プテロダウストロ

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プテロダウストロ学名Pterodaustro「南の翼[2]」)は南アメリカ産のクテノカスマ科に属する翼指竜亜目翼竜の1。化石の年代はおよそ1億500万年前の前期白亜紀に遡る。

概要 プテロダウストロ Pterodaustro, 地質時代 ...
プテロダウストロ
Pterodaustro
生息年代: 前期白亜紀, 105 Ma
化石標本の複製:アルゼンチン自然科学博物館 (Museo Argentino de Ciencias Naturales) ブエノスアイレス
地質時代
前期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 翼竜目 Pterosauria
亜目 : 翼指竜亜目 Pterodactyloidea
: クテノカスマ科 Ctenochasmatidae
: プテロダウストロ属
Pterodaustro
学名
Pterodaustro
Bonaparte, 1970
シノニム
和名
プテロダウストロ
  • P. guinazui (模式種)
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発見と命名

Fernbank Museum of Natural History の復元骨格

模式標本である大腿骨 (PVL 2571) を含む最初の化石群は、1960年代後半にホセ・ボナパルテによってアルゼンチンサンルイス州に位置するラガルシト累層(Lagarcito Formationアルビアン階)から発見された。本属はその後チリアントファガスタ州の Sierra da Candeleros にある Quebrada La Carreta からも報告されたが、これは間違いでありこの化石はズンガリプテルス科の Domeykodactylus ceciliae という別の翼竜であると判明した[3]。アルゼンチンの産出地であるわずか 50 m2 大の "Loma del Pterodaustro (プテロダウストロの丘)" [4]からは、それ以降何回かの発掘を経て、750 点を超えるプテロダウストロ標本が採集され、2008年までにそれらの標本の内 288 点が目録化されている。このことによりこの種は翼竜の中で最もよく知られたものの一つとなっており、卵から成体までの全ての成長段階の標本が存在する。

本属は1969年にホセ・ボナパルテによって名付けられたが、その時には記載文を伴わない裸名であった。1970年に最初の記載が発表されてプテロダウストロ (Pterodaustro) という名が有効名となり、模式種Pterodaustro guiñazui とした[5]属名ギリシャ語πτερόν(pteron:翼)とラテン語の auster(南・南風)に由来する[5]。各要素は "pteron de austro"(南の翼)の短縮形として結合された。種小名古生物学者 Román Guiñazú への献名である。チルダなどの発音区別符号は学名に使用できないため、この種小名 ("guiñazui") は1978年にペーター・ヴェルンホファーによって "guinazui" へ修正された。

記載

ヒトとの大きさ比較

ダレン・ナイシュらの推定によるプテロダウストロ成体の翼開長はおよそ 3 m であり、体重はおよそ 9.2 kg である[6]。一方でグレゴリー・ポールによる数値は翼開長 2.5 m に対して体重 12 kg であり、この数値をもとに既知の翼竜の中で体重に対する翼開長の比が最少であるとされている[7]。後肢は比較的頑丈で足部は大きい。短尾型翼竜である翼指竜亜目の尾部はよく保存されているものがそう多くはないが、これまで見つかっている中での尾椎数最大値はプテロダクティルスの 16 個であった。しかしプテロダウストロの尾椎は 22 個にもなり翼指竜亜目の中で最大の尾椎を持つだけでなく、他の翼竜と比較しても形態学的差異があり、本属の固有派生形質を成している[8]

復元図

プテロダウストロは非常に長く伸びた頭骨をもち、最大で 29 cm にもなる。眼窩前部分が頭骨長の 85 % を占める。長い吻部と下顎は強く上方に反りかえり、吻先端部の接線は顎関節の接線方向と直角となる。プテロダウストロは 1000 本もの剛毛状に変化した歯牙をその下顎に持ち、それを用いて甲殻類プランクトン藻類やその他の小型生物を水中から濾し取っていたと考えられている[9]。歯牙の萌出密度は 1 cm あたり24本にもなる[2]。これらの歯はほとんどの部分では各自独立した歯槽に納まっているのではなく、下顎縁に平行な2本の長い溝に生えている。各歯牙は長さ 3 cm で断面形状は楕円型、幅はわずか 0.2-0.3 mm しかない[10]

当初これらの構造は真の歯であるかを疑われていたが、その後の研究で通常の歯が構成されているのと同じくエナメル質象牙質歯髄を持っている事が立証された。非常に硬い素材で形成されているにもかかわらず、その極端な長幅比のおかげで最大で 45° までの湾曲を許容できるだけのある程度の柔軟性を保持していた可能性がある[10]。上顎も歯を備えるが、これらは平らな円錐形の基部とヘラ状の歯冠を持つ非常に小さな物だった。上顎の歯も個々の歯槽を持たず、おそらくは靭帯によって特殊な基部に結合されており、この基部には各上顎歯ごとに背側前方に向かう小骨の列(各列ごとにおよそ4個ずつ)が並んでいた[11]。他のほとんどの爬虫類の歯とはことなり、これらの歯は生え変わらなかったと思われる[12]

頭骨背部も低い位置にある程度伸長部があり、頭頂部に低いトサカがあった可能性が示唆されている[11]

純古生物学

採餌

復元頭骨

プテロダウストロはその歯を櫛のように使って食物を濾し取っていたと考えられており、この採餌方は濾過摂食と呼ばれる方法で現生のフラミンゴなどもこれを行う[13]。捕えられた獲物はおそらく上顎に生えている小さなコブ状の歯で押しつぶされた[14]。小さな餌生物を濾過するために水を急速に循環させる機能を持っていた可能性がある[7]

他のクテノカスマ科翼竜と同様に、プテロダウストロは長い胴体と相対的に力強くかつ遊泳に適して広がった後足部を持っていた[14]。近年の研究では、その足首の関節は泥濘や水中の歩行に要求される運動が容易に行えるようになっていた[15]

ロバート・バッカーは、フラミンゴのようにこの翼竜も食物に影響されたピンク色の体色をしていたかもしれないと推測した[16]

プテロダウストロの少なくとも2標本(MIC V263 と MIC V243)で、胃腔内に胃石が見つかっており、これは翼竜では初めて報告された事例である。これらの角のある小石の集まりは、プテロダウストロが濾過採餌を用いて主に硬い殻を持つ小型の水生甲殻類を食べていたという説を支持する。これらの無脊椎動物はプテロダウストロ化石が産出する堆積物中に豊富に存在する[17]

成長と繁殖

骨格復元図

プテロダウストロの成長段階の研究から、若年個体は最初の2年で比較的急速に成長して成体の約半分の大きさに達すると結論づけられた。その後で性的に成熟し、最終的な成長停止に至るまで 4 - 5 年ほどゆっくりとした成長を続ける[18]。孵化したばかりの幼年個体 (23g) から成体 (9.19kg) になるまで体重は400倍近くになったと推定された[6]

2004年にプテロダウストロの卵の中の (MHIN-UNSL-GEO-V246) が報告された。卵は細長く、長径 6 cm で短径 22 mm 、おおよそ柔軟な卵殻は 0.3 mm 厚の方解石層で覆われていた[19]。2014年には立体的に保存された卵化石も報告されている[20]

2009年、骨髄骨 (medullary bone) の可能性がある組織が知られている中で最大のプテロダウストロ大腿骨 (V 382) から報告された。骨髄骨組織はそれまでは繁殖のために産卵を行う現生鳥類とティラノサウルスのような一部の非鳥類恐竜でのみ知られていた物で、よってこの記録は恐竜類でないものからの骨髄骨としては最初の事例となる[21]。2021年にパディアンとウッドワードは、その組織は(骨髄骨ではなく)破砕された骨内膜組織の可能性があると主張した[22]

水鳥との比較

プテロダウストロの強膜輪と現生の鳥類や爬虫類の強膜輪を比較することにより、プテロダウストロは夜行性であり夜間に採餌する現生カモ目と似た行動様式を持っていたと示唆されている[23]。ただし、この研究に関してはその方法論に一部から疑問が呈されている[24]

その長い胴体と頸部そして相対的に短い脚部のために、プテロダウストロは翼竜の中でも特に離陸に難があった。翼竜の四足歩行での離陸機構をもってしても、プテロダウストロは開けた場所でのみドタバタしたかなり低角度での離陸(まさに現生のガンハクチョウのような)が可能だっただろう[14]

系統

プテロダウストロ組立骨格(ヨコハマ恐竜展2017)
化石複製(国立自然史博物館・パリ)

ボナパルテはプテロダウストロを1970年にプテロダクティルス科 (Pterodactylidae) に、翌1971年にはプテロダウストロ科 (Pterodaustriidae) に分類した。しかしながら1996年のアレクサンダー・ケルナーとデイヴィッド・アンウィンによる分岐分析以降、他の濾過食翼竜と共にクテノカスマ科 (Ctenochasmatidae) に置かれている[14]

2018年の Longrich, Martill and Andres による研究ではプテロダウストロはより厳密にクテノカスマ科中のプテロダウストロ族 (Pterodaustrini) とされ、そのの中で BeipiaopterusGegepterus よりも基盤的な位置にいる[25]

Ctenochasmatidae
Ctenochasmatinae

Ctenochasma

Pterodaustrini

Pterodaustro

Beipiaopterus

Gegepterus

Kepodactylus

Moganopterinae

Moganopterus

Feilongus

Ardeadactylus

Elanodactylus

Gnathosaurinae

Huanhepterus

Plataleorhynchus

Gnathosaurus

出典

外部リンク

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