Wikiwand AI

メルセンヌ数

2の冪より1小さい自然数 From Wikipedia, the free encyclopedia

メルセンヌ数(メルセンヌすう、英: Mersenne number)とは、2の冪よりも 1 小さい自然数、すなわち 2n − 1(n は自然数)の形の自然数のことである。これを Mn で表すことが多い。メルセンヌ数を小さい順に列挙すると

0, 1, 3, 7, 15, 31, 63, 127, 255, 511, 1023, 2047, 4095, 8191, ... (オンライン整数列大辞典の数列 A000225)

となる(OEISでは n = 0 の場合もメルセンヌ数に含めている)。メルセンヌ数は2進法表記で n 桁の 11⋯11、すなわちレピュニットとなる。

「メルセンヌ数」の名は、この形の素数に関する予想を発表したマラン・メルセンヌに由来する。

基本的な性質

Mn は 2n − 1 の約数の総和に等しい。

Mn が素数ならば n もまた素数である。このことは、nが合成数であるメルセンヌ数は次のように因数分解できることから分かる[1][2]:

2ab − 1 = (2a − 1)(1 + 2a + 22a + ⋯ + 2(b−1)a).

また、この等式より、m | n のとき Mm | Mn である。一方、 p が素数でも Mp が素数とは限らない。最小の反例は p = 11 の場合であり、M11 = 2047 = 23 × 89 が成り立つ。

奇素数 p に対して Mp が素数であるかどうかは、リュカ–レーマー・テストによって判定できる (#素数判定法節を参照)。

完全数

Mp = 2p − 1が素数ならば、2p−1(2p − 1) は完全数である[1][3]。

例

  • 6 = 2 × 3 = 2 × ( 1 + 2 )
  • 28 = 4 × 7 = 4 × ( 1 + 2 + 22)

この定理はすでに紀元前3世紀頃のユークリッド原論で証明されていた[4]。そのため、完全数の探索は専らメルセンヌ素数の探索によって行われた。

p > 1ならば、2p−1(2p − 1) は明らかに偶数であるが、偶数の完全数がこの生成式で表されるものに限られるのかはユークリッド以来約2000年間にわたって未解決であったが、18世紀にオイラーによりこの形に限ることが証明された[3] (奇数の完全数が存在するかという問題は今日なお未解決である。)

メルセンヌ数の素因数

p を素数とする。

  • Mp の素因数は 2p を法として 1 と合同[5]、かつ 8 を法として 1 または −1 と合同である[6]。
  • p ≡ 3 (mod 4) のとき、Mp が 2p + 1 で割れることと、2p + 1 が素数であることは同値である[6]。
  • ある計算可能な正定数 c が存在して、Mp の最大素因数を q について、q ≥ cp log p [7]。

倍積完全数

メルセンヌ数が素数でない場合も、 2n−1(2n − 1) が倍積完全数になることがある。n が1の場合は1(唯一の1倍完全数)、4と10の場合はそれぞれ120と523776(いずれも3倍完全数)、6の場合は2016(3倍完全数672の約数の和)になることが知られている。

メルセンヌ素数

メルセンヌ素数(メルセンヌそすう、Mersenne prime)とは、素数であるメルセンヌ数のことである。

2024年10月現在発見されているメルセンヌ素数は全部で52個ある。その中で最大のものは2024年10月に発見された2136279841 − 1 であり、十進法で表記したときの桁数は4102万4320桁に及ぶ[GIMPS 1]。

これより大きい素数は、2024年11月現在メルセンヌ素数以外でも発見されていない。

メルセンヌ素数の発見の歴史

古代~中世

メルセンヌ素数の探索は紀元前3世紀ごろに端を発する。

小さいメルセンヌ素数がいつから知られているかは定かではないが、少なくとも最初の4つの完全数はゲラサのニコマコスの『算術入門』ですでに言及されている[8][9]。5番目から7番目の完全数は、13世紀イスラムの数学者イブン・ファッルース (fr:Ibn Fallus) が論文に記している[10]。ヨーロッパでは、5番目の完全数が1456年と1461年の日付が付された古い写本に記されて[11][12]おり、6番目と7番目のメルセンヌ素数および完全数も1603年にピエトロ・カタルディ(英: Pietro Cataldi)によって発見されている[10]。

メルセンヌの予想

さらに見る p ...
メルセンヌの予想の表: p ≦ 263
〇:Mpが素数の場合/×:Mpが合成数の場合
水色が正解、ピンク色が間違いを示す[13]。
p 235711131719
Mp 〇〇〇〇×〇〇〇
p 2329313741434753
Mp ××〇×××××
p 5961677173798389
Mp ×〇×××××〇
p 97101103107109113127131
Mp ×××〇××〇×
p 137139149151157163167173
Mp ××××××××
p 179181191193197199211223
Mp ××××××××
p 227229233239241251257263
Mp ××××××××
閉じる

1644年、マラン・メルセンヌは「素数 p で 2p − 1 が素数になるのは、p ≦ 257 では p = 2, 3, 5, 7, 13, 17, 19, 31, 67, 127, 257 の11個の場合だけである」という予想を発表した[10][14]。しかしメルセンヌ自身はその予想を証明することができず、しかもその予想の一部は誤っていた。

最初の成果はメルセンヌが予想を発表してから128年後、1772年にオイラーによりp = 31 の場合は素数であること[1][15]が証明された。その次の成果はさらに104年後、1876年にリュカが効率的な素数判定法リュカ・テスト(英語版)を考案して、p = 67 の場合は素数でないこと、p = 127 の場合は素数であること[1][16]を証明した。その後リュカ・テストは改良されて、メルセンヌの予想に含まれていなかった素数3個が新たに発見された(p = 61の場合(1883年)、p = 89の場合(1911年)、p = 107の場合(1914年))。メルセンヌが予想した最後の数である p = 257 の場合が合成数であることが確定したのは1922年であった[1][17]。

結局メルセンヌの4個の予想のうち2つは外れた。なおかつ、間に予想できなかった3つが含まれていたことを考えれば彼の予想は正しかったとはいえないが、その後の歴史を見ても大きな原動力となり先駆的であったことに敬意を表して、素数であるメルセンヌ数をメルセンヌ素数という[要出典]。

1903年10月、アメリカの数学者フランク・ネルソン・コールは実際の素因数分解を探求し、ニューヨークで開かれたアメリカ数学会の会議で 193707721 × 761838257287 を黒板に計算し、M67 と一致することを証明した。この間一言もしゃべらず、席に戻った後、少し間を置いて拍手が沸き起こったと伝えられている[18]。

1952年、ラファエル・M・ロビンソン(英語版)が SWAC を利用して M521 から M2281 まで、5つのメルセンヌ素数を発見[1]して以降、発見にはコンピュータが使用されており、コンピュータの進歩と共に新たなメルセンヌ素数が発見されつつある。

GIMPSによる発見

1996年、メルセンヌ素数を発見することを目的として作られた分散コンピューティングによるプロジェクト GIMPS が発足し、35番目のメルセンヌ素数 M1,398,269(1996年11月13日、Joel Armengaud[GIMPS 2])以来、GIMPSによるメルセンヌ素数の発見が続いている。

2008年8月23日、GIMPS は46番目の素数候補が、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の数学部のコンピュータによって発見されたと報じた[要出典]。この素数は電子フロンティア財団が賞金を懸けた1000万桁以上の最初の素数となるため、GIMPS によって同校数学部に50,000ドル、慈善事業に25,000ドル、残りを前の6つのメルセンヌ素数の発見者へ分配することになった[GIMPS 3]。

2008年9月6日、GIMPS は45番目の素数候補が、ドイツで発見されたと報じた[要出典]。これは、GIMPS によって発見された中では、発見順序と桁数が逆転した初めてのケースである。

素数判定法

メルセンヌ数には次のような素数判定法があり、素数かどうか効率よく判定することが可能である。

リュカ・テスト

p が (4j + 3) 型の素数のとき、S0 = 3, Sn = Sn−12 − 2 (n ≧ 1) で {Sn} を定義すると、

  • 任意の がで割り切れないならば、Mp は合成数である
  • がで割り切れるならば、Mp は素数である[19][20][21]

リュカ–レーマー・テスト

p が奇素数のとき、S0 = 4, Sn = Sn−12 − 2 (n ≧1) で{Sn} を定義すると、

  • がで割り切れないならば、Mp は合成数である
  • がで割り切れるならば、Mp は素数である[22][23][24]

リュカ–レーマー・テストは二進計算機用のアルゴリズムに適しており、コンピュータによるメルセンヌ素数の発見には、この判定法が用いられてきた。例えば、2p ≡ 1 (mod Mp) より、A·2p + B ≡ A + B (mod Mp) が成り立つので、Mp で割る割り算の代わりに、二進法で p 桁のシフト演算と足し算だけで計算できる。

メルセンヌ素数の一覧

2024年10月現在知られているメルセンヌ素数は下記の表の52個である。ただし、メルセンヌ素数としての番号が確定しているものは51番目までであり、それよりも大きいメルセンヌ素数については、未発見のメルセンヌ素数が途中にないかを検証中である。

メルセンヌ素数は小さい順番から並べると

3, 7, 31, 127, 8191, 131071, 524287, 2147483647, ... (A000668)

となる。

さらに見る #, p ...
# p Mp の
桁数
発見日 発見者
1 2 1 紀元前500年?[25]
2 3 1 紀元前500年?[25]
3 5 2 紀元前275年?[25]
4 7 3 紀元前275年?[25]
5 13 4 1456年[26] 不明[26]
6 17 6 1603年[10] ピエトロ・カタルディ(英語版)
7 19 6 1603年[10] ピエトロ・カタルディ
8 31 10 1772年 レオンハルト・オイラー
9 61 19 1883年 イヴァン・パヴシン(英語版)
10 89 27 1911年 R・E・パワーズ(英語版)
11 107 33 1914年 R・E・パワーズ[27]
12 127 39 1876年 エドゥアール・リュカ
13 521 157 1952年1月30日 ラファエル・M・ロビンソン(英語版), 使用:SWAC
14 607 183 1952年1月30日 ラファエル・M・ロビンソン
15 1,279 386 1952年6月25日 ラファエル・M・ロビンソン
16 2,203 664 1952年10月7日 ラファエル・M・ロビンソン
17 2,281 687 1952年10月9日 ラファエル・M・ロビンソン
18 3,217 969 1957年9月8日 ハンス・リーゼル, 使用:BESK
19 4,253 1,281 1961年11月3日 アレクサンダー・フルウィッツ, 使用:IBM 7090
20 4,423 1,332 1961年11月3日 アレクサンダー・フルウィッツ
21 9,689 2,917 1963年5月11日 ドナルド・ギリース, 使用:ILLIAC II
22 9,941 2,993 1963年5月16日 ドナルド・ギリース
23 11,213 3,376 1963年6月2日 ドナルド・ギリース
24 19,937 6,002 1971年3月4日 ブライアント・タッカーマン(英語版), 使用:IBM 360/91
25 21,701 6,533 1978年10月30日 ランドン・カート・ノル(英語版) & ローラ・ニッケル, 使用:CDC Cyber 174
26 23,209 6,987 1979年2月9日 ランドン・カート・ノル
27 44,497 13,395 1979年4月8日 ハリー・ネルソン & デイヴィッド・スローウィンスキー(英語版)
28 86,243 25,962 1982年9月25日 デイヴィッド・スローウィンスキー
29 110,503 33,265 1988年1月28日 ウォルター・コルキット & ルーク・ウェルシュ
30 132,049 39,751 1983年9月19日[25] デイヴィッド・スローウィンスキー
31 216,091 65,050 1985年9月1日[25] デイヴィッド・スローウィンスキー
32 756,839 227,832 1992年2月19日 デイヴィッド・スローウィンスキー & ポール・ゲイジ(英語版) 使用:Harwell Lab Cray-2[28]
33 859,433 258,716 1994年1月4日[29] デイヴィッド・スローウィンスキー & ポール・ゲイジ
34 1,257,787 378,632 1996年9月3日 デイヴィッド・スローウィンスキー & ポール・ゲイジ[30]
35 1,398,269 420,921 1996年11月13日 GIMPS / Joel Armengaud[GIMPS 2]
36 2,976,221 895,932 1997年8月24日 GIMPS / Gordon Spence[GIMPS 4]
37 3,021,377 909,526 1998年1月27日 GIMPS / Roland Clarkson[GIMPS 5]
38 6,972,593 2,098,960 1999年6月1日 GIMPS / Nayan Hajratwala[GIMPS 6]
39 13,466,917 4,053,946 2001年11月14日 GIMPS / Michael Cameron[GIMPS 7]
40 20,996,011 6,320,430 2003年11月17日 GIMPS / Michael Shafer[GIMPS 8]
41 24,036,583 7,235,733 2004年5月15日 GIMPS / Josh Findley[GIMPS 9]
42 25,964,951 7,816,230 2005年2月18日 GIMPS / Martin Nowak et al.[GIMPS 10]
43 30,402,457 9,152,052 2005年12月15日 GIMPS / カーティス・クーパー(英語版), Steven Boone[GIMPS 11]
44 32,582,657 9,808,358 2006年9月4日 GIMPS / カーティス・クーパー, Steven Boone[GIMPS 12]
45 37,156,667 11,185,272 2008年9月6日 GIMPS / Hans-Michael Elvenich[GIMPS 3]
46 42,643,801 12,837,064 2009年4月12日 GIMPS / Odd Magnar Strindmo
47 43,112,609 12,978,189 2008年8月23日 GIMPS / エドソン・スミス[GIMPS 3]
48 57,885,161 17,425,170 2013年1月25日 GIMPS / カーティス・クーパー[31][GIMPS 13]
49 74,207,281 22,338,618 2016年1月7日 GIMPS / カーティス・クーパー[GIMPS 14]
50 77,232,917 23,249,425 2017年12月26日 GIMPS / Jonathan Pace[GIMPS 15]
51 82,589,933 24,862,048 2018年12月7日 GIMPS / Patrick Laroche[GIMPS 16]
[* 1] 136,279,841 41,024,320 2024年10月21日 GIMPS / Luke Durant[GIMPS 1]
閉じる
  1. 52番目以降はメルセンヌ素数としての順番が確定していない。

未解決問題

  • メルセンヌ素数は無数に存在するか?
  • 素数 p に対して Mp が合成数であるとき、これをメルセンヌ合成数と呼ぶ[32]。メルセンヌ合成数は無数に存在するか?
  • 平方因子を持つメルセンヌ数 Mp(p は素数)が存在するか?
  • n を奇数とするとき、次の3つの条件のうち2つが満たされれば、残りの1つも満足されると予想されており、n < 105 に対してこの予想は正しいと確認されている[33]。
  1. Mn が素数
  2. n = 2k ± 1 または 4k ± 3
  3. (2n + 1)/3 が素数

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Timelines

Top Qs

Fact Checks