アナンシの血脈

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装幀 Richard Aquan (1st printing hardcover edition); general design, Shubhani Sarkar; image collage credited to Getty Images
発行元 アメリカ合衆国の旗モロウ日本の旗KADOKAWA
アナンシの血脈
Anansi Boys
著者 ニール・ゲイマン
訳者 金原瑞人
装幀 Richard Aquan (1st printing hardcover edition); general design, Shubhani Sarkar; image collage credited to Getty Images
発行元 アメリカ合衆国の旗モロウ日本の旗KADOKAWA
ジャンル ファンタジー
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
ページ数 アメリカ合衆国の旗400、日本の旗上巻287、下巻317
受賞 ローカス賞 ファンタジイ長編部門 (2006)
前作 アメリカン・ゴッズ
コード アメリカ合衆国の旗ISBN 0-06-051518-X
日本の旗上巻ISBN 978-4047915343下巻ISBN 978-4047915350
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アナンシの血脈』(アナンシのけつみゃく・Anansi Boys)は、イギリスの作家ニール・ゲイマンのファンタジー小説。本作では、西アフリカのトリックスターアナンシ化身である「ミスター・ナンシー」が亡くなり、幼い頃に離れ離れになった後、互いの存在を知ることにな双子の息子を残す。この小説は、彼らが共通の遺産を探求する冒険を描いている。本作はゲイマンの前作『アメリカン・ゴッズ』の続編ではないが、ミスター・ナンシーというキャラクターは両方の作品に登場する。

ゲイマンは、この本を書く際にソーン・スミス英語版という作家から大きな影響を受けたと述べている。「執筆中、私の頭の中にはソーン・スミスという作家がいた」とし、「魔法が日常に突如として現れるというソーン・スミスの手法は、探求する価値のある領域のように思えた」と語っている[1]。小説の献辞の中で、P・G・ウッドハウステックス・アヴェリーゾラ・ニール・ハーストンにも敬意を表している[2]

『アナンシの血脈』は2005年9月20日に出版され、2006年10月1日にペーパーバック版が発売された。この本は ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストで初登場1位を獲得し[3]、そして2006年にはローカス賞英国幻想文学大賞の両方を受賞した[4]レニー・ヘンリー英語版がナレーションを担当したオーディオブックは2005年にリリースされた。

日本語版は金原瑞人の訳で2009年12月1日にKADOKAWAから文庫本として出版された。

ロンドンで平凡に暮らす気弱な男チャーリーは、父の死をきっかけに、自分の父が西アフリカのトリックスター神アナンシの化身だったこと、そして自分には「スパイダー」という超自然的な力を持つ兄がいることを知る。

軽い気持ちで兄を呼び出したチャーリーだが、魅力的で自由奔放なスパイダーは彼の生活に入り込み、仕事や婚約者まで奪ってしまう。さらに上司の不正の罪まで着せられ、チャーリーの人生は崩壊していく。

問題を解決するため、チャーリーは神々の世界へ赴き、自分の血筋(アナンシの力)と向き合う。兄との対立や数々の騒動、悪徳上司の事件を経て、最終的にチャーリーは自らの力に目覚め、兄と協力して敵を打ち倒す。

物語の終盤では、兄弟はそれぞれの人生を歩み始め、チャーリーは自信と成功を手に入れて成長を遂げる。

チャーリーの関係者

父親との関係

チャーリーと父親の関係は、父親(ミスター・ナンシー)のいたずら好きな性格と、伝統的な親としての権威の欠如が原因で複雑になっている。アフリカの蜘蛛の神アナンシの化身である父親は、人生観が歪み、家族に対する責任の一部を軽視するようになる。「そのため、彼の人生観は、ほぼ永遠の寿命ゆえに時に歪んでしまうことがあり、その結果、家族に対する義務をやや怠るようになった」[5]。その結果、チャーリーは父親が怠っている責任を自分が背負わなければならないと感じることが多く、それが親子関係に緊張を生んでいる。ミスター・ナンシーの行動は、彼が魅力的で周囲の人々を楽しませる能力を持っているにもかかわらず、チャーリーが彼を真の権威者として認識することを妨げている。「彼は周りの人たちを楽しませるのが大好きだったので、一緒にいると確かに心地よく、愛される人物だった。しかし、それだけではチャーリーが彼を好きになり、権威者として、あるいは模範として尊敬するには十分ではなかった」[5]。しかしながら、彼の魅力はチャーリーとの間に尊敬や親近感を生み出すには至らなかった。ミスター・ナンシーは、その「狡猾さ」ゆえに、従来の親のあり方とは相容れないものの、チャーリーの人生において信頼できないながらも重要な影響力を持つ人物である。「ミスター・ナンシーはまさにトリックスターの典型であり、つい最近亡くなったにもかかわらず、よく笑い、にやりと笑う人物だ。彼の陽気さがこの作品を支えている。ゲイマン自身は、この作品の核心は生き残った家族についてだと述べているが、ミスター・ナンシーのトリックスター的な性質は、親の権威を規定する伝統的な父親像とは真っ向から対立する」[6]。彼は自分なりのやり方で、家族を心から大切に思っていることを示している。これは、愛や思いやりは必ずしも伝統的な形ばかりではなく、型破りな形で現れることもあるということを示している。本の最後に彼らが交わした会話は、将来さらに良い関係が築かれることを示唆しているのかもしれない。

母親との関係

チャーリーは、母親がナンシー氏の不在を受け入れられないことに苦しんでいた。「チャーリーは母親を心から愛していたが、母親が父親の態度を我慢していることに納得していなかった。父親の振る舞いや、ほとんど家にいないことに、チャーリーは本当に苛立ちを募らせていたが、母親はナンシー氏の不在をさほど気にしていなかった」[5]。彼の不満は、母親への深い忠誠心から生じたものであり、母親はもっと良い扱いを受けるべきだと彼は信じていた。チャーリーは、彼女が父親の度重なる不在を我慢していることが理解できなかった。チャーリーと母親は、自分たちの家族関係は正常だと思っていたが、チャーリーは父親の行動に不満を言い続けた。「アナンシは人生に対する考え方から、子供たちのことを全く気にかけなかった。彼にとってそれはごく当たり前のことだったのだ」[5]。性格の違いはあったものの、チャーリーと母親の絆は揺るぎないものだった。彼女は彼の人生において、常に安定の源であった。

スパイダーとの関係

スパイダーは、チャーリーがこれまで存在を知らなかった兄弟として初めて登場する。初めて会ったとき、スパイダーとチャーリーは意気投合し、スパイダーはチャーリーが「普通」の行動から抜け出すように促した。そして彼は失敗し、チャーリーの婚約者ロージーに恋をしてしまう。スパイダーには境界線がなく、ノーと言われることに慣れていなかったので、当初チャーリーは彼に腹を立てていた。チャーリーは当初、スパイダーに裏切られたように感じて怒りを覚え、自分の生活の均衡を乱されたことで、まるで超自然的な兄弟であるかのように彼と激しく争う。しかし、結局はどんなおとぎ話にもあるように、彼らは互いを救い合うことになる。スパイダーはロージーを手に入れ、チャーリーはデイジーという名の警官と新たな関係を築く。スパイダーは単なる彼の兄弟ではなく、ダンウィディの装飾品を壊して彼女を怒らせたために分離したチャーリーの一部であるとされている。スパイダーは彼の一部というだけでなく、「スパイダーはチャーリーが父親から学ぶべきこと、そして父親が彼にどうあってほしいと願っていたかを象徴していた」[5]。スパイダーはチャーリーの可能性と願望を象徴している。スパイダーが彼の人生に現れたことで、彼は自分が本当に何を望んでいるのか、心の奥底では「父親のようになりたかった」ということに気づいた[5]。彼の気さくな態度、カリスマ性、そして自信は、チャーリーが父親から拒絶してきたものと、彼が密かに切望していたものの両方を強調している。この気づきによって、チャーリーはこれまで目を背けてきた自分自身の一面と向き合わざるを得なくなる。すなわち、物語の初めに彼から切り離されていたその部分と。会話を通して、チャーリーは父親のユーモア、勇敢さ、順応性といった特質の中には必ずしも悪いものではないものがあることを認めざるを得なくなり、それらを受け入れることへの抵抗感を克服していく。スパイダーは、ライバルであると同時に自分自身の鏡のような存在として振る舞うことで、チャーリーに、彼自身の用心深い傾向と、彼が長年拒絶してきた抑えきれないエネルギーとのバランスを取るよう促す。チャーリーは最終的に、これらの要素を自身の性格に取り入れることを学び、父親を真っ向から拒絶するのではなく、より完成度が高く自信に満ちた自分自身を作り上げていく。その一例として、チャーリーが本の終盤で与えられ、かぶり始める緑色の帽子が挙げられる。

受賞とノミネーション

『アナンシの血脈』は、2006年のローカス[4]ミソピーイク、YALSA ALEX[7]オーガスト・ダーレスの各賞を受賞した[8][9]

メディア展開

ラジオドラマ

2005年、マイク・ウォーカーは『アナンシの血脈』をBBCワールドサービス向けにラジオドラマに翻案した。スパイダーとファット・チャーリー役でレニー・ヘンリー英語版、グラハム・コーツとタイガー役でマット・ルーカス、アナンシ役でルドルフ・ウォーカー英語版、ノア夫人と鳥の女役でドナ・クロール英語版、ヒグラー夫人役でタメカ・エンプソン英語版、ロージー役でペトラ・レタン英語版、デイジー役でジョセリン・ジー・エシエン英語版、タクシー運転手やその他の声優としてベン・クロウが出演した。このドラマは2007年11月17日に放送された。オリジナルサウンドトラックは、デンマークの作曲家ニコライ・アブラハムセンによって作曲された。1996年にゲイマンの Signal to NoiseBBC Radio 3版の制作にも携わったアン・エディヴィーンが演出した[10]

ゲイマンは、「予算削減とドラマの放送時間短縮のため、BBCは1時間番組にせざるを得なかった。小説を1時間に短縮すると、ろくなことにならない。素晴らしいキャストと制作陣、そして状況を考えれば最高の脚本だったにもかかわらず、私は満足できなかった。まるでリーダーズ・ダイジェストの要約版のようだった」と述べてBBCラジオ版のドラマ化に不満を表明した。

2017年には、ゲイマンの小説としては5作目のラジオドラマ化となるダーク・マグスが脚色した全6話構成のフルキャスト版のラジオドラマシリーズが制作された。ナレーションはジョセフ・マーセル英語版が担当し、ジェイコブ・アンダーソン英語版がファット・チャーリー役、ネイサン・スチュワート=ジャレットがスパイダー役、レニー・ヘンリーがアナンシ役で出演するほか、ジュリアン・リンド=タットがグラハム・コーツ役、アジョア・アンドー英語版がバード・ウーマン役で出演した[11]。この番組は、2017年のクリスマスから6日間にわたり、BBC Radio 4BBC iPlayerで最初の5エピソードはそれぞれ30分、最終回が60分で放送された[12]。ゲイマンはこのバージョンに非常に満足しており、マグスの翻案作品の中で一番のお気に入りだと述べているという[12]

映画

ゲイマンはBBCラジオによる最初の翻案に不満を抱き、それがきっかけで『アナンシの血脈』の映画版の脚本を書くようになった。ゲイマンは「普段は自分の作品を映画化することには反対している。でも、『アナンシの血脈』は自分が誇りに思えるような映画化作品にしたかった。ラジオドラマ版を見て、『いや、私が意図したのはこれだ』と言いたくなった」と語っている[13]

テレビドラマ

2014年、『アナンシの血脈』のテレビミニシリーズがBBCによって制作していると報じられた[14]。それはRed Production Companyによって制作され、ゲイマンがエグゼクティブプロデューサーを務める予定だった[15][16][17][18][14][19]。このミニシリーズは結局制作されなかったものの、お蔵入りとなったシリーズの要素は、代わりにStarzで制作された「アメリカン・ゴッズ」のドラマ化作品に組み込まれた。

2020年5月、Endor ProductionsがAmazon Prime Video向けにミニシリーズ化を企画中であると報じられた[20]。2021年7月、Amazonが本作を全6話のシリーズとして発注したことが発表された。本作はAmazon Studios、The Black Corporation、Endor Productions、Red Production Companyが製作し、レニー・ヘンリーとニール・ゲイマンが脚本家兼エグゼクティブプロデューサーを務める予定となっていた[21]デルロイ・リンドーがミスター・ナンシーを[22]マラカイ・カービー英語版がファット・チャーリーとスパイダーをそれぞれ演じた[23]。シリーズの撮影は2022年1月にエディンバラで開始された。

コミックス

2024年、ゲイマンはマーク・バーナーディン英語版と提携し、『アナンシの血脈』を複数巻のコミックシリーズとして翻案し、作画はショーン・マーティンブロー英語版が担当した。ダークホースコミックスから出版された『アナンシ・ボーイズ』の第1巻は、全8号で完結する予定だった[24]。しかし、ゲイマンに対する性的不正行為の疑惑が浮上したことを受け、ダークホースは7号でこのプロジェクトを中止した[25]

翻訳

文化的参照

脚注

外部リンク

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