シグード・フェルディナンド・オルソン
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シグード・F・オルソン | |
|---|---|
| Sigurd Ferdinand Olson | |
| 生誕 | 1899年4月4日(127歳) |
| 死没 |
1982年1月13日(82歳没) Template:USA1ミネソタ州イーリー |
| 国籍 | Template:USA1 |
| 職業 | 作家・環境保護活動家・教育者 |
| 活動期間 | 1920年代–1982年 |
| 著名な実績 | バウンダリー・ウォーターズ保護運動、荒野法起草への貢献、ジョン・バローズ賞受賞 |
| 配偶者 | エリザベス・ドロシー・ウーレンホルト(1921年結婚) |
| 受賞 | ジョン・バローズ賞(1974年) |
シグード・フェルディナンド・オルソン(Sigurd Ferdinand Olson、1899年4月4日 – 1982年1月13日)は、アメリカ合衆国のネイチャーライティング作家・環境保護活動家・教育者である。ミネソタ州北部とカナダ西部オンタリオ州にまたがるクエティコ=スーペリア地域の荒野において30年以上にわたりカヌーガイドを務め、その体験をもとに自然の霊的価値と荒野保護の重要性を訴え続けた。代表作『歌う荒野』(The Singing Wilderness、1956年)はニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに入り、自然文学の最高峰とされるジョン・バローズ賞を1974年に受賞した。荒野法(1964年)の起草に貢献し、バウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア荒野(BWCAW)の完全保護指定(1978年)をはじめ、ボヤジャーズ国立公園、アークティック国立野生生物保護区、ポイント・レイズ国立海岸の設立にも主導的役割を果たした。[1]
生い立ち
シグード・オルソンは1899年4月4日、イリノイ州シカゴにてスウェーデン系バプテスト派の家庭に生まれた。父ローレンス・オルソンはバプテスト派の牧師、母アイダ・メイ・セダーホルムはスウェーデン系移民であった。[2]幼少期に家族はウィスコンシン州北部のシスター・ベイ、プレンティス、アシュランドへと移住し、オルソンはこの自然豊かな環境で育った。アシュランドの高校を卒業後、1916年にノースランド・カレッジへ入学し、その後ウィスコンシン大学マディソン校に転入して1920年に理学士号を取得した。[3]
イーリー移住と教育者時代
大学卒業後、オルソンはミネソタ州北部の鉱山町ナシューク・ケワティンで高校教師として動物飼育学・植物学・地質学を教えた。1921年6月に初めてカヌー旅行を経験し、後にBWCAWとなるミネソタ州北部の荒野に魅了された。同年8月、エリザベス・ドロシー・ウーレンホルトと結婚し、新婚旅行もバウンダリー・ウォーターズへのカヌー旅行であった。[4]
1922年秋、地質学の修士号取得を目指してウィスコンシン大学マディソン校へ戻ったが、妻の妊娠が判明したことを機に中退を決意。1923年初頭にミネソタ州イーリーへ移住し、高校生物学教師として着任した。夏季にはカヌーガイドとして働き、この地域の荒野と深く結びついていった。1936年から1947年まで、オルソンはイーリー・ジュニア・カレッジ(現ヴァーミリオン・コミュニティ・カレッジ)の学部長を務めた。[5]
後にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で動物生態学の修士号を取得した。[6]
環境保護活動家としての歩み
オルソンが環境保護活動に本格的に関わり始めたのは1920年代のことで、クエティコ=スーペリア地域への道路・ダム建設に反対する運動を起こした。1940年代には、この地域への飛行機乗り入れ禁止を求める先駆的な闘いを主導し、これが他の保護地域にも波及する先例となった。[7]
1947年に教壇を退き、環境保護活動と執筆に専念するようになった。1948年からはイザーク・ウォルトン・リーグの荒野生態学者として、1951年から1959年まで全米公園協会副会長・会長として活躍した。さらに荒野協会の副会長(1963年–1967年)、会長(1968年–1971年)を歴任し、内務長官スチュワート・ユードールの顧問として荒野・国立公園政策に深く関与した。[8]
オルソンは荒野法 (米国)(1964年、w:Wilderness Act)の起草に貢献した。この法律により、米国連邦の荒野保護システムが確立された。さらにボヤジャーズ国立公園の提唱者として同公園の名称を命名したとされており、アークティック国立野生生物保護区やポイント・レイズ国立海岸の設立にも重要な役割を果たした。1978年、ジミー・カーター大統領がバウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリアへの完全荒野指定法案に署名し、オルソンが50年以上にわたって追い求めてきた目標がついに実現した。[9]
1977年、BWCA荒野指定をめぐる議会公聴会の際、オルソンの地元イーリーで彼を含むシエラクラブメンバーの人形が吊るされる抗議運動が起きた。伐採・モーターボート業者らが規制強化に反発したためだが、オルソンは信念を曲げなかった。[10]
晩年と死
1982年1月13日、オルソンはミネソタ州イーリー近郊の自宅付近でスノーシューイング中に心臓発作で死去した。享年82歳であった。同年、彼の遺作となる Of Time and Place が出版された。[11]
文学的業績
執筆スタイルと影響
オルソンは、ウィリアム・ハドソン、ジョン・バロウズ、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー、ピエール・テイヤール・ド・シャルダン、ルイス・マンフォード、カール・グスタフ・ユングらの思想から影響を受けた。彼の文章は、荒野での体験を通じて感じる霊的な静寂と自己発見を叙情的な散文で描く点に特色がある。そのスタイルは後進の自然文学者バリー・ロペスやアニー・ディラードの手本ともなった。[12]
1956年に刊行した初の著書『歌う荒野』(The Singing Wilderness)はニューヨーク・タイムズのベストセラーとなり、一躍全国的な知名度を得た。その後も精力的に著作を続け、自然文学の分野で独自の地位を築いた。1974年に自然文学の最高栄誉であるジョン・バロウズ賞 (w:John Burroughs Medal) を受賞した。シエラクラブ、荒野協会 (w:The Wilderness Society)、全米野生生物連盟、イザーク・ウォルトン・リーグの四大環境保護団体がそれぞれの最高賞をオルソンに授与している。[13]
思想・考え方
オルソンには、「荒野(w:Wilderness)への必要性は人類の進化的遺産に根ざした普遍的な心理的欲求である」という信念がある。彼は、人間の精神的・心理的な必要性が更新世(Pleistocene)の環境に由来すると考え、荒野体験をその欲求を満たす不可欠な場として位置づけた。この視点は、他の荒野保護論者と比べてもとりわけ霊的・精神的な側面を強調する点で独自性を持っていた。[14]
オルソンはまた、荒野保護と文化的アイデンティティを結びつけ、荒野が単なる自然資源ではなく、人間の魂を養う「精神的な準備空間」であると主張した。こうした考えは彼の著作全体を貫く主題であり、執筆活動そのものを環境活動主義の一形態とみなしていた。オックスフォード大学出版局のブログはこの姿勢を「叙情を行動主義として用いること(lyricism as activism)」と評した。[15]
さらに、「リスニング・ポイント」(w:Listening Point)という概念を提唱した。これは、静寂の中で宇宙と向き合う特定の場所を意味し、必ずしも北国の荒野である必要はなく、誰もがどこかにそのような場を見出せると説いた。この概念は同名の著作のタイトルとなっただけでなく、後にミネソタ州バーンサイド湖畔の彼の小屋が「リスニング・ポイント」として史跡登録された際にも用いられた。[16]
発言
オルソンの思想の理解を助けるため、キーワードごとに分類した彼自身の説明等の発言を以下に引用する。
- 荒野の精神的価値
- 「原始的な地域を旅し続けた生涯の中で、そして荒野の中で生き、荒野を使い続ける人々と関わり続けた生涯の中で、私は気づいたのです。すべての人の心の奥底には荒野を求める揺るぎない核があり、その精神的価値こそが人間の基本的な必要であるということに。それは隠しようがありません……人の無限の精神的必要が満たされ育まれる場所を守ることができなければ、私たちは自分たちの文化を、そして自分たち自身を破壊してしまうでしょう。」
- (原文:"I have discovered in a lifetime of traveling in primitive regions, a lifetime of seeing people living in the wilderness and using it, that there is a hard core of wilderness need in everyone, a core that makes its spiritual values a basic human necessity. There is no hiding it….Unless we can preserve places where the endless spiritual needs of man can be fulfilled and nourished, we will destroy our culture and ourselves.")[17]
- 荒野と現代生活
- 「アメリカの人々にとって荒野とは精神的な必需品です。現代生活の激しいプレッシャーへの解毒剤であり、穏やかさと平衡感覚を取り戻す手段なのです。」
- (原文:"Wilderness to the people of America is a spiritual necessity, an antidote to the high pressure of modern life, a means of regaining serenity and equilibrium.")[18]
- リスニング・ポイント(聴く場所)
- 「この場所を『リスニング・ポイント』と名付けたのは、耳を澄ませてこそ、静かで気づきに満ちた状態でこそ、物事が見え、聞こえるからです。誰にでも、どこかにリスニング・ポイントがあります。それは必ずしも北国や荒野の近くでなくてもいい。宇宙を畏敬の念とともに瞑想できる、静かな場所であればよいのです。」
- (原文:"I named this place Listening Point because only when one comes to listen, only when one is aware and still, can things be seen and heard. Everyone has a listening point somewhere. It does not have to be in the north or close to the wilderness, but someplace of quiet where the universe can be contemplated with awe.")[19]
- カヌーと自由
- 「カヌーの心は荒野の心であり、ほとんど忘れ去られた自由の心です。それは不安への解毒剤であり、太古の水路への開かれた扉であり、深く確かな満足に満ちた生き方への入口なのです。」
- (原文:"The way of a canoe is the way of the wilderness and of a freedom almost forgotten. It is an antidote to insecurity, the open door to waterways of ages past and a way of life with profound and abiding satisfactions.")[20]
- 土地への愛と保護
- 「土地への愛なくして、自然保護は意味も目的も持てません。なぜなら、土地への深く本能的な感情の中にのみ、それを守ろうとする献身が生まれるからです。」
- (原文:"Without love of the land, conservation lacks meaning or purpose, for only in a deep and inherent feeling for the land can there be dedication in preserving it.")[21]
- 簡素さの価値
- 「荒野の秘密はあらゆることへの簡素さにあります。それが荒野の最も価値ある教えのひとつです。大切なのは、私たちが何を置いていくかということ。この簡素さは、食料や装備や不要な道具だけの話ではなく、思考や目的にまで及ぶのです。荒野にいるとき、問題を持ち込んではいけません。さもなければ喜びが失われてしまいます。」
- (原文:"Simplicity in all things is the secret of the wilderness and one of its most valuable lessons. It is what we leave behind that is important. I think the matter of simplicity goes further than just food, equipment, and unnecessary gadgets; it goes into the matter of thoughts and objectives as well. When in the wilds, we must not carry our problems with us or the joy is lost.")[22]
主な著作
著書
- The Singing Wilderness. New York: Alfred A. Knopf, 1956.(初の著書、ニューヨーク・タイムズベストセラー)
- Listening Point. New York: Alfred A. Knopf, 1958.
- The Lonely Land. New York: Alfred A. Knopf, 1961.
- Runes of the North. New York: Alfred A. Knopf, 1963.
- Open Horizons. New York: Alfred A. Knopf, 1969.
- The Hidden Forest. New York: Viking Press, 1969.(レスリー・クーバ画)
- Wilderness Days. New York: Alfred A. Knopf, 1972.
- Reflections from the North Country. New York: Alfred A. Knopf, 1976.
- Of Time and Place. New York: Alfred A. Knopf, 1982.(遺作)
編著・コレクション
- The Collected Works of Sigurd F. Olson: The College Years, 1935–1944. Edited by Mike Link. Voyageur Press, 1990.
- The Meaning of Wilderness: Essential Articles and Speeches. Edited by David Backes. Minneapolis: University of Minnesota Press, 2001.
- Spirit of the North: The Quotable Sigurd F. Olson. Edited by David Backes. Minneapolis: University of Minnesota Press, 2004.
- A Private Wilderness: The Journals of Sigurd F. Olson. Edited by David Backes. Minneapolis: University of Minnesota Press, 2021.