地球温暖化詐欺 (映画)
From Wikipedia, the free encyclopedia
『地球温暖化詐欺』(ちきゅうおんだんかさぎ、The Great Global Warming Swindle)は、イギリスのドキュメンタリー番組である。地球温暖化の主な原因は人間活動であるという科学的なコンセンサスに異論を唱え、論争を巻き起こした。この映画はイギリスのテレビプロデューサーである Martin Durkin によって製作された。番組の内容は、人為的な温暖化という科学的なコンセンサスに懐疑的な科学者や、経済学者、政治家、作家などを紹介するものである。この番組の宣伝資料には、人間による地球温暖化は「嘘」であると書かれている[1]。
イギリスのチャンネル4はこのドキュメンタリーを2007年3月8日に初めて放映した。テレビ局によるこの映画の説明は次のようなものであった。「この映画は多くの一流の科学者が同じ結論にたどり着き、十分に立証された視点を集めたコンセンサスに対する反論である。賛否両論の映画であるが、私たちは論争のすべての立場が放送されることが重要だと考える。」[2]
このドキュメンタリーは多くの科学組織や科学者たちに激しく批判された。批判した科学者の中には、映画に登場した2人の科学者も含まれている[3][4]。映画を批判した人によれば、この映画はデータを誤用・捏造しているほか、古い研究に立脚していて、誤解を招く議論を用いており、IPCCの立場を不正確に伝えている[4][5][6][7]。
このため、この映画は多くの科学者やジャーナリストらによって、「映画自体が詐欺」「純粋なプロパガンダである」などと批判された[8][9][10][11]。
科学者たちからの抗議を受けて、2008年7月21日、イギリスのメディア規制機関のOfcomは、放送された番組は不公平性と偏向についてイギリスの放送コードを破っていると判断を下した[12]。この判断に基づき、チャンネル4はOfcomの調査結果をまとめて放送することが要求されるが、処罰はない。
この映画の基本的な前提は、地球温暖化の人為的な原因についての現在の科学的なコンセンサスには多くの科学的な欠陥があるということと、市民や科学者のコミュニティがこのことについて知ったり議論したりすることを科学者の権威やメディアの既得権益が妨げているということである。映画によれば、公表された科学的なコンセンサスは「温暖化活動家産業」の産物であり、その活動は研究費を求める研究者によって後押しされているということになっている。映画が他に犯人として挙げるのは欧米の環境保護主義者であり、アフリカで安い化石燃料の代わりに高価な太陽光発電や風力発電を宣伝し、アフリカの国々の工業化の足を引っ張っているとされる。
映画の中で多くの学者、環境保護主義者、シンクタンクのコンサルタントや作家がインタビューを受け、映画の主張を支持した。その中には、グリーンピースの初期メンバーであったがここ21年は批判をしている Patrick Moore や、マサチューセッツ工科大学の気象学の教授の Richard Lindzen、バージニア大学の環境科学の教授の Patrick Michaels、1962年から1966年まで New Scientist 誌の編集者をしていた ナイジェル・コールダー、アラバマ大学の地球システム科学センターの教授であり所長の John Christy、パスツール研究所の Paul Reiter、イギリスの元財務大臣の Nigel Lawson、イギリスの気象予報士の Piers Corbyn がいた。映画に登場した科学者のうち、Christy、Lindzen、Michaelsを含む8人は、アメリカの新保守主義や右翼のシンクタンクと関係があり、それらのシンクタンクは石油メジャーであるエクソンモービルから数千万ドルを受け取っている[11][13]。
マサチューセッツ工科大学の海洋学の教授の Carl Wunsch もインタビューを受けたが、彼は映画の結論とインタビューの使われ方に強く反対すると述べた[3]。
映画の主張
映画の立場は現在の気候変動に対する科学的な考え方に対して強く懐疑的なものである。映画によれば、気候変動についてのコンセンサスは「数十億ドルの世界的な産業」の産物であり、狂信的な反工業主義の環境保護主義者によって作られ、恐怖話を振りまいて研究費を取ろうとする科学者に支持され、そこに加担した政治家とメディアに支えられたものだということになっている[1] [14]。
この映画では、一連のインタビューとグラフを使い、証拠の不整合と思われるものや、イデオロギーと政治が果たしたといわれる役割に焦点を当てることによって、科学的なコンセンサスに挑戦している。
証拠についての問題
映画は、人為的温暖化の理論を支持する証拠の矛盾と不整合であると映画の製作者が考えたものを明らかにするところから始まる。
実際には、これらの論点は、間違ったデータや捏造されたデータに基づいているか、近年の気温の上昇が人為的な二酸化炭素の放出によるものかどうかには関係のない論点であり、多くの科学者が反論している[9][15][16][17][18][19]。
- 1940年からの大気中の二酸化炭素の濃度と温度の変化について。この映画は、大気中のCO2の濃度の記録は1940年から増え続けているが、この期間では地球の気温は1975年まで低下しそのあと上昇したと主張する。最初に放送されたとき、番組はあるグラフをつけてこの主張を支持した。番組のプロデューサーは、そのグラフは20年前に出版されたアメリカ航空宇宙局の資料によるものだと言っていた。しかし後になってそれは1998年の Medical Sentinel という雑誌の記事に見つかったものだと訂正された。そのグラフの著者は Oregon Institute of Science and Medicine の研究者で、京都議定書の温室効果ガス規制に反対したオレゴン申請を出版している。番組のプロデューサーである Martin Durkin はグラフの時間軸が「間違って貼られていた」こと、すなわち本当は1988年までのものが2000年までとなっていたことを認めた。このグラフは、後の放送では1988年までのデータに訂正された[20]。
- 温暖化の速さのばらつきについて。番組では、温室効果による気温上昇のモデルのすべてが、対流圏での気温上昇が最も大きく地表の近くで最も小さいことを予測しているが、人工衛星や気象観測気球による現在のデータ(Satellite temperature measurements)ではこのモデルに反して、地表での気温上昇が対流圏の下部での上昇以上に大きいと主張した。
- 氷河期の終わりにおけるCO2 と気温の上昇について。映画によると、氷河期が終わる頃、CO2 の濃度の上昇は気温の上昇より遅れていた。
- 大気中の二酸化炭素と気温の変動の関係について。地球の気象が寒冷化するときは海洋は二酸化炭素を吸収し、温暖化するときは二酸化炭素を放出するのだから、二酸化炭素の濃度の増加や減少は気温の上昇や下降の結果であって、二酸化炭素の濃度の変化に気温が追従しているのではない、と映画は主張する。
- 海の物質量の大きさの気温変化への影響について。世界の海には非常に大きな量の物質があるのだから、大気の気温変化が海に伝わるのには数百年かかり、これがボストーク基地や他の氷床コアのデータでは大気中の二酸化炭素の濃度の変化が気温の変化に800年遅れていることの理由であると番組は論じた。
- 気候変動への水蒸気の影響について。映画によれば、水蒸気は温室効果ガスの95%を占め、地球の気温にもっとも大きな影響を及ぼしている。水の粒子は雲の形になると入射する太陽の熱を反射するが、この雲の効果は未来の天候のパターンやその地球温暖化への影響を予測しようとしている科学者は正確にはシミュレートできないと論じた。
- 気候変動への二酸化炭素の影響について。二酸化炭素は非常に地球の大気の中で非常に小さい割合、すなわち 0.054% しか占めていない、と映画は主張する。映画によれば、人間活動はさらにその1%にしか寄与していないが、火山は1年当たり人間よりずっと多くのCO2 を排出している(Durkin は後にこの主張が間違いであることを認めたが、批判に対しては「彼らはあら捜しをしようとしたり、映画に投げつける物を必死で探そうとしているのだ。議論の本質にはまったく影響を与えない。」と答えた[21]。)一方、植物と動物は150ギガトンの二酸化炭素を毎年排出している。腐敗する葉もさらにCO2 を排出するし、海は「これまででもっとも大きなCO2 の排出源である」という。人間活動は1年に「たった」6.5ギガトンのCO2を排出しているに過ぎない。人間が排出したCO2が地球温暖化の原因になるのは不可能だと映画は結論づけた。
- 気候変動に対する太陽の影響について。映画は地球温暖化の太陽変動理論を強調し、現在の太陽活動が高いレベルにあることと地球の気温と直接関係していることを指摘した。仮定されたメカニズムは宇宙線や太陽からの熱が雲の形成を促進することなどが含まれていた。太陽活動はどんな人間活動やその他の自然活動よりも地球の温暖化や寒冷化に影響を及ぼしていると映画は論じた[22]。
- 温暖化の昔話について。現在の温暖化の出来事は別に目だったものではなく、中世の温暖期ではもっと気温が極端であり、西ヨーロッパは大きく繁栄した、と映画は論じた。
政治的な問題
番組は、財政的、観念的、政治的な利益によって気候研究の正しさは傷つけられているという主張をいくつも行った。
- 気候科学の予算の増加について。映画によれば、地球温暖化に関係するどんな研究も予算が増額され、「今ではもっとも予算がある科学の分野のひとつだ」という。
- 地球温暖化の研究のための予算の増加の可能性について。助成金がほしい科学者は、その研究助成金が地球温暖化に関係していれば、その予算が通り助成金を得られる可能性がずっと増えると映画は主張した。
- 既得権益の影響について。人為的な温暖化の理論によって数十万人が科学やメディアや政府で職を得て援助を受けているのだから、この理論の支持者のほうが反対者より既得権益の影響を受けていると論じた。
- 反対する観点の抑圧について。番組によれば、地球温暖化が人為的であるという理論に反対の声をあげる科学者は迫害されたり、殺すと脅されたり、予算を失ったり、個人攻撃を受けたり、評判を失ったりする可能性があるという。
- イデオロギーの役割について。地球温暖化が人為的であるという理論の支持者の中には、資本主義や経済発展、グローバリゼーション、工業化、アメリカに反対する感情的で観念的な理由から支持しているものもいると映画は述べた。
- 政治の役割について。地球温暖化が人為的であるという理論は イギリスの保守党の首相マーガレット・サッチャーによって、原子力の推進のためと国有石炭産業の炭鉱労働組合のストライキの影響を減らすために宣伝されたと主張する。
- 産業の役割について。地球温暖化の懐疑主義者が私的な産業(石油、ガス、石炭産業のような)に財政支援をされているという主張は間違いで実際には根拠がないと映画は論じた。
地球温暖化のコンセンサスの否定
気候学者の間の地球温暖化についてのコンセンサスと思われているものは存在しない、と映画は論じた。
- IPCC の参加者の立場について。「2500人の一流の科学者」が気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の人為的温暖化に関する理論の報告を支持したというのは間違っている、と番組は主張した。実際、番組によれば、多くの政治家や科学者でない者、さらに名前を消すことを要求したが拒否された多くの反対者が含まれている。
- IPCC 参加者の表記の正確性について。IPCCの報告書は、選択的に論じることで、報告書に貢献した科学者の視点を不正確に伝えていると映画は論じた。映画ではパスツール研究所の Paul Reiter の場合を強調した。Reiter は、IPCCは彼の専門家としての意見を大きく扱わなかったと抗議した。IPCCは、Reiter が法的手段をとると脅すまで Reiter の名前を貢献者として載せつづけ削除しなかった、と映画は述べた。
- 反対する見解の抑圧について。番組によれば、人為的な地球温暖化の概念は凶暴さと宗教的な熱をもった強さで宣伝されているという。懐疑主義者は異端者として扱われ、ホロコースト否認論者と同一視される。大学教授を引退した Tim Ball は映画の中(と後の出版物)で、地球温暖化に対して懐疑的な発言をしたせいで殺すと脅迫する手紙を受け取ったと述べた[23]。
アフリカの発展の夢をつぶすこと
- 作家で経済学者の James Shikwati は、環境保護主義者はアフリカが化石燃料を使用するのに反対している、と映画の中で言った。「アフリカの夢を壊そうと熱心な者がいる。そしてアフリカの夢とは発展することだ。」彼は再生可能エネルギーは『贅沢な実験』であり、豊かな国ではうまくいくがアフリカでは決してうまくいかないと言った。「太陽電池パネルがどうやって製鉄所を動かすのかわからない。我々は「資源に手をつけるな」「石油に手をつけるな」「石炭に手をつけるな」といわれているのだ。これは自殺だ。」
- 映画の中ではケニアの診療所の例が示された。そこでは太陽電池で電気が供給されているが、その電力は薬用保冷庫と照明の両方には十分でない。映画は、世界でもっとも貧しい人々を代替エネルギーに制限する考えは「地球温暖化キャンペーンのもっとも倫理的に矛盾した点だ」とした。