マストドン
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マストドン(Mastodon、Mammut)は、ゾウ目マムート科に属する大型の哺乳類の総称であり、ユーラシア大陸方面に拡散したジゴロフォドンと、北米大陸で生存していたマムート(マンムト)属(短顎マストドン)に大別される。原始的な長鼻目でありマンモスや現生のゾウに類似している。マストドンゾウとも呼ばれる[1]。
| マストドン Mammut | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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生息年代: | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アメリカマストドンの骨格(国立科学博物館) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 絶滅(化石) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 中新世 - 前期完新世 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Mammut (Blumenbach, 1799) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| マストドン マストドンゾウ[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Mastodon | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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マムート属の分布。 |
約4,000万年前から11,000年前(または約8,000年前)まで生存しており、日本列島[1][2]を含む広範囲に分布していたが、他多数の化石長鼻目と同様に「第四紀の大量絶滅」の中で絶滅した[3][4]。末裔の一種であったアメリカマストドン(American Mastodon、M. americanum)が模式種および代表的な種類である。
アメリカマストドンはアメリカ合衆国の大衆文化に取り入れられたことにより、学術研究と一般大衆の認知度の両方において最も著名な古生物の一角になっている。 以下はアメリカマストドンを中心に解説する。
名称

シノニムおよび英名である Mastodon(Mastodont) はジョルジュ・キュヴィエによる造語であり、ギリシャ語の「μαστός(胸)」と「ὀδούς(歯)」という2つの単語を組み合わせることによって「乳首の歯」を意味する[1]。これは、大臼歯の歯冠に乳首状の突起を有していたことに起因する[5]。なお、中生代前期三畳紀に生息した両生類のマストドンサウルスも同様の意味合いで命名されている。
シノニムの一つである Leviathan は旧約聖書の怪物のレヴィアタン(リヴァイアサン)に由来する。
学名の「Mammut」はヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハによって命名されており、こちらに先取特権があるために今日でもこちらが学名として使用されている。タタール語の「ママントゥ(Mammantu)」という単語に由来し、「大地に住む者」を意味する[1]。
なお、マンモス属の「Mammuthus」と似ているものの、互いに別属である。また、名称が類似するステゴマストドン、ノティオマストドン、日本列島にも分布していたシノマストドン(通称センダイゾウ)[1][6]はゴンフォテリウムに代表されるゾウ形類・ゴンフォテリウム科(長顎マストドン)に属しており[1]、マムート属とは遠縁である。
分類


マムート属の分類面に関しては解明されていない部分も少なくなく、単一の種としてのアメリカマストドン(M. americanum)においても形態毎の地域差が顕著に見られ[7]、分類上の混乱を引き起こしてきた。
後述の "Mammut" borsoni も含め、近年においてもマムート属への分類が確定していない種類が複数存在しており[注釈 2]、さらに、実際にマムート属として確定している各種にも各々に複数のシノニムが存在する。この様な状況の中で、2019年には北米大陸の西側を中心に生息していた個体群が新種「Pacific Mastodon(パシフィックマストドン、M. pacificus)」として記載された[7]。
日本国内におけるマムート属の研究や報告事例は豊富ではないが、松本彦七郎や亀井節夫などによるものが知られる[1][2]。
近縁種

2019年に新種として記載された「Pacific Mastodon(パシフィックマストドン、M. pacificus)」は、その名の通り北米大陸の北太平洋側つまり西側を中心に化石が発見されている。この種の発掘記録で古い事例は1860年代に遡ると考えられている[7]。
以前は従来のアメリカマストドン(M. americanum)のエコタイプ(地理的変異)だと見なされていた。大陸の東側(北大西洋側)により多く分布していたと思われる狭義のアメリカマストドンとの間には、主だった分布以外にも骨格や歯の形状に違いが見られるなど異なる系統を形成しており、両種が別種である根拠になった。一方で、カリフォルニア州・ロサンゼルス郡のランチョ・ラ・ブレアなどの一部の地域では両系統の分布に重複が見られる[7]。

マストドンに近縁な可能性がある"Mammut" borsoniは、ステファノ・ボルソンに因んで「Borson's Mastodon(ボルソンマストドン)」とも呼ばれるが、"M." borsoni の厳密な分類は確定しておらず、マムート属の祖先に該当する中新世のジゴロフォドン(Z. turicensis)の系譜であるという説もある[8][9][10][11]。また、後期中新世の "M." borsoni の化石の一部は、同様にマムート属との関係性が解明されていない 鮮新世の種類である "Mammut" obliquelophus の誤認であるという指摘も存在する[12]。
前期更新世までのユーラシア大陸に分布しており、肩高4.1メートル、体重16トンと、ナルバダゾウやパラケラテリウムなどにも匹敵する地球史上最大の陸棲哺乳類の一角であった。また、象牙も地球史上最大の歯であり、長さ5メートル以上、重さ137キログラムになった[9][10][11]。
生息域

中新世から前期完新世にかけて、ユーラシア大陸、日本列島[1][2]、アフリカ大陸、北アメリカ、南アメリカなどに生息していたが、時代と共に種類の減少や分布の縮小が顕著になっていった。
最後の重要な生息地は北米大陸であり、模式種であるアメリカマストドンや「Pacific Mastodon(パシフィックマストドン)」を含め、いくつかの種類が後期更新世や前期完新世まで生存していた。
アメリカマストドンに関しては五大湖地域などの大陸の東側(北大西洋側)から多く発見されており、特にフロリダ州、ニューヨーク州、ミズーリ州、インディアナ州、イリノイ州、オハイオ州とミシガン州などで顕著な発掘記録が存在する[7]。
対照的に「Pacific Mastodon(パシフィックマストドン)」は、カリフォルニア州など一部の地域でアメリカマストドンと分布が重複していたものの[7]、アメリカ合衆国西海岸以外の発見記録が非常に少ない。また、アメリカマストドンが北はアラスカ州、南はホンジュラスにまで拡散していたのに対して[13]、「Pacific Mastodon(パシフィックマストドン)」の化石の分布はほとんどアメリカ合衆国内に限定されている。
形態



約11,000年前まで北米大陸に生息していたアメリカマストドンをはじめ、数種類の化石が発見されている。上述の通り、アメリカマストドンという一種に限定しても非常に地域差などが大きく、過去には複数の種類に分類されていた[7]。
アメリカマストドンは肩高2 - 3メートルと現生のアフリカゾウよりも若干ながら小柄であり、ケナガマンモスと類似した体躯を持っていた。大きさにおいて特徴的なのは体重であり、6.8 - 9.2トンに達し、平均体重ではアフリカゾウも含めた現生ゾウのどの種類よりも重かった[14][5]。
アメリカマストドンは30センチメートル程の分厚い褐色(赤褐色)の体毛を持っていた考えられており[1][13]、この点においてはケナガマンモスとの類似性が見られる。標本の一部には毛皮が付着した状態で保存されてきた事例がいくつか存在しており、様相からマンモスとは異なって下毛を有していなかった可能性がある[5]。
一方で、骨格に関してはマンモスと異なる部分が多々あった。ゾウ科とは対照的に、マストドンの大臼歯の歯冠には円錐形の乳首型の突起が見られた。このことから、草により適応したマンモスとは異なって木の葉を摂取することに適した構造になっている。また、上述の通り英名やシノニム自体がこの歯の形状に因んで命名されている[5]。
頭蓋骨はマンモスよりも大型だが高さが低く、全体的な骨格はマンモスよりも頑丈でより寸胴であった。象牙は、(同時代のアメリカ大陸の長鼻目においては)ケナガマンモスやコロンビアマンモスよりは湾曲具合が緩やかであり、この点に限ればマンモスよりもノティオマストドンやステゴマストドンなどのゴンフォテリウム科やキュビエロニウス属により近かった。また、現生のゾウと同様に同じ個体でも左右の象牙の長さや形状が均一でない場合も多かったことが示唆されている[5]。
なお、メスには下顎にも一対の象牙を持ち、若いオスにも同様の物が痕跡的に存在していたが、オスは成熟すると共に下顎の象牙を失ったと思われる[13][5]。
生態

主に群れで生活し、針葉樹が多く開けた低地の森林地帯にとくに多く分布していたと思われる[7][13]。コロンビアマンモスなどの同時代の長鼻目との関係性についてはコロンビアマンモス#生態を参照。
象牙の化石に遺された窪みや象牙質に規則性のある損傷が見られることから、現代のアフリカゾウなどと同様にマストドンにおいても、成熟したオスの長大な象牙は(おそらく春から初夏にかけた)繁殖期にオス同士の競争や闘争に使われた可能性がある。また、食事の際などに枝を折ることにも象牙を用いていたと思われる[5]。
現生のゾウと類似して季節毎に草と木の葉の両方を餌としていたと思われる[13][7]。また、コロンビアマンモスなどの同時代のメガファウナと同様に、マストドンもニホンカボチャを含めたカボチャ属、ヒョウタンに近縁なユウガオ属の一部(Gourd)、ズッキーニなどのウリ科の祖先の種子散布(英語版)を担っていた[3][4]。
人間との関係

アメリカマストドン(および Pacific Mastodon)はコロンビアマンモス、ステップバイソン、ウマ科などと共に、北米大陸産の化石種のメガファウナでは最後まで生存していた部類であるが、「第四紀の大量絶滅」を機にマムート属、マンモス属、ゴンフォテリウム科、キュビエロニウス属が絶滅し、アメリカ大陸の生態系から長鼻目が完全に消失した。この大量絶滅の背景には、気候変動に付随する植生などの変化、分布を拡大させてきた人類による影響、またはこれらの要因が複合的に作用した可能性がある[13][3][4][15][16]。

上述の通り、絶滅する以前はウリ科などの植生にとって代表的な種子散布者(英語版)の一角であった。「第四紀の大量絶滅」を機にこの関係性が崩壊したものの、これらの植物は(本来のパートナーであった動物相を絶滅させた可能性がある)人類[16]による栽培を経て生存している[3][4]。
上述の通り、アメリカマストドンはアメリカ合衆国の大衆文化に迎合されたことによって一般社会での認知度が飛躍的に向上し、マストドンのイメージは同名のバンドおよびそこから着想を得て開発へと繋がった同名のソーシャルネットワークサービスなどに使用されている。また、この生物としてのマストドンの学術的な研究もこの影響を受けて加速しており、直近の数十年間で解剖学および古生物学上(北米大陸の「第四紀の大量絶滅」におけるマストドンにまつわる状況)の見識が飛躍的に向上した[7]。
関連画像
- ハインリヒ・ハルダーによるアメリカマストドンの想像図。
- チャールズ・ナイトによる想像図。
- チャールズ・ウィルソン・ピールによる最初の発掘記録の光景を描いた絵画。