アメリカン・ゴッズ
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| アメリカン・ゴッズ American Gods | ||
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| 著者 | ニール・ゲイマン | |
| 訳者 | 金原瑞人、野沢佳織 | |
| 発行元 |
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| ジャンル | ファンタジー | |
| 国 |
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| 言語 | 英語 | |
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| 受賞 | ヒューゴー賞 長編小説部門 (2002)、ローカス賞 ファンタジイ長編部門 (2002)、ネビュラ賞 長編小説部門 (2002) | |
| 次作 | アナンシの血脈 | |
| コード |
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『アメリカン・ゴッズ』(American Gods、2001年)は、イギリスの作家ニール・ゲイマンによるファンタジー小説。本書はアメリカ文化、ファンタジー、そして古代と現代のさまざまな神話を融合させたもので、すべては謎めいた主人公シャドウを中心に展開する。
本書は2001年にイギリスではヘッドラインから、アメリカではウィリアム・モロウから出版され、日本では2009年に金原瑞人と野沢佳織による翻訳がKADOKAWAより出版された。肯定的な評価を受け、2002年のヒューゴーおよびネビュラ両賞を受賞した[1]。
「著者が好きなテキスト」と12,000語が追加された10周年の特別版がウィリアム・モロウから2011年に出版された。本書のオーディオブック版は2種類あり、ハーパーオーディオから出版された。1つは、ジョージ・ガイダルが朗読したオリジナル版の完全版で、2001年にリリースされ、もう1つは、10周年記念版のフルキャスト版で、2011年にリリースされた。2017年3月、フォリオ・ソサエティは『アメリカン・ゴッズ』の特別コレクターズ・エディションを出版したが、そこには著者が好むテキスト版に対する多くの修正が加えられていた[2]。
2017年4月、Starzが本書のテレビドラマの放送を始めた。ブライアン・フラーとマイケル・グリーンがショーランナーをつとめ[3]、ゲイマンが製作総指揮で参加した[4]。フラーとグリーンはシーズン1終了後にシリーズから離脱した[5]。
シャドウ・ムーンは、刑務所から釈放される予定の受刑者である。釈放予定日の2日前、彼は妻のローラが交通事故で亡くなったことを知り、予定より早く釈放される。シャドウは彼女の死に打ちひしがれ、彼女が不倫関係にあった親友のロビーと共に亡くなったことを知って、ひどく動揺する。シャドウは刑務所から釈放されたらロビーから仕事を紹介してもらえるはずだったが、運悪くその仕事はなくなってしまい、これからどうするか考えなければならなくなった。行く当てのないシャドウは、謎の詐欺師ミスター・ウェンズデイのボディーガードの仕事に就き、彼と共にアメリカ中を旅する。シャドウはマッド・スウィーニーという名のレプラコーンに出会い、シャドウが戦いに勝利すると、マッド・スウィーニーはシャドウに魔法の金貨を渡す。シャドウは後にローラの葬儀でコインをローラの墓に投げ入れ、意図せずしてローラを死から蘇らせせてしまう。シャドウはチェルノボグとゾリャー三姉妹に出会う。姉妹の一人が、シャドウを守るために、月から来た銀貨を彼に渡す。シャドウは、ウェンズデーが全能の父オーディンの化身であり、信者の減少に伴い力が衰えた古木神のアメリカにおける顕現者たちを、新しき神――人類が現在崇拝しているもの、例えばテクノロジー、メディア、ポップカルチャー、現代の交通手段などの顕現――との戦いに参加させるために勧誘していることを知る。シャドウは、ミスター・ナンシー、イースター、ウィスキー・ジャック、ジョン・チャップマンなど、ウェンズデーの多くの仲間と出会う。
新しき神々の手下であるスプークスがシャドウを誘拐するが、ローラが彼を救出し、その過程で数人のスプークスを殺害する。ウェンズデイはシャドウに、イリノイ州カイロで葬儀屋を経営しているミスター・アイビスとミスター・ジャケル(それぞれトートとアヌビス)のところに身を隠すように指示する。スウィーニーが現れ、シャドウにスウィーニーの全ての力が宿っているコインを返すよう要求する。シャドウはもうコインを持っていないことを認め、スウィーニーは死ぬ。アイビスとジャケルは彼の遺体を手当てし、また一人、古き神を失ったことを嘆き悲しむ。ウィスコンシン州のレイクサイドという町へ向かう途中、シャドウはヒッチハイカーのサマンサ・ブラック・クロウを拾い、彼女の家まで送り届ける。レイクサイドに到着したシャドウは、「マイク・アインセル」という偽名を使って身を隠し、質素ながらも幸せで豊かな生活を送るレイクサイドの住民たちと時間を過ごす。ウェンズデイは定期的にシャドウを連れて仕事に出かけ、他の神々と会わせる。彼らはその間ずっと、スプークス、特に自分の友人たちの死はシャドウのせいだと考えているミスター・タウンに追われている。レイクサイドに住む十代の少女が行方不明になったとき、シャドウは他の住民たちと一緒に彼女を探すが、成果は得られない。シャドウは、レイクサイドでは子供やティーンエイジャーが頻繁に行方不明になっていることを知る。彼は仮釈放違反で逮捕されるが、チェルノボグとミスター・ナンシーの助けで脱獄する。
新しき神々はウェンズデイと交渉しようとするが、会合の場で彼を殺害する。この行為は古の神々に目撃され、彼らを奮い立たせ、彼らはロックシティで敵と戦うために集結する。ウェンズデイの遺体を回収している最中、シャドウはかつての刑務所の同房者であり師匠でもあるロー・キー・ライスミスが、新しき神々の運転手として働いていることを知り、驚く。シャドウはウェンズデイとの契約により、オーディンが槍で貫かれながら「世界樹」に吊るされていた期間を再現することで、見張りを続ける義務を負っている。この9日間の最中、鷹として長く生きすぎたために狂ってしまったホルスが訪ねてくる。シャドウは死んで死者の国を訪れ、そこでアヌビスによって裁かれる。シャドウは、自分がウェンズデイ(オーディン)の息子であり、神の計画の一環として身ごもられたことを知る。その頃、ミスター・ワールドから枝を切るように命じられたミスター・タウンが世界樹に到着する。
ホルスはイースターを見つけ出し、彼女を説得してシャドウを生き返らせる。シャドウは、ミスター・ワールドの正体が実はロー・キー・ライスミス(ロキ)であり、オーディンとロキが「二人組の詐欺」を企てていたことに気づく。彼らはシャドウの誕生、刑務所で変装したロキとの出会い、そしてローラの死を画策したのだった。ロキはオーディンの殺害を画策し、それによって新旧の神々の戦いをオーディンへの生贄とし、オーディンの力を回復させると同時に、戦いの混乱から力を吸い取ることを可能にした。
ローラはヒッチハイクでロックシティへ向かうことにし、そこでミスター・タウン氏に出会い、ミスター・タウンはローラのことを知らなかったが、二人は一緒に旅をすることに同意する。旅の途中でローラはミスター・タウンの正体を知り、目的地に到着すると彼を殺害し、彼が世界樹から持ち去った枝を手に入れる。彼女はロキと出会い、世界樹の枝で彼を刺すことに成功し、彼女が刺した瞬間、枝は槍に変化する。
シャドウがロックシティに到着し、重傷を負ったロキとオーディンの亡霊と対峙すると、二人は自分たちの計画を明らかにする。シャドウは戦場へと赴き、両陣営とも得るものは何もなく、失うものばかりであり、真の勝者はオーディンとロキだけだと説明する。シャドウは彼らに、アメリカ合衆国は神々にとって良くない場所だと告げ、元の故郷に戻るよう勧める。神々は去り、ロキは死に、オーディンの亡霊は消え去る。ローラはシャドウにコインを受け取ってほしいと頼み、シャドウはそれに応じ、ローラはついに息を引き取る。
ミスター・ナンシーと休息した後、シャドウはヒンドゥー教の神ガネーシャが「トランクの中を見てみろ」と言った夢を思い出す。彼はレイクサイドに戻り、薄くなった氷の上を歩いて、そこに停まっている車の方へ向う。彼が鍵を開けてトランクを開けると、中に行方不明になっていた十代の少年の遺体を発見する。彼は氷が割れて湖に落ち、氷の下に閉じ込められた状態で、過去の冬に湖底に沈んだ車がいくつも並んでいるのを目にする。それぞれの中には、おそらく子供の遺体が閉じ込められているのだろう。シャドウはヒンツェルマンに助けられ、彼の家に連れて行かれ、低体温症の治療を受ける。シャドウは、ヒンツェルマンが神であり、子供たちの誘拐と死にも責任があることに気づく。ヒンツェルマンは、町の繁栄と引き換えに、毎年一人の子供を犠牲として差し出さなければならないという苦渋の決断を説明した。町の人々は、このことやヒンツェルマンが町を支配していることに気づいておらず、彼は誰も惜しまないような子供たちを犠牲にしようとしているのだった。シャドウはヒンツェルマンを殺そうと考えるが、ヒンツェルマンが自分の命を救ってくれたため、殺すことができないことに気づく。しかしながら、チャド・マリガンがその会話を盗み聞きし、ヒンツェルマンを射殺する。シャドウとチャドは車で走り去るが、チャドは自殺を考えるほど罪悪感に苛まれる。シャドウは、これはヒンツェルマンが仕掛けた安全装置であり、彼を殺した者はその後すぐに死ぬようにするためのものだと結論づける。シャドウは魔法を使って、チャドがヒンツェルマンの会話を盗み聞きしたことと、殺人の記憶を奪い去る。彼はヒンツェルマンの庇護がなければ、町の繁栄は衰退していくであろうことを理解していたので、チャドとレイクサイドを後にする。
アイスランドで、シャドウはウェンズデイよりも神話上のオーディンにずっと近い存在であるオーディンの別の化身(アイスランドの初期入植者の信仰によって生み出されたもの)に出会う。シャドウはウェンズデイの行動についてオーディンを非難するが、オーディンは「彼は私だった。だが、私は彼ではない」と反論する。彼は、ウェンズデイは彼自身の一部であり、信者たちが新世界へ旅立った際に同行し、次第に忘れ去られるにつれて堕落していったと述べる。シャドウはウェンズデイの義眼をオーディンに渡し、オーディンはそれを記念品として革の袋に入れる。シャドウは簡単なコインを使った手品を披露し、オーディンはそれを気に入り、もう一度見せてほしいと頼む。するとシャドウは、マッド・スウィーニーが初めて会った時と同じように、何もないところから金貨を取り出すという、ちょっとした本物の魔法を披露する。彼はコインを空中に放り投げ、そのコインが再び地上に戻ってくるのかどうか思いながら、立ち去る。
登場人物
定命のもの
- シャドウ・ムーン – 元服役囚で、不本意ながらミスター・ウェンズデー(オーディン)のボディーガード兼使い走りとなる。
- ローラ・ムーン – シャドウの妻で、小説の冒頭でシャドウが刑務所から釈放される数日前にこうと交通事故で死亡する。
- サマンサ・ブラック・クロウ(サム) – シャドウが旅の途中で出会う、ヒッチハイクをしている大学生。
- チャド・マリガン – レイクサイドという町の、心優しい警察署長。
- ザ・ブラック・ハッツ – ミスター・ロード、ミスター・タウン、ミスター・ウッド、そしてミスター・ストーンは、アメリカ人の陰謀論への執着を象徴し、メン・イン・ブラックとして活動している。彼らは新しき神々のためにスパイ活動を行っている。
古き神々
- ミスター・ウェンズデイ – 古北欧神話における知識と知恵の神、オーディンの一側面。
- ロー・キー・ライスミス – 古北欧神話における悪戯と策略の神であるロキ。シャドウ・ムーンが投獄されていた頃の親しい知人。
- チェルノボク – スラヴ神話の闇の神であり、光の神であるベロボーグの双子の兄弟。
- ゾーリャ三姉妹 – チェルノボグの親戚で、暁(ゾーリャ・ウートレンニャヤ)、夕暮れ(ゾーリャ・ヴェチュールニャヤ)、真夜中の星(ゾーリャ・パルノーチニャヤ)を象徴する姉妹たち。スラヴの伝承では、彼女たちはダジボーグの召使いで、終末の猟犬セマルグルを守り見守っている。セマルグルはこぐま座の北極星に鎖で繋がれていると言われており、伝説によれば、鎖が切れると猟犬が世界を食い尽くすという。
- ミスター・ナンシー – ガーナの民間伝承に登場する、いたずら好きな蜘蛛の神アナンシ。彼はしばしば人々の愚かさを嘲笑する。これは彼の古い物語の中で繰り返し描かれる性格の一面である。
- ミスター・アイビス – 古代エジプトの知識と文字の神トート。イリノイ州カイロでミスター・ジャケルと共に葬儀屋を営んでいる。彼はよく、民話上の生き物をアメリカに持ち込んだ人々の短い伝記を書いている。
- ミスター・ジャッケル – 古代エジプトの死とミイラ化の神アナビス。葬儀での通夜のために遺体を準備する専門家。
- バスト – 古代エジプトの猫の女神バステト。しばしば小さな家猫の姿で現れ、シャドウが殴られた後に彼の傷や痛みを癒す。
- ホルス – 古代エジプトの天空神。
- イースター – ゲルマン神話の暁の女神エオストレ。
- マッド・スウィーニー – アイルランドの古い物語に登場する王シュヴァニャ。物語の中ではそう描かれていないが、身長が7フィート近くあるにもかかわらず、自らを「レプラコーン」と称している。スウィーニーは口が悪く、酒飲みである。
- ウィスキー・ジャック – アルゴンキン神話に登場するトリックスターのウィサケジャック。ジョン・チャップマンと共にバッドランズにあるラコタ居留地の近くに住んでおり、そこで彼らの文化におけるトリックスターであるイクトミと間違えられる。
- ジョン・チャップマン – ジョニー・アップルシードは、神というよりは「文化の英雄」と評されている。ポール・バニヤン(彼自身はポール・バニヤンを広告戦略だと誤って解釈している)が人々の信仰を自分から逸らしたとして、彼を憎んでいる。
- エルヴィス – 北欧神話に登場する小人族の王アルヴィース。人間の平均的な身長だが、体型は小人族特有のものである。
- エレグバとグレート・マウ – アメリカ大陸に連れてこられた奴隷たちが崇拝していた神々。
- グウィディオン – ウェールズ神話のトリックスター神グウィディオン・ファブ・ドン
- ヒンツェルマン – かつて古代ゲルマン民族によって部族の神として崇拝されていたコボルト族の戦士ヒンツェルマン。老人の姿でレイクサイドの町を守っている。
- ビルキス – 性交相手を吸収し、彼らを崇拝者に変えることで生き延びている古代のシバの女王。
- ママジ – ヒンドゥー教における時間と破壊の女神カーリー。
- ジン – 性的な出会いの後、オマーン人実業家と人生を交換するイフリートのタクシー運転手。
- ランド – ネイティブアメリカンが崇拝する土地の擬人化であり、シャドウの夢の中に現れて彼に助言を与えるバッファローの頭を持つ男。
- ひげの男 – 夢の場面で、シャドウが世界樹にぶら下がっている間に、イエス・キリストに似たキャラクターが話しかけてくる。シャドウは、他の古の神々と比べて、彼がまだ大きな影響力を持っていると述べる。しかし、その髭を生やした男は、自分の教えがあらゆるものに適用されてしまい、結果として何にも適用できなくなってしまったのではないかと心配している。ゲイマンはこの部分を何度も削除したり差し替えたりした[6]。
- 象の神 – 新たな始まりを司るヒンドゥー教の神ガネーシャであり、世界樹の夢の場面でシャドウの前に現れる。シャドウは最終的に、ガネーシャの役割は障害を取り除くことであり、「トランクの中を見ろ」という彼の謎めいたメッセージは、実はアリソン・マクガヴァンの遺体の場所を示す手がかりであることに気づく。
- 忘れられてしまう神 – ミスター・ウェンズデイがシャドウとともにラスベガスで出会った、ある名も知れぬ神。その名は、ミスター・ウェンズデイが口にするたびにシャドウの記憶からこぼれ落ちてしまった。彼はヴェーダの儀式で用いられる飲み物であるソーマを好んでいる。ゲイマンはこの神の正体を明かしたことはない[7][8]。
新たな神
- テクニカル・ボーイ – テクノロジーとインターネットの新たな神。大人サイズの太った子供の姿で擬人化されている。
- メディア – テレビと大衆文化の新たな女神。彼女はテレビで放送されているものを乗っ取ることでコミュニケーションをとることが多く、例えば『アイ・ラブ・ルーシー』のルーシー・リカルドや『チアーズ』のキャストを通してシャドウとコミュニケーションをとる。
- 無形のものたち – 市場の「見えざる手」の擬人化である彼らは現代株式市場の新たな神々。
- ミスター・ワールド – ブラックハットのリーダーであり、グローバリゼーションの新たな神。
- その他に言及されている新神には、自動車、機関車、飛行機、美容整形、および様々な医薬品の神々が含まれる。
影響
この小説の献辞には「今は亡き友人たちへ ― キャシー・アッカーとロジャー・ゼラズニイ、そしてその間のすべての人々へ」と記されている[9]。
ゲイマンは小説『アメリカン・ゴッズ』の着想の源について、1992年にアメリカに移民として移住した経験を挙げ、その頃から漠然とした構想が頭の中で形作られ始めたと語っている。さらに、1998年にレイキャビクの空港で乗り継ぎをしていた際、ゲイマンは「彼らはアメリカに行くとき、自分たちの神々も一緒に連れて行ったのだろうか?」と思ったと述べている[10]。
『ディスクワールド』シリーズの小説『Small Gods』は、神々(思考形態)の起源について同様の考察を行っている。ゲイマンはテリー・プラチェットの著書を読んだことはないとしながらも、出身地が同じであること、そして何よりも毎日電話で話していたことから、自分たちは世界観を共有していると考えていた。彼はまた、『アメリカン・ゴッズ』のプロット上の要素を解決するためにプラチェットに助言を求めていた[11]。
ゲイマンによれば、『アメリカン・ゴッズ』はダイアナ・ウィン・ジョーンズの1975年の小説『ぼくとルークの一週間と一日』を原作としたものではないが、「いとこ同士のような、奇妙な関係性はある」とのことである。神々と曜日を結びつける物語の構成を練っていたとき、彼はこのアイデアがすでに『ぼくとルークの一週間と一日』で使われていることに気づいた。彼はその物語を放棄したが、後に『アメリカン・ゴッズ』を執筆する際にそのアイデアを用い、ウェンズデーとシャドウが神の名にちなんだ日に出会う場面を描いた[12]。
ジョン・ジェームズの1966年の小説『ヴォータン』(Votan)について、ゲイマンは「北欧神話を題材にした作品の中で、おそらく最高傑作だと思うのは、私が『アメリカン・ゴッズ』のアイデアを思いついてから完成させるまでの間、読むことを自分に許せなかった本です。出版後、実際に腰を据えて15年ぶりに読んでみたところ、やはり思っていた通り素晴らしい作品でした。」と述べている[13]。
フリッツ・ライバーの The Knight and Knave of Swords の序文で、ゲイマンはライバーによるオーディンとロキの描写が「間違いなく自分のキャラクター解釈に影響を与えた」と認めている[14]。
執筆とプロモーション
『アメリカン・ゴッズ』の15番目の単語は「fuck」で、これは読者に神経質な性格を知らせ、そこで読むのをやめてもいい、あるいは少なくとも第1章を締めくくる極めて奇妙なセックスシーンが終わる前に読むのをやめてもいい、ということを示している。
ゲイマンが『アメリカン・ゴッズ』を執筆している間、彼の出版社はプロモーション用のウェブサイトを立ち上げ、ゲイマンが小説の執筆、改訂、出版、プロモーションの日常的なプロセスを記述したブログを掲載した[16]。小説の出版後、ウェブサイトはより一般的なニール・ゲイマン公式ウェブサイトへと発展した。2021年現在、ゲイマンは時折ブログを更新し、執筆、改訂、出版、あるいは現在のプロジェクトの宣伝について記述しているが、より個人的な詳細や読者からの質問には、Tumblr[17]やTwitter[18]などのソーシャルメディアを利用する傾向がある。
2008年2月28日、ゲイマンは自身の日記で、『アメリカン・ゴッズ』の全文を出版社のウェブサイトで1ヶ月間一般公開すると発表した[19]。
評価
この本は、2002年のヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞[1]、SFX賞、ブラム・ストーカー賞をいずれも最優秀長編小説として受賞し、同様に2001年の英国SF協会賞[20]、2002年の世界幻想文学大賞[1]、国際ホラーギルド賞、ミソピーイク賞、英国幻想文学大賞[1]にもノミネートされた。2003年にはゲフィン賞を受賞した。
2010年5月、『アメリカン・ゴッズ』はオンライン投票で、最初の「One Book One Twitter」企画の書籍に選ばれた[21]。 2014年にテレビドラマ化が発表された際、著作家のアブラハム・リースマンは、この動きを「悪い考え」だと批判し、原作には時代遅れになった点や、一部の文化圏の人々にとって不快な点があると指摘した[22]。 さらに、学者たちは、この作品には存在論的および認識論的な意味合いがあり[23]、ゲイマンの作品全体の一部として、その流用的なスタイルを探求していると主張している[24]。
出版歴
本書は2001年にイギリスではヘッドラインから、アメリカではウィリアム・モロウから出版された。
「著者が好きなテキスト」と12,000語が追加された10周年の特別版がウィリアム・モロウから2011年に出版された。 10周年記念版の本文は、2003年にヒルハウス出版社から発売された署名入り限定版、および2005年からゲイマンの英国における出版社であるヘッドライン社から発売された版と同一である[2]。 10周年記念版は、著者が好むテキストが英国以外で初めて広く入手可能になったことを意味した[25]。
2017年3月、フォリオ・ソサエティは、著者が好むテキスト版に多くの修正を加えた『アメリカン・ゴッズ』の特別コレクターズ・エディションを出版した。ゲイマンはこの版を、この小説の「これまでで最も鮮明なテキスト」だと評した[2]。
メディア展開
オーディオブック
本書のオーディオブック版は2種類あり、ハーパーオーディオから出版された。1つは、ジョージ・ガイダルが朗読したオリジナル版の完全版で、2001年にリリースされた。
10周年記念版のフルキャスト版で、2011年にリリースされた。2017年3月、フォリオ・ソサエティは『アメリカン・ゴッズ』の特別コレクターズ・エディションを出版したが、そこには著者が好むテキスト版に対する多くの修正が加えられていた声優陣には10名以上の俳優が名を連ねており、その中には以下の俳優が含まれていた:[26]
- Fred Berman:ミスター・アイビス、アイスマン、グウィディオン、サリム
- Dennis Boutsikaris:ナレーション
- Anne Bobby:オードリー・バートン、ゾーリャ・P、エッシー・トレゴワン、イースター、ヴェガスのウェイトレス
- Tim Cain:ミスター・ナンシー
- Richard Ferrone:ロー・キー・ライスミス、ヒンツェルマン、ミスター・ストーン、ミスター・ワールド
- Adam Grupper:チャド・マリガン、ハリー・ブルージェイ、ミスター・ウッド、看守
- Sarah Jones:ローラ、ビルキス、ママ・ズーズー、ママジ、ダイアナ、ゾーリャ・U
- Pete Larkin:チェルノボク、ジャッケル、ウィスキー・ジャック
- Nikhil Maindiratta:十代のシャドウ
- Kathleen McInerney:サマンサ・ブラック・クロウ、アリソン・マクガバン、一番下の妹、リス
- Ron McLarty:ミスター・ウェンズデー
- Prentice Onayemi:サム・フェティシャー、アガス、黒人の副保安官、バロン・サムディ
- Daniel Oreskes:シャドウ
- Paula Parker:年長のウェイトレス、シャドウの母親
- Nicole Quinn:乗客案内係の女、アモコのレジの女
- Maggi-Meg Reed:マルグリット・オルセン、バスト(バテスト)、マッケイブ夫人(ローラの母親)
- Yelena Scmulenson:ゾーリャ・V、リズ・ビュート巡査、サンフランシスコのウェイトレス、ソフィー
- Teddy Walsh:レオン
- Alan Winter:刑務官、図書館の古本市のレジ係、ガソリンスタンドの店長
- Oliver Wyman マッド・スウィーニー、テクニカル・ボーイ、ジョン・チャップマン、ミスター・タウン
コミックス
本書を基にした American Gods: Shadows から始まるコミックシリーズが、ダークホースコミックスより2017年3月から刊行された[27][28]。
同名の書籍が、コミックシリーズの第1号から第9号までを収録し、2018年2月にダークホースブックスから出版された[29]。コミック版はゲイマンとP・クレイグ・ラッセルの共作となっている。ラッセルやスコット・ハンプトンらの作品も収録されている[29]。
テレビドラマ
Starzは、ブライアン・フラーとマイケル・グリーンと共に、この小説を原作としたテレビシリーズを制作した[30]。このシリーズは2017年4月に放送開始された。シーズン1の終わりに、フラーはショーランナーを辞任し、ジェシー・アレクサンダーが後任となった。二人は以前、『スタートレック:ディスカバリー』と『ハンニバル』で一緒に仕事をしたことがあった[31]。番組はシーズン3で終了し、原作小説全体を映像化することはなかったが、制作会社であるフリーマントルは物語を完結させるテレビ映画の制作に関心を示しており、2024年にはシャドウ・ムーン役のリッキー・ウィトルが、彼とゲイマンがこれらの計画を実現するためにストリーミングサービスを探していると述べた[32]。
音楽
パワーメタルバンドのブラインド・ガーディアンは、2022年のアルバム『ザ・ゴッド・マシーン』に収録されている、この小説を基にした「シークレット・オブ・ジ・アメリカン・ゴッズ」という曲を作曲した[33]。
関連作品
ゲイマンの次の小説『アナンシの血脈』(2005年)は、『アメリカン・ゴッズ』よりも前に構想され、ミスター・ナンシー(アフリカの伝説に登場する蜘蛛の神アナンシ)という共通のキャラクターが登場する。
2011年6月22日に公開されたMTV Newsのインタビューで、ゲイマンは『アメリカン・ゴッズ』の直接の続編を計画していると語った。ゲイマンは最初の本を執筆している段階から続編の構想を練っており、続編では新しき神々に焦点を当てる可能性が高いと述べている[34]。
予定されている続編に加えて、ゲイマンはシャドウ・ムーンを主人公とした短編続編を2作執筆している。2003年のアンソロジー Legends II に初めて掲載された中編小説「「谷間の王者―『アメリカン・ゴッズ』後日譚」は、『アメリカン・ゴッズ』の2年後のスコットランドを舞台としている。2番目の短編小説 "Black Dog" は、ゲイマンの2015年の作品集 Trigger Warning に収録されている。物語は1年後、ダービーシャーのピーク地区で展開する[35]。Trigger Warning の序文で、ゲイマンは、シャドウがアメリカに戻り『アメリカン・ゴッズ2』が始まる前に、彼をロンドンに連れて行く最後の単独ストーリーを執筆する予定だと述べている。