かんむり座ガンマ星
かんむり座の恒星
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かんむり座γ星(かんむりざガンマせい、γ Coronae Borealis、γ CrB)は、かんむり座の実視連星である[10]。見かけの合成等級は3.81と、肉眼でみることができる明るさである[2]。年周視差に基づいて太陽からの距離を計算すると、約146光年である[5][注 1]。早期型の主系列星同士の連星で、真横に近い向きの軌道面を約91年周期で公転している[9][7]。主星は、たて座δ型とみられる変光星である[4]。
| かんむり座γ星 γ Coronae Borealis | ||
|---|---|---|
| 仮符号・別名 | Baltesha[1] | |
| 星座 | かんむり座 | |
| 見かけの等級 (mv) | 3.81[2] (4.08 / 5.64)[3] 3.80 - 3.86[4] | |
| 変光星型 | DSCTC[4] | |
| 位置 元期:J2000.0 | ||
| 赤経 (RA, α) | 15h 42m 44.56551s[5] | |
| 赤緯 (Dec, δ) | +26° 17′ 44.2847″[5] | |
| 視線速度 (Rv) | -15.26 ± 4.54 km/s[6] | |
| 固有運動 (μ) | 赤経: -111.65 ミリ秒/年[5] 赤緯: 49.52 ミリ秒/年[5] | |
| 年周視差 (π) | 22.33 ± 0.50ミリ秒[5] (誤差2.2%) | |
| 距離 | 146 ± 3 光年[注 1] (45 ± 1 パーセク[注 1]) | |
| 絶対等級 (MV) | 0.80 / 2.35[7] | |
かんむり座γ星の位置(赤丸)
| ||
| 物理的性質 | ||
| 質量 | A: 2.50 M☉[8] B: 1.77 M☉[8] | |
| 自転速度 | A: 182 ± 12 km/s[6] | |
| スペクトル分類 | B9 V + A3 V[9] | |
| 有効温度 (Teff) | A: 10,500 ± 245 K[3] B: 8,720 ± 120 K[3] | |
| 色指数 (B-V) | 0.020[2] | |
| 色指数 (V-I) | 0.04[2] | |
| 年齢 | 3.5×108 年[8] | |
| 軌道要素と性質 | ||
| 軌道長半径 (a) | 0.729 ± 0.006 秒[7] | |
| 離心率 (e) | 0.48 ± 0.01[7] | |
| 軌道周期 | 91.2 ± 0.4 年[7] | |
| 軌道傾斜角 (i) | 94.45 ± 0.07 度[7] | |
| 近点引数 (ω) | 103.8 ±0.6 度[7] | |
| 他のカタログでの名称 | ||
| ADS 9757, かんむり座8番星, BD+26 2722, HD 140436, HIP 76952, HR 5849, SAO 83958[5] | ||
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | ||
星系
かんむり座γ星に伴星があることを最初に観測したのは、ヴィルヘルム・シュトルーヴェで、1826年のことである[11][12]。それから、オットー・フォン・シュトルーヴェ、メドラー、セッキらが精力的に観測し、19世紀後半には予備的な軌道要素が求められるようになった[13]。とはいえ、離角は周期のほとんどの位相で1秒以下、加えて軌道傾斜角から方位角の変化もほとんどなく、なかなか十分な制限がつけられるようにはならなかった[13][14]。20世紀半ば、発見から軌道を1周半するくらいの時間が経過してようやく、ベズによって精度の高い軌道要素が求められるにいたった[13][11]。1976年以降、スペックル観測や補償光学を用いた観測で、測定精度が大幅に向上したが、それらのデータで軌道の全周を描けるまでにはまだ時間がかかる[11][3]。
かんむり座γ星の軌道は、周期が約91年、見かけの軌道長半径は0.73秒角(実距離では33 au程度)で、離心率は0.48と大きく、軌道傾斜角が94.5度で、軌道面が真横を向いた状態と5度程度の差しかない[7]。系の合計質量は太陽の4.2倍程度で、伴星の質量は主星の7割程度と推定される[7][8]。
特徴
主星のかんむり座γ星Aは、単独での見かけの等級が4.08、スペクトル型はB9 Vに分類される[3][9]。準巨星に分類されることが多かったが、絶対等級や質量、年齢からすると、主系列と考える方が妥当とみられる[15][10]。質量は太陽の約2.5倍、表面の有効温度はおよそ10500 Kと推定される[8][3]。20世紀後半になって、かんむり座γ星には光度変化が起きていることが確認され、確定した変光星と認められており、変光の原因は主星のかんむり座γ星Aにあるとわかっている[16][4][10]。
伴星のかんむり座γ星Bは、見かけの等級が5.64、スペクトル型はA3 Vと分類される[3][9]。質量は太陽の約1.77倍、表面の有効温度はおよそ8720 Kと推定される[8][3]。
変光

かんむり座γ星は、輝星星表の中で変光星ではないかと疑われ、1960年代にデービッド・ダンラップ天文台での観測により光度変化が確認された[16][18]。スペクトル型からたて座δ型変光星ではないかと予想され、実際振幅や周期がたて座δ型に似ていることから、やはりたて座δ型と考えられ、第58次変光星名一覧で確定した変光星となった[18][16][19]。
ところが、その後の観測では光度変化が検出されない時期があり、スペクトル型もたて座δ星としては非常に早期型(高温)であることもあって、たて座δ型星であることが疑われるようになった[20]。そこで次に、晩期B型から早期A型の短周期脈動変光星として、オットー・ストルーヴェが提唱した「マイア型星」の候補とされた[21]。ただし、マイア型星の原型となったおうし座20番星は、後に変光星ではないことが明らかとなっており、この変光星分類そのものも疑わしくなった[21]。
再び、たて座δ型でないかどうか、脈動に伴う視線速度変化を調べて検証された[21][15]。かんむり座γ星では、視線速度も一定となる時期があるなど不安定な挙動がみられた[21][15]。周期を分析した結果、少なくとも3つの周期があって、その重ね合わせによって不安定な挙動を説明できる可能性があり、個々の振動はほかのたて座δ型星の振動と似ていることが示された[15]。脈動の周期は概ね0.1日前後で、自転周期は0.89日もしくはその半分と推定される[15]。
名称
国際天文学連合の恒星名ワーキンググループは2026年5月14日、かんむり座γ星の固有名として Baltesha を正式に採用した[22][1]。この名前は、シュメールにおいてかんむり座の位置にあったとされる星辰、(mul)BAL.TEŠ2.A に由来し、その語句は「威厳あるもの」を意味している[1][23]。
中国ではかんむり座γ星は、賤人の牢を表すとされる貫索(拼音: )という星官を、かんむり座π星、かんむり座θ星、かんむり座β星、かんむり座α星、かんむり座δ星、かんむり座ε星、かんむり座ι星、かんむり座ρ星とともに形成する[24][25][26]。かんむり座γ星自身は、貫索五(拼音: )すなわち貫索の5番星といわれる[26]。