漂流・漂着ごみ

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漂流・漂着ごみ(ひょうりゅう・ひょうちゃくごみ、: marine litter, ocean debris)とは、海洋漂流しているごみ、および海岸漂着したごみの総称である。これらは普段人の目の届く範囲のものに限られ、景観衛生を損なうとして生活圏社会問題化することもあるが、海洋ごみ[1]海ごみ[2]マリンデブリ[3]と呼ばれる浮遊ごみの多くが行き着く先は海底であり、漂着ごみを超える量が日々深海を含む海中に溜まり続けており、地球規模では膨大な量に及ぶと見られている[4]

ハリケーン・カトリーナによる漂着ごみ

概要

さらに見る 順位, 国名 ...
流出したプラスチックごみ発生量
(万トン/年)[5][6]
順位 国名 最小値 最大値
1 中華人民共和国 132 353
2 インドネシア 48 129
3 フィリピン 28 75
4 ベトナム 28 73
5 スリランカ 24 64
6 タイ王国 15 41
7 エジプト 15 39
8 マレーシア 14 37
9 ナイジェリア 13 34
10 バングラデシュ 12 31
11 南アフリカ共和国 9 25
12 インド 9 24
13 アルジェリア 8 21
14 トルコ 7 19
15 パキスタン 7 19
16 ブラジル 7 19
17 ミャンマー 7 18
18 モロッコ 5 12
19 朝鮮民主主義人民共和国 5 12
20 アメリカ合衆国 4 11
30 日本 2 6
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正確な実態の把握はなされていないものの海洋には無数のごみが漂流していると考えられており、それらは「海洋(浮遊)ごみ」と言われる。そのうち、マイクロプラスチックを含む腐敗しない素材のごみは増加し続けており、絶滅危惧種を含む海洋生態系に打撃を与えているほか、一部は海岸に漂着して沿岸地域に汚染被害をもたらしている。海洋生物の体内や北極海海氷深海海底では堆積物に取り込まれたマイクロプラスチックも検出されている[7]。こうした管理されていないプラスチックごみはアジアからの流出が多く、世界全体の6割を超えている[4]

イギリスのエレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation[8]は、海洋ごみの総量は1億5000万トンを超えており、毎年800万トン以上が新たに流れ込んでいると推計。特にプラスチックごみは2050年に魚類の総量を上回ると警告している[9]

排出源は、海への直接的な投棄・放置だけでなく、河川経由が多い。ドイツライプチヒにあるヘルムホルツ環境研究センターの推計によれば、川から海に流入するプラスチックごみの9割は10河川が占めている。長江が最大で、インダス川黄河海河ナイル川ガンジス川珠江アムール川ニジェール川メコン川が続く[10]

日本海環境協力センター[11]が行った2001年平成13年)から2010年(平成22年)の調査によれば、日本の海浜上に堆積している漂流・漂着ごみの総量は約19万トンと推定されている[12]。ただし海岸ごみは清掃で除かれたり,自然に海に流出したりするため、年間の漂着量は一部の海岸について以外、分かっていない。これら漂流・漂着ごみの構成は多岐にわたっており、魚網発泡スチロール製のウキなど、主に漁業活動から発生するごみのほか、主にペットボトルなどの一次的な製品、または使い捨てを前提とした包装容器類など、側溝河川などを経由してに流れ出た生活系のごみなどから成っている。

プラスチック類で最も多いのは漁網ロープなど、漁船が使用していた漁具(ゴースト・ギア)である[13][14]

法制上の問題

ごみの海洋投棄そのものは古くから普遍的に行われていた都市政策であり、日本では江戸期に江戸や大坂では海面や水域をごみ処分場に指定し、埋め立てに利用されてきた。現代でも海面最終処分場が指定され、飛散や雨水等への溶け出しを防止等するなど厳格な管理の下で埋め立て用材として使用される。

一方で遠洋でのごみの処分(海洋投入)は20世紀後半から環境問題として各国で議論されはじめ、国内法や国際条約での規制が開始されている。しかし実際の施行は最近のことであり、国際条約としてはロンドン条約、ロンドン批准書が存在している(日本は前者の批准が1980年、後者が2007年)[15]

日本においては放射性廃棄物こそ1993年に実施しないことを決定したが(過去の実施例なし)、産業廃棄物や屎尿汚泥などは2002年廃棄物処理法施行令の改正と2007年までの猶予期間の終了により原則として禁止となった。韓国では2006年に産業廃棄物の海洋投棄を禁止したが下水汚泥などの遠洋投棄は2010年代まで続き、2012年の下水・家畜ふん尿の投棄の規制以降、2015年末までにすべての廃棄物の海洋投棄を禁止した[16]。中国では2010年代でも海洋投棄に関する制限が無く、2018年における沿岸海域への廃棄物投棄量は約2億立法メートルを超えると推定されていた[17]。しかし2020年に固体廃棄物汚染環境防止法の改正により規制に転じ、2024年には改正「海洋環境保護法」が施行され、海域への廃棄物の投棄は全面的に禁止されることとなっている。フィリピンでは1974年の海洋汚染防止法令により船舶からの海洋投棄は禁止され、2001年には陸上ごみの管理の厳格化により海洋への流失を阻止する法令(エコロジカル固形廃棄物管理法)が制定されているが、いずれも実効性が乏しく、多くの不法投棄あるいは台風災害などの関係で陸上から流失していると指摘されている。

対策

問題の深刻さは、海岸からの漂着ごみ目視や、外洋の海面や海洋生物に対する国際的な調査・モニタリングを通して明らかにされつつある。対策としては、今後の発生抑止と、既に流出したごみの回収が検討・実施されつつある[18]

プラスチックの使用規制

2018年欧州連合は、海洋ごみの多くが使い捨てプラスチック製品であることに着目し、プラスチック素材の食器ストローなどを代替品に切り替えるよう義務付けるほか、釣り具メーカーにごみの収集費用を負担させる規制案を発表。2019年を目途に、欧州議会と加盟国で議論されることとなった[19]

こうした動きに対応するため、日本化学工業協会など5つの業界団体が2018年(平成30年)9月7日、「海洋プラスチック問題対応協議会」を設立した[20]

海洋プラスチック憲章

2018年6月、カナダで開催された主要国首脳会議44th G7 summit)において「海洋プラスチック憲章」が採択された[21] [22]。これはプラスチックごみによる海洋汚染問題への各国の対策を促すものである[21]。合意文書に日米が署名しなかったことで国際的な非難が高まった[23][24]

回収

海流などにより、ごみが多く集まる海域がある。このうち、アメリカ合衆国西海岸からハワイ諸島にかけての太平洋ゴミベルトにおいて、オランダ非政府組織(NGO)オーシャン・クリーンアップ英語版が長さが600メートル、海面からの下部までの深さが3メートルの浮遊型回収装置を展開し、2018年10月から浮遊ごみの回収と再利用など処理を行う計画である[25]

日本伊藤忠商事は2020年(令和2年)11月、対馬の漂着プラスチックを回収して原料に使ったゴミ袋の開発を発表した[26]

海底にある遺棄された漁業系廃棄物を水中ドローンで回収する研究も行われている[18]

Seabin(ゴミ回収装置)
稼働しているSeabin

世界で最も利用されている海洋ゴミ回収装置の一つに、Seabin Projectが開発、提供するSeabin(正式名称:SEABIN V5)が挙げられる。名称はSea=海の bin=ごみ箱に由来する[27]。本体はバケット形状で稼働時はほぼすべてが水中に沈んでいるが、ごみ取りフィルターは内部のフロートに保持されており、水面の上下動(推奨波高0.3メートル以下)に追従できる。本体底部の電動ポンプで水を吸い込んでごみを捕える(動画あり)[28]

これは構造も簡単なことから世界各地で生産され、設置されている。これにより、船舶からの流出油や直径2ミリメートル以上のマイクロプラスチックの回収ができる。ただし、非常にまれなケースであるが、装置に魚が入り込んでしまうことがある。2017年に製造・販売が開始され、2022年(令和4年)時点で、全世界39ヵ国、860台以上の Seabin が稼働している[28]。日本を含まない13か国を対象にした555日間の調査によると、一日一台あたり平均3.9キログラム、年間1.4トンものごみを回収したというデータがある。設置場所は電源(110/220 Vの陸電)が取れる漁港含む)やマリーナなどに限られ、初期投資も必要だが、消費電力は500 W/基(2021年時点で1日1豪ドル=約80円)と低コストで運用できる[27]

日本各地でも設置実績がある。主な設置箇所は以下の通り。

漂着ゴミ
浜辺のゴミ拾いをビーチコーミングと呼ぶ。以下の物も取れたり、アートにすることもあることから実益ともなっている。

日本近海での被害

不法投棄された漁網に絡まってしまったウミガメ

日本海沿岸や東シナ海沿岸では、中国語朝鮮語ハングル)、ロシア語キリル文字)で商品名等が標記された東アジア諸国などから排出されたと推察される、ごみの漂着がある。特に離島はどこも、おびただしい量のごみが漂着しており、その被害は深刻化している。

その一方、日本不法投棄されるなどして流出したものと見られるゴミが、海流に乗ってハワイ諸島やミッドウェーなどの太平洋諸島北アメリカ大陸西海岸などに流れ着き、アホウドリなどの野生動物を殺傷する一因になっていることも以前より問題になっている。

海底にあり回収できない漁具にイセエビが絡まるなど、漁業への被害もある[18]

プラスチック類は消化できず、生分解しないため、海洋生物が漂流ごみを誤食してしまうことや、海底に沈んだゴミが分解されずに残ってしまうことで深刻な問題を引き起こしている。こういった不法投棄物には、毒物有害物質が多分に含まれているので危険である[31] [32]。日本、韓国中華人民共和国のゴミは、黒潮に乗りハワイ沖や北アメリカ大陸西海岸に到達して南下。反転して西に転じ、再び黒潮に入る。冬には一部が南下し、石垣島宮古島に大量のゴミを運ぶ。

ポイ捨て」などと気軽に呼ばれることも多いが、その実態は不法投棄に端を発するものであり、いずれの国においても、重大な社会問題となっている。また、国境を越え得ることから国際問題としても認識される。環境汚染物質の越境汚染は、排出源の特定は可能だがあまり解明されていない。

越境大気汚染と比べ、国際協力や海洋汚染に関する行動は著しく低い。2002年OECD環境保全成果レビューでは、日本周辺の汚染原因として近隣諸国や沖合いの船舶からの排出物がある可能性を指摘されたが、実際には陸上で捨てられたと思われるごみが多い。しかし国境を越えた汚染物質の運搬量についての評価も行われておらず、さらに詳しい地域毎の調査が必要である。

近年この問題が顕在化したことを受け、日本、韓国、中華人民共和国およびロシア連邦の政府により会合が持たれ、対策が検討され始めるとともに、日本国内から排出されるゴミへの対策についても協議が持たれている[33][34]。日本国内からのごみ流出抑制への機運も高まりつつある。富山市は、ごみが海洋流出する前に用水路や河川に網場を設けて回収することなどを検討しており、2019年(平成31年)3月27日に日本財団と協力して対策モデル構築を進めることを発表した[1]

量的にかさばる発泡スチロール等については、リモネンで溶かしたり、原料(石油)に戻したりするなどの試みも行われているが、基本的に海ゴミについては、

  1. 塩分・水分・付着物が多い
  2. そのため炉を傷める可能性があり、焼却処理にも不向き
  3. 汚れが激しく絡まった状態の場合が多い

といった理由により分別・リサイクルは困難とされる[35]ものの、再利用の試みも始まっている(「#回収」参照)。

2006年(平成18年)、海岸漂着ごみの個数調査においてうち最も多かったのはタバコの吸殻であり、海岸漂着ゴミの12.8 %となっている(陸起源の漂着ごみのみを総計した場合の割合としては27 %にのぼる)。次点は元の製品が不明な硬質プラスチック破片となった[36]

さらに見る 個数ベース, 重量ベース ...
日本に漂着した漂着ごみの品目上位10種(2020)[37][注 1]
個数ベース[注 2] 重量ベース
No 品目 割合 No 品目 割合
1 ボトルのキャップ、ふた 17.6 % 1 木材(物流用パレット木炭等含む) 32.9%
2 プラ製ロープ・ひも 16.6 % 2 プラ製ロープ・ひも 19.1 %
3 木材(物流用パレット、木炭等含む) 9.2 % 3 硬質プラスチック破片 9.0 %
4 飲料用ペットボトル(2 L未満) 6.9 % 4 プラ製漁網 6.3 %
5 プラ製漁具(その他) 4.2 % 5 飲料用ペットボトル(2L未満) 4.2 %
6 プラ製食品容器(カップ等) 4.0 % 6 発泡スチロール製フロート・ブイ 3.9 %
7 プラ製荷造りバンド・ビニールテープ 3.7 % 7 プラ製ブイ 3.5 %
8 ウレタン 3.5 % 8 プラ製漁具(アナゴ筒) 3.4 %
9 プラ製食器(カトラリー) 3.5 % 9 靴(サンダル、靴底含む) 1.2 %
10 プラ製ブイ 3.2 % 10 ガラス製食品容器 1.2 %
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2017年の日本海沿岸ポリタンク漂着

2017年(平成29年)2月から3月にかけて、日本海沿岸に大量の過酸化水素水ポリタンクが漂着した。京都府では、2月23日頃から約200個が[38]石川県では、3月1日までに893個が漂着している[39]新潟県でも137個が発見されている。いずれのポリタンクにもハングルの表示があることから、韓国ノリ養殖の際に消毒用に使用された過酸化水素のポリタンク[40]が大量流出したものと考えられている[41] [42]。報道によれば容器の表示は過酸化水素水であるが正規の流通品はすべてメーカーが回収しており、養殖業者間で不正に取引されるのはその容器に塩酸を詰めたものであるといい、消毒用に塩酸を使用することは禁止されているため不正な手段でポリ容器のみ利用しており、あるいは摘発を恐れて海洋投棄しているのではないかという。

過酸化水素表示のあるポリタンクの漂着は、毎年のように見られており、2010年(平成22年)には石川県だけでも1,921個が流れ着いている[43]環境省の調べでは、日本海沿岸へのポリタンクの漂着状況は、平成24年度に5,547個、平成26年度は14,465個となっている[44]

2017年の漂流木造船漂着

日本海沿岸に到達する、北朝鮮からの漂流小型木造船[45]の数は、2017年(平成29年)には90隻を超える異例の多さとなった。木造船は、再利用できないため地元自治体が廃棄物として多額の費用を投じて処理することとなるため、環境省は、自治体が2017年度(平成29年度)に行う処理費用を補助金地方交付税を充当して軽減する措置を行っている[46]

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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