中池見湿地

福井県敦賀市にある湿地 From Wikipedia, the free encyclopedia

中池見湿地(なかいけみしっち)は、福井県敦賀市樫曲(かしまがり)にある、面積約25ha湿地[1]2012年平成24年)に越前加賀海岸国定公園の一部として追加指定され、同年7月3日にはラムサール条約に湿地周辺を含む87haが登録された[2][3][4]

天筒山から見下ろした中池見湿地
中池見湿地の位置(日本内)
中池見湿地
中池見湿地
中池見湿地の位置

天筒山、中山、深山という三つの低山に囲まれており[5]、木ノ芽川(笙の川支流)の支流の源流域に位置する[6]断層運動や地殻変動水系が堰き止められ、植物が泥炭化して積み重なった「袋状埋積谷」と呼ばれる地形に形成された低層湿原である[5]。分類的にはフェンにあたる。

生物多様性において貴重な湿地で、ラムサール条約登録地全体で4000種類以上の動植物が確認されており、特にトンボは73種と日本国内有数の生息地である[4]。『日本の地形レッドデータブック』(1994年)にも保全を要する最も価値のある地域の一つとして記載されている[7]が、後述するように開発や外来種侵入の危機に晒されてきた(後述)。

歴史

敦賀断層の西側が沈降したことにより、袋状の埋積谷ができ、そこに湿原が発達した。そのため40mにも及ぶ泥炭層があり、その地層には、約10万年間の環境変遷史が記録されている[1]

かつてはスギの巨木が生い茂っていた。江戸時代新田開発により、自然の湿地に加えて水田水路が設けられ、動物相植物相がより多様になった[5]

その後の減反政策休耕田が増えその地を大阪ガスが買収したがほぼ放置状態であったため、現在のような多様なモザイク状の生態系が形作られた。その後2005年平成17年)に敦賀市に寄付された(詳しくは下記)。

環境省は2001年(平成13年)12月、日本の重要湿地500に選定。2012年(平成24年)5月には、同湿地に水を供給する周辺の山を含めた87haをラムサール条約の新たな登録候補地に指定する方針を決めた[8]

湿地の特徴

湿地特有の植物が群落を作っているほか、様々な水生昆虫が生息している。特にトンボの種類が豊富で、現在70種が確認されている。動植物のうち絶滅危惧種デンジソウメダカなど約200種といわれている[9]ノジコなどの鳥類も見られる[3]

近年、新種のテントウムシが発見され、ナカイケミヒメテントウ学名Scymnus nakaikemensis Sasaji et Kishimoto[10]と命名された。

植物

中池見人と自然のふれあいの里

湿地は「中池見人と自然のふれあいの里」として見学用に開放されている[1]。湿地内の一部で、木道の観察路が整備されている。湿地の南東端にはビジターセンターがあり、保全活動のボランティア拠点となる[1]ほか、水辺の生物展示などが行われている。湿地の南西端には、敦賀市杉箸地区にあった茅葺古民家が移築されている[1]。。

交通アクセス

北陸本線北陸新幹線小浜線ハピラインふくい線敦賀駅の北東約2kmに位置する[1]敦賀市コミュニティバス東郷線(予約制)が利用できるほか、徒歩の所要時間は約30分[1]

北陸自動車道敦賀インターチェンジの北北西約1kmに位置する。湿地の西端付近に国道8号敦賀バイパスが通る。周辺の南側と東側に国道476号が通り、南側の藤ヶ丘駐車場と東側の樫曲駐車場へのアクセス道路となる。湿地の南端から天筒山方面に中部北陸自然歩道が整備されている。藤ヶ丘駐車場からは、峠越えとなるこもれびの道の歩道が整備されている。

環境破壊への懸念と保全活動

LNG基地建設計画

1992年(平成4年)に大阪瓦斯(大阪ガス)が液化天然ガス(LNG)基地の建設計画を発表した。一部は環境保全エリアとして残すとしたものの、市民団体などが湿地の保全を訴えて反対運動を展開[8]1996年(平成8年)以降集中的な生態学的調査が進められ、生物多様性が桁外れに高いことが明らかにされた[11]。2002年(平成14年)4月、計画はエネルギー事情の変化を理由に断念された。大阪ガスが取得・所有していた土地は2005年(平成17年)3月31日にすべてが敦賀市へ寄付され、市有地となった。その後、敦賀市や特定非営利活動法人(NPO)により保全が進められている[8]

LNG基地計画のため、湿地の隅を走る国道8号敦賀バイパスには、湿地へ下りる管理用道路(通常は閉鎖されている)や広い路側帯が設置されている。現在はそこに自動車が仮眠などの目的で長時間停車したり心無い者がゴミを捨てており、環境への影響を心配する声がある。

北陸新幹線建設計画

北陸新幹線は中池見湿地南東の山にトンネルを掘削して2024年(令和6年)3月16日に敦賀駅まで延伸開業したたが、当初は湿地の一部を横切る計画だった[4]。検討段階の環境アセスメントによって、民家を避けるようルート設定が行われたためであるとされ、専門家からは、中池見湿地に生息する多数のヘイケボタルへの影響をはじめとして、環境への悪影響を与えかねないとの懸念が指摘された[12]

2015年(平成27年)3月15日、鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、同湿地を通過する国の認可ルートを変更することを明らかにした[13]

翌2016年(平成28年)4月8日、日本自然保護協会世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどは連名で『ラムサール条約湿地「中池見湿地」を通過する北陸新幹線建設工事において、ラムサール条約の決議を遵守すること求める 要望書』を機構に提出した。その概要は以下の通り[14]

  • ラムサール条約の決議X.17.17に則った「環境管理計画」を中池見湿地の自然に精通している市民・NGO等を含む専門家の意見を反映させて作成すること。
  • モニタリング調査の結果や環境配慮等の事業評価について、独立に検証する評価委員会を設置すること。
  • モニタリング調査の結果や評価委員会の会議等は、中池見湿地の保全に関わる関係者および市民が入手・利用可能となるよう随時公開すること。
  • 工事において予期せぬ事態や事故に備えて緊急時計画を策定すること。

北陸新幹線は湿地やその地下は横切らなかったものの、流れ込む水量が減る問題が起きた。その代償措置として機構は、過去に開発行為による盛り土を撤去して湿地を復元した[15]

外来種

アメリカザリガニセイタカアワダチソウなどの外来種の侵入が問題となっており[3]、アメリカザリガニは駆除活動が行なわれている[16]

敦賀市は、飼育用に改良された観賞魚など「第三の外来種」を含めて持ち込まないよう呼び掛けている[1]

脚注

関連項目

外部リンク

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