コウホネ属
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| コウホネ属 | |||||||||||||||
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1. セイヨウコウホネ | |||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||
| Nuphar Sm. (1809) nom. cons.[1][2] | |||||||||||||||
| タイプ種 | |||||||||||||||
| Nuphar lutea (L.) Sm. (1809)[3] | |||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||
| cow-lily, yellow pond-lily, pond-lily[2], spatterdock | |||||||||||||||
| 下位分類 | |||||||||||||||
コウホネ属(コウホネぞく、学名: Nuphar)は、スイレン科に分類される水草の1属である。太い地下茎が地下を這い、葉柄や花柄を伸ばす。葉は水中、水面、水上と3通りの形をもち、花は大きく半球形、黄色の萼片が目立ち、多数の小さな花弁と雄しべ、子房上位の雌しべをもつ(図1)。観賞用に栽培されるほか、アルカロイドを含み民間薬とされることもある。北米からユーラシアの温帯域に分布し、およそ十数種が知られる。学名の Nuphar はアラビア語の naufar に由来するが、この語は本来はスイレンに対する名称である[4]。
多年生の水生植物である。地下茎はよく発達しており、底泥中を横に這い、黄白色、先端付近に葉柄や花柄をらせん状につける[5][6](下図2a)。地下茎の分断による栄養繁殖を行う[6]。地下茎の直径は1–20センチメートル (cm)、前年までの葉柄や花柄の跡が茎上に残る[6]。地下茎からは、不定根が伸びている[6](下図2a)。
葉は水中葉または水上葉(浮水葉または抽水葉)である[5][6](下図2b, c)。葉身は円形、卵形、楕円形、ほこ形などであり、基部は心形から深く湾曲し、葉柄がつく[5][6]。葉脈は羽状であり、側脈は数回二叉分岐する[6]。水中葉では葉柄は短く、葉身は薄く膜質、葉縁が波状になる[5][6]。水上葉では葉柄が長く、葉身は革質で厚く光沢があり、全縁[5][6]。ふつう沈水葉と浮水葉をつけるが、主に沈水葉のみをつける種(シモツケコウホネなど)や、抽水葉を多くつける種(コウホネなど)もいる[5][6]。観賞用に水槽で栽培した場合、光が弱いと沈水葉のみをつける[5]。冬期には水上葉は枯れる[6]。
地下茎から生じた花柄は長く、水面より上に花を1個ずつつける[5][6]。花は両性で半球状、放射相称。萼片はふつう5枚(Nuphar 節)または6–12枚(Astylus 節)、宿存生、黄色(まれに赤橙色など)だが、外側はしばしば緑色を帯びる[5][6](下図3a–c)。花弁は小さく、黄色から橙色、多数[5][6](下図3a)。花弁の背軸面に蜜腺がある[6]。雄しべは多数、密にらせん状につき、黄色や橙色、帯状で花糸は幅広く、葯は内向しており最初は見えないが、開花後に雄しべが外側に反転して葯が現れる[5][6](下図3a, b)。花粉は単溝粒、比較的大型で長さ 40–70 µm[6]。子房上位、雌しべは5–36個の心皮が合着してできている[5][6]。子房は心皮数の部屋に分かれており、子房室内面全面に多数の胚珠がついている[5][6](面生胎座)。雌しべの先端は、円形に広がり縁が反曲して柱頭盤となっている[5][6](下図3a, b)。柱頭盤の表面に線状の柱頭が放射状にならぶ[5][6]。
果実は液果状、つぼ形から球形、直径 0.5–5 cm、水面より上で熟し、水中に落下、裂開して浮遊する種子塊を放出する[5][6](上図3c)。種子は卵形、長さ 3–6.5 mm、表面は平滑、種衣を欠く[5]。染色体数は知られる限り全て 2n =34 であり、倍数性は見られない[5][6]。
分布・生態

北アメリカ、ヨーロッパからアジアと北半球の温帯域に分布する[1][6][7]。湖沼、池、水路など淡水の止水域または流れの緩い淡水域に生育しており、多くは水深 0.5–2 m の場所に見られる[6](図4)。
北米やヨーロッパ、ニュージーランドでは、コウホネ属の種が本来生育していなかった地域に侵入し、水路を塞ぐなど人間活動に悪影響を及ぼすことがある[6][8]。
雌性先熟であり、開花1日目は受粉可能な雌性期であり、柱頭盤に粘液質を分泌し、閉じてから2日目に再び開花して花粉を放出する雄性期になる[9]。花は強い芳香を放ち、また花弁(内花被片)の背軸面から蜜を分泌する(スイレン科では唯一の例)[9]。蜜や柱頭盤の粘液、花粉が報酬となる[9]。訪花者は多様であるが、特に甲虫目、双翅目、膜翅目が重要である例がそれぞれ報告されている[9][6]。また、いくつかの種で自花和合性が報告されている[9][6]。
人間との関わり
コウホネ属の植物はアルカロイド(ヌファリジン、デオキシヌファリジン、ヌファラミン、ヌファミン、アンドロヌファミンなど)を含み、その地下茎などは民間薬として古くから利用されてきた[6][10]。日本ではコウホネ類の地下茎を乾燥させたもの(通常は2つに縦に裂いたもの)は「
地域によっては、地下茎や果実、種子は食用とされることもある[6]。中国では「凶作時に穀物の代用になる」とされている[4]。
コウホネ属は観賞用に利用されることがあり、庭園の池やアクアリウムなどで栽培される[4][13]。日本ではコウホネが庭園などで栽培され、特に花色が赤い品種であるベニコウホネは鑑賞価値が高く評価される[14]。