シリアゲムシ目
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シリアゲムシ目(シリアゲムシもく、Mecoptera)は、昆虫綱の目のひとつ。長翅目とも言われる。シリアゲムシやガガンボモドキを含む。世界で9科600種ほどが知られる小さな分類群である。学名はギリシア語で「長い翼」を意味する。最大の科であるシリアゲムシ科は英名では「scorpionflies」と呼ばれている。その名の通り雄はサソリの針に似た大きな生殖器を持ち、吻は長い嘴のようになっている。ガガンボモドキ科は「hangingflies」と呼ばれ、雌が雄から贈られた獲物の質に基づいて配偶者を選ぶという繁殖方法が知られている。大半の種は熱帯地域の湿った環境に生息するが、ユキシリアゲムシ科は雪原でも見られる[10]。
| シリアゲムシ目(長翅目) | ||||||||||||
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生息年代: | ||||||||||||
ヤマトシリアゲ Panorpa japonica | ||||||||||||
| 分類 | ||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||
| Mecoptera Packard, 1886 | ||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||
| シリアゲムシ目(長翅目) | ||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||
| scorpionflies earwigflies | ||||||||||||
| 科 | ||||||||||||
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外見はハエに似ているが、実際にはノミと近縁である。細長い体と狭い膜状の羽を持ち、体長は2-35 mmと、小型から中型の昆虫である。ほとんどの種が落ち葉や苔などの湿った環境で繁殖し、卵は雨季になるまで孵化しない。幼虫はイモムシに似ており、主に植物質を食べる。蛹は天候条件が整うまで休眠状態になることがある。
初期のシリアゲムシ目は、ハチなどの他の送粉者が進化する以前に、裸子植物の送粉に重要な役割を果たしていた可能性がある。現代の種は生物の死骸を捕食している。いくつかの地域では、死体に最初に到達する昆虫の1つであり、法医昆虫学において有用な種となっている。
進化と分類
分類学の歴史
1758年にカール・フォン・リンネによって、マダラシリアゲが記載された[11]。シリアゲムシ目は、1891年にアルフェウス・ハイアットとジェニー・マリア・アームズ・シェルドンによって命名された[12]。学名はギリシア語の「mecos (長い)」と「ptera (翼)」に由来する[13]。分類については議論がある。1987年にR.ウィルマンはシリアゲムシ目を単系統群として扱い、ユキシリアゲムシ科を Meropeidae 科の姉妹群とした[14]。2002年にマイケル・F・ホワイティングは、現状のシリアゲムシ目を側系統群として扱い、ユキシリアゲムシ科をノミ目の姉妹群とした[15]。
進化の歴史
Nannochoristidae の化石がペルム紀後期から知られており、これは最も古い記録である。シリアゲムシ目は白亜紀には多様化し、例えば中国では[16]、Jurassipanorpa、ガガンボモドキ科、Cimbrophlebiidae、Orthophlebiidae、Cimbrophlebiidae などの化石が発見されている[17][18]。完全変態の起源はペルム紀にあると考えられており[19]、シリアゲムシ目は完全変態を行う昆虫の中でも原始的な分類群であるといえる。
絶滅したシリアゲムシ目は、ハチなどの他の送粉者が進化する前の中期ジュラ紀から中期白亜紀にかけて、初期の裸子植物の重要な送粉者であった可能性がある。これらは主に風媒花であったが、シリアゲムシ目の化石種は吸い込む形の口器を持っており、蜜や花粉を食べることで受粉に貢献していた可能性がある。口吻の化石には鉄分がほとんど含まれていないため、吸血動物であったとは考えにくい。分岐群 Aneuretopsychina 内では、Mesopsychidae、Aneuretopsychidae、Pseudopolycentropodidae の3 科11種が知られている。化石種の大きさは体長3 mmの Parapolycentropus burmiticus から、体長28 mm、口吻長10 mmの Lichnomesopsyche gloriae まで幅広い。今日のツリアブやハナアブと同様に、口器や頭の表面に花粉を付着させて運んだとされている。バルト海から得られた始新世の琥珀の中に状態の良い標本が保存されていたものの、花粉は発見されなかった。これらの昆虫は風媒花にあまり適していないか、長い口吻で蜜を吸う必要のあるカイトニア目、ケイロレピディア科、グネツム類などの植物を受粉させていた可能性が高い[20][21]。Aneuretopsychina はペルム紀後期において最も多様な分類群であったが、中期三畳紀には Permochoristidae が最も多様化した。後期三畳紀から中期ジュラ紀にかけて、Aneuretopsychina の種は徐々に Parachoristidae 科と Orthophlebiidae 科の種に置き換えられていった。Orthophlebiidae は現生のシリアゲムシの起源であると考えられている[22]。
- Juracimbrophlebia ginkgofolia の想像図。ジュラ紀の中国に生息
- Jurassipanorpa sticta の化石。ジュラ紀の中国
- Dinokanaga andersoni の前翅の化石。始新世のワシントン州
外部の系統
シリアゲムシ目は昆虫の進化において特別な重要性を持っている。チョウ目とハエ目、そしてトビケラ目は、おそらくシリアゲムシ目に属するか、近い関連の祖先から進化した。解剖学的および生化学的類似性があり、Permotanyderus や Choristotanyderus など、シリアゲムシ目とハエ目の中間に位置する化石が発見されている。このグループはかつて現在よりもはるかに広範囲に分布し、多様であり、中生代には4つの亜目があった[23]。
ノミ目が単系統群を形成しているのか、ノミ目がシリアゲムシ目の系統群内に含まれ、従来の「ノミ目」が側系統群であるのかは不明である。以前はノミ目がユキシリアゲムシ科の姉妹群であるとされていたが[15][24][25]、より新しい研究によると、ノミ目は Nannochoristidae の姉妹群である可能性もある。以下に2つの見解を示す[26]。
(a) 現在のシリアゲムシ目(太字、赤線の範囲)は側系統群であり、ノミ目を内包する[26][27]。
注管類 |
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(b) 現在のシリアゲムシ目は単系統群であり、ノミ目の姉妹群である[26]。
注管類 |
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内部の系統
科間の関係は議論の余地があり、Cracraft and Donoghue 2004 の系統樹では、Nannochoristidae 科を別の目とし、ユキシリアゲムシ科はノミ目の姉妹群または独自の目として位置付けられている。Eomeropidae 科は残りの科の姉妹群であると示唆されているが、ユキシリアゲムシ科の位置づけは不明である。Meropeidae 科は最も基底的な分類群であるが、残りの科の関係は完全には明らかになっていない[28]。Nannochoristidae をユキシリアゲムシ科とノミ目の姉妹群として位置づける見解もある[15]。ガガンボモドキ科の位置は、狭義の Mecoptera の姉妹群、またはシリアゲモドキ科の姉妹群とされる。
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下位分類
現生種は9科36属におよそ600種が知られている。大半の種はガガンボモドキ科とシリアゲムシ科に分類されている。約87属400種の化石種が知られており、現生種よりも多様性が高い[29]。シリアゲムシ科は日本に普通。ガガンボモドキ科は日本では寒冷な地域に多く見られるが、欧米では普通。これらはいずれも翅があって飛び回る活発な昆虫である。ユキシリアゲムシ科は雪の上に出現するもので、翅が退化している。日本では長らく未発見であったが、20世紀末に北海道で発見された。ムカシシリアゲムシ亜目、シリアゲムシ亜目、ユキシリアゲムシ亜目の3亜目を認める場合もある。
- シリアゲムシ亜目 Eumecoptera
- Apteropanorpidae - タスマニア島固有の4種
- ガガンボモドキ科 Bittacidae
- Choristidae - オーストラリアに3属8種
- Nannochoristidae - 南半球に8種
- シリアゲムシ科 Panorpidae
- シリアゲモドキ科 Panorpodidae - 2属
- シリアゲモドキ属 Panorpodes - 日本産3種、複数の未記載種が知られる
- ユキシリアゲムシ亜目 Neomecoptera
- ユキシリアゲムシ科 Boreidae - 北半球に3属30種
- ムカシシリアゲムシ亜目 Protomecoptera
- Eomeropidae - 現生種は南米の1種のみ
- Meropeidae - 現生種は南北アメリカとオーストラリアに3種
分布
形態
長い嘴状の吻、膜状の羽、細長い体と長い脚を持つ小型から中型の昆虫である。咀嚼型の口器は比較的単純で、長い下唇、長い大顎、肉質の触肢を持ち、より原始的なハエ類のものに似ている。他の多くの昆虫と同様に、頭の側面によく発達した複眼、頭頂部に3つの単眼を持つ。触角は鞭状で、複数の節から構成される[23][30]。
前翅と後翅は形が似ており、細長く、多数の横脈があり、カゲロウなどの原始的な昆虫の翅に似ている。ユキシリアゲムシなど、いくつかの属では翅が退化しており、翅自体を失った種もいる。腹部は円筒形で11節から成り、最初の節は後胸部に癒合している。尾部は1 - 2節からなる。雄の腹部は上向きに湾曲しており、表面的にはサソリの尾に似ており、先端には繁殖の際に使用する構造がある[23][30]。
幼虫はイモムシのような形をしており、頭部と下顎は硬く、胸部に短い脚があり、腹部の最初の8節に腹脚があり、第10節には吸盤または一対のフックがある。蛹は繭の中に固定されていない[30]。
生態と行動

生息地
主に湿った環境に生息するが、半砂漠地帯に生息する種もある。シリアゲムシ科は、一般的に湿った落ち葉が豊富な広葉樹林に生息する。ユキシリアゲムシ科は冬に現れ、雪原や苔の上で見られる。幼虫はノミのように跳躍することができる。ガガンボモドキ科は、湿度の高い森林、草原、洞窟に生息する。主に苔や落ち葉など、湿った場所で繁殖するが、ほとんど研究がされておらず、少なくとも Nannochorista philpotti は幼虫が水生である[29]。
食性
成虫は主に腐肉食で、腐った植物や無脊椎動物の死骸を食べる。シリアゲムシ属の中には、クモの巣にかかった昆虫や、クモを食べる種も存在する。ガガンボモドキ科は特殊に変形した脚でハエや蛾を捕らえる。花粉、蜜、ユスリカの幼虫、腐肉、苔の破片を食べる種もいる[29]。多くの種は湿潤な環境に生息するため、より暑い気候では成虫の活動期間が短く、1年のうちわずかな期間しか姿が見えないこともある[23]。シリアゲムシ類は飛び回りながら餌を食べる。ガガンボモドキ類は前足で草などにぶら下がった姿勢から、後肢で獲物を捕らえることができる。幼虫は肉食で、地表あるいは半地中、あるいは地中に巣穴を掘って暮らしている。
繁殖

様々な求愛行動が観察されており、雄は雌を引き付けるためにフェロモンを発することが多い。雄は死んだ昆虫や未消化の餌など、食べられるものを雌に贈ることもある。ガガンボモドキ科の一部にはフック状の羽があり、雄は交尾中にこれを使って雌を持ち上げ、背中に乗せる。シリアゲムシ科の雄は雌に近づく際に羽を振動させ、音を出すこともある[29]。
ガガンボモドキ科では、捕獲したイモムシ、ハエなどの昆虫を相手に渡して求愛する。雄は腹部の小胞からフェロモンを出して雌を引き付ける。雌が近づくと小胞をしまい、獲物を差し出す。雌が贈り物を評価している間に、雄は自分の生殖器で雌の生殖器を探す。雌が獲物を食べるために留まると、雄の性器が雌の性器に付着し、雌は逆さまにぶら下がる姿勢になり、交尾しながら獲物を食べる。獲物が大きいほど、交尾時間は長くなる。Hylobittacus apicalis では、体長3-14 mmの獲物を送った場合、交尾時間は1 - 17分である。この種の大型の雄は、イエバエほどの大きさの獲物を与えることで、最大29分間交尾を行う。これにより最大限精子を輸送し、雌の産卵数が増え、雌が他の雄と交尾しない期間が増えるため、雄の子孫の数を増加させることに繋がる[31]。
生活環
雌は湿気のある場所に卵を産み、卵は産み付けられた後に水分を吸収して大きくなる。暑い場所に生息する種では、卵は数か月間孵化せず、乾季が終わると幼虫が出現することもある。しかし、一般的には比較的短期間で孵化する。幼虫はイモムシに似ており、短い爪のある脚と、複数の腹脚がある。頭部は硬く、大顎状の口器を持つ。幼虫は複眼を持ち、これは完全変態をする昆虫の中では独特である[32]。腹部第10節には吸盤または一対の鉤がある。幼虫は植物食または腐肉食であるが、肉食性の種も知られている。幼虫は蛹になるために土中や朽木の中に潜り込み、繭は作らない。蛹は下顎を動かすことはできるが、それ以外は完全に動かない。乾燥した環境では、数か月間休眠状態になり、環境がより適した状態になると成虫として羽化する[23]。
人との関わり
画像
- マダラシリアゲの頭部
- マダラシリアゲの尾部
- フェロモンで雌を誘引するガガンボモドキの雄