トリコテセン
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トリコテセン類の基本構造は、中央に酸素原子1つを含む6員環があり、それを挟む2つの炭素環から構成されている。12,13-位がエポキシド、9-位に二重結合がある、12,13-epoxytrichothec-9-ene (EPT)をコア構造と呼んでおり、それに対する置換パターンによってAからDの4種に分類することが行われている。[1]
生合成
トリコテセン類の生合成は、まずファルネシル二リン酸がテルペン環化酵素TRI5によってトリコジエンとなる。続いてシトクロムP450であるTRI4によって酸素原子が導入されていき、フザリウム属の場合はイソトリコトリオールが生じた後、非酵素的に異性化と環化が起きてイソトリコデルモール(=3α-hydroxy EPT)となる。ここまででコア構造が完成しており、あとは水酸化、アセチル化、エステル化などを経て各種トリコテセン類が生じる。これらは3-位に酸素原子が導入されており、イソトリコトリオール(isotrichotriol)に由来することからt-typeと呼ばれることがある。[1]
フザリウム属以外のいくつかの菌では、TRI4ホモログによって導入される酸素原子が1つ少なく、イソトリコジオールが生じる。この場合は、非酵素的な異性化と環化によってコア構造であるEPTが生じ、以後は同様の修飾を経て各種トリコテセン類が合成される。この場合は3-位に酸素原子がなく、イソトリコジオール(isotrichodiol)に因んでd-typeと呼ばれる。[1]
糸状菌では、二次代謝産物の生合成に関わる遺伝子群は互いに隣り合った遺伝子クラスタを形成していることが多い。フザリウム属の場合、トリコテセン生合成遺伝子群は典型的には3ヶ所に分かれている。大部分の遺伝子が1ヶ所にまとまった遺伝子クラスタとなっているが、TRI1-TRI16は2遺伝子で、TRI101は1遺伝子のみで離れて存在している。[1]
発生地域
穀物など植物のカビからトリコテセンが検出された地域は、ロシア、フランス、ブラジル、インド、カナダなど冷帯から熱帯まで多岐にわたり、食中毒の原因として報告されている[2]。
原因菌
毒性
体内に取り込まれる経路は、皮膚及び粘膜などからの経皮浸潤、粉塵の吸入による気管支及び肺、含有する食物摂食の三経路がある。毒性は タイプAのT-2トキシンが最も強い。
- 動物:主な急性症状としては、腹痛、下痢、嘔吐、脱力、発熱、悪寒、筋肉痛、顆粒球減少による二次性の敗血症、潰瘍や全身の出血などが起こる。動物実験では急性毒性として食欲不振による体重減少、慢性毒性としてIgA 産生異常によるIgA腎症、免疫力の低下、発ガン性が指摘されている。
- 植物:葉の形態形成阻害(タイプA)、根の伸張阻害(タイプB)などを引き起こす。
作用経路
トリコテセン類は、リボゾームの 60S サブユニットに結合することによる蛋白質および核酸の合成阻害による免疫阻害作用、セロトニン介在性ニューロンへの作用による食欲不振や嘔吐、免疫系細胞へのアポトーシス、炎症性サイトカインの産生などを引き起こす。このため、人間を含む動物に対し強い毒性を発揮する。
