ピエロ・マンゾーニ
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作風
マンゾーニの作品は、白一色の「アクローム」シリーズと、作者の身体や署名、証明行為を扱う作品群に大別されることが多い。アクロームでは、絵具の色彩表現を排し、カオリン、綿、パン、石、繊維素材など多様な物質を用いて、作品を「何かを表すもの」ではなく「それ自体としてあるもの」として提示しようとした[2][3]。
一方で、1959年から1961年にかけて制作された《線》では、紙に引かれた線を筒や容器に封入し、通常は見ることのできない作品として提示した。こうした作品は、知覚される対象としての作品よりも、証明書、署名、観念、想像力によって成立する作品概念を前景化している[4]。
また、マンゾーニは作者の身体的痕跡や行為そのものを作品化した。《芸術家の息》では風船に自らの息を吹き込み、《生きた彫刻》では人間に署名することで作品化しようとした。こうした実践は、作者の身体、署名、証明行為がいかに価値を生むかという問題と深く結びついている[1][4]。
主要作品
アクローム
アクローム(伊: Achrome)は、1957年以降に継続して制作された代表的シリーズである。白色ないし無色の表面をもつ作品群で、絵画的表現を最小化し、物質そのものの状態を前面に出した。マンゾーニの名を国際的に知らしめた作品群の一つであり、のちのミニマル・アートやコンセプチュアル・アートとの関連でも論じられている[1][2]。
線
線(伊: Linee)は、紙に引いた線を巻いて容器に封入した作品群である。作品は通常、内部を見ることができず、ラベルや証明によってその存在が保証される。このシリーズでは、作品の可視性よりも、概念、記述、封入、想像といった要素が大きな役割を果たしている[4]。
芸術家の息
芸術家の息(伊: Fiato d'artista)は、風船に作者自身の息を吹き込んだ作品である。身体の痕跡を作品化する試みであり、作者の存在や人格性がどのように作品価値へ転化されるかを問う作例とされる[4][1]。
芸術家の糞
芸術家の糞(伊: Merda d'artista)は、1961年5月に制作された代表作である。30グラム入りと表示された缶詰90点からなり、芸術家自身の糞を封入したものと称して、同重量の金の相場に基づく価格で販売された。作品は、作者性、作品の価値、商品化、鑑賞者や収集家の信認をめぐる問題を鋭く示したものとして、戦後美術における重要作例の一つに数えられている[5][6]。
1961年12月に友人ベン・ヴォーティエへ宛てた書簡では、マンゾーニは、芸術家は指紋を売るべきであり、あるいは最も長い線を描く競争を行うべきであり、また糞を缶詰にして売るべきだ、収集家が作家から親密で本当に個人的なものを求めるなら、それはまさに芸術家自身の糞である、という趣旨を記している[7]。
