も課金の対象とされた。この時点で試用していたチームの規模は250人から10人程度までで、10人前後が典型であった。米国の教会、建材会社、英国政府の部署など、技術以外の分野からの利用も現れていた[21]。
一般提供の開始から2か月あまりの2014年4月25日、Slackは4,275万ドルの資金調達を発表した。リード投資家はSocial Capital(当時の名称はThe Social+Capital Partnership)で、Tiny Speck時代からの投資家であるAccel PartnersとAndreessen Horowitzも参加した。同時点の日次利用者は6万人、有料シートは1万5,000であり、Rdio、Medium、SoundCloud、Heroku、Lonely Planet、BuzzFeedなどが利用していた[34]。運営企業は2014年に社名を「Slack Technologies, Inc.」へ変更した[17]。同年10月には1億2,000万ドルの投資を受け、企業評価額は11億2,000万ドルとなった[35][36]。
2015年1月28日、Slackは画面共有と音声通話を手がけるScreenheroを買収した。当時の累計調達額は1億8,000万ドル、日次アクティブ利用者は36万5,000人であった。バターフィールドはScreenheroを当面は別製品として運用すると述べた[37]。同年4月16日にはシリーズEとして1億6,000万ドルを調達し、ポストマネー評価額は28億ドルとなった。この時点の日次利用者は75万人と報じられている[36]。
2016年4月1日には、Thrive Capitalがリードする2億ドルの調達を実施し、ポストマネー評価額は38億ドルとなった。設立から3年での累計調達額は5億4,000万ドルに達した。前年4月からの1年間で利用者は3.5倍になったとされる[38]。
2018年7月26日、アトラシアンは自社の企業向けチャット製品HipChatとStrideの知的財産をSlackへ売却すると発表した。アトラシアンは同時にSlackへ少数株主として出資し、両社は提携関係を結んだ[39]。発表時点では2019年2月15日をHipChatとStrideの最終提供日とする予定が示され、両社が協力して利用者のSlackへの移行を支援するとされた[40][41]。
株式公開(2019年 - 2020年)
2019年4月26日、Slack Technologiesは通常の新規株式公開ではなく直接上場(direct listing)による株式公開を選び、アメリカ合衆国証券取引委員会へ登録届出書(Form S-1)を提出した。これは新株の公募を行わず、既存株主が保有株を市場で売却する方式である[42]。届出書に記載された売上高や利用者数については後述する。
バターフィールドは上場当日のCNBCのインタビューで、直接上場を選んだ理由を、非公開の投資家から資本を調達する閉じた手続きを経ずに公開資本市場へのアクセスを早めるためだと説明し、「売り手も買い手も多い、需要と供給のあるこのモデルで、より早く市場清算価格に達することを期待している」と述べた[43]。クラスA普通株は2019年6月20日から銘柄記号「WORK」でニューヨーク証券取引所に上場した[17]。
2020年春には、在宅勤務の広がりを背景に利用が急増し、同時接続利用者は同年3月25日に1,250万人に達した(詳細は後述)。同時期にはIBMが33万人の従業員向けにSlackを採用したことも報じられている[26]。
同年6月24日にはSlackが、他組織のワークスペースと接続して社外とやり取りできるSlackコネクト(Slack Connect)を公表した(後述)[44]。
セールスフォースによる買収(2020年 - 2021年)
2020年12月1日、セールスフォース(当時の社名はセールスフォース・ドットコム[45])は、Slack Technologiesを277億ドルで買収することに合意したと発表した[22]。セールスフォース共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のマーク・ベニオフは声明で、両社が「オールデジタルでどこからでも働ける世界における働き方」を変えるとし、バターフィールドも複雑さの低減と柔軟性の向上という展望を共有していると述べた[22]。
買収は2021年7月21日に完了し、Slack Technologiesはセールスフォースの子会社となった[2][45]。完了時の発表では「どこからでも成功できるデジタル本社(digital HQ)」を作るという位置づけが示された[2]。
セールスフォース傘下(2021年以降)
買収後のSlackは、セールスフォースの製品群との統合と、生成AIおよびAIエージェント機能の組み込みを軸に開発が進められた。買収後、Slackの最高経営責任者(CEO)は3度交代している[18]。2022年12月の時点で、セールスフォースの広報担当者はSlackが同社のCustomer 360プラットフォームに組み込まれていると述べている[46]。
2022年12月5日、共同創業者でCEOのスチュワート・バターフィールドが翌2023年1月にセールスフォースを離れることが報じられた。後任には、セールスフォースでデジタルエクスペリエンスクラウド部門の執行副社長兼ゼネラルマネージャーを務めていたリディアン・ジョーンズ(Lidiane Jones)が2023年1月に就任した[46]。
ジョーンズの在任は約1年で、2023年にはセールスフォースに14年在籍し、CEO就任前は同社のエンタープライズ営業部門で複数の役職を務めたデニース・ドレッサー(Denise Dresser)が後任のCEOに任命された。ジョーンズはその後、Bumbleの最高経営責任者に転じた。ドレッサーの在任中に、AIによる会議要約やセールスフォースのAIエージェントとの統合など、複数のAI機能が展開された[18]。2025年12月、ドレッサーがOpenAIの最高収益責任者に転じることに伴い、Slackの最高製品責任者であったロブ・シーマン(Rob Seaman)が暫定CEOに就任した。共同創業者のバターフィールドとカル・ヘンダーソン(Cal Henderson)も、買収後数年のうちに退社している[18]。
2023年5月4日、セールスフォースはニューヨークで開催したWorld Tour NYCで「Slack GPT」を発表した。Slackに統合された会話型AIとして、AIによる会話の要約と文章作成支援をSlack内で提供し、ノーコードのワークフローに各段階でAIの処理を組み込めるようにするものである。セールスフォースは、顧客がOpenAIやAnthropicなどの大規模言語モデルを安全に統合したり、任意のモデルを選んで利用したりできるとした。同時にCRMと会話データを結びつけるEinstein GPT for Slackアプリも発表された[47]。
2024年2月、Slackは生成AI機能をまとめた「Slack AI」を米国と英国のEnterpriseプラン向けの有料アドオンとして提供し始め、同年4月には日本語を含む多言語に対応してすべての有料プラン向けに拡張した(機能の詳細は後述)[48][49][23]。Slackは、パイロット運用中の社内分析で、Slack AIの利用者1人あたり週平均97分の時間短縮が確認されたとしている[49]。2025年7月17日には、翻訳やハドルミーティングのAI議事録、エンタープライズ検索などを含むSlack AIの機能拡充が発表された[50]。
2024年12月に発表されたAgentforce 2.0では、自律的に動作するAIエージェントをSlackへ展開する「Agentforce in Slack」が含まれた。日本市場では2025年1月29日に提供が始まり、Agentforceハブに加えてSlack内のダイレクトメッセージから利用でき、チャンネルでの利用は同年2月以降とされた。すべてのSlack有料プランで、Salesforce Agentforceのライセンスを追加することで利用できる。2月以降には、エージェントの構築画面から「canvasを作成する」「チャンネルにメッセージを投稿する」といったSlackの操作を呼び出す機能と、Slackのダイレクトメッセージ、チャンネル、キャンバスに蓄積された情報を検索する機能が加えられるとされた[51]。
2026年1月13日には、AIエージェント機能を統合した新しいSlackbotがBusiness+およびEnterprise+プランの顧客向けに一般提供された(後述)[52][53][24]。
2026年4月29日(日本語での発表は5月12日)、セールスフォースは、すべてのSalesforce顧客がSlackを追加費用なしで利用できるようにし、2026年夏以降は新しいSalesforce環境の作成時にCRMデータと接続されたSlackのフリープランのワークスペースを自動生成する予定だと発表した[54][55][56]。
2026年8月20日、セールスフォースは開発作業向けの「Slack Code」を発表した。コーディングセッションやプロジェクトごとに、人とAIエージェントが協働する専用の場をSlack上に設けるもので、AnthropicのClaude Code、CognitionのDevin、GitHub Copilot、ChatGPTといったコーディング支援のAIエージェントが広まったことを背景に挙げている[57]。同年8月26日には、セールスフォースとAnthropicが戦略的パートナーシップ「Claudeforce」を発表し、ClaudeをSlack AIとSlackbotを支える既定のモデルとする方針を示した[58]。
機能
SlackはIRCに似た機能を多く備えており、話題別に作られる持続的なチャットルーム「チャンネル」、プライベートなグループ、1対1のやり取りを組み合わせて使う。ファイル、会話、メンバーを含むワークスペース内のコンテンツは検索の対象となる。音声・映像による会話、文書の共同編集、作業の一覧管理、定型作業の自動化、AIによる要約といった機能が、いずれもチャンネルを中心とした画面の中で提供される。
ワークスペースとチャンネル
利用者はまず「ワークスペース」に属する。ワークスペースへの参加は、管理者やオーナーが発行する固有のURLか招待によって行う。ワークスペース内には話題別のチャンネルが作られ、チャンネル名は「#」から始まる文字列で表される。チャンネルにはワークスペースのメンバーが誰でも検索・閲覧できるパブリックチャンネルと、招待されたメンバーだけが参加・閲覧できるプライベートチャンネルの2種類があり、作成後に相互に変換できる[59]。
組織の外部とやり取りするための仕組みがSlackコネクトである。2020年6月24日、Slackは従来の共有チャンネルを拡張したものにSlackコネクトという名称を与えて提供を開始し、すべての有料プランで最大20の異なる組織のメンバーが同じチャンネルで共同作業できるようにした。Slackは、共有チャンネルを4年以上かけて開発してきたとし、提供前にSlack社内および複数の組織でベータ運用していたと説明している[60]。Slackの説明では、利用の手順はチャンネルを作成し、取引先や顧客を招待し、相手が招待を承諾すると同じチャンネルでやり取りが始まるというもので、参加できる相手や相手が閲覧・共有できる範囲は招待する側が指定する[61]。
メッセージング
チャンネルを介さずに利用者間で直接やり取りする手段として、1対1のダイレクトメッセージと複数名のグループメッセージがある。それぞれのチャンネルやダイレクトメッセージにはファイルを添付できる。メッセージには返信をまとめるスレッドが付けられ、絵文字によるリアクションを付けることもできる。使える絵文字はUnicodeで規定されたもののほか、ワークスペース独自の絵文字を登録することもできる。絵文字によるリアクションは2015年7月に追加された[62]。ほかにメンションによる呼び出し、送信時刻を指定する予約送信、ワークスペース内のメッセージとファイルを対象とする検索がある。送信時刻を指定する予約送信について、Slackは、相手がその日の仕事を終えている時間帯に下書きを用意し、相手が戻る朝に配信されるよう設定する使い方を挙げている[63]。
音声・映像
2021年6月30日、Slackは音声会議機能「Slackハドルミーティング」を発表した。すべてのチャンネルとダイレクトメッセージから1回の操作で音声会議を始められ、画面の共有やマイクのミュートも行える。「ハドル」という名称はアメリカンフットボールの試合中に行われる作戦会議に由来する。当時CEOであったスチュワート・バターフィールドは、この機能を雑談の持つ即興性や偶発性を再現したものと説明した。同時に、動画や音声を収録して共有する機能(クリップ[64])も発表され、メッセージ入力欄のカメラボタンから収録し、あらかじめ共有することで時間を合わせずにやり取りできるとされた[65]。
2022年6月22日のFrontiersではハドルミーティングへの映像と画面共有の追加が発表され[66]、同年9月のDreamforceで正式に提供が始まった[67]。ハドルは常に音声から始まり、ボタン操作でサイドバーに小さな映像を表示したり、独立したウィンドウに切り替えたりできる。映像を使うハドルでは複数の参加者が同時に画面を共有でき、各ハドルには専用のチャットスレッドが付いてハドル終了後もSlack内に残る。ハドル自体は録画されない。Slackの製品担当責任者であったタマル・イェホシュアは『ザ・ヴァージ』に対し、映像を任意にしたのは映像をオンにする社会的な圧力を減らすためであり、ハドルはカメラをオンにして正式な会議を開く負担なしにチームが手早く用事を片づける共同作業の道具として使われることが多いと述べた。Slackによればハドルの平均時間は10分である[66]。
キャンバスとリスト
キャンバス(Slack Canvas)は、2022年9月にセールスフォースの年次イベントDreamforceで発表された文書機能で、発表時点では2023年の一般提供が予定されていた。Slack内でテキストや画像、動画を1つの文書としてまとめられ、Slack内での共有と共同編集に対応する。チャンネルやメンバー単位で共有でき、文書の任意の箇所にスレッド形式でコメントを付けられ、特定のチャンネルに紐付けることもできる。発表を行ったのはSlackの最高製品責任者タマル・イェホシュアである[67]。
2024年6月には、作業の一覧管理を行う「Slackリスト」の正式リリースが発表された。プロジェクトごとにタスクの一覧を作り、アイテム名、ステータス、優先度、担当者、期限、関連ファイルを一覧の形で表示する。一覧はスレッド上で共有でき、タスクごとのスレッドでやり取りができ、かんばん形式での表示にも対応する[68]。
ワークフロービルダー
ワークフロービルダーは、Slack上の定型的な作業や手続きを自動化する機能である。開始のきっかけと処理の順序を画面上で組み合わせてワークフローを作り、業務で使う他のアプリを組み込むこともできる。ワークフローを構成する各ステップのうち、外部サービスで処理を行うものはコネクタステップと呼ばれ、利用にあたって当該サービスのアカウントの認証が必要になる。管理者はメンバーがワークフローに追加できるコネクタステップとカスタムステップを管理できる[69]。
SlackbotとAI機能
Slackbotは、連携先サービスとのやり取りなど、Slackを用いた自動化を助けるためにSlackに組み込まれていたボットである[24]。また、Slackアプリを通じて独自のボットを追加することもできる(後述)。
2026年1月13日、セールスフォースはAIエージェントの機能を組み込んだ新しいSlackbotをBusiness+およびEnterprise+プランの顧客向けに一般提供した[52]。従来のSlackbotが主に連携先サービスとのやり取りなどの自動化を助ける機能だったのに対し、新しいSlackbotはSlackの履歴やアクセスできるデータから利用者の文脈を捉え、個人向けのアシスタントとして働くと説明されている。過去の議論の検索と要約、決定事項の一覧化、キャンバスの作成、複数の参加者のカレンダーの空き状況の確認とスケジュールの調整、資料の検索と要約などを依頼できる。セールスフォースの説明では、利用者自身にアクセスが許可されている情報だけを示し、利用者とSlackbotのやり取りは非公開に保たれ、やり取りや参照された情報がAIの学習に使われることはないとしている[24]。
Slack AIは、質問に回答を提示する「回答の検索」、チャンネルの要点をまとめる「チャンネルの要約」、長い会話を把握する「スレッドの要約」の3機能として2024年2月14日(現地時間)に米国と英国で一般提供が始まった。当初はEnterpriseプランの有料アドオンとして英語のみで提供された[48][49]。2024年4月には日本語を含む多言語に対応し、すべての有料プラン向けの有料アドオンとして提供されるようになった。同時点で案内された機能は、指定したチャンネルの要約を毎朝ダイジェストとして配信する「まとめ」、会話形式の質問に対して関連する会話から引用した回答を返す「回答の検索」、アクセスできるチャンネルやスレッドから要点を抽出する「会話の要約」(未読分、過去7日間、任意の期間を指定できる)である[23]。
2025年7月17日、セールスフォースはSlack AIの機能拡充を発表し、エンタープライズ検索、チャンネルとスレッドの要約、ハドルミーティングのAI議事録、翻訳の各機能を、より多くの有料プランで利用できるようにした[50][70]。翻訳機能は、メッセージの下部の「Translate」操作でメッセージを利用者の言語に翻訳するもので、Slackは、国や地域を超えた共同作業においてチームメンバーがそれぞれ希望する言語で読み書きできるようになるとしている[71][50]。ZDNET Japanは、この機能によって国際的なチームのメンバーがそれぞれの母国語を使ってスレッド上で意思疎通できるようになると報じている[70]。
対応環境と多言語対応
Slackはブラウザ向けのWebアプリケーションに加え、macOS、Windows、Linux向けのデスクトップアプリと、iOS、Android向けのモバイルアプリで提供される。ブラウザではChrome、Firefox、Safari、Microsoft Edgeに対応するが、ハドルミーティングに対応するのはChromeとFirefoxのみとされる。対応するOSやブラウザのバージョン要件はSlackのヘルプセンターに掲載され、Slackはこれを毎年5月と11月の2回更新するとしている[15]。
表示言語は、2026年9月時点で中国語(簡体字・繁体字)、英語(米国・イギリス)、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語(ブラジル)、スペイン語(ラテンアメリカ・スペイン)の9言語に対応する。対応していない言語であってもメッセージの送受信自体は可能である。2026年9月時点で右から左へ書く言語には対応していない[16]。
プラットフォームと連携
Slackは、外部のサービスやユーザーが開発したプログラムをチャンネルに接続するための開発者向けプラットフォームを備えている。Slackは、すべてのSlackアプリとワークフローがSlack内のさまざまなデータを読み書き・更新するための一連のAPIを利用できるとしている[72]。
APIとアプリ
中心となるのはWeb APIで、https://slack.com/api/METHOD_FAMILY.methodという形式のURLを持つHTTPのRPCスタイルのメソッド群として提供される。REST形式ではなく、メソッドの数は100を超える[72][73]。
これに対しEvents APIは、Slack内で起きた出来事に応じて動くアプリやボットを作るための仕組みで、開発者が購読するイベントを選ぶとSlack側から通知が送られる。イベントの配信方式には、常時接続のSocket Modeと、アプリが待ち受ける公開HTTPエンドポイントを指定する方式の2種類がある[74]。より簡便な経路としてIncoming Webhooksも用意されており、作成すると固有のURLが発行され、そこへメッセージ本文などを含むJSONのペイロードを送るとチャンネルに投稿される[75]。
アプリが表示するメッセージや画面の見た目は、Block Kitと呼ばれるUIフレームワークで組み立てる。Block Kitはブロック、ブロック要素、コンポジションオブジェクトの3層で構成され、ブロックはホームタブ・メッセージ・モーダルに配置できる。ブロック要素はボタンやメニューなどの操作部品である[76]。
2018年5月、Slackは同社にとって初のデベロッパーカンファレンス「Spec」をサンフランシスコで開催し、メッセージの一覧から他のツールへ書き込みや操作を行うActions、アプリのメッセージ表示を組み立てるBlock Kit Builder、/sdtコマンドでAPIの呼び出しや仕様書の参照ができるSlack Developer Toolsを発表した。Actionsの対応先としてはZendesk、Jira、Bitbucket、Pocketなどが予定されていた[77][78]。
開発を支援するツールとして、コマンドラインからアプリを作成・管理するSlack CLIと、Java・JavaScript・Python向けのBoltフレームワークが提供されている。Boltは、アプリを動かすWebサーバー、OAuthによる認証とインストールの処理、Slack APIへのインタフェース、トークンの検証と再試行およびレート制限の処理をあらかじめ備えている[79]。2022年9月には、アプリの実行環境と開発環境をSlack自身が提供する新しいプラットフォーム基盤にDenoが採用されたことが明らかにされた。従来は開発者がSlackの外部に実行環境を用意する必要があったが、新しい基盤ではFunctions(機能)、Workflows(機能の連携)、Trigger(呼び出し条件)の3要素を記述してアプリを作り、データの永続保存(Datastore)、構成設定(App manifest)、ログ取得も基盤側の機能として提供される。Slack CLIもDenoを基盤とし、SDKはTypeScriptで書かれている[80]。
アプリディレクトリと主なインテグレーション
2015年12月、Slackは管理者が連携アプリを一覧して導入できるアプリディレクトリ(App Directory)を開設した。開設時点で利用できた連携は150件で、Twitter、Dropbox、Trello、Google ドライブなどが含まれていた。同時に、Slackアプリなどを開発する企業に投資する8,000万ドルの基金(Slack Fund)が設立され、AccelやAndreessen Horowitzなど6社のベンチャーキャピタルが参加した[81]。
連携先は業務ソフトウェアの各分野にわたる。Slackは2026年9月時点で2,600を超えるアプリに対応しているとしており、分野別の例としてプロジェクト管理(Asana、Jira)、カスタマーサポート(Zendesk)、ファイル管理(Box、Google ドライブ、Dropbox)、開発者用ツール(GitHub、PagerDuty)を挙げている[82]。会話の中でアプリのデータを操作可能なプレビューとして表示する「ワークオブジェクト」の仕組みも提供されている[82]。
開発・運用での利用
DevOpsの分野では、チャットサービスを人同士の連絡だけでなく、ビルドや配備といったシステムへの操作、その結果や機器からのメッセージの受け取りまで集約する手法が「ChatOps」と呼ばれており、Slackはその対象となるチャットサービスの例として挙げられている[83]。2019年7月にAWSがベータ版として発表したAWS Chatbotは、Amazon CloudWatchやAWS Health、AWS Budgets、AWS CloudFormationなどからのメッセージをAmazon Simple Notification Service経由で受け取り、SlackまたはAmazon Chimeへ通知する[83]。
DatadogやNew Relic、PagerDutyなどの監視・オブザーバビリティ・インシデント管理サービスも、アラートや通知をSlackのチャンネルへ送る連携機能を提供している[84][85][86]。いずれもSlackアプリの導入とワークスペースの認可を前提とし、通知の宛先チャンネルを指定する方式をとる[86]。
技術
Slackはブラウザ向けのWebアプリケーションとデスクトップ・モバイル向けのクライアントから成り、サーバー側はAWS上で稼働する。自社の技術的な設計や運用については、技術ブログ「Engineering at Slack」で公開している。
クライアント
デスクトップ版クライアントはElectron上で動作する。2012年末に選ばれた当初の構成(jQuery、Signals、直接のDOM操作)から、2019年に公開された版ではReactとReduxを用いる構成へ全面的に作り直された。旧版では複数のワークスペースにサインインすると、それぞれのワークスペースが別のElectronプロセスでWebクライアントを動かしていたが、作り直しによって1つのElectronプロセス内に複数のワークスペースを収める設計へ変わった。UI部品はすべてReactで作る方針とされ、リアルタイムの更新にはWebSocketが用いられる[13]。
サーバー側
Slackは2016年時点で、サーバー側のアプリケーションロジックの大部分にPHPを用いていた。同社のチーフアーキテクトであったキース・アダムス(Keith Adams)は2016年10月の記事で、Web環境をHHVM(PHP向けのオープンソースのJIT実行環境)へ移行する作業が終盤にあり、コードベースの一部をHack(PHPに段階的型付けを導入する言語で、HHVMの一部として開発された)へ移す作業を始めた段階だと述べている[14]。
データの保存には当初からすべてMySQLを用い、アクティブ/アクティブ構成で運用していた。2017年からはMySQLの水平分散システムであるVitess(Goで書かれたオープンソースソフトウェア)への移行を進め、2020年12月の記事では全クエリ負荷の99%をVitessが処理し、同年末までに移行を完了する見込みだと報告している。同記事によれば、ピーク時のクエリ数は毎秒230万件(読み取り200万件、書き込み30万件)、クエリ遅延の中央値は2ミリ秒、99パーセンタイルは11ミリ秒である。世界各地の複数のリージョンで複数のVitessクラスターを運用し、Webアプリケーションの本体と個別のサービスの双方が同じ保存層を使う[87]。
クライアントの起動を速めるため、Slackはエッジの拠点にFlannelと呼ぶアプリケーションレベルのキャッシュを自社開発して配置している。Flannelは利用者・チャンネル・ボットなどのデータを保持してクライアントに供給し、主要なAWSリージョンのSlackサーバーからリアルタイムのイベントを受け取って内容を最新に保つ[88]。また、自社サービスのオブザーバビリティに関しては、分散トレーシングのデータを「因果グラフ」として扱いSQLで分析できるようにした取り組みを2020年に公開している[89]。
インフラストラクチャ
Slackのサービスはその大部分が当初からAWS上で稼働している。2020年6月、SlackとAmazonは複数年にわたる提携を発表し、Amazonの全従業員がSlackを利用できるようにするとともに、Slackは音声・映像通話の基盤をAmazon Chimeへ移行し、ストレージ・コンピュート・データベース・セキュリティ・分析・機械学習および将来の共同作業機能についてAWSを優先的なパートナーとすることを約束した。当時Slackの事業開発担当バイスプレジデントであったブラッド・アームストロング(Brad Armstrong)は『ザ・ヴァージ』の取材に対し、同社はAzureを使ったことがなく、サービスの大部分は常にAWS上で動いてきたと述べた。あわせて、AWS ChatbotやAmazon AppFlowとのSlack連携を拡充する方針も示された[25]。
計算基盤にはAmazon EC2を用いる。2026年7月の技術ブログによれば、Slackは数万台規模のEC2インスタンスを運用しており、インスタンスを更新し続ける従来の運用に代えて、インフラを配備可能な成果物として扱うShipyardと呼ぶ次世代のEC2プラットフォームを構築した。Shipyardは、コンテナへ移し替えにくいワークロードに向くとされ、共通のベースイメージを土台とする[90]。
管理・セキュリティ機能
Enterprise GridおよびEnterprise+プランでは、Slack Enterprise Key Management(EKM)がセキュリティのアドオンとして提供される(GovSlackプランには標準で含まれる)。EKMを有効にすると、メッセージやキャンバス、アップロードされたファイル、顧客データの検索インデックス、アプリやボットが生成したメッセージとファイルなどが、利用企業自身のAWSアカウントに置かれた鍵を使って保管時に暗号化される。一方、メンバーのプロフィールやチャンネル名、ファイル名、ワークスペースとチャンネルのメンバーシップ情報などはSlackが生成・保管する鍵で暗号化される[91]。
データレジデンシー機能は、特定の種類のデータを保管する地域を組織が選べるようにするものである。2026年9月時点で選択できるデータレジデンシーリージョンは、東京、フランクフルト、ロンドン、シンガポールなど12か所で、リージョンごとにバックアップ先の地域が定められている。対象となるのはメッセージ、キャンバス、スニペット、アップロードされたファイル、検索インデックスなどである[92]。Vitessはこのデータレジデンシー機能の保存層でもあり、Slackはそのために計6リージョンでVitessクラスターを運用していると2020年12月時点で説明している[87]。
リモートワークとの関係
Slackとテレワーク(リモートワーク)の関係では、2020年春に在宅勤務の広がりを背景とした利用の急増が報じられ[26]、Slack自身も同年に恒久的なリモート勤務を認める方針を示した[17]。同年には働き方を調査するコンソーシアムFuture Forumを設立し、買収後は「デジタル本社」という位置づけで製品を説明している[27][2]。
2020年の利用急増
2020年3月、在宅勤務の需要が急速に高まったことを受け、Slackの同時接続利用者は3月10日に1,000万人を、3月16日に1,050万人を、3月25日に1,250万人を記録した。Slackはこの期間の日次アクティブ利用者の総数を公表せず、同時接続利用者数のみを開示した。同社が公表した日次アクティブ利用者数は、2019年10月時点の1,200万人が最後であった[26]。Slackは2月1日から3月17日までに有料顧客が7,000社増えたと開示しており、バターフィールドは3月25日に、これが9,000社を超えたこと、利用者1人あたりの送信メッセージ数が20%増えたこと、全顧客の利用時間が平日1日あたり10億分を超えたことを公表した[93]。Slack Technologiesは2020年6月に、多くの従業員が恒久的にリモートで働くことを認める方針を発表した[17]。
Future Forum
2020年9月1日、Slackは働き方の変革を扱うコンソーシアム「Future Forum」の設立を発表した。Slackはこれを、企業が新しい経済で成果を上げるために必要な変革を進める手助けをする組織と位置づけ、リモートワークへの急な移行が、9時から5時までの勤務とオフィスを中心とした働き方という長年の前提を問い直す機会をもたらしているとした[27]。
Future Forumは、フルタイムで働く知識労働者を対象とする四半期ごとの調査「Future Forum Pulse」を発表した。2021年10月5日に公表された第4回の調査は、2021年7月28日から8月10日に米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国の6か国で1万569人を対象に実施されたもので、仕事の満足度を高める要素として柔軟性が報酬に次ぐ2位に挙げられ、回答者の76%が働く場所の柔軟性を、93%が働く時間の柔軟性を求めていた[94][64]。
分散したチーム向けの機能
2021年10月にFuture Forumの調査結果を紹介したオンラインの説明会で、セールスフォース・ドットコム(当時)の担当者は、社外の組織とやり取りするSlackコネクト(前述)、音声や動画を短く記録して共有するクリップ、音声を主体とするハドルミーティングの3機能を、非同期のコミュニケーションを意識して開発したものとして紹介した[64]。2025年7月に拡充されたSlack AIの翻訳機能については、Slackは、国や地域を超えて分散するチームのメンバーがそれぞれ希望する言語で読み書きできるようになるとしている(前述)[71]。
事業
Slackは、SaaSとしてサブスクリプション方式で提供され、無料プランと複数の有料プランを組み合わせたフリーミアム型の販売形態をとる。運営企業のSlack Technologiesは2021年7月にセールスフォースの傘下に入った。
運営企業
運営企業のSlack Technologies, Inc.は2009年にデラウェア州で設立され、主要事業所をカリフォルニア州サンフランシスコ(500 Howard Street)に置いていた[17]。2021年1月31日時点の常勤従業員数は2,545人であった[17]。2021年7月以降はセールスフォースの子会社である(経営体制の推移は歴史を参照)[2]。
業績と利用状況の推移
株式公開時に提出された登録届出書(Form S-1)によれば、売上高は2017年1月期が1億520万ドル、2018年1月期が2億2,050万ドル、2019年1月期が4億60万ドルであった。2019年1月31日までの3か月間の日次アクティブ利用者は1,000万人を超え、同日時点で3人以上の利用者を持つ組織は150か国超で60万を超えていた(有料プランが8万8,000超でFortune 100のうち65社超を含み、無料プランが50万超)[42]。
上場後に提出された年次報告書(Form 10-K)では、売上高は2020年1月31日終了年度が6億3,040万ドル(前年度比57%増)、2021年1月31日終了年度が9億260万ドル(同43%増)とされている。2021年1月31日終了年度の有料顧客数は15万6,000(前年比42%増)、年間10万ドルを超える有料顧客は1,183(同32%増)であった[17]。
料金プラン
2026年9月時点で、Slackはフリー、プロ、ビジネスプラス、Enterprise+の4つのプランを提供している。フリーは無料で、閲覧・検索できるメッセージ履歴が過去90日分に限られるほか、利用できるアプリの数、ハドルミーティングとSlackコネクトの参加人数、AI機能の範囲が限られる。プロとビジネスプラスは1ユーザーあたりの月額課金で、年払いの場合はプロが月925円、ビジネスプラスが月1,920円、月払いの場合はそれぞれ1,050円と2,160円である。Enterprise+の価格は個別見積りとなっている。プロ以上ではメッセージ履歴とアプリ連携の数が無制限となり、最大250組織が参加できる社外との専用チャンネルを利用できる。ビジネスプラスは「高度なAI機能」、Enterprise+は「エンタープライズグレードのAI機能」として、複数の接続先を横断して検索するエンタープライズ検索や複数のSAML設定などが加わる[95]。
2021年1月期の年次報告書の時点では、プラン構成は、Free、Standard、Plus、Enterprise Gridの4種類であった。Free、Standard、Plusは単一のワークスペースを対象とし、中小規模のチームが採用することが多いとされ、Enterprise Gridは複数のワークスペースを扱う組織向けとされていた[17]。
競合
Slack Technologiesは年次報告書において、Slackの属する市場を新興かつ細分化された市場と位置づけたうえで、主な競争相手として、既存のベンダーによるコラボレーションおよびコミュニケーションのツール(マイクロソフト)、生産性ツールと電子メールの提供事業者(グーグル)、統合コミュニケーションの提供事業者(シスコシステムズ)、ビジネスソフトウェア市場に参入した消費者向けアプリケーション企業(フェイスブック)を挙げている。あわせて、Slackが対象とする領域の一部を扱う小規模な事業者とも競合するとしている[17]。
イベント
Slack Technologiesは、組織や提携先を集めて最新機能を発表し、利用者向けの教育や開発者エコシステムの紹介を行う年次利用者会議「Frontiers」を開催していた[17]。買収後は、セールスフォースの自社イベントでもSlackに関する発表が行われており、2023年5月のWorld Tour NYCではSlack GPTが発表された[47]。
日本での展開
日本では2017年11月の日本語版提供開始を機に利用が広がり、Slack Japan株式会社による国内向けの営業とイベント開催、データレジデンシー機能の東京リージョン提供などが行われてきた。セールスフォースによる買収後は、Slack AIの日本語対応(2024年)やAgentforceのSlackでの提供開始(2025年)など、Slackに関する日本語の発表が株式会社セールスフォース・ジャパンからも行われている[23][51]。
日本語版とSlack Japan
Slack Technologiesは2017年11月17日、Slackの日本語版の利用が可能になったと発表した。ユーザーインタフェースの日本語訳に加え、キーボードコマンドの扱いなど日本の利用者の習慣を考慮して「メッセージ送信」ボタンを設けるなどのローカライズが行われた。同社は発表時点で、日本におけるARR(年間経常収益)がアジア太平洋地域で第1位、世界で第3位であるとしていた[28]。
2018年6月26日、Slack Japanは東京都内でパートナーおよび報道関係者向けのカンファレンスを開催し、日本市場での事業計画を発表した。同社の説明では、日本の1日あたりのアクティブユーザー数は50万人以上で、うち東京からの利用が30万人、有料契約者が15万人を超えていた。日本語版の提供前は英語のインタフェースだけであったため技術者を中心に使われていたが、日本語版の登場を契機に日本の月間アクティブユーザー数は33万人から50万人まで拡大したという。Slack Japan代表の佐々木聖治は、この普及の速さを日本法人設立の理由として説明した。国内の利用企業としては、セブン銀行、日本たばこ産業、リクルートなどが挙げられた[96]。
2019年9月17日には、日本で初めて自社カンファレンス「Frontiers Tour Tokyo」が東京の虎ノ門ヒルズで開催された。Slackの発表によれば申し込みは1,000名以上、来場者は600名を超えた。同イベントでCEO兼共同創業者のスチュワート・バターフィールドは、日本語版の提供開始から約6か月で日本が米国以外では最も大きく重要な市場になったと述べた[29]。
東京リージョンと日本の利用状況
2020年3月5日、Slackはデータの保管場所を選べるデータレジデンシー機能の日本リージョンの提供を開始した。それまでSlackのデータは主に米国のリージョンに保存されており、この時点で米国外に選べたのはフランクフルト(ドイツ)、パリ(フランス)、東京(日本)の3か所であった[97]。
2020年4月には、新型コロナウイルスの影響でテレワークが広がる中、企業向けグループチャットを解説するZDNET Japanの連載でSlackが取り上げられ、国内の採用例としてヤフー、LINE、近畿大学などが紹介された[98]。2020年6月24日、Slack Japanはオンラインのカンファレンス「Slack Workstyle Innovation Day Online」を開催した。カントリーマネージャーの佐々木聖治は、出社しなくても仕事ができるようにすることがSlackの責任だと考えていると述べ、同時点で日本のアクティブユーザー数が100万人に達し、市場規模は世界第2位であると説明した。日本市場については、提供開始当時はIT企業での採用が多かったが、非IT企業の採用が目立つようになったとした。あわせて、同月に発表されたAWSとの提携と、東京リージョンでのデータレジデンシー機能の開始が紹介された[30]。
日本での使われ方には固有の傾向も報じられている。2022年6月の年次イベントSlack Frontiersに際して、Slackの広報は、2021年6月に追加された音声機能ハドルミーティングの日本における1回あたりの平均利用時間が20分で、世界平均の2倍に相当すると説明した[99]。
受賞と利用の広がり
Slackは公開後、業界の表彰を受け、各国の媒体で紹介されてきた。
受賞
2015年2月5日に開かれた第8回クランチーズ賞(Crunchies、TechCrunchが主催する新興企業と技術の表彰)[100]では、共同創業者のスチュワート・バターフィールド、エリック・コステロ、カル・ヘンダーソン、セルゲイ・ムーラチョフがFounder of the Year賞を受賞した[1]。翌2016年2月8日の第9回クランチーズ賞では、Slackが最も急速に成長した新興企業に与えられるFastest Rising Startup賞を受賞し、バターフィールドが再びFounder of the Year賞を受賞した[101][102]。Fastest Rising Startup賞はSlackのエンジニアたちが登壇して受け取った[101]。
利用の広がり
公開当初は技術者を中心に使われていたが、2018年6月のZDNET Japanの記事は、Slackが21st Century Fox、TIME、Los Angeles Timesといった情報技術以外の企業でも使われるようになったと紹介している[96]。2021年1月期の年次報告書では、Slackは150を超える国と地域で使われているとされている[17]。