般若心経秘鍵
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本文の解釈は『般若心経』を五分して展開するが、これを五分総説という[8]。この五分それぞれに付された名称に特異性がある。
- 一 人法総通分(観自在菩薩… 度一切苦厄)さらに修行からさとりへと向かって因・行・証・入の四段階と、成仏の遅速の時の、五段階に細分して解釈する。
- 二 分別諸乗分 建・絶・相・二・一の五段階に区分して解釈する。
- 建とは建立如来[9]の三摩地門、普賢菩薩の法門を表す華厳宗に配当する。(色不異室…亦復如是)
- 絶とは無戯論如来[10]の三摩地門、文殊菩薩の法門を表す三論宗に配当する。 (是諸法室相…不増不減)
- 相とは摩訶栴多羅冐地薩怛嚩(マハーマイトレーヤボディサトバ)[11]の三摩地門、諸法の相状差別を明らかにする法相宗に配当する。(是故室中無色…無意識界)
- 二とは唯蘊無我住心と抜業因種住心[12]の三摩地門を表す声聞乗・縁覚乗に配当。(無々明亦…無苦集滅道)
- 一とは得自性清浄如来の三摩地門すなわち阿哩也嚩路枳帝冐地薩怛嚩(アリヤバロキテイボディサトバ)[13]の法門を表す天台宗に配当する。(無智亦無得…以無所得故)
- 三 行人得益分(菩提薩唾…三貌三菩提)人と法とに分け、人に七ありとして、前の華厳・三論・法相・声聞・縁覚・天台の上に真言行人を加え、法に因・行・証・入の四つを配当している。
- 四 総帰持明分(故知般若…眞實不虚)名・体・用の三に分け、また四種の呪明名は順に声聞・縁覚・大乗・秘密蔵(密教)の真言を表し、「眞實不虚」は体を表す。
- 五 秘藏眞言分 (故説般若…菩提薩婆詞) 呪を五つに分け、順次に声聞・縁覚・大乗・真言の行果を明かし、諸乗の菩提証入の意義を説いたものとしている[14]。
秘藏眞言分の頌の後に問答形式で「医王の目には途に触れて皆薬なり。会報の人は荒金石を宝珠と見る。」云々、密教眼をもって見ることができれば顕教の経典から秘中の極秘を読み取ることができ、その浅深は重なり重なって差別があるのである、と本文を結んでいる[15]。
成立
成立年代ははっきりとは分かっていないが、上表文を根拠とした弘仁9年(818年)説や、承和元年(834年)に東大寺南院で作成されたという説が古来伝承されるが共に確証はない。勝又俊教は以下の理由で暫定的に818年の撰述としておくと述べている。宗門内の学者は、伝統的に『般若心経秘鍵』の巻末に付加された「上表文」と称するものが付けられていて空海撰として尊重されてきたが、文献学的見地では本文と矛盾した記述、意味不明な内容、空海作とは思えない稚拙な文体等や、上表文に言及する写本等が鎌倉後期以降であって、平安期には見られないことから、上表文は後世の偽作と見て否定するのが学界の通説となっている。しかし跋文に『十住心論』『秘蔵宝鑰』(ともに830年撰述)内の名称があるからといって834年説が正しいともいえないという[16]。