酢酸鉛(II)
鉛化合物の一種
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酢酸鉛(II) (さくさんなまり に。Lead(II) acetate)は鉛化合物の一種で、甘みを持つ無色の結晶である。酸化鉛(II)を酢酸と反応させることによって得られる。他の鉛化合物と同様、毒性が強い。水やグリセリンに可溶である。水の存在下で三水和物 Pb(OCOCH3)2·3H2O を生じ、これは潮解性を持つ単斜晶系の結晶である。価数を付さず単に酢酸鉛とも呼ばれる。鉛糖は三水和物の俗称[6] (sugar of lead)。他の英語の別名としてはsalt of Saturn[7](直訳:鉛の塩。"Saturn"とは土星のことで、錬金術における鉛の別名[7])、Goulard powder[8](直訳:グラール粉。トマ・グラールにちなむ)がある。
| 物質名 | |
|---|---|
Lead(II) acetate | |
Lead(II) ethanoate | |
別名 Plumbous acetate, Sugar of Lead, lead diacetate, lead sugar, Salt of Saturn, Goulard's powder | |
| 識別情報 | |
3D model (JSmol) |
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| ChEBI | |
| ChEMBL | |
| ChemSpider | |
| ECHA InfoCard | 100.005.551 |
| EC番号 |
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| MeSH | lead+acetate |
PubChem CID |
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| RTECS number |
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| UNII |
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CompTox Dashboard (EPA) |
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| 性質 | |
| Pb(C2H3O2)2 | |
| モル質量 | 325.29 g/mol (anhydrous) 379.33g/mol (trihydrate) |
| 外観 | 白色粉末または無色蛍光結晶 |
| 匂い | わずかに酢酸臭 |
| 密度 | 3.25 g/cm3 (20 °C, 無水物) 2.55 g/cm3 (三水和物) 1.69 g/cm3 (十水和物)[1] |
| 融点 | 280℃(無水物) 75℃(三水和物) ≥ 200 ℃で分解[2] 22℃(十水和物)[1] |
| 沸点 | 分解 |
| 無水物: 19.8 g/100 mL (0 °C) 44.31 g/100 mL (20 °C) 69.5 g/100 mL (30 °C)[3] 218.3 g/100 mL (50 °C)[1] | |
| 溶解度 | 無水物と三水和物はエタノールとグリセロールに溶ける[3] |
| メタノールへの溶解度 | 無水物:[3] 102.75 g/100 g (66.1 °C) 三水和物:[4] 74.75 g/100 g (15 °C) 214.95 g/100 g (66.1 °C) |
| グリセロールへの溶解度 | 無水物:[3] 20 g/100 g (15 °C) 三水和物:[4] 143 g/100 g (20 °C) |
| 磁化率 | −89.1·10−6 cm3/mol |
| 屈折率 (nD) | 1.567 (三水和物)[1] |
| 構造 | |
| 単斜晶系(無水物、三水和物) 菱形(十水和物) | |
| 熱化学 | |
標準生成熱 (ΔfH⦵298) |
−960.9 kJ/mol (無水物)[3] −1848.6 kJ/mol (三水和物)[4] |
| 危険性 | |
| 労働安全衛生 (OHS/OSH): | |
主な危険性 |
神経毒性、発癌性物質 |
| GHS表示: | |
| Danger | |
| H360, H373, H410[2] | |
| P201, P273, P308+P313, P501[2] | |
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
| 引火点 | 不燃性 |
| 致死量または濃度 (LD, LC) | |
半数致死量 LD50 |
400 mg/kg (マウス, 経口)[1] |
LCLo (最低致死濃度) |
300 mg/kg (イヌ, 経口)[5] |
| 関連する物質 | |
| その他の 陽イオン |
酢酸鉛(IV) |
古代における利用
甘味があり、歴史的に甘味料として用いられていた。
古代ローマにおいては、蜂蜜以外に手に入る甘味料は少なかった。
そのため完熟させたブドウの果汁(ムスト)を、鉛でコーティングされた青銅器で煮ることによって得られるサパ (sapa) と呼ばれるシロップが、甘味料として好んで作られていた[9]。
このシロップは殺菌効果もあったことから、当時ワインの甘み付けや果物の保存に一般的に使われていた[10]。しかしこれには製造の過程で青銅器にコーティングされた酢酸鉛などの鉛化合物が、加熱によって溶け込んでいる。加えて焦げ付き防止のためにかき混ぜる際に被膜がこすれて傷つき、より多くがシロップに溶け込むことになる[11]。
当時ワインを好んで飲んだ者が、このようなシロップを添加したことから鉛中毒となっていた可能性が否定できず、多くの皇帝など古代ローマの記録に残る有名な人物の発狂や死の原因ともなった[12]と考える研究者がいる。
作曲家ベートーヴェンが、その晩年ほぼ耳が聞こえなくなった原因として、鉛中毒という説がある[13]。
現代ではその毒性がよく知られているため、用いられることはない。


