アンジオポエチン

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アンジオポエチン2
アンジオポエチン2の受容体であるTIE2結合部位の結晶構造[1]
識別子
略号 ANGPT2
Entrez英語版 285
HUGO 485
OMIM 601922
RefSeq NM_001147
UniProt O15123
他のデータ
遺伝子座 Chr. 8 p23
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アンジオポエチン: angiopoietin)は、脈管形成vasculogenesis)あるいは血管新生(angiogenesis)を促進する糖タンパク質で、成長因子である。脈管形成は、発生初期の形成期に血管がないところに新たに血管がつくられることで、血管新生は発生初期以外で、既存の血管から新たな血管が分岐し伸長することで血管がつくられることである。それら血管の形成を促進するのがアンジオポエチンである。

アンジオポエチンには、アンジオポエチン1(Ang1)、アンジオポエチン2(Ang2)、アンジオポエチン3(Ang3)、アンジオポエチン4(Ang4)の4種類があるだけでなく、類似のタンパク質として6種類のアンジオポエチン関連タンパク質(ANGPTL:angiopoietin-related protein、または、angiopoietin-like protein)であるANGPTL2ANGPTL3ANGPTL4ANGPTL5ANGPTL6ANGPTL7がある。なお、ANGPTL1はアンジオポエチン3(Ang3)である。

1996年、米バイオテクノロジー企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ (Regeneron Pharmaceuticals)のヤンコポーロス(Yancopoulos GD)らが、血管内皮細胞に特異的に発現し血管形成に必須な受容体型チロシンキナーゼタンパク質であるTIE2/TEKリガンドを同定し、アンジオポエチンと命名した。アンジオポエチンは細胞外に分泌される糖タンパク質である[2]

上記の連続論文で、ハーバード大学トム・サトーらとともに、ノックアウトマウスの実験で、アンジオポエチン1が血管形成に必須であることを証明した。上記論文で物質を同定し、つづく論文で生理機能を示し、2つの論文をもって、アンジオポエチンの発見とした[3]

構造

アンジオポエチン1のアミノ酸数はヒトやマウスで498残基である。分子量は70 kDaで、タンパク質に結合している糖鎖をはずす酵素PNGase Fで処理すると、約55 kDaになることから、結合糖鎖が約15 kDaある糖タンパク質である[2]

図1.アンジオポエチンのドメイン構造

アンジオポエチン1のN末端側からのアミノ酸番号1-99番はアンジオポエチン1どうしが結合するクラスタリングドメイン、100-280番がミオシンに類似したコイルドコイルドメイン、280-498がフィブリノーゲンドメインTIE2/TEK結合ドメイン、そしてC末端になる(図1.アンジオポエチンのドメイン構造)。[2]

細胞作用

血管内皮細胞のアンジオポエチン受容体はTIE2/TEKで、細胞内にチロシンキナーゼ活性を持つ受容体型チロシンキナーゼタンパク質である。

アンジオポエチンは、フィブリノーゲンドメインTIE2/TEK結合ドメインで血管内皮細胞の細胞膜上のTIE2/TEKに結合する。クラスタリングドメインで、アンジオポエチン分子どうしが細胞外で会合することで、細胞膜上のTIE2/TEKが会合する。細胞内のチロシンキナーゼ活性が活性化され、アダプター分子のGRB2などが結合し、細胞内シグナル伝達が進行する。ただし、細胞増殖は活性化されない[2]

アンジオポエチン1とアンジオポエチン4は TIE2のキナーゼを活性化するが、アンジオポエチン2とアンジオポエチン3は活性化しないので、アンタゴニストと考えられる。

機能

アンジオポエチンの基本的な機能は、TIEファミリーと共に、脈管形成(形成期に、血管がないところに新たに血管がつくられること)および血管新生(既存の血管から分枝伸長して血管を形成すること)を担うことだ。

発見者の1人ともいえるトム・サトー、そして高倉伸幸(たかくら のぶゆき)など多くの日本人の研究者も貢献し、血管新生におけるアンジオポエチン・ファミリーの関与が以下のように解明されてきた[4] [5] [6] [7]

ノックアウトマウスの実験から、アンジオポエチン1とアンジオポエチン2は血管形成に必須であることが証明されている。

血管構造は、通常、血管内皮細胞とそれを裏打ちする結合組織細胞外マトリックス基底膜、細胞として周皮細胞(pericyte)や平滑筋細胞に、強固に接着することで安定に保たれている。血管内皮細胞が分泌するアンジオポエチン1 が血管内皮細胞上のTIE2 に結合し、細胞内にシグナル伝達し、血管内皮細胞と結合組織細胞外マトリックス基底膜細胞接着を維持しているからである。

組織に低酸素状態が生じると、血管内皮細胞と結合組織細胞外マトリックス基底膜との接着が弱くなり、血管内皮細胞は容易に移動できるようになり、新しい血管の分枝と伸長が起こる(血管リモデリング)。この仕組みは、低酸素状態になると、血管内皮細胞からアンジオポエチン2が分泌され,アンジオポエチン1 に対して拮抗的に作用するためである。

脈管形成と血管新生では、同じような成長因子受容体型チロシンキナーゼの組み合わせが、もう1セットある。つまり、1983年に発見され、1989年に45 kDaの糖タンパク質として単離、クローニングされた血管内皮細胞増殖因子(VEGF:ブイイージーエフ)である。血管内皮細胞増殖因子の血管内皮細胞上の受容体である血管内皮細胞増殖因子受容体受容体型チロシンキナーゼである。

では、アンジオポエチン系は血管内皮細胞増殖因子系と機能的にどう異なるのか? 両方とも重要であるが、機能的に、血管内皮細胞増殖因子系は血管の分枝と伸長を担い、アンジオポエチン系は血管のリモデリングと成熟を担っていると考えられている[8]

臨床知見

文献・脚注

外部リンク

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