約束の海
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モデル
山崎豊子の最後の小説であり、遺作である。本小説は旧海軍士官の父と海上自衛隊員の息子を主人公に、戦争と平和を問う大河小説である[1]。同著者の小説の中では1989年と最も年代が新しく、唯一平成時代を背景とした作品であり(同時代を扱ったものとしては最初で最後であった)、更に、前述の通り執筆中に逝去したため、著者の全作品の中で唯一、未完成のままとなった作品でもある。海上自衛隊潜水艦と遊漁船が衝突し、遊漁船が沈没した海難事故「なだしお事件」を想起させる内容である(但し、本小説では同事件とは年代が1年ほどずらした設定となっているなど、相違点が存在する)。
2013年11月19日NHK総合で放送されたクローズアップ現代「小説に命を刻んだ~山崎豊子 最期の日々」によると、当時病魔で取材が出来ない山崎は、取材リストを編集スタッフに依頼し、その様子を撮影させ、取材記録はDVD200枚になった。取材資料にはアメリカ国立公文書館の秘密文書の酒巻和男の和歌「櫻花散るべき時に知らしめよ枝葉に濡るる今日の悲しみ」を知り、この和歌を本編にそのまま記載した[3]。週刊新潮8月15日〜22日号『「わが思い」を語る』で「戦争を2度と起こしてはいけないと言う気持ちのもと、この人物(特殊潜航艇乗組員の酒巻和男)に行き着きましたが、彼だけの話では昔話に成りかねません。テーマが戦争と平和で、なお現在の日本にも通じるものとなると。はたと行き詰まり長い間悩み続けました、一言一句を確かめながら暗中模索の日々です」と語り、現在に通じるものとして登場人物の息子を海上自衛官にした[3]。
山崎が残した構想メモ[2]によると、残り2部は
予定だった。
小説の内容からして、山崎豊子版『戦争と平和』とも言われる。
なお山崎の秘書を務めた女性は、体調が悪くなった山崎は取材ができなくなり、それなくして執筆することは絶対にないことから本作は未完ではなく完結としている[4]。
本小説に登場する主人公の父、花巻和成は日本人捕虜第一号の酒巻和男がモデルとされている(モデルとなった人物は『二つの祖国』にも少しだけ登場し、捕虜の身ながら一人だけ武器を使わない戦争をしていた人物であると連載前に山崎が語っている)。また、潜水艦「くにしお」もゆうしお型潜水艦である「なだしお」、衝突事件に登場した遊漁船「第一大和丸」は「第一富士丸」、「くにしお」の筧勇次艦長は山下啓介、「第一大和丸」の安藤茂船長は近藤万治、川原防衛庁長官は瓦力、西山事務次官は西広整輝がモデルとされている。