オープンガバメント

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オープンガバメント(英:Open government)とは、市民政府文書および議事にアクセスする権利を有し、それによって実効的な公共の監視が可能になるとする統治原則[1]。広義には、広範な国家機密を正当化してきた国益その他の概念に対置される。オープンガバメントを支持する議論の起源は、ヨーロッパ啓蒙時代に遡ることができる。また、民主改革とも強く結び付く[2]。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標16は、説明責任があり包摂的な制度を確保するための基準として、情報への公共アクセスを提唱している[3]

オープンガバメントの概念は政府の透明性、参加、説明責任という理念と結び付けられる。透明性は情報の可視性とそこからの政策の予測可能性として定義され[4]、説明責任は説明義務と不履行時の罰則適用として定義される。[5]参加はしばしば「市民参加のはしご」によって評価される[6]

「市民参加のはしご」は、1969年にシェリー・アーンスタイン英語版が発表した市民参加のモデルで、下記の8つの段階から成る。

  1. 操作:行政がPRなどで市民を誘導する。
  2. 矯正:啓発講座などで市民を矯正する。
  3. 情報提供:住民説明会やWEBサイト・パンフレットなどで説明を行う。
  4. 意見聴取アンケートや意見交換会で聞き取りを行う。
  5. 取り込み:委員会などに市民委員を取り込む
  6. 協働:共同設計・協定締結を行う
  7. 委任市民参加型予算・地域住民委任など、権限を委譲する
  8. 住民支配:住民運営評議会・協同組合など、住民が統治を行う

アーンスタインはこのうち、1~2を非参加、3~5をトークニズム英語版、6~8を市民権力と定義した。

ハーラン・ユーとデイビッド・G・ロビンソンは、「オープンガバメントの曖昧」において、オープンデータとオープンガバメントの区別を明確化している。彼らは、オープンガバメントをサービス提供および公共の説明責任から定義し、技術は情報公開を促進しうるが、オープンデータ技術の利用が必ずしも説明責任と同義ではないと論じている[7]

歴史

「オープンガバメント」という用語は、第二次世界大戦後のアメリカ合衆国で生まれた。米国議会が設置した政府情報に関する小委員会に所属したウォレス・パークスが、1957年の論文「オープンガバメント原則:憲法の下での知る権利の適用」でこの語を導入した。その後、1966年の情報自由法英語版が成立すると、連邦裁判所はこの用語を政府の透明性の同義語として用い始めた[7]

もっとも、用語としての導入はこの時期が初めてであるものの、政府における透明性と説明責任の概念は、紀元前5世紀の古代ギリシアアテナイにまで遡ることができる。そこでは、官吏の行為を規制し、市民が官吏に対する不服を表明する途を提供する多様な法的制度が整えられていた[8]

政府は公共の監視に開かれ、世論に感受的であるべきだという考えは、多くの啓蒙思想家が国家機密を支持する絶対主義的学説を批判した啓蒙時代に始まる[9][10]。先進的な例として、この時期にスウェーデンで憲法の一部として出版の自由法が制定された[11]

啓蒙思想の影響を受けたアメリカ独立革命(1776)とフランス革命(1789)は、憲法条項に公的予算会計の公開や報道の自由を明記した。19世紀には、こうした措置を後退させようとするメッテルニヒらの試みに対し、ジェレミー・ベンサムジョン・スチュアート・ミルジョン・アクトン自由主義の政治家・著述家が反対の論陣を張った。

オープンガバメントは、現代民主主義における主要概念として広く認識され、しばしば情報公開法の制定と結び付けられる。

近年の動向として、市民がとりわけ立法の領域で統治により直接的に関与できるようにするソフトウェアや仕組みの開発が進んでいる[12]。この現象は電子参加英語版とも呼ばれ、「市民同士や選出された代表者が互いにつながれるようにすることによって、政治参加を広げ深めるための情報通信技術の利用」と記述されてきた[13]

透明性

概要

透明性においては、情報の可視性と政策の予測可能性が必要とされる[4]。主要な実践は二つあり、監視の透明性と、協議・協働の透明性である。透明性はニュー・パブリック・マネジメントにおいて重要な位置を占めている[14]。透明性が機能するためには、透明性への取り組みを市民が信頼していなければならない。

政府における透明性の確保には主に三つの要素がある。

  • 予算情報が市民に閲覧可能であること。
  • 透明性に関する法律の制定と執行を行う実効的な仕組みがあること[14]
  • 非政府組織(NGO)と独立したマスメディアが、市民側の中核を担っていること[14]

情報開示には、適時性、品質、アクセス性と可視性といった要素がある[15]。情報開示はオープンガバメントの核心でもあり、政府の実務についての市民の理解を高めるものとしても重要である。

透明性への賛成論

透明性の支持者は、透明性が政府の説明責任を高め、腐敗、贈収賄、その他の不正行為の減少につながると考える[16]。これは透明性と説明責任の関係として議論される。さらに一部の論者は、開かれた透明な政府が情報の普及を可能にし、それが知の増大と社会的進歩をもたらすと主張する[16]

経済協力開発機構オープンガバメントパートナーシップ英語版など、透明性政策を支持する組織は、オープンガバメント改革が政府への信頼の向上にもつながると主張する[17][18]。ただし、この主張を裏づける論拠ははっきりしておらず、透明性の拡大が政府への信頼低下を招く場合もある[19][20][21][22][23]

また、特定の政策の結果にアクセスできると、世論が変化し得る。米国政府は、戦死した兵士の棺の写真を記者が掲載することを禁じたことがある[24]が、これは戦争批判を抑制しようとしたと見られている。それでも、多くの人はそういった画像が価値ある情報になり得ると考える。一方で死刑制度反対論者の一部は、死刑執行のテレビ放映を求め、「自分たちの名の下に、自分たちの税金で何が行われているのか」を市民が見られるべきだと主張してきた[25]

政府の透明性は、効率的な民主主義に資するとされる。なぜなら公開情報は立法についての世論を形成し、投票する際の判断材料となるからである[26]カーネギー国際平和基金によれば、市民の政治参加の拡大は政府の透明性と関連している[27]

オープンガバメントの支持者はしばしば、より透明な行政への最善の道は政府立法ではなく市民社会にあると主張する。彼らは、(市民的良心に従って)官僚機構の内部から情報を告発するダニエル・エルズバーグポール・ビテネン英語版のような内部告発者の役割を指摘し、独立的で探究的な報道は立法上の監視や均衡よりも透明性の強力な担保となると論じる[28][29]

現代のオープンガバメントの学説は、政府が常に持つ秘密主義的傾向に対抗しようとする非政府組織に最も強く支持されている。著名な団体としては、トランスペアレンシー・インターナショナルオープン・ソサエティ財団などがある。彼らは、開放性が民主社会の持続的な繁栄と発展に不可欠だと主張する。

透明性への反対論

一部の批判者は、政府の透明性向上は、政府の政策実行力や効率の低下、政治の膠着などのリスクがあると主張する[30]。政治評論家のデーヴィド・フラムは2014年に、「こうした改革(透明性改革)はより大きな説明責任をもたらすどころか、ロビー活動や費用の増大、遅延、政治的決断力の低下を発生させた」と述べた[31]。ジェイソン・グリュメーは、あらゆることが監視されている状況では、政府職員は適切に熟議・協働・妥協することができないと論じる[32]

ベトナム国会の463名の代議員を対象としたランダム化比較試験では、立法手続の透明性(討論や質疑の議事録公開など)の向上が、代議員の質疑セッションでの活動を抑制し、政権指導者に反対する活動への参加を避ける傾向を強めたことが示された[33]

プライバシーも懸念事項である。市民は、政府が提供する情報によって「不利益、報復、否定的な影響」を被りうる[1]。オタワ大学の法学者テレサ・スカッサは2014年の論考で、少なくとも三つのプライバシー上の課題を挙げている。

  1. 政府の透明性拡大と、政府の持つ個人情報の保護とのバランス
  2. 民間部門と公的部門のデータ保護規制の相違への対応(政府は、厳格な規律の下にない民間企業が収集した情報にアクセスしうる)
  3. 高度なアルゴリズムによる、ビッグデータから個人情報への再同定[34]


インテリジェンス、特に国内外からの暴力的脅威を特定するための活動は秘密裏に行わなければならない。フラムは2014年に、インテリジェンス分野の機密情報には公開できない正当な理由がある、という趣旨の主張で情報の非公開を擁護した[35]

また、時に透明性擁護の基盤には「政府は悪事を行うべきでない」という道徳的確信があるが、その信念が本当に達成可能かを問う学者も少なくない。さらに、透明性が新自由主義的改革を支える側面があることも指摘されている[36]

選挙実務担当者の間では、情報公開請求の過剰利用が、選挙否認論者による郡・市町村レベルの選挙管理事務の妨害戦術として用いられていることへの懸念も示されている。しばしば不当に広範で反復的、あるいは誤情報に基づく大量の請求により、コロラド州のある当局者の言うところの「地方政府に対するDoS攻撃」に等しい事態が生じている。フロリダ州ミシガン州の地方選挙管理者は、近年、職員が25〜70%の時間を公文書請求の処理に費やしていると報告している[37]

選挙改革研究センターによる最近のアメリカ州法の報告で、少なくともアメリカ国内の13州が、情報公開請求の濫用から選挙職員を守るため、職員の支援を要しない形で一般公開データベースを整備したり、不当または明らかに無意味な請求を拒否する権限を選挙職員に与える、といった措置を講じていることがわかった[37]

説明責任

説明責任は、透明性の促進と、市民が政府活動を把握できるようにすることに焦点を当てる[38]。公務員は、公共資源がどのように使われているか、またその目的は何かについての詳細を共有することが期待される[15]。説明責任は、腐敗を減らし、透明性を高める。

説明責任と透明性はオープンガバメントの両輪であり、説明責任なき透明性は形だけのものになりやすく、説明責任を伴って初めて透明性は政府機関と人々との間に信頼を築き、より効果的になることが示されている[39]

いくつかの国や自治体では、市民が重要な情報を閲覧できるようウェブサイトを整備し、説明責任と透明性の向上を図っている[15]。ただし、これらのサイトで公開される情報のすべてが検索性やメタ情報に優れているとは言えず、公開しただけでは透明性が向上したとは必ずしも言えない。

たとえば、情報価値の基準に照らすなら、政府が透明性を示し説明責任を支える重要情報を公開する際には、品質、完全性、適時性、利用可能性を重視すべきである[15]

透明性と説明責任の関係

説明責任は、政府内部における透明性の存在を強固にする[14]。説明責任と透明性は連動しており、米国国務省により設立されたオープンガバメントパートナーシップのように、両者をともに強化し、それを通じて民主主義を強化する取り組みが行われてきた[39]。こうした取り組みは北米を越え、中南米やアジアの一部の国々にも及んでいる。

中南米諸国でのオープン・ガバメントの推進は、公共の信頼の向上と腐敗の減少につながった[40]オバマ政権期に米国が推進したオープンが場面とパートナーシップ計画には、中南米の諸国も含まれていた[40]

さらにアジアでは、知る権利の推進を通じて、説明責任の確立を支援しようとする動きが見られる[41]。もっとも、各国の経験は、オープンガバメント施策が画一的に適用できるものではないことを示している。失敗する場合もあり、地域ごとの調整が必要である。また、市民が説明責任を要求する意識を持つことが、政府からそれを実際に引き出すうえで不可欠である[41]

これらの民主主義強化の取り組みの大半は、説明責任という手段を通じて政府の透明性を強化する[14]。透明性はオープンガバメントの目標として機能し、市民に政府の記録や情報への質の高いアクセスを可能にする[42]。このオープンアクセスにより、政府は腐敗を隠蔽できなくなり、より高い説明責任を負わざるを得ない。

説明責任の無い形だけの透明性では、政府はどの情報が公開対象となる情報かを選別できてしまう[43]。透明性と説明責任を実効化するには、なぜ特定の情報を開示する(あるいはしない)のかを各機関に説明させる法律とその厳格な執行が必要である[44]

情報技術

政府や各種組織は、透明性を高める手段として新しい技術を活用している。具体例として、オープンデータ・プラットフォームを用いたオンラインでの情報公開や、オープンソース・ガバナンス英語版の理論が挙げられる。

公開政府情報ドイツ語版とは、政府のデータセットを公的に公開することを指す用語である[45]。公開政府情報はしばしば、data.gov.ukやwww.data.govのようなオンライン・プラットフォームを通じて提供される。公開政府情報の支持者は、政府機関に関するデータに容易にアクセスできることが、政治制度における市民参加の深化を可能にすると主張する[46]。公開政府情報の原則では、データは完全、一次、適時、アクセス可能、機械処理可能、非差別的、非専有、かつライセンスの制約がないことが求められる[47]

公共部門および民間部門のプラットフォームは、市民参加の道筋を提供すると同時に、市民が当然視するようになった公開情報へのアクセスも提供している。多くの組織が、市民が政府(地方・州・連邦)の予算支出、景気刺激策の支出、ロビイストの支出、立法の追跡などにアクセスできるよう、情報や公開手段の統合に取り組んでいる[48]

組織

関連項目

脚注

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