ディアナとキューピッド
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ローマに拠点を置いていたバトーニは古代芸術に造詣が深く、ルネサンスとバロック期の古典主義を受け継いだ画家である。グランドツアー中の富裕なイギリス人を描くことに専心し、国際的名声を獲得したバトーニには旅行者からの肖像画の注文が殺到した[3]。
この絵画は、ビジネスマンでイングランド銀行の頭取であったハンフリー・モーリスが1762年4月1日にバトーニから購入した[1][4]。動物が好きだったモーリスは、犬の姿でローマの田舎に憩う自分自身とともに、ローマ神話の神キューピッドと女神ディアナを表す寓意を描いてもらうようバトーニに依頼した。この絵画は、やはりバトーニが描いたモーリスの肖像の対作品である。肖像画中のモーリスは、ローマの田舎で犬、銃、死んだ獲物のそばに横たわっている[1]。かくして、本作で表される過去のローマは、対作品で表される当時のローマと対照されているのである[1]。
本作に描かれているのは、ディアナがキューピッドにしばらく休んでもらうために彼の弓を取り上げる場面である。ディアナの姿は、ヴァチカン美術館にある『眠るアリアドネ』の彫像にもとづいている[1]。ディアナのアトリビュート (人物を特定する事物) は頭部の三日月、身に着けている矢筒、弓矢で、狩猟の女神であることからしばしば猟犬を伴って描かれる。彼女は非常に潔癖な処女神で、けっして男性を受け入れようとはしなかった[5]。ディアナが愛の神キューピッドの弓矢を取り上げているのは、その弓矢が人間と神の両者に愛という癒すことのできない傷を負わせるからである。ちなみに、18世紀フランスの画家ヴァトーも、ヴィーナスから『武器を取り上げられたキューピッド』 (コンデ美術館、シャンティイ) を描いている[6]。
本作は、アントン・ラファエル・メングスの新古典主義絵画と様式的に同様のものとなっている[1]。
ギャラリー
- ポンペオ・バトーニ『ハンフリー・モーリス卿の肖像』 (1761年)、個人からナショナル・ギャラリー (ロンドン) に寄託