十階のモスキート
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| 十階のモスキート | |
|---|---|
| 監督 | 崔洋一 |
| 脚本 | 内田裕也・崔洋一 |
| 出演者 |
内田裕也 小泉今日子 吉行和子 |
| 音楽 | 大野克夫 |
| 撮影 | 森勝 |
| 製作会社 | ニュー・センチュリー・プロデューサーズ[1] |
| 配給 | ATG[1] |
| 公開 |
|
| 上映時間 | 108分 |
| 製作国 |
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| 言語 | 日本語 |
『十階のモスキート』(じっかいのモスキート)は、1983年の崔洋一監督、内田裕也主演の日本映画[1][2]。 ニュー・センチュリー・プロデューサーズ製作[1][3]、ATG系で公開された[4][注 1]。崔洋一の監督デビュー作[5][6][7]。
1978年(昭和53年)、廣田雅晴(当時、京都府警察の巡査部長)が当時勤務していた西陣警察署から同僚の拳銃を盗み出し、郵便局で強盗未遂事件を起こすなどした警察不祥事を題材としている[3][4][7][8][9]。同事件の犯人である廣田は出所後の1984年(昭和59年)、かつて勤務していた派出所(京都府京都市北区)に勤めていた巡査を殺害して拳銃を奪い、大阪府大阪市都島区の消費者金融店で店員を射殺して現金を奪うという事件(京都・大阪連続強盗殺人事件)を起こし[7][9][10]、1998年(平成10年)に死刑が確定している[9][注 2]。
出世の見込みも無く、妻に逃げられた冴えない警察官の男は、マンションの十階に住んでいる。毎月の慰謝料、養育費、バーのツケ、ギャンブルの借金に追われ、精神が崩壊していく。
出演者
- 内田裕也(主人公の男)
- 小泉今日子(RIE)
- 吉行和子(TOSHIE)
- 中村れい子(KEIKO)
- 宮下順子(「ヒーロー」のママ)
- 風祭ゆき(婦人警官)
- アン・ルイス(万引の女)
- ビートたけし(競艇場の予想屋)
- 横山やすし(芸能人風のシャレ男)
- 阿藤海(男の同僚A)
- 清水宏(男の同僚B)
- 下元史朗(男の同僚C)
- 鶴田忍(TOSHIEの男)
- 梅津栄(初老の男)
- 小林稔侍(「ヒーロー」の客A)
- 高橋明(「ヒーロー」の客B)
- 浅見小四郎(「ヒーロー」の客C)
- 草薙良一(太陽ローンの岡村)
- 伊藤公子(太陽ローンの女店員)
- 安岡力也(友野金融の矢沢)
- 仲野茂(リーゼントの男)
- 趙方豪(山崎)
- 佐藤慶(署長)
- 庄司三郎、飯田裕幾、深見博、岡本達哉、杉田広、高瀬将嗣、山田博行、相原巨典、山川弘乃、笠井心、中島いづみ、遠藤暁子、福島みゆき、松山薫、戸塚珠緒、渡辺裕子(その他)
スタッフ
製作
企画
『水のないプール』に続く内田裕也の企画[5][6]。『水のないプール』完成直後にイメージした[3]。内田は映画プロデューサーとして優れた嗅覚を持ち[9]、三面記事的な事件をピックアップし、誰も思いつかない題名を付ける[9]。『水のないプール』に続いて内田が目を付けたのが前述の現職警官による郵便強盗事件[9]。同時期に内田が敵意を抱くフォークの武田鉄矢が、吉田拓郎の主題歌を被せて勧善懲悪の「刑事物語シリーズ」をヒットさせていたことから[9]、フォーク野郎のヌルい警察映画が気に入らない内田は[9]、製作を推進させていく[9]。
東映セントラルフィルムの配給で『水のないプール』がヒットしたことから、最初は崔が長く助監督を務めた東映系の東映セントラルフィルムに「金出せや」と企画を持ち込んだが[5]、色よい返事がされず、他社に持ち込むもどこも難色を示しため[5]、ニュー・センチュリー・プロデューサーズとATGに駆け込んだ[5]。脚本を読んでくれて「面白いじゃないか」という返事をもらったが、両社から「金は出せません」と言われた[5]。それで内田裕也の個人的信用で、映画会社とは関係のない会社から製作費を引き出した[5]。しかし予算をオーバーし、ニュー・センチュリー・プロデューサーズが製作費を3分の1負担した[5]。
タイトル
タイトルの由来は、「ある時ふっと気が付くと、壁にモスキート(蚊)をつぶした小さな血痕が付いていた。自分の血なんですけどね。僕はロックンロールのナントカなんて呼ばれてるけど、現実には、大きな宇宙の中のちっぽけなモスキートみたいなものにすぎない───、でも人は刺せるよ、というふうな、それがテーマなんです。」[7][13]。「組織の中で正直に生きようとすれば、落ちていかざるを得ない状況」を描いた作品で、タイトルの「十階」には、「十戒」という意味も込められている[14]。十階とは当時内田が樹木希林と別れて暮らしていたワンルームマンション[9]。
脚本・監督
内田は脚本・監督には『水のないプール』に続いて若松孝二を希望していたが[9]、内田の扱いに手を焼いた若松から断られ、若松から監督に崔洋一を推薦された[9]。内田は「傑作かタコ(駄作)のどちらかにしてくれ」と崔に注文を付けた[3]。脚本は1稿は内田自身が書いたが[3]、何と横書き[3]。映画常識からは無縁[3]。その後内田栄一が3稿まで書き[5]、内田栄一、崔、内田裕也の三者の歩み寄りができず、内田は脚本なしでの撮影を提案するが[9]、初監督となる崔が難色を示したことから[9]、内田が「俺が書く」と言って新たにホンを書き上げ、それに崔が加筆、修正を加え最終稿になった[5]。この最終稿も「男女二人がベンツでモーテルにINNす。ごくふつうの女…がHADEMEになったという感じの色香」などとアルファベット多用の脚本で[3]、主人公がパソコン・ポリという設定からのアイデアと見られる[3]。パソコンはまだ初期だった。脚本クレジットは内田と崔の合作[6]。崔は内田から、「警察官が強盗する」という映画の制作を提案されて以来、大宅壮一文庫へ通い、題材となった廣田の事件の雑誌記事を大量に複写していた[15]。神代辰巳や若松とは現場で揉めた内田だったが、歳下の崔を立て、この点では相乗効果を生み出した[9]。
キャスティング
内田の不良の娘を演じる小泉今日子は映画初出演[2][6]。撮影時はまだブレイク前と見られる。小泉の他、スナックの女・中村れい子、万引き女・アン・ルイス、婦警・風祭ゆき、別れた女房・吉行和子と、女優たちの選択がすこぶる良い、と塩田時敏は評価している[3]。
撮影
ロケは千葉県君津市などで行われた[7]。競艇場のシーンはボートが好きな崔の趣味[5]。内田は、この映画のモデルとなった事件の犯人である廣田が出所後に連続強盗殺人事件を起こした際、「(1978年の事件は)社会との関わりでいえば、連合赤軍事件以来のショック」を受けていたと述べている[8]。
撮影途中に内田が『戦場のメリークリスマス』に出演するため[9]、坊主頭になり、ニュージーランドに向う[9]。帰国後にカツラを付け、続きのシーンを撮った[9]。評判を呼んだのが内田裕也の濡れ場演技[16]。中村れい子とは二人で玄関を入ったところから3分近くの濡れ場の長回しで、中村の乳〇を執拗に責めるのは内田の性癖か、それとも崔演出かと話題を呼んだ[16]。また婦人警官役の風祭ゆきのレイプはあまりに手際がよく感心された[16]。