クリスター・ビクヴィスト
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クリスター・ビクヴィスト | |
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Krister Bykvist | |
| 生誕 |
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| 国籍 |
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| 職業 | 哲学者、大学教授 |
| 雇用者 | ストックホルム大学、未来研究所 |
| 著名な実績 | 道徳的不確実性の理論、人口倫理学、帰結主義の基礎論 |
| 公式サイト |
www |
クリスター・ビクヴィスト(Krister Bykvist)は、スウェーデンの哲学者であり、ストックホルム大学哲学科実践哲学教授および未来研究所(Institute for Futures Studies、ストックホルム)の研究フェロー・研究リーダーを務める[1]。規範倫理学・メタ倫理学・人口倫理学を専門とし、「道徳的不確実性(moral uncertainty)」の哲学的探求においてとりわけ著名である。オックスフォード大学のウィリアム・マッカスキルおよびトビー・オードとの共著『道徳的不確実性(Moral Uncertainty)』(オックスフォード大学出版局、2020年)は、本分野の基礎的著作として広く参照されている[2]。
ビクヴィストはスウェーデンで生まれ、ウプサラ大学において博士号を取得した。博士論文は選好主義(preferentialism)の理論的基礎、とりわけ選好功利主義における選好と価値の関係を扱ったものである[3]。
博士号取得後、ケンブリッジ大学哲学科で1年間の講師職を経て[4]、2001年から2013年までオックスフォード大学ジーザス・カレッジのチュートリアル・フェロー(Tutorial Fellow)および哲学CUF講師(CUF Lecturer in Philosophy)として勤務した[5]。
その後、ストックホルム大学に移籍し、現在は同大学哲学科の実践哲学教授を務めるとともに、未来研究所の研究フェロー・研究リーダーを兼任している[6]。
また、トロント大学、オーストラリア国立大学、クイーンズランド大学、メルボルン大学、ケンブリッジ大学、ウプサラ大学SCAS(スウェーデン高等研究院)、ベルリン・フンボルト大学などの研究機関で客員研究員を歴任した[7]。
現在、ストックホルム大学・ウプサラ大学・ヨーテボリ大学の共同大学院研究スクール「規範と規範性(Norms and Normativity)」の代表研究者(PI)兼コーディネーターを務め、また気候変動と協調の倫理に関する大型研究プロジェクトのPIでもある[8]。
学術的業績
ビクヴィストの研究関心は「価値と規範の不確実性・変化」という大きなテーマのもとに収束する[9]。具体的には、将来世代への責任(未来の生命の価値・非同一性問題)、帰結主義の理論的基礎(時間中立性・規範的不変性・行為と結果の選択肢の概念)、道徳的・評価的不確実性(気候倫理とノンコグニティビズムとの関係を含む)、価値の性質と態度・幸福との関係(価値の大きさ・フィッティング態度分析・態度感応的幸福論)を主軸として研究を行っている。さらに規範倫理学の方法論、とりわけモデリングと不可能性定理が倫理学理論化に果たす役割についても取り組んでいる[10]。
- 道徳的不確実性
- マッカスキルおよびオードとともに、複数の道徳理論に対して信念(credence)を持つ行為者がいかに意思決定すべきかという問いに対する体系的な理論を構築した。著書『道徳的不確実性』では、道徳的不確実性と社会的選択論の間のアナロジーを活用し、各道徳理論が「選択値(choice-worthiness)」を序数的・基数的・理論横断的に比較可能かどうかに応じた意思決定規範を論じている[11]。
- 人口倫理学
- スウェーデン研究評議会(Swedish Research Council)の資金援助を受けた「将来の生命を評価する(Valuing Future Lives)」プロジェクトを主導し、未来世代に対する道徳的責任および存在に関わる問い(来世の便益・来世の非対称性など)を探求してきた[12]。
- 価値論
- 価値のフィッティング態度分析(fitting-attitude analysis of value)の批判的検討を行い、この枠組みが抱える「適合しない適合性(no good fit)」問題を指摘した論文(2009年、*Mind*誌掲載)が広く引用されている[13]。
- メタ倫理学
- ジョナス・オルソン(Jonas Olson)との共著で表出主義(expressivism)と規範的確信(normative certitude)の関係、ノンコグニティビズムのもとでの道徳的不確実性の扱いについて多数の論文を発表している[14]。
主な著作・論文
著書
- Utilitarianism: A Guide for the Perplexed Continuum(現Bloomsbury)、2010年。ISBN 978-0-8264-9809-0。功利主義の歴史・主要テーマ・現代の論争を概説し、美徳倫理学やカント倫理学との比較において批判的に評価した入門書[15]。
- Moral Uncertainty(ウィリアム・マッカスキル、トビー・オードとの共著)Oxford University Press、2020年。ISBN 978-0-19-872227-4。Open Accessで無料公開[16]。
- The Oxford Handbook of Population Ethics(グスタフ・アレニウス、ティモシー・キャンベル、エマ・フィネロン=バーンズとの共編著)Oxford University Press、2022年[17]。
主要論文(抄録)
- No good fit – Why the fitting attitude analysis of value fails Mind 118(469): 763–792, 2009[18]
- Expressivism and Moral Certitude(ジョナス・オルソンとの共著)The Philosophical Quarterly 59(235): 202–215, 2009[19]
- Does Thought Imply Ought(アナンディ・ハティアンガディとの共著)Analysis 67(4): 277–285, 2007[20]
- The benefits of coming into existence Philosophical Studies 135(3): 335–362, 2007[21]
- Moral uncertainty Philosophy Compass 12(3): e12408, 2017[22]
- Wellbeing and changing attitudes across time Ethical Theory and Moral Practice, 2022[23]
- Brentano's fallacy: Moore's argument against Brentano's fitting attitude analysis History of Philosophy Quarterly 38(3): 243–259, 2021[24]
- Taking values seriously Synthese 199: 6331–6356, 2021[25]
思想・考え方
ビクヴィストの哲学的立場の中心には、「道徳的不確実性(moral uncertainty)」という概念がある。経験的事実について不確かな場合と同様に、私たちは道徳的に何が正しいかについても不確かでありうる、というのが彼の出発点である。功利主義者が正しいのか、義務論者が正しいのか、徳倫理学者が正しいのかを私たちは知らないまま行動しなければならない。このような状況において合理的な行為者がとるべき意思決定の規範を、決定理論・社会的選択論の道具立てを借りて定式化しようとする試みが、彼の研究の核心をなす[26]。
価値論においては、ビクヴィストはフィッティング態度分析(fitting-attitude analysis)——価値あるものとは適切な態度(賞賛、欲求など)の対象であるとする見解——に対して批判的である。彼は「no good fit」論文において、この分析が循環論法に陥るか、またはある種の反例に対して無防備であることを論証した[27]。
人口倫理学の領域では、未来に生まれてくる人々の幸福をいかに現在の意思決定に組み込むかという問いに取り組み、「存在することの利益(benefits of coming into existence)」や非同一性問題(non-identity problem)を中心に検討している。この研究は、気候変動政策・公衆衛生・世代間倫理などの実践的問題とも深く結びついている[28]。
メタ倫理学では、表出主義(expressivism)やノンコグニティビズム(non-cognitivism)が道徳的不確実性の概念をどこまで適切に扱えるかを検討し、これらの立場が道徳的確信(moral certitude)の説明に困難を抱えることを示した[29]。
また、倫理学における「モデリングの方法論」にも関心を寄せており、自然科学における数理モデルの手法を[[規範倫理学に応用することで、不可能性定理(impossibility theorems)を用いた厳密な倫理理論の構築が可能になると主張している[30]。
発言
ビクヴィストの思想の理解を助けるため、キーワードごとに分類した彼自身の説明等の発言を以下に引用する。
- 道徳的不確実性と実践的問題
- 「非人間動物の幸福を人間の幸福とどう比較すればよいのか、遠くにいる見知らぬ人を助けることにどれほどの義務があるのか、将来世代をどれほど重視すべきなのか——こうした切実な問いに対して完全に確信を持てる人は、ほとんどいないはずです。」
- (原文:"How important is the wellbeing of non-human animals compared to the wellbeing of humans? How much should we spend on helping strangers in need? How much should we value future generations? Few could honestly say that they are fully certain about the answers to these pressing moral questions.")[31]
- 道徳理論における不確実性の種類
- 「私たちの道徳的不確実性の一部は経験的事実の不確かさから来ています。魚は痛みを感じられるのか、遠くの人を本当に助けられるのか、将来の人々は幸福な生を送れるのか——でもそれだけではありません。不確実性は根本的に道徳的なこともあるのです。」
- (原文:"Part of the reason we feel less than fully certain about the answers has to do with our uncertainty about empirical facts. We are uncertain about whether fish can feel pain, whether we can really help strangers far away, and whether people in the far future will have good lives. But sometimes the uncertainty is fundamentally moral.")[32]
- 道徳的不確実性と行動
- 「道徳的不確実性の核心的な問いはこうです——より大きな人口は、より小さな人口より良いのでしょうか。これはそこに生きる人々の幸福についての知識が不足しているからではなく、価値ある生をより多く持つことが本当により良いのかどうかわからないから生じる、純粋に道徳的な不確実性なのです。」
- (原文:"We can be uncertain about whether a bigger future population is better than a smaller one, not because we lack knowledge of the wellbeing of the individuals in these populations, but because we are not sure whether it is better to have more lives that are worth living.")[33]