みりん

日本料理の調味料や飲用に供される酒 From Wikipedia, the free encyclopedia

みりん味醂味淋味霖)は、もち米米麹焼酎及びアルコール等を主原料とする[2]本みりん(米及び麹に焼酎又はアルコールを加えてこしたもの、アルコール度数13 - 14%)及び本直し(本みりんに焼酎又はアルコールを加えた飲料、アルコール度数22 - 23%)の総称である[3][注 1]

ガラス容器に取り出した味醂。古来の褐色の味醂と区別して「白味醂」とも呼ばれる。
エネルギー 1,008 kJ (241 kcal)
ビタミンB6
(1%)
0.01 mg
概要 100 gあたりの栄養価, エネルギー ...
本みりん[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,008 kJ (241 kcal)
43.2 g
0.3 g
ビタミン
ビタミンB6
(1%)
0.01 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
3 mg
カリウム
(0%)
7 mg
カルシウム
(0%)
2 mg
マグネシウム
(1%)
2 mg
リン
(1%)
7 mg
(3%)
0.05 mg
他の成分
水分 47.0 g
アルコール (エタノール)
9.5 g

(100 g: 85.5 mL、100 mL: 117.0 g)エタノール: 14.0 容量パーセント
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
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本みりんは日本の代表的な酒類調味料である[4][注 2]。このほかに食品として、みりん風調味料(アルコール度数1%未満)、みりんタイプ調味料(アルコール度数10 - 14%)があり、広義のみりん類と称される[5]。これらも本項で述べる。

製法

工程

まず精米歩合80 - 85%程度のうるち米を蒸して米麹を作る(製麹)[2]。この麹を蒸したもち米、焼酎やアルコールとともにタンクに入れ、醪(もろみ)を仕込む[2]。この過程で麹によるもち米の糖化、たんぱく質の分解、香気成分の生成等を生じる[6]。30日から60日の熟成後に圧搾したものが本みりんである[6]

みりんのアルコール分は原料の焼酎やアルコールに由来するもので、もろみ中でのアルコール発酵の過程がないのが特徴である[6]

この本みりんに焼酎又はアルコールを加えた飲料が本直しである[3]

副産物

味醂の製造過程で出た粕は、味醂粕こぼれ梅と呼ばれる[7]。糖類、アミノ酸、不溶性無窒素物(繊維を含む)、タンパク質等が豊富に含まれ、砂糖などを加えて食したり、菓子や甘酒、和え衣などで食用とされるが、その多くは漬け床、家畜飼料などとなる[8]

区分と規制

みりんと法規制

先述のように、みりんは本みりん及び本直しの総称である[3][注 1]

  • 本みりん - アルコール度数約14パーセントの酒類調味料で[4][注 2]、糖濃度は45 - 50パーセントである[9]。本みりんは業界基準では、アルコール原料に連続蒸留(甲類)焼酎または醸造用アルコールを使用する1種(新式)みりんと、単式蒸留(乙類)焼酎を使用する2種(旧式)みりんに分類している[10]
  • 本直し - 飲用にするためさらに焼酎を加え、エタノールの濃度を高めた味醂が「本直し」(ほんなおし)である[11]。「柳陰(やなぎかげ)」[2][3]と称されることもある。

みりんは、日本の酒税法における分類では混成酒に分類され[10]、同法により酒税が課されている。酒税に加えて、日本では軽減税率の適用を受けず、2019年10月1日以降、消費税の税率は10パーセントが賦課されている[12][13]。また、日本での製造や販売には、酒類免許が必要である。加えて、味醂の販売の際は二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律の規定により、営業者は「満20歳未満の者の飲酒を防止するための、年齢確認その他必要な措置」を行う必要がある。また、営業者は満20歳未満の者に対して、飲用目的と知りながら味醂を販売してはならないと定められている。

みりん類

広義のみりん類には、以下のみりん風調味料、みりんタイプ調味料が含まれる[5]。ただ、原料や製法が違う事から成分も異なり、調理効果も異なるため「本みりん」とは区別されている[4][14]

みりん風調味料
日本では酒税のかからない、1パーセント未満のエタノールを含有した水をベースとして作られる。このベースに、味醂の風味に似せるべく、うま味調味料水飴等の糖分その他を加えた調味料である[11]1947年(昭和22年)に福泉化学から「新みりん」として発売された[11]。原材料と製造方法及びアルコール度数から「本みりん」とは区別される[12][13]。アルコール分が1パーセント未満のため酒税法上の酒類には該当しない[6]
みりん風調味料も日本料理などの味付けに用いられているものの[11]、その特性は味醂と同じではない[4]
なお、みりん風調味料ならば、教義で飲酒が禁じられているイスラム教徒でも摂取できるため、ハラール対策の調味料目的としても用いられている[15]
みりんタイプ調味料[5](みりんタイプ発酵調味料[6]
10 - 14パーセント程度のエタノールと2パーセント前後の塩分を含む[5]。本来、アルコール度数が1パーセントを超えると酒類となるが[12]、一定の食塩を加えて不可飲処理しているため酒税法上の酒類には該当しない[6]1952年(昭和47年)に佐倉井が「味つき塩みりん」として開発し、味の一株式会社から発売された[11]塩みりん[16]のほか、醗酵みりん[3]とも称される。なお、発酵調味料とも称されるが、料理酒を含む場合もあるため[4]、発酵調味料(みりんタイプ)と称されることがある[6]

なお、酒税法上「みりん」とは認められない液体調味料について、「みりん」と誤認させるような表示を行った場合には不正競争防止法の誤認惹起行為に当たる(平成2年4月25日京都地裁判決)[17]

用途

料理

みりんに含有されるエタノールが、魚等の生臭さを抑え、食材に味が浸透する助けをし、素材の煮崩れを防ぐ。また、みりんに含有される糖分が、料理に甘みを加え、照焼きの艶を出し、加熱により良い香りを生じさせる[9]

なお、みりん風調味料の場合はアルコールがほとんど含有されておらず、アルコール特有の調理効果は期待できない[4]。また、発酵調味料(みりんタイプ)の場合は塩分を含むため塩味の調整が必要である[4]

調味料としては、江戸時代、元禄2年(1689年)の料理書『合類日用料理抄』にて、鳥醤に味淋酎を使用するという記述がある。これがミリンを料理に使用したとする初の記録である。また、文政年間には、八百善の主人である栗山善四郎が記した献立集『料理通』に、料理の風味を損なうアルコールを飛ばす「煮切る」ことに初めて言及された[18]

飲用

戦国時代には、上流階級で珍しい高級酒として飲まれていた。一般層が飲めるようになるのは江戸時代からである[18][19]

先述の本直し(柳陰)は日本では江戸時代から昭和の高度経済成長期まで庶民の酒として親しまれた[2]

明治、大正時代には、下戸・女性に好まれる甘い滋養飲料として需要が拡大した[16]

みりん様飲料として本直し(柳蔭)のほか、練酒白酒がある[10]。また、数種の薬草を調合した屠蘇散(とそさん)を酒やみりんに浸したものは屠蘇酒として知られる[10]。みりんにスイカズラを浸した薬酒に忍冬酒がある[10]

カクテルの材料の1つとして用いる例も見られる[20]。また、梅酒などの混成酒を作る際に、ウメの成分を浸出させる溶媒として使う場合もある。

歴史

起源

味醂のそもそもの起源に関しては諸説あり、確定的な説が無い[21][2]。ただ、主に中国伝来説と日本発生説があるとされる[6]

  • 中国に実際存在し、清明の時代の書物『湖雅巻八造醸』に密淋(ミイリン)と記された甘い酒が、戦国時代頃に伝来したという説。『駒井日記』(1593年文禄2年))がみりん(蜜淋)の名称が記された最も古い文献とされる[22]。また、1649年の『貞徳文集』には渡来したものとの記述がある[18][23]
  • 日本に古くから存在した練酒白酒などの甘い酒に腐敗防止策として焼酎が加えられたという説[21]。室町時代の京都相国寺鹿苑院蔭涼軒主の公用日記『蔭涼軒日録』(1466年)に、練貫酒という甘い酒が博多にあったと記述されており、これがミリンに発展したとする説がある[18]
  • 江戸時代に流山の醸造家が作り出したのが発祥とする説もある[24]

近世

みりんは当初は飲用とされ『和漢三才図会』にも下戸や婦女が「美淋酎」を飲むとの記載がある[10]。調理用途で用いられるようになったのは江戸末期にかけてである[10]

1785年に発表された『萬寶料理秘密箱』の中の「赤貝和煮」の記述以降、蕎麦のつゆ、蒲焼のタレ、などに用いる調味料として使われ始めていった[25][26][27]

1837年の『守貞漫稿』には摂津伝法村で醸造されるが、京阪で使われることはなく、江戸に運ばれて食物を煮るときに醤油と加えて用いられているという記載がある[10]

近現代

みりんには「蜜淋酒」「蜜淋酎」「美淋酒」「蜜醂酒」「味醂」「味醂酒」「美淋酎」などの表記が存在したが、明治時代になり酒税法(1871年)で「味醂」という表記が用いられた[10]

1943年(昭和18年)から8年間、第二次世界大戦中に物資不足から製造禁止、戦後に再開されたが贅沢品として重い酒税がなされた。そのため、塩を加えて酒税法を回避する塩みりんや調味料などででみりん風味とした新みりん(みりん風調味料)が製造された[16][28]。また、日本酒級別制度による配給も行われた[29]

1940年代の日本では大衆の酒として、味醂は親しまれていた。その日本で1950年代以降に清酒やビール、ウイスキーが普及するにつれて、飲用を目的とした味醂の消費は消えていった一方で、調味料として味醂の使用が増加した[11]

1996年には販売免許の要件が緩和され、「みりん小売業免許」を申請して免許が与えられれば、ビールやウイスキーなどの酒類を扱っていないスーパーや食料品店でも、味醂を扱えるようになった。

2006年には、一般酒類小売業免許に統合され「みりん小売業免許」が廃止された。

本みりんの日

みりん業界では、11を「いい」、30を「みりん」の語呂あわせ「いいみりん」で、11月30日を「本みりんの日」とした[30]

主なみりんメーカー

明治時代には、3千近い免許場があった[16]

文化

  • イタリアでは強烈に甘い菓子にリキュールを掛ける文化があるため、日本に来訪したイタリア人はみりんをアイスクリームにかけるものだと認識することがある[31]
  • 一部レストランで、みりんをバニラアイスクリームにかけるレシピが存在する。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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