こと座イプシロン星
こと座の多重星
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星系
こと座ε星は双眼鏡或いは視力が非常に良ければ肉眼でも二重星としてみえる。この対のうち、西側(若しくは北側)はこと座ε1星またはこと座4番星、東側(若しくは南側)はこと座ε2星またはこと座5番星とも呼ばれる。ε1星とε2星は、小口径でも良質の望遠鏡を使えば、いずれも二重星であることがわかる[9][2][10][11]。
ε1星とε2星が共に重星であることは、1779年にウィリアム・ハーシェルによって言及されたのが最初とされる。その後、1831年にヴィルヘルム・シュトルーヴェが、初めて正確に離角を測定し、以後観測が重ねられている[9]。シュトルーヴェは、四重星の測定だけでなく、ε1星とε2星の間に、更に2つの恒星があることも明らかにした。その後、ジョン・ハーシェルが更に3つの恒星を、ε1星とε2星の間に発見した[4]。
1985年には、スペックル・イメージングによる観測で、ε2に新たな恒星が検出され、その後も数度検出されているが、別の恒星との取り違えがあったり、測定値に一貫性がないことから、疑問も持たれている[12][13][14][4]。
特徴
こと座ε星系は、ワシントン重星カタログでは10個の恒星が収録されており、WDS J18443+3940のAからIまで、そしてCはCaとCbの二重星となっている[4]。
| 視等級 | 半径 (R☉) | 質量 (M☉) | 自転速度 (km/s) | 分光分類 | 光度 (L☉) | 表面温度 (K) | 年齢 (×106 年) | 他の名称 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 5.01[8] | 1.89[15] | 2.07[8] | 165[16] | A4 V[8] | 24[17] | 7,943[17] | 400[18] | HD 173582 HR 7051 SAO 67310[10] |
| B | 6.10[8] | 1.81[15] | 1.56[8] | 159[16] | F1 V[8] | 8.4[17] | 7,047[17] | HD 173583 HR 7052 SAO 67309[19] | |
| C (Ca) |
5.25[8] | 1.87[8] | 212[16] | A8 Vn[8] | 29[17] | 7,816[17] | 350[18] | HD 173607 HR 7053 SAO 67315[11] | |
| D | 5.38[8] | 1.79[8] | 233[16] | F0 Vn[8] | 32[17] | 7,852[17] | HD 173608 HR 7054[20] | ||
| E | 12.3[4] | ||||||||
| F | 12.7[4] | ||||||||
| G | 14.2[4] | ||||||||
| H | 13.9[4] | ||||||||
| I | 10.12[4] | BD+39 3512[21] | |||||||
| Cb |
ε1星は、対のうち明るい星をε1星A、暗い星をε1星Bといい、重星カタログではAとBにあたる[10][19][4]。この2世紀の間に、4秒あった離角が、2.4秒に縮まった[4][18]。明るさはAが5.01等、Bが6.10等、スペクトル型はAがA4 V、BがF1 Vとされる[8]。両者の相対的な位置関係の変化から見積もった、AとBの間の実際の距離(軌道長半径)は120au程度、公転周期はおよそ1700から1800年となる[18][8]。
ε2星は、対のうち明るい星をε2星A、暗い星をε2星Bといい、重星カタログではCとDにあたる[11][20][4]。離角はこちらも約2.4秒で、明るさはCが5.25等、Dが5.38等、スペクトル型はCがA8 Vn、DがF0 Vnとされる。CとDの間の実際の距離は110au程度、公転周期はおよそ720年と見積もられている[18][8]。Cは、りょうけん座α2型星である可能性が指摘されているが、確定はしておらず、変光星総合カタログでも新しい変光星候補に止まっている[4][22]。
ε1星とε2星の間は、離角が約3.5分で、実際の距離にすると0.16光年にもなる[4][2]。これだけ距離があると、重力的に結び付いた連星であるかどうかの判断は容易ではなく、ヒッパルコス衛星の位置天文学的情報を基に、ε1星とε2星が束縛系であるかどうか判定した結果は、束縛であるとするものも、非束縛であるとするものもある[23][6]。真の連星であるとすれば、公転周期は何十万年にもなるものと予想される[2]。
EからIの5つの恒星は、年周視差からすると、ε1星、ε2星とは物理的な関係がない、偶然同じ方向に位置する恒星とみられる[24][25][26][27][21]。