中世日本では禅文化が盛んとなり、漢文学としての五山文学が興隆した。それに付随する形で自然と出版文化も起こるが、その多くは日本に伝来した宋版や元版(宋元版)を底本として覆刻されたものであった。木版印刷の古様を伝えるものが多く、書誌学的な資料価値が非常に高いものが多く存在する。
川瀬一馬は次のように指摘する。
五山版は、単にわが中世における印刷文化の中枢であるのみならず、中世文化全般の中枢を担っていた。
鎌倉時代から
南北朝時代を経て
室町時代末期に至る約四百年間の前期
武家文化は、新たに大陸から招来された禅文化に拠って支えられ、それを踏まえて発展を遂げたと言つてよい。その間、武家に対し指導的役割を果したものは、
禅僧であり、その文化指導者たる禅僧の最も中枢的な営みが、四百余種におよぶ禅籍・漢籍の出版事業である。これらの五山版は中世における他の宗派の出版活動、即ち、
春日版・
高野版・
叡山版・
浄土教版等が、その宗派内の教化活動に留まるのに対して、全くその
文化史的意義を異にするものである。