パンタナル
南米の湿地
From Wikipedia, the free encyclopedia
パンタナルは、南アメリカ大陸のほぼ中央部に位置する、世界最大級の熱帯性湿地である[1][2][3]。
パンタナルの名前の由来は、ポルトガル語の pantano(沼地)である。水文学、地質学、生態学の側面においてパンタナールは特異な性質を持つ。1982年のRADAMBRASILにおいて、パンタナル地域には12種類の生態系が存在していると定義されている[4]。
大部分がブラジルのマットグロッソ州とマットグロッソ・ド・スル州に所属し、一部がゴイアス州、ボリビアとパラグアイにまたがる。総面積195,000平方キロメートルであり[4][5]、そのうち1,878平方キロメートルが2000年に「パンタナル自然保護地域」としてUNESCOの世界遺産および生物圏保護区に登録された[6]。また、ブラジルの3ヶ所[7][8][9]、ボリビアの1ヶ所はラムサール条約登録地でもある[10]。
生態学
乾燥と洪水を季節的に繰り返すパンタナルのような生態系を「洪水平原生態系」と定義する[4]。具体的にはこの生態系は水が溢れる洪水の段階から元々あった土壌の高さまで水位が下がり、乾燥状態になっていることを繰り返す。土の状態で説明すると砂から粘土、シルト状態になる。
パンタナルは、海抜80メートルから150メートルに広がる平原地帯である[4]。1986年のCafavid GarciaとCastroの観測によると、11月から3月の間に1,000ミリメートルから1,500ミリメートルの降水量が観測される。パンタナルを流れるパラグアイ川の水位は、季節的に2メートルから5メートルの間で上下する。パンタナールのそれ以外の場所での水位の変化は、これよりも小さい。溢れ出した水の速度は非常に遅い。その理由は、植物が密生しているためである。このことは、1995年のHamiltonの研究に基づく[4]。
開発と危機
パンタナルは生物多様性の宝庫であるが、農地や牧草地を開発するための野焼きを原因とする林野火災が多発しており、2020年時点で湿原の1割に相当する約1万9000平方キロメートルが焼失した。世界自然保護基金(WWF)ブラジルは生態系の破壊と煙害を警告し、自然保護団体や国際投資機関はブラジル政府に対策を求めた。ジャイール・ボルソナーロ大統領は2020年7月、アマゾン熱帯雨林とパンタナルで乾季が終わる11月まで野焼きを禁止する措置をとったが、一方で同年8月、その後も頻発する林野火災をメディアによる嘘呼ばわりしている[11]。
2021年12月、カルフール(フランスのスーパーマーケット)のベルギー法人は、アマゾンとともにパンタナルの環境破壊を問題視し、パンタナルで飼育された牛の肉を使用しているとみられるコンビーフ、ビーフジャーキー、高級部位のカット肉などを店頭から撤去すると表明した[12]。
地理

パンタナルは、巨大で緩やかな傾斜がついた、日本の本州ほどの広さの平原である。傾斜が緩やかなことにより、高原地帯(ギマラインス高原、サンタ・バルバラ山脈、ウルクム山塊など[6])から流れてくるパラグアイ川とその支流の水を急速に失うことなく、ゆっくりと平原から流れ出す。
パンタナルは西と北西をブラジル・ボリビアの国境に位置するチキターノ熱帯乾燥林に、南西と南をグランチャコと接することで区切られている。パンタナルから北、東、南東部にはセラードが広がる。
年間の降水量は1,000から1,400ミリメートルであるが、パンタナルの水資源を供給するのは高原地帯から流れ出すパラグアイ川である。気温は年間平均で摂氏25度であるが、年間の寒暖の差は0度から40度までと大きい。
パンタナル・マトグロッセンス国立公園[7]、タイアマン生態系保護拠点[8]、SESCパンタナル自然遺産私設保護区[9]およびボリビア・パンタナルはラムサール条約登録地である[10]。
植物相
動物相
パンタナルには約1,000種の鳥類、約400種の魚類(この魚類の中には、ピラニアも含む)、約300種の哺乳類(この中には、カピバラも含む)と480種類の爬虫類(この中には、カイマンなどのワニも含む)がいると考えられている。
パンタナルで稀少の動物と考えられているのは、アメリカヌマジカやオオカワウソの類である。パンタナルの一部において絶滅の危機に瀕している動物としては世界で最も大きいオウム目の鳥類のスミレコンゴウインコ、カンムリノスリ、ジャガー、タテガミオオカミ、ヤブイヌ、オオアルマジロ、カピバラ、アメリカバク、オオアリクイ、クチジロペッカリー、エスキモーコシャクシギ、ナンベイヒメウなどが挙げられる[7][8][9][10]。