ラサギリン
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| IUPAC命名法による物質名 | |
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| 臨床データ | |
| 販売名 | Azilect, Azipron, others |
| Drugs.com | monograph |
| MedlinePlus | a606017 |
| ライセンス | EMA:リンク、US FDA:リンク |
| 胎児危険度分類 | |
| 法的規制 | |
| 薬物動態データ | |
| 生物学的利用能 | 36% |
| 血漿タンパク結合 | 88 – 94% |
| 代謝 | Liver (CYP1A2-mediated) |
| 半減期 | 3 hours[要出典] |
| 排泄 | Kidney and fecal |
| データベースID | |
| CAS番号 |
136236-51-6 |
| ATCコード | N04BD02 (WHO) |
| PubChem | CID: 3052776 |
| IUPHAR/BPS | 6641 |
| DrugBank |
DB01367 |
| ChemSpider |
2314553 |
| UNII |
003N66TS6T |
| KEGG |
D08469 |
| ChEMBL |
CHEMBL887 |
| PDB ligand ID | RAS (PDBe, RCSB PDB) |
| 別名 | VP-1012, N-propargyl-1(R)-aminoindan[1] |
| 化学的データ | |
| 化学式 | |
| 分子量 | 171.24 g·mol−1 |
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ラサギリン(Rasagiline)はモノアミン酸化酵素B(MAO-B)の非可逆的阻害作用を持つ[2]プロパルギルアミン誘導体である[3]。開発コードはTVP-1012[4]。パーキンソン病の単剤療法に、より進行した症例では補助療法に用いられる[5]。初期および進行パーキンソン病の両方に有効性が認められており、特に疲労感などの非運動症状に有効であるとされている[6][7][8]。
この薬剤のラセミ体は、1970年代初頭にAspro Nicholas社によって合成された。その後、パーキンソン病の治療薬としての可能性が見いだされ、R異性体が活性型であることが確認された[9]。
重大な副作用は、
- 起立性低血圧(2.4%)
- 傾眠(1.4%)、突発的睡眠(0.4%)
- 幻覚(2.7%)
- 衝動制御障害(0.1%)[病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食など]
- セロトニン症候群(頻度不明)
- 悪性症候群(頻度不明)
である[12]。
これに関連して、多くの抗精神病薬(三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬など)が併用禁忌とされている[12]。
米国の添付文書では、
などの警告が記載されている[8]。
レボドパとの併用では、運動機能亢進、不慮の事故、急激な血圧低下、関節痛および腫脹、口渇、発疹、異常な夢、嘔吐、食欲不振、体重減少、腹痛、吐き気、便秘などの消化器系疾患などの副作用がある[8]。レボドパによるジスキネジアが増強される場合がある[12]。
レボドパ以外のパーキンソン病治療薬との併用では、末梢性浮腫、転倒、関節痛、咳、不眠などの副作用が起こることがある[8]。
相互作用
メペリジン、トラマドール、メサドン、プロポキシフェン、デキストロメトルファン、セイヨウオトギリソウ、シクロベンザプリン、または他のMAO阻害薬を服用している患者は、ラサギリンを服用してはならない[8]。
先述の通り、抗うつ薬との併用でセロトニン症候群を生じる可能性がある[8]。しかし、1504人を対象とした多施設共同後ろ向き研究では、ラサギリンと抗うつ薬、ラサギリンと抗うつ薬なし、または抗うつ薬とラサギリンまたはセレギリン以外のパーキンソン病治療薬で治療を受けた患者についてセロトニン症候群を調査したが、症例は確認されなかった[6]。
ラサギリンとデキストロメトルファンを併用した場合、精神病や奇異行動を起こす危険性があり、ラサギリンと他のMAO阻害剤を併用した場合、非選択的MAO阻害および高血圧性クリーゼの危険性がある[8]。
作用機序
パーキンソン病は、神経伝達物質であるドーパミンを生成する細胞が死滅することが特徴である。神経伝達物質は、モノアミン酸化酵素(MAO)と呼ばれる酵素により分解される。 MAOには、MAO-AとMAO-Bという2つの形態が存在し、ドーパミンを分解する酵素はMAO-Bである。 ラサギリンは、MAO-Bと不可逆的に結合することで、ドーパミンの分解を抑止する。そのため、パーキンソン病患者の脳内での生成量減少が補われ、ドーパミンがより多く利用可能となる[6]。

最初のMAO-B阻害薬であるセレギリンは、in vivo でその一部が代謝されてレボメタンフェタミン(覚醒剤のメタンフェタミンとは鏡像異性体の関係)となる[13][14]。この代謝物は、神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害するセレギリンの作用に寄与していると考えられるが、人によっては起立性低血圧や幻覚との関連も認められている[14][15][16]。ラサギリンは、アンフェタミン様の特徴を持たない(R)-1-アミノインダン((R)-1-Aminoindane)に代謝され[17]、細胞や動物モデルにおいて神経保護作用を示す[10]。
ラサギリンのMAO-Bとの親和性はMAO-Aの14倍高い[18]。
代謝
歴史
研究開発
ラサギリンは、大規模な無作為化プラセボ対照二重盲検疾患修飾試験において、多系統萎縮症の人々に対する有効性が検証されたが、結果は失敗であった[23]。
ラサギリンが単に症状を改善するだけではなく、パーキンソン病の特徴であるドーパミン神経細胞の死滅を防ぎ、疾患の進行を遅らせる疾患修飾薬であることを証明するための臨床試験が2本実施されたが、FDAの諮問委員会は2011年、「臨床試験の結果は、ラサギリンの神経保護作用を証明するものではない」として、主張は退けられた。主な理由は、1つの試験で、低用量では進行を遅らせる効果があったが、高用量では効果がなく、これは標準的な用量反応関係に照らして意味をなさないというものであった[24][25]。