ベクトロン

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2015年のTrako 2015に出展されたVetcron MS
2014年のイノトランスに出展されたVetcron AC
同じく2014年のイノトランスに出展されたVetcron DE

ベクトロン(Vectron)は、ドイツの総合電機メーカーであるシーメンス[* 1]により製造・販売されているセミオーダーメードの電気機関車ディーゼル機関車である。2020年9月時点において、欧州20か国で1000両以上が発注されている[1][* 2]同社の鉄道車両分野における代表的な製品の1つとなっている。

開発に至る経緯

1990年代以降、欧州の電気機関車は、それまでの主流であった鉄道事業者のニーズに合わせて製造されるいわゆるオーダーメードのものから、プラットフォームの考え方を取り入れ、基本的な仕様を予めいくつか定めておいた上で用途や運行される路線の架線電圧や信号方式などを運行事業者に合わせて対応できるセミオーダーメードの電気機関車が主流となっている。これらの電気機関車は同じく1990年代以降にEU圏内を中心に進行した貨物列車運行のオープンアクセス化[* 3]に伴い、従来からの鉄道事業者に加え、新規の貨物列車運行会社や機関車リース会社に広く導入されている。

このようなセミオーダーの機体は欧州の各鉄道車両メーカーで開発され、シーメンスではユーロスプリンターが、ボンバルディア・トランスポーテーションではTRAXXアルストム・トランスポールPrimaがそれぞれ製造・販売されており、同様なセミオーダーのディーゼル機関車としてTRAXXのほか、シーメンスのユーロランナーが製造・販売されている。これらの機体は1990-2000年代にいくつかの鉄道事業者向けに開発された機体をベースに各メーカーが標準型としてプラットフォーム化したものであり、もともとドイツ鉄道向けの汎用機(駆動装置の差により貨物用の185型と旅客用の146.1型に分かれるが基本的に同一の機体)として開発されていた機体をベースに発展したTRAXXは各鉄道事業者に広く採用されていた。これに対し、2000年代におけるユーロスプリンターの第2世代[* 4]のラインナップは、もともとはドイツ鉄道向けの高出力貨物用機189型と、オーストリア国鉄向けの高出力高速旅客用機1016形および1116形として開発されていた機体をベースとしたものであり、前者を貨物用機、後者を汎用機としてシリーズ展開をしていた。しかしながら、これらの機体はいずれも高機能・高性能を狙った設計で汎用機としてはやや過剰装備であったこと、貨物用機は交直両用複電圧の4電源機のみの用意であったこと、189型以前にユーロスプリンターの交流専用機としてドイツ鉄道が発注した152型は曲線通過時の軌道への横圧が高かったためオーストリアやスイス国内への乗入れが出来ず、結局ドイツ国内専用機となってしまっていたことなどから、幅広いラインナップのTRAXXプラットフォームと比較して、ユーザーの選択肢が狭かったことなどから販売面ではTRAXXに水をあけられる結果となっていた。このため、2000年代半ばには衝突安全性の向上などを図ったユーロスプリンターの第3世代として、高出力汎用機であるベルギー国鉄の18形および19形のほかに中出力汎用機であるポルトガル国鉄の4700形が製造された際に、交流専用機、直流専用機などもラインナップに加わっている。

Vetcronの開発

しかし、ユーロスプリンター第3世代の開発直後の2006年にシーメンスは電気機関車のシリーズを一新することを決定し、併せて従来ユーロランナーとして別プラットフォームで展開されていたディーゼル機関車も統合した新シリーズが本項で記述するVectronであり、2010年に試作機がロールアウトしている。なお、Vectronの名称はベクトルを表す"vektor"と電子を表す"elektron"を組み合わせた造語である[2]

Vectronシリーズ発足当初は電気機関車のラインアップとして

  • Vectron MS:交直流複電圧(4電源:AC25 kV 50 Hz/AC15 kV 16.7 Hz/DC3000 V/DC1500 V)の高出力機(6400 kW)
  • Vectron AC:交流複電圧(2電源:AC25 kV 50 Hz/AC15 kV 16.7 Hz)の高出力機(6400 kW)
  • Vectron AC(Medium Power):交流複電圧(2電源:AC25 kV 50 Hz/AC15 kV 16.7 Hz)の中出力機(5600 kW)
  • Vectron DC:直流単電圧(DC3000 V)の中出力機(5200 kW)

の4機種が用意され、最高速度は160 km/hと200 km/h(交流複電圧の中出力機には設定されない)が標準で設定されており、ユーロスプリンターと比較すると大幅にラインナップが増やされているが、同プラットフォームでは貨物用機と汎用機とでは車体、台車、駆動装置が別個のものとなっていたのに対し、Vectronでは車体、台車はすべて共通となって電装品もモジュール化が進められたものとなって貨物用機と汎用機と区別もなくなっている。また、各国の信号保安装置にも対応できるほか、オプションで230 km/h対応の駆動装置や貨物駅構内など非電化区間での入換運転用のディーゼル発電機ユニット(交直流複電圧機は未対応)などが用意されている。その後2018年には姉妹シリーズとして、Vectron ACの中出力機をベースにドイツ国内での貨物輸送に特化した単一仕様としてコスト削減との納期圧縮を図ったSmartronがラインアップに加えられており、概要は以下の通りとなっている。

  • Smartron:交流単電圧(AC15 kV 16.7 Hz)の中出力機(5600 kW)

一方、ディーゼル機関車は当初は以下の1種のみが用意されていた。

  • Vectron DE:ディーゼル機関、機関出力2400 kW/動輪周上出力2200 kW

このDEは電気式ディーゼル機関車で、電気機関車とは前頭部などは同一であるが、車体、台車ともユーロランナーの流れを引いた専用品となっており、電気機関車と同一の車体を使用し、電気機関車からディーゼル機関車(もしくはその逆)への改造も可能するTRAXXの2Eシリーズ以降とは異なる設計思想となっている。さらに、2018年にはこのDEをベースとしたディーゼル/電気両用機関車としてVectron DM[* 5]がラインアップに加えられており、以下の通り、非電化区間と電化区間を直通する列車の牽引を想定したG05と、電化区間での列車牽引および非電化の貨物駅構内での入換を想定したH01の2種が用意されている。

  • Vectron DM (G05):ディーゼル機関/交流単電圧(ディーゼル/AC15 kV 16.7 Hz)、出力2000 kW(ディーゼル)/2200 kW(電気)
  • Vectron DM (H01):ディーゼル機関/交流単電圧(ディーゼル/AC15 kV 16.7 Hz)、出力950 kW(ディーゼル)/2200 kW(電気)

仕様

運行

参考文献

脚注

関連項目

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