琉歌大観

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琉歌大観』(りゅうかたいかん)は、琉球・沖縄地域に伝わる歌謡を体系的に集成した歌謡資料集であり、琉球文学研究における基礎史料の一つである。沖縄戦により多くの史料が失われる中、原本が戦災を免れて書写され、現在は国立台湾大学図書館に写本が所蔵されている。現存する写本は唯一の伝世本とされる[1]

『琉歌大観』は、沖縄学者の真境名安興が編纂したもので、琉球王国期から大正期に至るまでの歌謡を広範に収録している。採録対象の年代は、寛正2年(1461年)から大正6年(1917年)頃までとされ、約456年に及ぶ。

本書は、狭義の琉歌にとどまらず、口説、つらね、民謡、クェーナ、京太郎の歌、念仏歌、木遣り組踊関係歌謡などを含み、さらに奄美大島宮古八重山といった周辺諸地域の歌謡も収録している点に特徴がある。その構成は、現存しない『琉球大歌集』(小橋川朝昇編、1878年頃)の構成を踏まえている可能性が指摘されている。

真境名安興の死去(1933年)後、『琉歌大観』の原稿は神奈川県内の古書店に売却されたとされる。沖縄県立図書館が購入を検討したものの、高額であったため実現せず、その後長らく行方不明となり、「幻の琉歌集」と呼ばれてきた[2]

しかし、原稿が古書店に渡る以前に、台北帝国大学が沖縄に調査員を派遣し、原稿を抄写していたことが後に判明した。この写本は国立台湾大学図書館に所蔵され、1986年に刊行された『台湾大学研究図書館蔵日本古典籍目録』によってその存在が確認された。

国立台湾大学図書館は、琉球大学との国際共同研究により、所蔵写本の全文翻刻、現代日本語訳、校注、索引、解題を施した刊行本『国立台湾大学図書館典蔵 琉歌大観』全4巻を出版した。

『琉歌大観』は、おもろを除く琉球・沖縄歌謡を網羅的に集成した、初の大規模な文学資料集と評価されている。真境名は狭義の琉歌を「三十字形短歌(三十字詩)」として位置づけており、その整理は明治期以降の沖縄文芸思想とも深く関係している。

本書の刊行により、琉球文学研究における基礎資料が体系的に整備され、琉球語諸語による文学・歌謡の歴史的把握に大きく寄与したとされる。

刊行内容

第1巻(2020年刊):序、刊行の祝辞、解題(「『琉歌大観』総解説」および第壱輯・第弐輯・第参輯・第四輯の解題)、凡例を収録する。本文および現代日本語訳では、「琉歌大観 巻壱」の序文、短歌及長歌編纂の大意、参考書目、作者姓名索引、歌詞解釈に加え、第壱輯、第弐輯、第参輯、第四輯を掲載し、巻末に索引を付す。

第2巻(2021年刊):解題として第五輯・第六輯・第七輯、第八輯(大島之歌)、第九輯(口説)、第十輯(てるくゞち・いるちやゝう)、第十一輯(民謡・童謡・毬歌)、第十二輯(長歌)を収録し、凡例を付す。本文および現代日本語訳には、第五輯から第八輯、ならびに巻参所収の第九輯から第十二輯を収め、巻末に索引および歌名一覧を付す。

第3巻(2022年刊):解題として第十三輯(短歌・読人不知)、第十四輯(狂歌)、第十五輯(くゑにや・やらし)、第十六輯(組躍)、第十七輯(つらね)を収録し、凡例を付す。本文および現代日本語訳では、巻参所収の第十三輯ならびに巻四所収の第十四輯から第十七輯を掲載し、索引および歌名一覧を付す。

第4巻(2023年刊):解題として第十八輯(木遣の歌)、京太郎の歌、宮古島のあやご、八重山島の歌を収録し、凡例を付す。本文および現代日本語訳には、巻四所収の第十八輯、京太郎の歌、宮古島のあやご、ならびに巻五所収の八重山島の歌を掲載し、巻末に歌名一覧を付す。

各歌謡は、上段に原文翻刻、中段に現代日本語訳、下段に注釈を配した三段構成で編集され、巻末には歌名一覧が付されている[1]

脚注

関連項目

外部リンク

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