キムジャン

冬季に食べる漬物の準備と保管の手順。キムチやドンチミなど(韓国) From Wikipedia, the free encyclopedia

キムジャンハングル: 김장)は、朝鮮において野菜類を加工して作る辛い発酵食品であるキムチを、冬場に向けて準備し、保存しておくようにするため、初冬にこれを大量に作る韓国固有の伝統行事である年中行事[1][2]。夏季には、キムチは新鮮な季節の野菜を用いて作られる[2]。10月~11月初旬になると、ひと月ほどの時間をかけて、人々は翌年春までに消費するだろう分量のキムチを漬け込み、冬季の間ずっとキムチを絶やすことがないように準備する[1][3][4]

ハングル 김장
RR式 gimjang
MR式 kimjang
概要 キムジャン, 各種表記 ...
キムジャン
キムジャンの準備の様子。大量のキムチを漬けるための香辛料など。
各種表記
ハングル 김장
RR式 gimjang
MR式 kimjang
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起源

朝鮮半島全域でおこなわれるキムジャンの起源は不明であるが、一般的には高麗時代に李奎報1168年 - 1241年)が記した「무를 장에 담그거나, 소금에 절인다(大根を醬に浸したり、塩に漬け込む)」という内容が、キムジャンに言及した文献上で最古の記録とされている[1][5]。これは、『東國李相國後集』に収録された家庭菜園にまつわる詩文「家圃六詠」に、「菁」(カブ)について「得醬尤宜三夏食 漬鹽堪備九冬支(醤漬けで夏の3か月間食べるのがよろしく、塩漬けして冬の9か月間に備える)」とあることを踏まえている。ただし、この時点では、「キムジャン」、「キムチ」といった言葉は用いられていない[5]

朝鮮時代の文献には、キムジャンは「(ジャン)」を作ることを意味し、各家庭におけるもっとも重要な年中行事であると記され、キムジャンが韓国において民衆の生活に長く受け継がれてきた風習であることがうかがえる[1]

近年のように初冬にキムチを作るキムジャンの記録は、19世紀の文献で本格的に登場する[5]

白菜を中心とした現代において主流のキムチの登場は、20世紀初頭以降とされる[6]

キムジャンは、2013年12月に、国際連合教育科学文化機関 (UNESCO) によって無形文化遺産に選定され[7]、また、大韓民国政府から 「キムチタムグギ(김치 담그기、キムチ作り)」として、国家無形遺産第133号に指定された[8][9]。また、2015年には、朝鮮民主主義人民共和国の人類無形文化遺産として登載された。

背景

キムジャン市場で白菜を運ぶ様子(1957年)

現代では季節に関係なく野菜や果物を買い求めることが可能だが、かつては冬場にこうしたビタミンを含む栄養素をとることは朝鮮半島では難しかった。キムジャンは冬にも十分な野菜を供給することで健康維持を図る必要性から行われてきた風習である[10]

キムチは、様々な調理法で食べることができ[10]、特に他に総菜がない時には、ほとんど全ての料理の副菜として合わせて食べることができる、朝鮮料理の重要な一要素である[2]。作り方のレシピにあたるものは、遅くとも13世紀に遡り[3]、当初は野菜や漬物に、塩か、アルコールと塩を混ぜたものを使って、作られていた[11]。赤いトウガラシが調味料として加えられるようになったのは、17世紀のことであった[3]。現代における典型的なキムチは、ハクサイや白いダイコンをおもに用いているが、数百に及ぶ変種があり[2]カブリーキニンジンニンニクなどが加えられることもある[12]

伝統的には、女性は嫁ぐ前に12種類のキムチの漬け方を学んでおかなればならないとされていたともいう[6]。21世紀現代では、キムチを漬けず購入して食べる家庭も増えているが、キムジャンは家庭の重要な行事として韓国において継承されている[10]

作業工程

キムジャンの様子(槐山郡2012年)

キムジャンは新暦11月8日頃、立冬の前後に実施するのが通例である[1]。この開始時期は地域によって多少の差異はあり、南部では暑さゆえに少し遅く、逆に寒冷地である北部では早い[1]。気候が冷涼になってくる11月には、畑でも、市場でも、数多くの農産物が得られるようになり、キムジャンの作業が始まる[2]。企業ではこの時期、キムジャンのために社員に「キムジャン・ボーナス」を支給する[13]

キムジャンは、立冬前後、気温が概ね摂氏5度程度となる時期が最適期とされ、最低気温が氷点下になる前におこなわれる[6]朝鮮半島南部にあたる大韓民国では、ソウル周辺から「キムジャン前線」が南下を始め、冬至前には全国で作業が終わる[6]

一般家庭における共同作業の様子(2017年)

キムジャンには多くの人手を必要とし、労働集約的におこなわれる作業は、家族、親戚、近隣の住民などが協力して取り組む[2][14]。協働する人々と協議してキムジャンをする日を取り決め、各家のキムジャンを順番にこなしていく[1]。キムジャンの対象の家では、豚肉と小豆汁か赤飯を用意し、新たに漬けたキムチとともに働いてくれた人々にふるまい、謝意を示す。赤い小豆を酒食に供するのは、邪気を退ける宗教的な意味があり、キムジャンはたんなる作業ではなく伝統的な儀礼の意味をもつ風習であることを表している[1][10]

キムジャンでは、何人もが集まって、野菜を切り、洗い、塩を加えて食材を漬け込み英語版発酵させる[2]。キムチは、本来、長期保存が難しく、寒すぎると凍ってしまい、暖かすぎると発酵し過ぎて[3]、酸味が強くなる[15]。そのため、地域によって漬け方にも差異があり、相対的に長期保存が可能な寒冷地の韓国北部ではヤンニョムを控えめにして素材本来の味を引き出し、淡白な味わいのキムチを作る[10]。一方、暖かい南部ではヤンニョムを控えると発酵が進みすぎて長期保存できなくなるので、ヤンニョムを多めに投入して強い味のキムチを作る[10]

キムチの保存甕 キムチ冷蔵庫の一例
キムチの保存甕
キムチ冷蔵庫の一例

現代の冷蔵技術が成立する以前からの伝統的な方法では、キムチを素焼きの壺に入れて、壺の頸部までを土に埋め、藁でおおって、中のキムチが凍ってしまわないようにしていた[2][10]。冬季には気温が氷点下まで低下するため、発酵は止まり、食材は保存されるが、やがて春になれば気温が上昇して、発酵が進むことになる[16]

キムチは臭いが強いため、冷蔵庫の中で、他の品物に影響することがある[3]。現代では冷蔵技術が進んでいるが、キムジャンの習慣は、世代を超えて伝承されている。都市生活者の間では、キムチを発酵させる大きな壺を、集合住宅のベランダに置くことが一般的になっている[2]。また、通常の冷蔵庫とは別に、キムチの保存専用に設計されたキムチ冷蔵庫を所有して使う例も、ますます一般的になっている[3]

イベント

ソウル・キムジャン文化祭り(2014年)の様子
ソウル・キムジャン文化祭り(2014年)の様子
ソウル・キムジャン文化祭り(2014年)の様子

大韓民国の各地では、キムジャンの時期に、観光客の集客などにも繋げることを企図した行事が開かれている例がある。

ソウル特別市では、2014年から2019年にかけて、「서울 김장문화축제 / ソウル・キムジャン文化祭り / Seoul Kimchi Festival」が開催されていた[17][18]

大韓民国の在外公館などでは、11月22日の「キムチの日」に合わせて「コリア・キムチ・フェスティバル」が開催されている[19]

光州広域市では、1994年に始まった「광주김치축제 / 光州キムチ祭り」が開催されており、「세계김치문화축제 / 世界キムチ文化祭り」としても知られているが[20][21]、これはキムジャンに先んじる時期である10月に開催されることが定例化している[22]

脚注

参考文献

外部リンク

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