プロドラッグ
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目的
- 作用の持続化
- 脂溶性増大
- 副作用・毒性の軽減
- 安定化
- 味・においの改善
- 経口投与におけるバイオアベイラビリティ(特に消化管からの吸収し易さ)の改善
1、2、4、6は、吸収、分布、代謝、排泄に関する物性、いわゆるADMEの最適化により達成されることが多い。3.の例は、多くのがんに対する化学療法薬において見られ、プロドラッグ戦略により意図した標的への薬物の選択性を向上させる(ターゲティング)。
低酸素状態のがん細胞を標的にする医薬品は、還元活性化を行う。すなわち、低酸素状態の細胞内に存在する多量の還元酵素を利用し、プロドラッグを細胞毒性型へと変換する。活性化前の形態がより低い細胞毒性を示すならば、健康な正常細胞を傷つける可能性を著しく軽減させ、結果として副作用を軽くすることができる。
医薬品設計における位置づけ
化学構造の変換
分類
プロドラッグは、どこで最終的な活性な薬物形態に変換されるかに基づいて、2つのタイプに分類できる。タイプ1は細胞内で変換が行われるもの(例:抗菌性ヌクレオシド類、高コレステロール血症剤のスタチン類、化学療法に用いる抗体依存型/遺伝子依存型酵素プロドラッグ[ADEP/GDEP])、タイプ2は細胞外、特に消化物中、もしくは体循環中に変換されるもの(例:エトポシド、バルガンシクロビル、ホスアンプレナビル)である。それぞれのタイプは更にサブタイプA、Bに分けられる。タイプ1Aと1Bは、活性形態への変換が行われる場所が薬物の作用の場所であるかどうかにより決められる。タイプ2Aと2Bは変換の場が、消化物中か体循環中かにより分類される [2]。
| タイプ | 変換の場 | サブタイプ | 変換が行われる組織 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| タイプ1 | 細胞内 | タイプ1A | 治療目的の組織/細胞 | ジドブジン、 フルオロウラシル |
| タイプ1 | 細胞内 | タイプ1B | 代謝組織(肝臓/肺など) | カプトプリル、 シクロフォスファミド |
| タイプ2 | 細胞外 | タイプ2A | 消化物 | スルファサラジン(サラゾスルガピリジン)、酸化ロペラミド |
| タイプ2 | 細胞外 | タイプ2B | 体循環 | フォスフェニトイン、 バンブテロール |
治療標的と変換の場が同じ場合(例:HMG-CoA還元酵素阻害剤)、1つのプロドラッグがタイプ1Aとタイプ1Bの両方に属することもありうる。
プロドラッグの例
プロドラッグ → 活性代謝物の順で記述。
- 加水分解されるもの
- オセルタミビル(タミフル) → オセルタミビルカルボキシレート(エチルエステルの加水分解と脱リン酸)
- エナラプリル → エナラプリラート(エステル加水分解酵素)
- バラシクロビル → アシクロビル(エステル加水分解酵素)
- ホスアンプレナビル → アンプレナビル
- シロシビン → シロシン
- ヘロイン → モルヒネ(エステル加水分解酵素)
- クロラムフェニコールコハク酸エステル → クロラムフェニコール(純粋なクロラムフェニコールが水に溶解しないため、静脈内プロドラッグとして用いられる。)
- ジピベフリン → アドレナリン(緑内障薬として局所投与)
- リスデキサンフェタミン → デキストロアンフェタミン(アンフェタミンのD型異性体)(ペプチド結合加水分解)
- DOPA脱炭酸酵素による変換
- P450による代謝
- 日本で未承認のもの
- モルシドミン → SIN-1 → 一酸化窒素
出典
- プロドラッグ 日本薬学会
- 今井輝子、プロドラッグとアンテドラッグ/ソフトドラッグの加水分解に関与するエステラーゼ Drug Delivery System., Vol.30 (2015) No.5 プロドラッグ・アンテドラッグによるDDS創薬 p.422-432, doi:10.2745/dds.30.422