氷Ih相
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氷Ih相(こおりいちエイチそう、英語ではice one hと発音、one-phase-oneとも)は、普通の氷、または凍った水の六角形の結晶形である[1]。生物圏にあるほとんど全ての氷は氷Ihであるが、例外として高層大気にときどき存在する氷Icがわずかにある。氷Ihは生命の存在と地球気候の調整に関する多くの特異な特性を示す。
結晶構造は四面体の結合角に近い角度で六方対称を形成する酸素原子により特徴づけられる。氷Ihは、−268 °C (5 K; −450 °F)まで安定しており、これはX線回折[2]と非常に高解像度の熱膨張測定で証明されている[3]。氷Ihは最大約210メガパスカル (2,100 atm) の圧力が加えられても安定しており、そこで氷IIIや氷IIに転移する[4]。
氷Ih の密度は0.917 g/cm3 で液体の水の密度よりも低い。これは固相内の原子間距離を遠ざける水素結合の存在が原因である[5]。氷は水に浮かぶが、このことは他の材料と比較すると非常に珍しいことである。固相は通常液相よりも密にきちんと詰まっているため密度が高くなる。湖が凍結すると表面のみ凍結し、湖の底は水の密度が最も高くなる4 °C (277 K; 39 °F) 近くを維持する。表面がどんなに冷たくても、湖の底には常に4 °C (277 K; 39 °F)の層がある。水と氷のこの異常な振る舞いにより魚が厳しい冬を生き延びることができる。氷Ih の密度は約−211 °C (62 K; −348 °F)までは冷やすと増加し、それ以下になると再び膨張する(負の熱膨張)[2][3]。
融解の潜熱は5987 J/molであり、昇華の潜熱は50911 J/molである。高い昇華潜熱は主に結晶格子内の水素結合の強さを示している。融解潜熱はずっと小さく、これは0 °C近くの液体水にもかなりの水素結合が含まれているからである。氷Ih の屈折率は1.31である。
結晶構造

通常の氷の受け入れられている結晶構造は最初1935年にライナス・ポーリングにより提案された。氷Ihの構造は概略的にいうと、各頂点に酸素原子があり水素結合により形成されたリングの縁を持つモザイク状の六角形のリングからなるしわ寄せた面の1つである。この面はABABパターンで交互に並んでおり、B面は平面自体と同じ軸に沿ってA面を反射させたものである[6]。各結合に沿った酸素原子間の距離は約275pmであり、格子内の結合した2つの酸素原子間で同じである。結晶格子内の結合間の角度は、109.5°の正四面体角に非常に近く、これは水分子(気相中)の水素原子間の角度である105°にも非常に近い。水分子のこの四面体結合角により本質的に結晶格子の異常に低い密度が説明される。結晶格子の体積の増加にはエネルギー的な不利益があるが、格子が四面体角で配置されることは有益なことである。結果として、大きな六角形のリングにより別の水の分子が内部に存在するのに十分な空間が残される。これにより、自然に発生する氷に液体よりも密度が低いという特異な性質が与えられる。四面体の角度で水素結合した六角形のリングは、液体の水が4 °Cで最も密度が高くなるメカニズムでもある. 0 °C付近では液体の水の中に小さな六角形の氷Ihのような格子が形成され0°Cに近いほどその頻度が高くなる。この効果により水の密度が下がり、構造の形成の頻度が低い4 °Cで最も密度が高くなる。