危険スイング
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危険スイング(きけんスイング)は、日本の野球において「打者がスイングした際、最後までバットを保持し続けることをせずスイングの途中でバットを投げ出してしまうこと[1]」である。NPBの規定では、危険の度合いにより警告、退場、即退場の3段階のペナルティのいずれかが課される。
2026年4月16日に行われたヤクルト対DeNAの試合で、ヤクルトのホセ・オスナの手を離れたバットが球審の川上拓斗の側頭部に直撃して意識不明の重体となる事故(#発端)が発生した[2]。事故の2日後よりNPBの全審判にヘルメットの着用が義務付けられたほか、危険スイングに対して「罰則を設けるべきだ」として議論が行われた。罰則規定は同年5月11日の12球団実行委員会で承認、翌5月12日からNPBの全試合で適用されることになった[3][4]。
発端
2026年4月16日、明治神宮野球場で東京ヤクルトスワローズ対横浜DeNAベイスターズの試合が開催された[2]。8回裏ヤクルトの攻撃で、先頭打者のホセ・オスナが振り切ったバットがすっぽ抜け、球審の川上拓斗の左側頭部付近に直撃した。川上は後方に倒れ、ブルーシートに囲まれて応急処置を受けたのち、担架に乗せられて退場、救急車で病院に搬送された。
4月17日、ヤクルト球団はXで以下の通りにポストした[5][6]。
昨日の試合中に、主審の方が負傷により途中退場される場面がございました。心よりお見舞い申し上げますとともに、早いご回復をお祈り申し上げます。
本日も応援よろしくお願いします — 東京ヤクルトスワローズ公式X
4月17日、NPBは川上が集中治療室(ICU)で緊急手術を受けていることを発表した[7]。報道によると、川上の負傷は頭蓋骨の陥没骨折だという[8]。川上は4月30日にICUから一般病棟に移ったが、5月11日時点で意識は回復していない[3][4]。
NPBの規定
NPBでは、危険スイングを以下の通りに定義している[1]。
危険スイングとは、打者がスイングした際、最後までバットを保持し続けることをせずスイングの途中でバットを投げ出して(すっぽ抜け含む)しまうことをいう。特にバット全体が他者に向かった場合、重大な危害を及ぼす恐れが生じることから、これを危険スイングとし、以下のペナルティを適用する。
【注】〝他者〟とは、攻撃側選手、守備側選手、審判員、ベースコーチ、ボールボーイ(ガール)、バットボーイ(ガール)のことを指し、ダッグアウト、カメラマン席、スタンドも含むものとする。 — NPB野球規則委員会
ペナルティ(罰則)
罰則は以下の3段階である[1]。
- 警告 - 危険スイングをしたが、バットが他者に当たらなかったとき
- 退場 - 同一試合で同一打者が二度目の危険スイングをしたとき
- 即退場 - バット全体が他者に向かい、避けきれずに身体に直接当たったとき。また、ダッグアウト・カメラマン席・スタンドといったボールデッドの箇所に入ったとき
—NPB野球規則委員会
運用ガイドライン
本規定の運用にあたり、以下のガイドラインが設けられている[1]。
- バントを試みたケースは含まない。
- 打球と共にバット全体が野手に向かって飛んで、野球規則5.09(a)(8)【原注】が適用されたとき、打者アウトに加え〝危険スイング〟として警告が宣告される。避けることができず、野手に当たった場合は試合から除かれる。
- 故意・過失を問わずバットを投げ出す(すっぽ抜け含む)ことは、非常に危険で安全配慮を著しく欠く行為である。打者の安全意識を徹底させるためにも、審判員は厳格に運用しなければならない。
—NPB野球規則委員会
議論
類似事例
バットが手元から離れない場合でも、フォロースルーが捕手に直撃して負傷する事故は時々発生している。この問題については、NPB事務局長の中村勝彦は規則委員会で継続審議すると述べている[9]。
賛否
罰則規定については様々な意見が出されている。例えば、元千葉ロッテマリーンズ投手の小林至は「ボールもバットも凶器になることがある」として、危険球と同様に危険スイングでも退場する規定を設けることで、打者がバットをしっかり持ち事故防止につながると賛成意見を述べた[10]。一方で、仙台大学教授の宮西智久は打者が委縮してフルスイングできなくなり長打が減ってしまうことを懸念して反対意見を述べ、罰則よりも防具の着用が必要だとした[10]。
事例
2026年5月15日に行われた巨人対DeNA戦で初適用となった。7回裏、巨人の浦田俊輔が外角へのスライダーに食らいつくようにバットを出したが、バットが手から離れてしまい投手の前に転がった。打球はファウルとなったが、球審の芦原英智は危険スイングを適用して浦田に警告を与えた[11]。
同年5月31日、ファーム・リーグで適用された事例で、同規則による初の退場者を出した。ファーム・リーグ交流戦オイシックス新潟対DeNA6回戦(長岡市悠久山野球場)で、8回裏に上原裕樹が入江大生の投げた初球ストレートで空振りとなった際に、バットが手から離れてボールデッドゾーンに入り、オイシックス側の一塁ベンチに飛んでしまったため、球審の権丈光輝は同規則を適用して、退場を宣告した[12][13]。
同年6月23日、複数の試合ならびに、パ・リーグで同規則が初適用された。阪神対ヤクルト9回戦(阪神甲子園球場)にて、2回表2死一塁の場面で、山野太一がスイングをした後、バットが宙に飛んだため、球審の山村裕也は同規則を適用して、山野に警告を与えた。なお、楽天対西武10回戦(きらやかスタジアム)でも、7回裏1ボール1ストライクの場面で、堀内謙伍がスイングをする際に、バットが手から離れてしまい、一塁側のボールパーソンが控えているゾーンに飛んでしまったため、球審の石山智也は同規則を適用して、堀内に警告を与えた。